固定資産課税台帳の閲覧を誰でもできる条件と注意点
他人の土地の固定資産評価額を無断で取得すると、30万円以下の過料を受けることがあります。
固定資産課税台帳の閲覧とは何か:基本的な仕組みを理解する
固定資産課税台帳とは、市区町村が固定資産税・都市計画税を課税するために整備している公的な台帳です。土地・家屋・償却資産のそれぞれについて、所有者情報・所在・地積(床面積)・評価額・課税標準額などが記録されています。
不動産業従事者にとっては、取引対象物件の評価額や課税状況を確認するための重要な情報源です。ただし、この台帳は「誰でも自由に見られる公開情報」ではありません。地方税法第382条の2に基づいて、閲覧できる者の範囲が明確に定められています。
つまり「台帳は公的なもの」と「誰でも閲覧できる」は別の話です。
固定資産課税台帳に記載されている主な情報は以下のとおりです。
- 土地:所在・地番・地目・地積・評価額・課税標準額
- 家屋:所在・家屋番号・種類・構造・床面積・評価額・課税標準額
- 償却資産:資産の種類・取得価額・評価額
- 所有者(納税義務者)の氏名・住所
これらの情報は固定資産税の算定根拠となるもので、誤りがあれば課税額に直接影響します。不動産取引の現場では、売買価格の妥当性確認や賃料設定の参考にも活用されます。これは使えそうです。
なお、固定資産課税台帳と「名寄帳(なよせちょう)」は別物です。名寄帳は同一の納税義務者が同一市区町村内に所有する全資産をまとめたもので、こちらも閲覧申請が必要です。この違いを混同しているケースが現場では少なくありません。
固定資産課税台帳の閲覧が誰でもできるかどうか:対象者の範囲と条件
地方税法第382条の2では、固定資産課税台帳の閲覧ができる者として以下を定めています。
- 固定資産税の納税義務者:自分が所有する固定資産に関する記載事項を閲覧できる
- 借地人・借家人(賃借人):借りている土地・家屋に係る固定資産の情報を閲覧できる
- これらの代理人:委任状を持参した代理人も閲覧可能
納税義務者が基本です。
「誰でも閲覧できる」という誤解が生まれる理由のひとつは、固定資産評価証明書との混同です。評価証明書は各自治体の窓口で取得できますが、やはり取得できる者の範囲は同様に限定されています。不動産業者が第三者の物件情報を何の根拠もなく取得しようとすると、窓口で断られるだけでなく、場合によっては不正取得として問題になります。
借地人・借家人が閲覧できる範囲は限定的です。閲覧できるのは「自分が借りている土地または建物」に関する情報のみであり、同じ建物内の他の区画の情報などは閲覧できません。これが条件です。
閲覧申請の際は、本人確認書類と閲覧の目的・理由を示す書類の提示が求められます。自治体によっては申請書の様式が異なるため、事前に各市区町村のウェブサイトで確認しておくことが重要です。
固定資産課税台帳の閲覧を不動産業者が行う場合の特例と手続き
不動産取引の実務では、媒介業務を担う宅地建物取引業者(宅建業者)が取引対象物件の固定資産情報を確認したいケースが頻繁に発生します。この場面でのポイントを整理します。
宅建業者は原則として「第三者」扱いとなるため、地方税法上の閲覧権限は持っていません。ただし、多くの自治体では条例や運用規定に基づき、媒介契約書や委任状などを提出することで、取引対象物件に限って閲覧を認める運用を行っています。
自治体によって運用が異なります。
具体的に必要な書類の例を示します。
- 媒介契約書(売主または買主との契約であることを証明するもの)
- 依頼者(所有者または賃借人)からの委任状
- 宅地建物取引業者証明書または宅建業免許証のコピー
- 閲覧申請書(各自治体の様式)
- 申請者本人の身分証明書
重要なのは、依頼者(所有者等)からの委任状が必須である点です。「媒介業務中だから当然閲覧できる」という認識は誤りで、委任状なしに業者が独自に閲覧申請すると拒否されます。
さらに注意すべき点があります。閲覧で得た情報は、その取引目的にのみ使用することが前提です。取得した固定資産評価額を別の物件の価格交渉に流用したり、無関係な第三者に伝えたりすることは、個人情報保護法や守秘義務の観点から問題となります。
実務上は、所有者に事前に承諾を得て評価証明書の提供を依頼するか、委任状を取り付けてから閲覧申請するかのどちらかが安全です。手間はかかりますが、法的リスクを避けるための必須ステップといえます。
固定資産課税台帳の閲覧で得た評価額と実際の取引価格の関係:不動産業者が知るべき独自視点
固定資産課税台帳の閲覧によって得られる「固定資産評価額」は、不動産取引の現場でどこまで参考になるのでしょうか?
