住宅金融支援機構の金利推移と今後の見通し
金利が上がっているのに、フラット35の利用者数は増加している。
住宅金融支援機構のフラット35金利推移:過去10年のデータを読む
住宅金融支援機構が提供する「フラット35」は、全期間固定金利型の住宅ローンです。その金利は市場の長期金利(10年国債利回り)に連動して毎月見直されます。不動産業に携わる方なら、この仕組みを理解しているだけで顧客への説明精度が大きく変わります。
過去10年の推移を振り返ると、2016年1月に日銀がマイナス金利政策を導入した直後、フラット35(返済期間21年以上・融資率9割以下)の金利は1.08%という過去最低水準に到達しました。これはそれ以前の2013年水準(約2.0%前後)と比べると、実に半分近くまで下がったことを意味します。
その後、金利は緩やかに上昇と下降を繰り返しながら、2022年後半から明確な上昇トレンドに入りました。2024年には1.8~1.9%台で推移し、2025年に入ると2.0%を超える局面も見られています。
つまり「超低金利の時代は終わりつつある」ということです。
| 時期 | フラット35金利の目安(融資率9割以下・21年以上) | 背景 |
|---|---|---|
| 2016年2月 | 1.08%(過去最低) | 日銀マイナス金利政策導入 |
| 2019年 | 1.1〜1.3% | 超低金利環境の継続 |
| 2022年 | 1.5〜1.7% | 長期金利の緩やかな上昇開始 |
| 2024年 | 1.8〜1.95% | 日銀政策修正・YCC撤廃 |
| 2025年 | 2.0%前後 | 利上げ継続の影響が波及 |
この10年間の変化幅は約1%ほどに見えますが、3,000万円の借入で35年固定の場合、金利1%の差は総返済額で約200万円以上の差になります。東京都内で中古マンションの仲介手数料1件分を超える金額です。
不動産業従事者にとって、この数字を顧客に具体的に示せるかどうかが、信頼感の差を生みます。
参考リンク(住宅金融支援機構の公式金利データ)。
住宅金融支援機構金利の決まり方:長期金利との連動を理解する
フラット35の金利がどのように決まるかを理解することは、顧客への説明で非常に重要です。変動金利(民間銀行の多くが採用)が「短期プライムレート」を基準にするのに対し、フラット35は10年物国債の利回りを基準にしています。
10年国債の利回りが上がれば、翌月のフラット35金利も上昇するのが基本パターンです。
日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、同年7月には政策金利を0.25%に引き上げました。さらに2025年1月には0.5%への追加利上げが実施されています。これにより長期金利も連動して上昇し、フラット35の金利もじりじりと押し上げられています。
この連動の仕組みを整理するとこうなります。
- 日銀が政策金利を引き上げる → 短期金利が上昇
- 将来のインフレ期待が高まる → 長期金利(10年国債利回り)も上昇
- 住宅金融支援機構が参照する金利水準が上がる → フラット35の金利が翌月に上昇
- 固定金利ローンの月々の返済額が増える → 顧客の借入可能額が実質的に縮小
金利上昇は顧客の購買力に直結します。これは痛いですね。
たとえば借入3,500万円・35年返済のケースで計算すると、金利1.5%なら月々の返済額は約107,000円ですが、金利2.0%では約116,000円に増加します。月に約9,000円の差は年間10万円超の負担増です。
不動産業従事者が「今の金利水準」をリアルタイムで把握しておくことは、顧客が検討している物件の返済シミュレーションを即座に提示するための基礎になります。住宅金融支援機構の公式サイトでは毎月最新金利が公開されているので、月初に確認する習慣をつけることをおすすめします。
参考リンク(長期金利の動向を確認できる財務省のデータ)。
住宅金融支援機構金利と変動金利の比較:顧客提案で使える実務ポイント
「フラット35は金利が高いからおすすめしにくい」と感じている不動産業従事者は少なくありません。しかし、変動金利との比較は単純ではありません。
2025年時点のフラット35の主力金利が2.0%前後であるのに対し、民間銀行の変動金利は0.3~0.6%台の商品も残っています。この差だけを見ると、変動金利が圧倒的に有利に見えます。
