分割実行の住宅ローンで銀行が融資を止める条件と対策
分割実行中に1回でも返済が遅れると、残りの全融資枠がその場でキャンセルされることがあります。
分割実行とは何か:住宅ローンの基本的な仕組み
分割実行とは、新築工事の進捗に合わせて住宅ローンを複数回に分けて受け取る融資方式です。通常の住宅ローンが引渡し時に一括で実行されるのに対し、分割実行では「着工時・上棟時・完成時」などのタイミングで段階的に融資が行われます。
建物が完成する前から資金が動く。これが分割実行の最大の特徴です。
工務店や建設会社は工事の各段階で費用を必要とするため、施主が一括払いできない場合、この仕組みが非常に重要になります。不動産業者としては、施主に対してこの仕組みを正確に説明できるかどうかが、トラブル回避の分かれ目になります。
一般的な分割実行のタイミングは以下の通りです。
- 🏗️ 着工時:工事費用全体の約30%を受け取るケースが多い
- 🏠 上棟時:全体の約30〜40%を受け取る
- 🔑 引渡し完成時:残りの30〜40%を受け取る
この比率は銀行によって異なります。つまり事前確認が条件です。
分割実行が選ばれる理由は、施主側の資金負担を分散できる点にあります。完成前の建物に対して全額を一括で用意するのは、多くの施主にとって現実的ではありません。分割実行により、施主は工事の進行に合わせて少しずつ借り入れることが可能になります。
分割実行で銀行が融資を止める主な条件と注意点
融資が途中で止まるリスクは、実は想像以上に身近なところに潜んでいます。
銀行が分割実行中に融資を停止または取り消す主なケースは次の通りです。
- 💥 返済遅延が1回でも発生した場合:分割実行中の返済(利息のみの場合が多い)が1日でも遅れると、残融資枠を即座にキャンセルする銀行があります
- 📉 施主の信用情報が変化した場合:金消契約後でも、施主が転職・失業・他のローン延滞などで信用情報が悪化した場合、次回の分割実行が見送られるケースがあります
- 🏚️ 工事が著しく遅延した場合:当初のスケジュールから大幅に工事が遅れ、融資実行の根拠となる「工事進捗確認書」が提出できなくなると、実行停止になることがあります
- 📝 建築確認済証・検査済証が取得できない場合:法的に問題のある変更が工事中に発生し、確認書類が揃わないと融資が止まります
特に怖いのが信用情報の変化です。金消契約を結んだ後でも、銀行は定期的に施主の状況確認を行う場合があります。不動産業者として施主に対し「ローン審査通過後も転職・クレジットカードの新規申込は控えること」を伝えられているかどうかが重要です。
これは知らないと損する情報です。
工事が止まって資金不足になるケースでは、最終的に施主が自己資金で数百万円を補填しなければならない事態になることもあります。不動産業者としては、施主への事前説明責任という観点からも、融資停止リスクを把握しておく必要があります。
分割実行の手数料と金利:銀行ごとの違いを比較する
分割実行は「回数が増えるほど手数料も増える」が基本です。
銀行によって、分割実行に対する手数料の取り扱いは大きく異なります。主なパターンをまとめると以下の通りです。
| 銀行タイプ | 手数料の扱い | 備考 |
|---|---|---|
| メガバンク(三菱UFJ・三井住友など) | 1回の実行ごとに約5,500円〜11,000円の手数料 | 3回実行で最大33,000円の追加費用 |
| 地方銀行・信用金庫 | 無料〜数千円程度 | 銀行によって大きく差がある |
| フラット35(住宅金融支援機構) | 分割実行は原則2回まで可能、手数料は別途発生 | 引渡し前融資には条件がある |
手数料だけの話ではありません。
金利の適用タイミングも銀行によって異なります。たとえば「融資実行時点の金利が適用される」銀行と「金消契約時点の金利が固定される」銀行では、金利上昇局面において大きな差が出ます。2024年以降、日本銀行の金融政策変更により変動金利が動き始めた状況を踏まえると、この違いは施主にとって無視できないリスクになりえます。
たとえば、3,000万円のローンで金利が0.2%上がった場合、35年返済で総額100万円以上の差が出るケースもあります。これは使えそうです。
不動産業者として施主に銀行を紹介する場合、「分割実行の手数料・金利適用タイミング・実行回数の上限」の3点を必ず比較して提示することが、後のクレーム防止につながります。
分割実行の融資スケジュール管理:工務店・施主・銀行の三者調整
三者の連絡がズレると、工事が止まります。
分割実行で最もトラブルが起きやすいのが、工事の進捗と融資のタイミングのズレです。銀行が融資を実行するためには「工事進捗報告書」や「現地確認」などの書類・手続きが必要で、これが完了しないと翌回の融資が実行されません。
