墓地使用権放棄の手続きと法的注意点
相続放棄しても墓地使用権は消えず、管理義務と費用負担が残ります。
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墓地使用権放棄とは:所有権との根本的な違い
墓地使用権は「所有権」ではなく、あくまで「使用する権利」です。 つまり、不動産の土地所有権とは性質がまったく異なります。
不動産業に関わるプロであれば、「墓地=土地の一種」と捉えがちですが、その土地を売ることも貸すこともできません。 墓地区画の使用者は霊園・寺院と「永代使用」の契約を結んでいるだけで、土地の所有権は管理者側に帰属したままです。
参考)墓地を解約したら永代使用料は返還される?売買はできる?
使用権を放棄するとは、この使用契約を解除して管理者に土地を無償で返還する行為です。 不要になったからといって第三者に売却・譲渡することは法的に不可能であり、契約書のほぼ全てに「無断転売・譲渡は使用権取消」の条項が設けられています。daiichisekizai+1
これが基本です。
| 比較項目 | 土地所有権 | 墓地使用権(永代使用権) |
|---|---|---|
| 法的性質 | 所有権(物権) | 使用権(債権的性質) |
| 売却・譲渡 | ✅ 可能 | ❌ 原則不可 |
| 相続税課税 | ✅ 課税 | ❌ 非課税(祭祀財産) |
| 放棄時の返金 | 売却益あり | 永代使用料は返金なし |
| 相続放棄の影響 | 放棄で手放せる | 放棄しても義務が残る可能性あり |
墓地使用権放棄の手続き:改葬許可証取得から返還まで
使用権を放棄する前に、必ず遺骨の行き先を確保しなければなりません。 遺骨が納骨されている状態では、権利だけを先に返還することは原則できません。
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手続きの流れは以下の通りです。lifedot+1
- 親族・墓地管理者への相談:事前合意を得る
- 改葬先の確保と「受入証明書」取得:新たな納骨先から発行してもらう
- 市区町村役場で「改葬許可申請書」を入手:遺骨が埋葬されている墓地の管轄役所へ
- 埋葬元の管理者から「埋葬証明書」を取得:手数料は300〜1,500円程度
- 役所へ書類を提出し「改葬許可証」を交付してもらう
- 閉眼供養(魂抜き)の実施:僧侶へ依頼
- 墓石を撤去・更地にして墓地管理者へ返還届を提出
改葬許可証は必須です。 これが法律上(墓地・埋葬等に関する法律)義務付けられており、改葬許可証なしに遺骨を移動させると違法行為になります。
参考)【簡単5ステップ】改葬許可証を入手する流れ|墓じまいに必須な…
なお、返還届には「申請者の氏名・区画番号・返還理由」などを記入し、「墓地使用許可証」を持参して管理事務所に出向く必要があります。
参考)墓地を返還してお墓を手放す方法|お墓の売却や解約・返金はでき…
墓地使用権放棄で発生する費用:撤去代30〜50万円の内訳
使用権の放棄は「無料でできる手続き」ではありません。 実際には墓石撤去費用として30万〜50万円が相場で、これは必ず使用者の自費負担となります。
単純に「返します」と申告するだけで完了するイメージを持っていると、後から想定外の出費に直面します。
主な費用項目を整理すると。
- 🪨 墓石の解体・撤去費用:30万〜50万円(業者によっては1㎡あたり約6.5万円)
- 🚛 遺骨の搬送・新納骨先費用:納骨先の形態(永代供養・散骨など)により大きく異なる
- 📋 行政手続き費用:埋葬証明書の発行手数料など(300〜1,500円程度)
- 🙏 閉眼供養(魂抜き)の僧侶へのお布施:3万〜10万円が目安
さらに、永代使用料(購入時に支払った費用)は返金されません。 平成19年の裁判判例でも「使用権を放棄しても永代使用料の返却義務はない」と明確に判示されています。 墓石を建てる前の段階で解約した場合でも同様の結論です。
ただし例外もあります。 みどりが丘公園などの一部公営墓地では、「墓地使用許可日から2年以内、かつ使用開始前(墓標等の設置前)の返還に限り、墓地使用料の半額を返還する」という規定を設けているケースもあります。契約内容の確認が条件です。
参考)墓地の返還
墓地使用権放棄と相続放棄:不動産業者が混同しやすい落とし穴
「相続放棄したのだから墓の管理義務もなくなる」と考えると、大きなミスにつながります。 墓地(永代使用権)は民法上の祭祀財産として扱われ、通常の相続財産とは区別されます。
つまり、相続放棄をしても墓地使用権の管理義務・使用契約は残る可能性があります。kokorono-ohaka+1
逆に言えば、遺産相続を放棄したい人が「でも先祖のお墓は守りたい」という場合、墓地だけは別に継承できます。 祭祀財産は相続放棄の対象外だからです。
参考)墓地の名義変更手続き│必要書類や費用、名義人の決め方を解説
この点は、不動産業者として相続案件を扱う際の確認ポイントになります。
- ✅ お墓・仏壇などの祭祀財産は相続放棄しても継承可能
- ✅ 管理費(年間5,000〜20,000円が相場)の支払い義務は継続する可能性がある
- ⚠️ 管理料を3〜5年滞納すると墓地使用契約の解除事由になる
- ⚠️ 使用者が所在不明の場合、公営墓地では裁判所への公示送達手続きが必要になる
相続案件で不動産を売却しようとする際、土地の登記記録だけでなく、その土地や近接地に墓地が絡んでいないかを確認することが重要です。
不動産売買と墓地使用権放棄:告知義務と元墓地の取り扱い
不動産業者が最も注意すべき点の一つが、「元墓地だった土地」の売買における告知義務です。
墓地の使用権を放棄し、墓石を撤去し、地目を変更して宅地として売却するケースがあります。このとき、不動産業者は買主に「元墓地であること」を説明する義務を負います。 土地の過去の利用状況は法務局で調べられるため、事実を隠すことはできません。
元墓地であることを十分に説明しないまま売却すれば、買主から「騙して販売した」として訴訟リスクが生じます。 これは不動産業者にとって大きな法的・経営的リスクです。
また、墓地だった土地を売却するには次の手順が必要です。
なお、土地に接してお墓がある不動産を扱う場合、通行権の設定(売却後も墓参りのため敷地内を通行できる権利)を買主と取り決める必要があるケースもあります。 こうした通行権付き物件は需要が限られるため、売却期間の長期化・価格低下に直結します。
参考)【専門家解説】墓地付き相続不動産の売却:3つの方法と注意点
不動産業従事者として、墓地に関連する案件では登記調査と告知義務の徹底が欠かせません。
以下の参考リンクも確認しておくと、実務で役立ちます。
墓地区画の解約・永代使用料の返還可否・売買の法的整理について詳しく解説。
墓地を解約したら永代使用料は返還される?売買はできる?|お墓マガジン
使用権の承継・失効・管理料滞納時の法的手続きについて全日本墓園協会が解説。
FAQ 6.使用権の承継や失効などに関する問題|全日本墓園協会
墓地付き相続不動産の売却における3つの方法と不動産業者の注意点。
墓地に近接する取引物件の調査義務の範囲について、不動産業者向けに解説。
「墓地」に近接する取引物件の調査義務の範囲|公益財団法人不動産流通推進センター

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