特別縁故者といとこの判例を不動産業で活かす方法

特別縁故者といとこの判例が不動産業で重要な理由

申立期限を1日でも過ぎると、いとこへの5000万円が国庫に消えます。

特別縁故者・いとこ判例のポイント
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判例の概要

東京家裁令和2年6月26日審判では、生計同一・療養看護がなかったいとこ2名に各5000万円が分与されました。通常の親族交際を超えた「密接な関係」が認められるかが鍵です。

申立期限は厳格に3か月

相続人不存在の確定後、わずか3か月以内に申し立てが必要。この期限は延長不可で、経過すると相続財産は国庫に帰属します。

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不動産業者への実務的影響

賃貸物件の賃借人が相続人なく死亡した場合、特別縁故者への財産分与または国庫帰属が賃借権の帰趨に直結。早期に相続財産清算人選任の検討が必要です。

特別縁故者制度の基本概念といとこが対象になる条件

 

特別縁故者とは、法定相続人が存在しない(または全員が相続放棄した)場合に、被相続人と特別に密接な関係にあった人が相続財産の分与を受けられる制度です。 根拠条文は民法958条の3で、①被相続人と生計を同じくしていた者、②被相続人の療養看護に努めた者、③その他被相続人と特別の縁故があった者、の3類型が定められています。ht-tax+1

いとこは法定相続人には含まれません。 つまり、原則としていとこは相続財産を受け取れないのが基本です。 ただし、相続人が存在しないケースでは「特別の縁故があった者」に該当すれば、例外的に財産分与が認められます。これが不動産業従事者として把握しておくべき重要なポイントです。

参考)いとこの遺産は相続できる?原則と例外を解説

判断の基準は一言でいえば「密接さの程度」です。 単なる親族関係というだけでは認められにくく、生計同一・療養看護に準ずる程度の具体的かつ現実的な交渉があったことが必要とされています。 死後の縁故(葬儀・祭祀法事・遺産管理等)も判断要素の一つとして考慮されます。

参考)特別縁故者(いとこ)への財産分与裁判例

東京家裁令和2年審判の判例詳細:いとこに各5000万円が分与された経緯

この判例は、不動産業界でも注目すべき内容を含みます。 被相続人(昭和31年生まれ・平成30年死亡)には妻子がなく、唯一のきょうだいも先に死亡していました。父方いとこ2名(申立人A・B)が特別縁故者を主張した事件です。

裁判所は申立人2名のいずれも「生計同一者」「療養看護者」ではないと明示しながら、「その他特別の縁故があった者」に該当すると認定しました。 具体的には、①幼少期からの「いとこ会」への毎回出席(平成14年〜平成29年、計16回)、②申立人Bとの年3〜4回の個人的な飲食交流、③被相続人による緊急連絡先へのB登録、④申立人Aによる276万円余の葬儀費用負担と喪主対応、⑤申立人Bによる95万円弱の遺品整理費用負担、これらが評価されています。

遺産総額は預金4億6529万円余に加え、宅地・事務所・共同住宅・山林等の不動産も含む規模でした。 そのうち各5000万円(預金残高の各約1割)の分与が認められています。 縁故が「通常の親族交際の範囲を超える」と判断された点が、この審判の核心です。

認められた判例・否定された判例で明暗を分けた3つの要素

判例を比較すると、特別縁故者として認められたケースと否定されたケースで明確な差異が浮かびます。 まず認められた代表的なケースから確認しましょう。

事件 申立人 相続財産 分与額 認否
東京家裁令和2年6月26日 いとこ2名 約5億円超(預金4.6億円+不動産) 各5000万円 ✅認容
東京家裁平成24年4月20日 いとこ(別件) 預金1億4259万円 2500万円(約17.5%) ✅認容
東京高裁平成26年5月21日 いとこ 約3億7875万円 300万円(約0.79%) ✅一部認容
東京高裁平成26年1月15日 従兄弟の養子 非公表 ❌否定

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分与の多寡を分けた要素は主に3点です。 第一に、生前の交流の「密度と継続性」(年3〜4回以上の個人的接触か)。 第二に、死後の具体的行動(葬儀の喪主対応・費用負担・遺品整理など)。 第三に、財産形成への貢献や心理的な依存関係(緊急連絡先の登録、妹の世話の依頼など)の有無です。mc-law+1