一方で工務店は、前の入金がなければ次の工程に進みません。
つまり「銀行の書類が揃わない→融資が遅れる→工務店が工事を止める→スケジュール全体が遅延する」という連鎖が実際に起きています。不動産業者が仲介・売主として関与する案件では、この三者調整の失敗によって引渡し日が遅延し、買主(施主)から損害賠償を請求されるリスクも存在します。
スケジュール管理が原則です。
具体的な対策として、以下の管理ポイントを押さえておくと安心です。
- 📅 融資実行予定日の2週間前には書類準備を開始する
- 📞 銀行担当者・工務店の現場監督・施主の三者LINEグループなどで進捗を共有する
- 📄 工事進捗確認書のフォーマットを銀行から事前に入手し、工務店に渡しておく
- 🗓️ 各分割実行の「最遅融資依頼日」を逆算してカレンダーに落とし込む
この管理を怠ると、1回の遅延が最終的に引渡し全体を1〜2ヶ月遅らせることもあります。厳しいところですね。
分割実行を不動産業者が活用すべき独自の視点:つなぎ融資との比較と選択基準
つなぎ融資より分割実行が有利なケースが、実は年間を通じて増えています。
多くの不動産業者は「建築中の資金繰り=つなぎ融資」と考えがちです。しかし、つなぎ融資は金利が年2〜4%程度と高く、融資期間中は利息のみを支払い続ける必要があります。3,000万円のつなぎ融資を6ヶ月間利用した場合、利息だけで約30〜60万円の出費になります。
つなぎ融資が常に最適とは限りません。
分割実行であれば、住宅ローンと同じ低金利(現状では変動で0.3〜0.6%台)が適用されるため、同じ3,000万円・6ヶ月でも利息負担を大幅に抑えられます。ただし分割実行を選ぶには、①銀行が分割実行に対応していること、②工務店が銀行の実行スケジュールに同意していること、の2条件が必要です。
つなぎ融資と分割実行の主な違いを整理します。
| 比較項目 | つなぎ融資 | 分割実行 |
|---|---|---|
| 金利 | 年2〜4%程度(高め) | 住宅ローンと同水準(低め) |
| 手続きの手間 | 住宅ローンと別に契約が必要 | 住宅ローン1本で完結 |
| 銀行の対応状況 | 多くの銀行が対応 | 対応銀行が限られる |
| 書類・確認 | 比較的シンプル | 進捗確認書類が都度必要 |
施主にとって金利負担が大きく違う。これが重要です。
不動産業者として物件を紹介する際、施主が新築注文住宅を希望している場合は、早い段階で「つなぎ融資か分割実行か」の選択肢を提示することが差別化につながります。施主に対してこの比較情報を提供できる業者は、まだ少ないのが実情です。
住宅金融支援機構の「フラット35」では公式サイト上で分割実行の条件を詳しく説明しており、参考リンクとして活用できます。
フラット35の分割実行(中間払い)に関する公式説明:実行条件・回数・必要書類が詳細に記載されています。
住宅金融支援機構 フラット35 中間払い(分割実行)について
分割実行で不動産業者が見落としがちな抵当権設定のタイミング問題
抵当権は「最初の融資実行時」に設定されます。
分割実行では、1回目の融資が実行されると同時に、融資総額(全額)に対して抵当権が設定されるのが一般的です。つまり、1回目で1,000万円しか受け取っていなくても、3,000万円の抵当権が土地・建物に設定される形になります。
これは意外ですね。
この仕組みを理解していないと、施主から「なぜまだ受け取っていない分まで抵当権がついているのか」というクレームが発生することがあります。不動産業者として金消契約前の説明段階でこの点を伝えておくと、後のトラブルを防げます。
また、土地と建物を別々に購入・建築する場合(土地先行取得型)では、土地のみに先行して抵当権を設定するケースもあります。この場合、建物完成後に追加で建物にも抵当権設定登記が必要となり、登記費用(司法書士報酬含む)が2回発生することがあります。費用は1回あたり数万円〜10万円程度になるため、施主への事前告知が欠かせません。
登記コストは見落としやすい出費です。
さらに、建物完成前は「未完成建物」として抵当権設定ができない銀行もあり、土地のみへの抵当権設定で融資をつなぐ形を取ることがあります。このとき、土地の担保評価額が融資総額をカバーできるかどうかも銀行審査の重要な判断材料になるため、土地の路線価・公示地価を事前に確認しておくことが必要です。
登記タイミングと費用の両方を把握しておくことが条件です。
国税庁の路線価図・評価倍率表:土地担保評価の事前確認に役立ちます。
国税庁 路線価図・評価倍率表(公式)

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