ただし、変動金利には「5年ルール」と「125%ルール」があります。
- 🔄 5年ルール:金利が上がっても、返済額は5年間据え置かれる
- ⚠️ 125%ルール:返済額の増加は従来の125%が上限
- 💣 未払い利息の発生リスク:返済額が抑えられているだけで、利息は確実に積み上がる
つまり「返済額が増えていないから安心」は誤解です。
実際に金利が急上昇した局面では、元本がほとんど減らずに未払い利息が膨らむ「逆ざや状態」が起きることがあります。このリスクは特に低金利期に多額の変動金利ローンを組んだ顧客に生じやすく、今後の金利上昇局面では顕在化する可能性があります。
フラット35の強みは「全期間金利が確定している」という計画安定性です。収入が安定しているがライフイベント(子どもの教育費、親の介護など)で将来支出が増える可能性がある顧客層には、フラット35の確実性が刺さります。
顧客の属性(年収、勤続年数、家族構成、将来の収入見通し)に応じて金利タイプを使い分ける提案が、信頼される不動産業従事者の条件です。これが基本です。
住宅金融支援機構の金利推移から読む2025年以降の見通し
2025年以降のフラット35金利の見通しは、日銀の利上げペースと国内外の景気動向に大きく左右されます。現時点(2026年2月)で確認できる情報をもとに整理します。
日銀は2025年1月に政策金利を0.5%に引き上げました。これはリーマンショック前の2008年以来、約17年ぶりの水準です。市場では2025年後半から2026年にかけて、さらなる追加利上げを予測する声もあります。
長期金利に目を向けると、10年国債利回りは2025年前半に1.5%を超える局面があり、フラット35の金利は2.0~2.3%のレンジで推移する可能性があります。
- 📌 楽観シナリオ:インフレが落ち着き追加利上げが停止 → フラット35金利は2.0%前後で安定
- 📌 中立シナリオ:緩やかな利上げが継続 → 2025年末までに2.2~2.3%へ上昇
- 📌 悲観シナリオ:インフレ再加速・国債需給の悪化 → 2.5%超も視野に入る
金利の先読みは難しいですね。
不動産業従事者として重要なのは、「金利は今後上がるかもしれない」という前提で顧客への提案シナリオを複数用意することです。たとえば「今の金利でフラット35を固定した場合」と「変動金利で借りて5年後に金利が1%上昇した場合」を並べた比較シミュレーションを見せるだけで、顧客の意思決定を大きく助けられます。
参考リンク(日銀の政策金利と経済見通し)。
住宅金融支援機構の金利推移が顧客の購買行動に与える意外な影響
ここからは、あまり語られない視点です。金利が上昇すると「住宅購入が冷え込む」と考えるのが業界の常識ですが、実際には「駆け込み需要の発生」というまったく逆の動きが起きることがあります。
これが記事冒頭の一文につながります。「金利が上がっているのにフラット35の利用者が増えている」理由がここにあります。
住宅金融支援機構のデータでも、金利上昇の局面では「今後さらに上がる前に固定しておきたい」という顧客心理が働き、フラット35の申込件数が一時的に増加するパターンが観察されています。
- 📊 2022年の利上げ局面:フラット35の申込件数が前年比で増加
- 📊 固定金利選択比率:低金利期は20〜30%台だったが、2024年は40%超に上昇(業界推計)
- 📊 金利上昇で変動→固定への借換え検討者も増加傾向
これは使えそうです。
この「金利上昇=買い控え」という単純な図式を疑うことが、不動産業従事者にとっては商機の見逃しを防ぐことに直結します。顧客が「金利が上がっているから様子見」と言ってきたとき、「今固定しておくことで金利リスクをゼロにできる」という提案ができれば、成約率の向上につながります。
また、フラット35には「フラット35S」という省エネ・耐震性能に優れた住宅向けの金利優遇制度があり、当初10年間は最大0.5%の金利引き下げが適用されます。適用条件を満たす物件を扱っている場合、この制度を活用することで実質的な金利負担を大幅に下げた提案が可能です。
顧客が新築・中古を問わず省エネ基準適合住宅を検討しているなら、まずフラット35Sの適用可否を確認することが先決です。
参考リンク(フラット35Sの金利優遇制度の詳細)。
住宅金融支援機構|フラット35S(金利Aプラン・Bプランの条件と優遇幅)

フラット35対応 木造住宅工事仕様書[設計図面添付用]2023年版
