代襲相続どこまで兄弟に及ぶか:範囲・順位・限界を徹底解説
兄弟姉妹が相続人のとき、その子(甥・姪)は代襲相続できますが、甥・姪の子(大甥・大姪)は一切代襲できません。
代襲相続の基本:兄弟姉妹が相続人になる順位と条件
相続人の順位は民法で明確に定められています。まず第1順位は「子(およびその直系卑属)」、第2順位は「直系尊属(父母・祖父母など)」、第3順位が「兄弟姉妹」です。
兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人(亡くなった方)に子も直系尊属もいない場合に限られます。つまり、第3順位まで回ってくるケースは、それほど多くはありません。
しかし不動産実務では、この「稀なケース」が厄介な問題を引き起こします。🏚️ 被相続人が独身・子なし・高齢で親も他界済みというパターンは、高齢化社会の進行とともに増加しています。
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が「被相続人より先に死亡していた」「相続欠格となった」「廃除された」場合に、その人の子が代わりに相続する制度です。欠格・廃除のケースでも代襲が発生する点は見落としがちです。
兄弟姉妹が相続人の局面で代襲相続が発生するのは、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていたときです。その場合、亡くなった兄弟姉妹の子、つまり甥・姪が代わりに相続権を取得します。順位が原則です。
代襲相続がどこまで及ぶか:兄弟姉妹ルートの「1世代限り」の壁
ここが最も重要なポイントです。兄弟姉妹ルートの代襲相続は、甥・姪の1世代で完全に止まります。
民法889条2項は「887条2項の規定(子の代襲)を準用する」としていますが、同時に同条の「再代襲(887条3項)」は準用していません。この立法上の意図的な「準用除外」が、兄弟姉妹ルートの代襲を1回限りにしています。
たとえば次のケースを考えてみましょう。
- 被相続人:Aさん(子なし、親なし)
- 兄弟:Bさん(Aより先に死亡)
- Bの子(甥):Cさん(Aより先に死亡)
- Cの子(大甥):Dさん(存命)
このケースで、DさんはAさんの相続人になれません。Cさんが相続する前に亡くなっているため、代襲の「再代襲」が問題になりますが、兄弟姉妹ルートではそれが認められないからです。
結論は明確です。甥・姪の子(大甥・大姪)には一切相続権が発生しません。これは実務上、非常に重要な知識です。
一方、第1順位(子)のルートでは再代襲が何世代でも認められます。子が先に死亡→孫が代襲→孫も先に死亡→ひ孫が代襲、という形で延々と続きます。この非対称性こそが混乱の根本原因です。
不動産相続の相談現場では「亡き兄の孫にも相続権があるはず」と思い込んで来店する依頼者が一定数います。このルールを正確に説明できることが、不動産従事者の信頼につながります。
代襲相続人の相続分:甥・姪が受け取れる割合の計算方法
代襲相続人が受け取る相続分は、「代襲される人(亡くなった兄弟姉妹)が受け取るはずだった相続分」をそのまま引き継ぎます。代襲相続人が複数いる場合は、その相続分をさらに頭割りします。
具体的な数字で見てみましょう。📊
- 被相続人:Aさん(配偶者なし、子なし、親なし)
- 兄弟:Bさん(存命)、Cさん(死亡・子2人D・E)
- 法定相続分:兄弟姉妹2人で1/2ずつ→BとCが各1/2
- CはすでにいないのでD・Eが代襲:各1/4
BさんとCさんの相続分は均等の1/2ずつが基本です。Cさん分の1/2をD・Eの2人で分けるので、各1/4となります。
ただし、半血兄弟(父母の一方のみ同じ)の場合は相続分が異なります。半血兄弟の相続分は全血兄弟の1/2となります(民法900条4号但書)。この差は代襲相続にも引き継がれます。
たとえば全血兄弟Bと半血兄弟Cがいる場合、Bが2/3・Cが1/3の相続分となります。Cが先に亡くなっており子がいれば、その子(甥・姪)がCの1/3を引き継ぎます。半血かどうかの確認が条件です。
不動産の持分割合の計算や登記申請書への記載でも、この相続分の計算が直接影響します。相続関係説明図には全血・半血の区別も記載することが推奨されます。
代襲相続と相続放棄の関係:兄弟の子が相続放棄した場合はどうなるか
ここは実務でも誤解が多い部分です。意外ですね。
相続放棄は「代襲原因にならない」というのが民法の明確なルールです(民法887条2項参照)。代襲相続が発生するのは、死亡・相続欠格・廃除の3パターンのみで、相続放棄は含まれません。
どういうことでしょうか?