認められなかった東京高裁平成26年1月15日のケースでは、「故人の生前における関係は特別のものとは言えない」と判断されました。 一方、遺言を偽造した内縁者が分与を否定されたケース(東京高裁平成25年4月8日)は、不正行為が信義則違反として評価されています。 結論はシンプルで、具体的エピソードの積み重ねが全てです。

参考)【特別縁故者|判例|審判例・実例】

特別縁故者申立の手続きと不動産業従事者が見落としがちな3か月期限

特別縁故者の手続きは、相続財産清算人の選任申立からスタートします。 これは申立人自身が家庭裁判所に請求するもので、費用(予納金等)も申立人が負担します。

参考)特別縁故者とは?認定要件と財産を受け取るまでの流れ

その後の流れを確認しましょう。

  • 公告①:相続財産清算人の選任・相続権主張の公告(2か月)
  • 公告②債権者・受遺者への請求申出公告
  • 公告③:相続人捜索の公告(6か月)
  • 確定後3か月以内:特別縁故者に対する相続財産分与の申立

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ここで重要なのが「確定後3か月以内」という期限です。 この3か月は絶対に延長されません。 民法958条の2第2項に明文規定があり、法律上の救済手段がないまま期限を過ぎると、相続財産は国庫に帰属します。 不動産が含まれる場合、その物件も国に渡ってしまいます。

参考)特別縁故者の申立期間は3か月

不動産業従事者が実務で注意すべき場面があります。 賃貸物件の入居者が相続人なく死亡した場合、その賃借権は特別縁故者への分与か国庫帰属のいずれかとなります。 賃借権の移転は「賃借権の譲渡」には該当しないと解釈されているため、貸主側が承諾拒否・契約解除を主張しても認められない可能性が高いです。 早い段階で弁護士や司法書士に相談しながら相続財産清算人の選任を検討することが、リスク回避の第一歩です。

参考)【特別縁故者への財産分与・国庫帰属は賃借権譲渡に該当しない傾…

不動産業従事者が現場で活用できる独自視点:いとこからの相談を受けたときの初動対応マニュアル

不動産業従事者がいとこからの相談を受ける場面は意外と多いです。 たとえば「亡くなった親族の不動産をどうしたらいいか」「売却できるか」という問い合わせの背景に、相続人不存在のケースが潜んでいることがあります。

そのようなケースに直面したとき、現場でチェックすべき事項は以下の通りです。

  • ✅ 被相続人(亡くなった方)に法定相続人(子・直系尊属・兄弟姉妹・甥姪)がいるか確認
  • ✅ 相続放棄が全員によって行われていないか確認
  • ✅ 遺言書の有無を確認(公正証書遺言は公証役場でオンライン検索可能)
  • ✅ 相続財産清算人の選任が既に申し立てられているか確認
  • ✅ 相続人不存在の確定(公告③の満了)からの経過日数を確認

これらを把握したうえで、3か月の申立期限内であれば弁護士・司法書士への紹介が最優先です。 期限が迫っている場合(残り1か月以内)は、即日専門家につなぐことが求められます。

また、特別縁故者として認められた場合でも、分与された不動産には相続税が課税される点も要注意です。 不動産業従事者としては売却タイミングや評価額の助言も求められる場面が来る可能性があります。これは知っておくと得する情報ですね。 相続税申告の期限(10か月)も並行して確認しながら、税理士との連携を勧めることが実務上の親切対応となります。

参考:いとこへの特別縁故者財産分与の判例が詳しく解説されています(東京家裁令和2年6月26日審判の全文解説)

特別縁故者(いとこ)への財産分与裁判例 | 神楽坂総合法律事務所

参考:特別縁故者と認められた・認められなかった複数の審判例を網羅的に確認できます

特別縁故者|判例|審判例・実例 | 東京・埼玉の理系弁護士

参考:申立期限3か月の厳格な運用と国庫帰属の流れが整理されています

特別縁故者の申立期間は3か月 | オリーブツリー司法書士事務所

参考:特別縁故者への財産分与と国庫帰属が賃借権の移転に与える影響(不動産業者向け実務解説)

特別縁故者への財産分与・国庫帰属は賃借権譲渡に該当するか | 東京・埼玉の理系弁護士

裁判例からみた 相続人不存在の場合における特別縁故者への相続財産分与審判の実務