同時死亡の相続条文が不動産登記を左右する重要知識

同時死亡の相続条文と不動産業への影響

同時死亡の推定(民法32条の2)が適用されると、相続人と思っていた人が相続人でなくなり、不動産の名義変更先が根本から変わります。

参考)同時死亡の推定とは?相続関係や相続税計算の注意点【税理士が解…

この記事の3つのポイント
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民法32条の2の条文

「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する」と規定されています。

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不動産登記への直撃影響

同時死亡の推定が働くと、相続人の順位・範囲が変わり、名義変更先(所有権移転登記の相手方)が別人になるケースがあります。

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代襲相続との関係

同時死亡した相続人に子(孫)がいれば代襲相続が発生し、思わぬ人物が相続人となる可能性があります。不動産業者はこの例外を必ず押さえておく必要があります。

同時死亡の推定とは何か:民法32条の2の条文を正確に読む

 

民法第32条の2の条文は次のとおりです。「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」

参考)同時に相続人が死んだらどうなる?/同時死亡の推定

この条文のポイントは「推定」という言葉にあります。つまり、法律が「同時に死亡した」と仮定するわけですが、反対の証拠(どちらが先に死亡したかを示す医学的証拠・現場状況など)があれば、この推定は覆せます。

参考)福岡・博多で相続についてお悩みなら|金山・吉野国際司法書士事…

適用される典型的なシチュエーションは以下のとおりです。

  • 🚗 交通事故で子・婦が同乗していた場合
  • 🌊 津波・地震などの大規模な天災
  • 🔥 火災による家族の死亡
  • ✈️ 航空機・船舶事故

不動産業の現場では、相続登記の依頼を受けた際にこの条文が浮上するケースがあります。死亡診断書の記載時刻が同一・または発見が遅れたケースでは、真っ先にこの条文の適用可能性を確認することが重要です。

参考)複数人の死亡の前後が不明な場合の相続登記手続き

なお、死亡の先後が不明な場合でも、必ずしも「同じ事故・同じ場所」である必要はありません。別々の場所・別々の原因で亡くなった場合でも、死亡の前後が不明であれば同時死亡の推定が適用されます。

同時死亡の推定が適用された場合、同時死亡した者の間では相続は発生しません。これが原則です。

参考)【vol.16】相続Q&A~同時死亡の取り扱い~|一般社団法…

同時死亡の推定が相続人の範囲を変える具体的な仕組み

「同時存在の原則」というルールがあります。相続財産に対する権利義務の承継には、被相続人の死亡時に相続人が存在していなければならないという原則です。

参考)【相続基礎】同時存在の原則と同時死亡の推定とは?

同時死亡の推定はこの原則と組み合わさることで、相続人の顔ぶれを大きく変えます。具体例で確認しましょう。

【事例A:夫Aと子Cが同時死亡、妻B・祖父Dが生存している場合】

状況 相続人
夫Aが先に死亡した場合 妻B(1/2)、子C(1/2)→ さらにCの死亡でCの財産はCの妻と子へ
同時死亡の推定が適用された場合 AとCの間に相続は発生しない→ Aの相続人は妻B+祖父D(第2順位)

これを見るとわかるように、子Cが相続人として機能しない場合、第2順位の直系尊属(祖父Dなど)が相続人として浮上します。

参考)同時に死亡した場合の相続関係/死亡の先後が不明な相続

不動産業者がこれを把握せずに「奥様と息子さんが相続人ですよね」と確認してしまうと、実際には「奥様と義父」が相続人となっており、登記申請書の記載が誤ることになります。

相続登記の義務化(2024年4月施行)により、不動産の所有者が死亡したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければ10万円以下の過料が課されます。 相続人の確定を誤ったまま放置すると、期限違反と登記の誤りが同時に発生するリスクがあります。これは大きなリスクです。

参考)不動産の所有者が亡くなった:法務局

正確な相続人の把握には、戸籍謄本(除籍謄本)の収集が不可欠です。被相続人の出生から死亡まで、また相続人候補者全員の戸籍を取得して系図を作成することが基本です。

同時死亡の推定と代襲相続:不動産登記で特に注意すべき例外

同時死亡の推定が適用されると、原則として代襲相続は発生しないように思えます。しかし、例外があります。それが重要です。

同時死亡した人が「被相続人の子や兄弟姉妹の子」であった場合、その人の子(孫・甥姪)が代襲相続人として登場します。

参考)【同時死亡時の相続】「もしも」の時に備える知識!

