相続放棄の手続き費用と不動産業者が知るべき注意点

相続放棄の手続き費用と流れを完全解説

相続放棄をしても固定資産税の請求が届き、数万円の支払いを求められることがあります。

📋 この記事の3つのポイント
💴

費用の相場を把握する

自分で手続きすれば3,000〜5,000円程度。司法書士なら3〜8万円、弁護士なら5〜15万円が目安。

3ヶ月の期限を厳守する

相続開始を知った日から原則3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しないと、放棄できなくなる。

⚠️

放棄後も管理義務が残る

相続放棄しても占有中の不動産は「次の管理者に引き渡すまで」保存義務が続く(民法940条)。

相続放棄の手続きにかかる費用の内訳

 

相続放棄の費用は、大きく「実費」と「専門家報酬」の2種類に分かれます。自分で手続きをする場合に必要なのは実費のみです。

参考)相続放棄の手続き費用とは

実費の主な内訳は以下の通りです。chester-tax+1

  • 💠 収入印紙代:申述人1人につき800円
  • 💠 連絡用の郵便切手:400〜500円程度(裁判所により異なる)
  • 💠 被相続人の戸籍謄本(死亡記載あり):1通450円
  • 💠 住民票の除票または戸籍の附票:1通300〜400円程度
  • 💠 相続放棄する人の戸籍謄本:1通450円

これらを合計すると、最もシンプルなケースで自己申請の費用は3,000〜5,000円程度に収まります。

参考)相続放棄にかかる費用は誰が払う?内訳や専門家に依頼する場合の…

つまり、費用を抑えたいなら自己申請が原則です。

ただし、相続関係が複雑になると戸籍の取得点数が増え、実費だけで1万円を超えることもあります。 書類の漏れや記入ミスで申述が受理されないリスクも伴うため、手間と費用のバランスを考えた判断が必要です。

参考)相続放棄の費用はいくらかかる?専門家に依頼するメリットや注意…

相続放棄の手続きを専門家(司法書士・弁護士)に依頼する費用

専門家に依頼した場合の費用相場は以下のとおりです。

依頼先 費用の目安 対応できる範囲
🏛️ 司法書士 3万〜8万円程度 申述書の作成・戸籍取得の代行。裁判所からの照会対応は申述人が行う
⚖️ 弁護士 5万〜15万円程度 申述から裁判所照会の対応まで全面代行。相続人間のトラブル対応も可能

司法書士への依頼では書類作成や戸籍取得を任せられますが、裁判所からの照会対応は申述人本人が行う必要があります。 一方、案件が複雑で他の相続人との調整が必要なケースや、多額の借金が絡む場合には弁護士への依頼が適切です。kensei-law+1

弁護士費用は複雑な案件で12万〜15万円を超えることもあります。 費用だけで比べると差は大きいですね。

参考)相続放棄にかかる費用相場はいくら?司法書士と弁護士に依頼する…

不動産業従事者が相続案件に関わる際は、依頼者に「司法書士か弁護士か」を最初に確認し、複雑度に応じて適切な専門家を案内できると、信頼度が大きく上がります。

参考:司法書士と弁護士の役割範囲の違いについて

相続放棄にかかる費用は誰が払う?内訳や専門家に依頼するメリット(杠司法書士法人)

相続放棄の手続きの流れと3ヶ月の期限

相続放棄の手続きは、「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述書を提出する方法で行います。

参考)【相続放棄の期間は3ヶ月】期間延長する時の手続きと期限後の相…

手続きの流れは以下の通りです。

参考)相続放棄の手続きは6ステップでできる!費用・必要書類・注意点…

  1. 相続財産(プラス・マイナス両方)の調査
  2. 相続放棄するか否かの判断
  3. 必要書類(戸籍謄本等)の収集
  4. 相続放棄申述書の作成
  5. 管轄の家庭裁判所へ提出(郵送または持参)
  6. 裁判所から「照会書」が届いたら回答を返送

3ヶ月の起算点は「相続人が亡くなったことを知り、かつ自分が相続人であることを知った日」です。 疎遠だった親族の場合、死亡の事実を知ったのが後になることもあり、その場合は「事実を知った日」が起算点になります。これは意外ですね。

期間内に判断が難しい場合は、家庭裁判所に「相続放棄の期間伸長の申立て」を行うことで1〜3ヶ月程度の延長が認められます。 この申立ては必ず3ヶ月の期限が切れる前に行う必要があります。souzoku-mado+1