固定資産評価額は、総務省が定める「固定資産評価基準」に従って3年に1度(評価替えの年度)に見直される行政上の評価です。一般的に、土地の固定資産評価額は公示価格(地価公示)の約70%水準が目安とされています。つまり評価額に約1.43を掛けると、おおよその時価の目安になるわけです。
ただし、これはあくまで目安です。
立地や市況によって実際の取引価格は大きく乖離します。特に都市部の人気エリアでは公示価格を大幅に超える取引が珍しくなく、評価額の1.43倍よりも遥かに高値で取引されるケースがあります。逆に過疎地では評価額を下回る取引も起こります。
不動産業者がこの数字を使う際の注意点を整理します。
- 評価額はあくまで課税の基準であり、市場価格とは別物と認識する
- 評価替え年度(直近は2024年度)以外は前回評価が継続されるため、市場変動を反映しない
- 土地・建物の合計評価額から相続税路線価・公示価格への換算に使う際は、それぞれの補正率が異なることを確認する
- 固定資産評価額は売買契約書の登録免許税・不動産取得税の算定基礎にもなるため、正確な数字を把握しておくことが取引コスト計算に直結する
登録免許税の計算では「固定資産評価額×税率」が基本式です。所有権移転登記の場合、土地は評価額の1.5%(2026年3月末まで軽減措置適用)、建物は評価額の2.0%(または軽減税率0.3%)が標準です。
これは取引コストに直接影響します。
たとえば評価額5,000万円の土地を取引する場合、登録免許税は75万円(5,000万円×1.5%)になります。この数字を事前に把握しておくことで、買主への資金計画の説明精度が高まります。固定資産課税台帳の閲覧は、単なる確認作業ではなく、取引コスト試算にも役立つ実務ツールとして活用できます。
固定資産課税台帳の閲覧手続きの実際:窓口・オンライン・費用の詳細
固定資産課税台帳の閲覧申請は、原則として物件の所在する市区町村の役所(税務課・資産税課など)窓口で行います。具体的な手順を確認します。
【閲覧の流れ】
- 事前確認:各市区町村のウェブサイトまたは電話で必要書類・受付時間を確認する
- 書類準備:申請書、本人確認書類、委任状(代理人の場合)、媒介契約書等を揃える
- 窓口訪問:税務課・資産税課の窓口に出向き申請書を提出する
- 審査・確認:担当者が申請者の適格性・必要書類を確認する(数分〜15分程度)
- 閲覧実施:窓口またはコーナーで台帳の記載内容を確認する(メモ・写真撮影の可否は自治体による)
手続き自体はシンプルです。
閲覧は無料の自治体がほとんどですが、証明書(固定資産評価証明書・公課証明書など)の発行には手数料がかかります。手数料は自治体により異なりますが、1件あたり200〜400円程度が一般的です。
オンライン申請については、現時点では一部の大規模自治体(東京都特別区の一部など)でオンライン予約や申請書のダウンロードが可能になっていますが、閲覧自体はまだ対面が原則です。完全オンライン化は今後の課題となっています。
閲覧できる時間帯も確認が必要です。多くの市区町村では平日の8:30〜17:15(または17:00)が窓口受付時間で、閉庁日(土日祝・年末年始)は対応していません。不動産取引では期日が発生するケースが多いため、余裕を持ったスケジュールで動くことが重要です。
また、東京都内の物件を扱う場合、都税事務所(23区内の土地・家屋は都が課税)での手続きになる点も覚えておきましょう。市区町村税である固定資産税と、都税である固定資産税(23区内)は窓口が異なります。これだけは例外です。
総務省|固定資産税について(固定資産評価基準・閲覧制度の根拠法令)
固定資産税制度の根拠法令や評価基準が確認できる総務省の公式ページです。閲覧制度の法的根拠(地方税法第382条の2)を確認したいときの参考になります。
国土交通省|不動産取引に関連する各種情報(路線価・公示価格との関係)
固定資産評価額と公示価格・路線価の関係性、不動産取引における価格の位置付けについて確認できる国土交通省のページです。評価額から市場価格を推計する際の参考になります。