たとえば、兄弟Bさんが相続放棄をしたとします。Bさんには子(甥Cさん)がいます。この場合、Cさんは代わりに相続できません。Bさんが「最初から相続人ではなかった」とみなされるため、代襲の根拠がそもそも存在しないのです。
一方、Bさんが被相続人より先に死亡していた場合はCさんが代襲します。死亡と放棄では結果がまったく異なります。これは使えそうです。
実務上のリスクとして、依頼者が「兄が放棄したので、兄の子に相続権が移る」と誤解して動いてしまうケースがあります。不動産の名義変更を進める前に、相続放棄の有無と死亡の事実関係を戸籍で必ず確認することが必須です。
また、甥・姪本人が相続放棄をした場合も、その子(大甥・大姪)への代襲は発生しません。兄弟姉妹ルートはそもそも再代襲がないうえ、放棄も代襲原因にならない。二重の意味で止まります。
不動産業務で代襲相続の「兄弟ルート」が問題になる具体的場面
不動産実務において、代襲相続が絡む案件は「相続人の特定」と「不動産登記」の両面で複雑化します。
まず相続人の特定作業です。被相続人の戸籍謄本を死亡時から出生時まで遡って取得し、兄弟姉妹全員を特定します。その後、兄弟姉妹の生死を確認し、死亡している場合はその子(甥・姪)の戸籍も取得する流れになります。
この作業で見落としがちなのが「婚外子(認知された子)」の存在です。🔍 認知された子も法律上は同等の相続権を持つため、戸籍の確認漏れが後日トラブルになるケースがあります。
不動産登記の観点では、相続関係説明図の作成が必要です。兄弟姉妹ルートの代襲では、甥・姪の情報(氏名・生年月日・続柄)を正確に記載しなければなりません。大甥・大姪まで記載してしまう誤りが実務では発生しています。
相続登記の義務化(2024年4月施行)により、相続発生から3年以内に登記申請が義務付けられました。🗓️ 期限を過ぎると10万円以下の過料が課される可能性があります。兄弟ルートの複雑な相続人調査は時間がかかるため、早期着手が重要です。
また、遺産分割協議書には相続人全員の署名・実印・印鑑証明書が必要です。甥・姪が複数人にわたる場合、一人でも欠けると協議が無効になります。音信不通の甥・姪がいる場合、不在者財産管理人の選任や特別代理人の選任が必要になることもあります。これが条件です。
- 📌 相続人調査:被相続人の出生から死亡までの全戸籍取得(市区町村をまたぐ場合あり)
- 📌 兄弟姉妹の生死確認:死亡の場合は甥・姪の戸籍も取得
- 📌 半血兄弟の有無確認:相続分の計算に直結
- 📌 相続放棄の有無確認:家庭裁判所で照会可能
- 📌 相続関係説明図の作成:代襲関係を正確に図示
- 📌 遺産分割協議書:全相続人の署名・押印が必須
甥・姪が海外在住の場合、印鑑証明書の代わりにサイン証明(在外公館発行)と本人確認書類が必要になります。国際相続に発展するケースでは、現地の法律も絡んでくるため、早めに国際相続専門の司法書士や弁護士への相談を促すことが依頼者の利益につながります。
上記リンクは相続登記の義務化・過料・相続人申告登記の詳細が確認できる法務省公式ページです。兄弟ルートの相続で登記が長期間放置されているケースへの説明資料として活用できます。
上記リンクは相続放棄の申述方法・期限・必要書類が確認できる裁判所公式ページです。甥・姪が相続放棄を検討している場合の参考資料として活用できます。
不動産従事者だけが知っておくべき:代襲相続で相続税が変わる落とし穴
これは他の解説記事ではあまり触れられない独自視点です。代襲相続人が甥・姪になる場合、相続税の計算において重要な違いが生じます。
通常、相続税の基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。甥・姪が代襲相続人になった場合、法定相続人の数にカウントされるため基礎控除額に影響します。これは問題ありません。
しかし大きな落とし穴があります。😱
甥・姪(代襲相続人)は「一親等の血族」ではないため、相続税が通常の2割加算の対象になります。民法上は正式な相続人であっても、税法上は2割加算されるのです。これを知らずに資産計算をすると、依頼者が想定より多くの税を払う羽目になります。
具体的な数字で確認します。仮に相続税の算出税額が200万円だった場合、2割加算で240万円になります。差額40万円は決して小さくありません。痛いですね。
なお、代襲相続ではなく遺贈(遺言による贈与)で甥・姪に財産を渡す場合も同様に2割加算が適用されます。どちらのルートでも税負担は変わりません。
不動産業者として相続相談を受ける際、「税額が想定より高くなる可能性がある」と事前に伝え、税理士への相談を促すことが重要です。相続税申告が必要な案件では、相続専門の税理士と連携することで、依頼者の信頼を高め、業務の質を上げることができます。
- 💴 甥・姪の相続税:算出税額に2割加算(民法上の代襲相続人でも対象)
- 💴 加算の根拠:相続税法18条(一親等の血族・配偶者以外は加算)
- 💴 計算例:税額200万円 → 2割加算後240万円(差額40万円)
- 💴 遺贈でも同じ:遺言で甥・姪に渡しても加算あり
上記リンクは相続税2割加算の対象者・計算方法が確認できる国税庁公式ページです。甥・姪への代襲相続で税負担を説明する際の根拠資料として直接使用できます。