参考:相続放棄の期間伸長の手続きについて

相続放棄の期間は3ヶ月|期間延長する時の手続きと期限後の対処法(OAG税理士法人)

相続放棄しても固定資産税の請求が来るケース

相続放棄をすれば固定資産税も一切払わなくて済む、と思っている不動産業従事者は少なくありません。しかし、タイミングによっては放棄後も納税義務が発生します。

参考)相続放棄後でも固定資産税の支払い義務はある?請求が来た場合の…

固定資産税は毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている人物に課税されます。 つまり、年内に被相続人が亡くなったとしても、翌1月1日時点までに相続放棄の申述が受理されていないと、その年の固定資産税の納税義務が発生してしまいます。

これは痛いですね。

具体的には、以下の2つのケースで放棄後も請求が届くことがあります。

参考)相続放棄しても固定資産税の納税義務はあるの?納税通知書が届い…

  • ⚡ 市区町村役場が相続放棄の事実を把握しておらず、相続人と推定されたままになっている
  • 債権者代位登記がされており、役所の台帳が新されていない

請求が届いた場合は、相続放棄申述受理証明書を市区町村窓口へ提出することで解決できます。 不動産関連の相続案件では、このケースを事前に顧客へ説明しておくとトラブルを防げます。

参考)相続放棄後は固定資産税の支払義務はある?請求が来た場合の対処…

参考:相続放棄後の固定資産税への対応方法

相続放棄しても固定資産税の支払いが必要なケースと対処法(KeyCrea)

相続放棄後も管理義務が残る不動産の落とし穴

相続放棄が完了すれば、その不動産とは完全に無関係になれる——この考え方は危険です。

民法940条の規定により、相続放棄した時点で当該不動産を「現に占有していた」場合、次の管理者(相続人または相続財産清算人)に引き渡すまでの間、保存義務が継続します。

参考)相続放棄をしたら不動産の管理責任はどうなるのか

管理義務が残ると、以下のような費用が発生するリスクがあります。

参考)相続放棄をしたら不動産はどうなる?空き家や借金がある場合の注…

さらに、相続財産清算人を選任してもらうためには、家庭裁判所への申立てが必要で、予納金として30万〜100万円程度を準備しなければならないケースもあります。 費用が一気に膨らむポイントです。

2023年4月に改正された新民法940条では、占有していない相続放棄者は管理責任を負わないことが明確化されました。 つまり、不動産を「管理していない」「使っていない」状態であれば、放棄後の管理義務は発生しません。これが条件です。

不動産業者として顧客の相続案件に関わる場合は、「占有しているかどうか」を最初に確認することで、後から発生する費用リスクを回避できます。

参考:相続放棄後の管理義務・民法940条の改正内容

相続放棄をしたら不動産の管理責任はどうなるのか(弁護士法人シーライト)

単純承認に注意!不動産に触れると相続放棄できなくなる

相続放棄を検討している段階で、不動産を少し手入れしたり家賃を受け取ったりする行為が、取り返しのつかない「単純承認」につながる場合があります。

法定単純承認が成立すると、以降は相続放棄が一切できなくなります。 被相続人のマイナス財産(借金・滞納税など)もすべて引き受けることになります。

参考)相続放棄ができなくなる?法定単純承認となる行為とならない行為…

単純承認とみなされる可能性がある行為の具体例は以下の通りです。

参考)https://tomorrowstax.com/knowledge/2025040414270/

  • ❌ 被相続人名義の預金を解約・引き出して使用する
  • ❌ 相続財産の不動産を売却する
  • ❌ 賃貸物件の家賃を自分の口座に切り替えて受領する(最高裁昭和37年の判例あり)
  • ❌ 遺品を大量に処分する

特に不動産業従事者が関わりやすいのが、「賃貸不動産の家賃受領の口座変更」です。 最高裁判例で「所有者としての権利行使にあたる」と判断されており、これだけで相続放棄の機会を失います。単純承認に注意が条件です。

一方で、葬儀費用の支払い(常識的な範囲内)や最低限の維持管理は、単純承認にはならないとされています。 「触れてはいけない行為」と「問題ない行為」の境界線を顧客に伝えることが、不動産業務における相続対応の重要なスキルになります。

参考)遺産から葬儀代を支払っても相続放棄はできる!注意点とできない…

参考:法定単純承認の具体的な行為と例外

相続放棄ができなくなる?法定単純承認となる行為とならない行為(福地司法書士事務所)

相続放棄を自分でやる人のための本