具体的には次のとおりです。

  • 被相続人A(祖父)と、その子B(父)が同時死亡
  • BはAの相続人にはなれない(同時死亡のため)
  • しかし、Bに子(Aの孫)がいれば、孫がBの代わりにAの相続人となる(代襲相続)

これは登記実務で見落とされやすいポイントです。不動産業者が「子が同時死亡したから子の配偶者(嫁・婿)が相続人」と早合点するのは誤りです。

正しくは、同時死亡した子の「さらに子(孫)」が代襲相続し、孫と配偶者が相続人となります。その孫が未成年であれば特別代理人の選任が必要になるケースもあり、手続きの複雑度がさらに上がります。

以下の図で整理できます。

孫Cが代襲相続人として登場

不動産の相続登記では、代襲相続人の戸籍謄本・住民票も追加で必要となります。必要書類の見落としは申請の却下につながるため、依頼者への事前案内を徹底することが重要です。

同時死亡の推定が生命保険金・遺言の効力に与える影響

不動産だけでなく、生命保険金の受取や遺言の効力にも同時死亡の推定は影響します。不動産業者として、顧客の相続全体を俯瞰して理解しておくと、より的確なアドバイスが可能になります。

【生命保険金の受取人について】

被保険者(父A)が死亡し、指定受取人(長男C)も同時に死亡したと推定された場合、保険法第46条の規定により、受取人(長男C)の相続人が保険金を受け取ります。

参考)同時死亡の場合の相続

つまり、Aの保険金はAの相続人ではなく、Cの相続人(CのパートナーやCの子)が受け取ることになります。これは「父の保険金なのに、息子の家族が受け取る」という状況です。意外ですね。

ただし注意点があります。保険契約者と受取人が同時死亡した場合に関しては、最高裁判決(平成4年9月22日判決)により、「指定受取人の相続人」が受取人となるという考え方が示されています。

参考)夫婦同時死亡の場合の生命保険金の受取人は誰になる?

【遺言の効力について】

父Xが「全財産を妻Aに相続させる」との遺言を残していた場合、父Xと妻Aが同時死亡の推定を受けると、遺言は効力を失いません(妻Aは生存していないが、遺言の効力の問題は別途検討が必要です)。

重要なのは、「同時死亡の場合も含む」という予備的条項を遺言に入れておくことです。 たとえば、「妻Aが私の死亡以前に亡くなった場合(同時死亡を含む)は、長女Bに相続させる」という記載があれば、同時死亡の推定が適用されても遺言通りの処理が可能になります。

参考)同時に相続人が死亡した場合は相続にどう影響するの? 遺言書と…

不動産業者として遺言の存在を確認する際は、この予備的条項の有無もチェックする習慣をつけると、後のトラブル防止につながります。これは使えそうです。

不動産業者が現場で同時死亡の推定を疑うべき5つのシーン

理論の理解だけでなく、現場での対応力が重要です。以下のシーンでは、同時死亡の推定が問題になっていないか確認することが求められます。

シーン1:死亡診断書の日時が同一または不明な場合

複数の家族が同じ病院に搬送され、死亡診断書の記載時刻が同一の場合は、同時死亡の推定の適用可能性があります。戸籍に「推定」の文字が入っているケースもあり、相続登記の登記原因日付に「推定○年○月○日」が入ることがあります。

参考)死亡の日付が「推定」とされている場合に、これを省略して「年月…

シーン2:高齢夫婦の自宅死亡、発見が遅れたケース

ひとり暮らしの高齢者や老夫婦が自宅で亡くなり、数日後に発見されたケースでは、正確な死亡日時が不明になります。これも「推定死亡日」として戸籍に記載されるため、相続登記の手続きが通常と異なります。

シーン3:震災・水害後の相続手続き

大規模な震災・台風・洪水などで家族が亡くなり、誰が先に亡くなったか特定できないケースは珍しくありません。 このような場合、同時死亡の推定が適用されることを前提に相続関係を整理する必要があります。

シーン4:相続関係説明図に「矛盾」が生じている場合

顧客から受け取った資料や相続関係図に、想定外の相続人が記載されている場合、その背景に同時死亡の推定が絡んでいる可能性があります。「なぜこの人が相続人なのか」を必ず確認しましょう。

シーン5:遺産分割協議が難航している場合

同時死亡の推定が適用されると、本来の相続人とは異なる人物(義父母、甥姪、孫など)が相続人に加わります。これが遺産分割協議を複雑にし、合意形成を難しくする原因になります。

参考)【同時死亡したときの相続】死亡の先後が明らかでないときの考え…

このような場合には、弁護士や司法書士との連携を早めに勧めることが、顧客への誠実なサポートとなります。

参考リンク(法務局・不動産相続登記の基本手続き)。

「不動産の所有者が亡くなったときの相続登記の一般的な流れについて、法務局が公式に解説しています。相続人の確定・必要書類の確認に活用してください。」

法務局:不動産の所有者が亡くなった場合の手続き

参考リンク(民法32条の2の詳細解釈・実務上の注意点)。

「同時死亡の推定に関する民法条文の解釈と、実務でよく問題になるポイントを弁護士が詳しく解説しています。H3の「代襲相続との関係」や「推定の覆し方」を深掘りする際にご参照ください。」

東京・大阪の弁護士解説:同時死亡の推定(民法32条の2)解釈整理ノート

参考リンク(複数人死亡時の相続登記手続きの具体例)。

「不動産名義変更を行う司法書士事務所が、同時死亡の推定が絡む相続登記のケーススタディを事例ごとに解説しています。登記実務の参考として最適です。」

あおば司法書士事務所:複数人の死亡前後が不明な場合の相続登記手続き

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