法定地上権の成立要件と競売での判断基準を徹底解説

法定地上権の成立要件と競売・抵当権設定での実務的判断

建物が競売で落札された後も、前の所有者が「法定地上権があるから出ていかない」と主張した事例が、全国で年間数百件以上報告されています。

📋 この記事の3つのポイント
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法定地上権の4つの成立要件

抵当権設定時・競売時の2段階チェックが実務では不可欠。要件を1つでも欠くと法定地上権は成立しません。

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更地・建物新築ケースの落とし穴

抵当権設定時に更地だった土地に後から建物を建てると法定地上権は原則不成立。競売後に深刻なトラブルになるケースがあります。

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判例が示す「同一人所有」の意外な解釈

共有・一番抵当・後順位抵当が絡む複雑ケースでは、最高裁判例が現場の常識と異なる結論を出すことがあります。

法定地上権とは何か:成立要件の基本4条件

 

法定地上権は、民法388条に定められた制度です。土地と建物が同一人の所有だったところに抵当権が設定され、競売によって土地と建物が別々の所有者に分かれた場合、建物の所有者が土地を使い続けられるよう、自動的に地上権が発生する仕組みです。

要件を1つでも欠くと成立しません。実務でのチェックリストとして以下の4条件を必ず確認しましょう。

  • ① 抵当権設定時に土地の上に建物が存在していること
  • ② 抵当権設定時に土地と建物が同一人の所有であること
  • ③ 土地または建物の一方、もしくは双方に抵当権が設定されたこと
  • ④ 競売によって土地と建物が別々の所有者に帰属したこと

4条件が条件です。

特に現場で見落とされやすいのが①と②の「抵当権設定時点」という縛りです。競売時点ではなく、あくまで抵当権を設定した瞬間の状態が基準になります。これは意外と忘れがちなポイントで、後述するトラブルの多くがここに起因します。

法定地上権が成立した場合、地上権の存続期間は当事者の合意がなければ民法265条の規定(最低30年)が適用される点も覚えておきましょう。30年間、土地を利用されることになるわけですから、不動産取引における影響は非常に大きいです。

法定地上権の成立要件:「建物の存在」を巡る判例と実務

抵当権設定時に建物が存在しているかどうか、これが実務で最も争いになる要件です。

判例上、「建物」として認められるには、屋根・柱・壁があり、土地への定着性があれば足りるとされています(最判昭和36年2月10日)。未完成の建物であっても、建前(骨組み)程度の状態で抵当権が設定されていれば、法定地上権が成立しうるとした判例もあります。これは使えそうです。

一方、基礎工事だけで抵当権を設定した場合は建物と認められないことが多く、建物として登記されていなくても成立するケースがある反面、登記があっても実体がなければ成立しないケースもあります。

状況 法定地上権の成否 根拠
抵当権設定時:地(建物なし) ❌ 不成立 要件①を満たさない
抵当権設定時:建前(骨組み)あり ✅ 成立しうる 最判昭和36年2月10日
抵当権設定時:基礎工事のみ ❌ 原則不成立 「建物」要件不充足
未登記建物あり ✅ 成立しうる 登記は要件ではない

現地調査の段階で「骨組みだけある土地」を見たとき、それが抵当権設定前からの建前なのか、設定後に建てられたものなのかを登記簿と照合する必要があります。日付の確認が必須です。

不動産調査の際は、登記情報だけでなく固定資産税の課税台帳や航空写真の過去データも活用すると、建物の存在時期を補強する証拠になります。法務局やGoogle Earthの過去画像は無料で確認できます。

法定地上権の成立要件:「同一人所有」が崩れるケースと共有の問題

抵当権設定時に土地と建物が「同一人」の所有でなければ、法定地上権は成立しません。同一人所有が原則です。

ここで実務上の難問が生じます。共有の場合です。

土地がAとBの共有で、建物がAの単独所有の場合、AがA持分の土地に抵当権を設定して競売になったとき、法定地上権は成立するでしょうか?

最高裁は、土地共有の場合は法定地上権が成立しないという立場をとっています(最判昭和29年12月23日)。理由は、B持分の土地まで地上権の負担を負わせるのはBにとって不当だからです。厳しいところですね。

  • 土地がAB共有・建物がA単独所有 → A持分に抵当権設定 → 法定地上権不成立
  • 土地がA単独所有・建物がAB共有 → 土地に抵当権設定 → 法定地上権成立(最判平成6年4月7日)
  • 土地・建物ともにAB共有 → 法定地上権不成立が原則

建物が共有で土地が単独所有のケースでは成立するという非対称な結論になります。意外ですね。

実務では、共有物件の競売案件に入札する際、この判例上のルールを知らないと「法定地上権があると思っていたのに、実際は存在しなかった」または「なかったと思っていたら存在した」という状況に陥るリスクがあります。入札前に必ず権利関係の整理を行い、弁護士や司法書士への事前確認を1アクションとして組み込む習慣が重要です。

法定地上権の成立要件:一番抵当・後順位抵当が絡む複雑ケース

一番抵当権設定時と競売時で建物の状態が変わっているケースは、特に判断が難しくなります。

典型的なシナリオがこちらです。

  1. 土地に一番抵当権設定(この時点では更地)
  2. その後、土地上に建物を建築
  3. 建物に二番抵当権設定
  4. 競売によって土地と建物が別々の所有者に

この場合、土地の一番抵当権者は「抵当権設定時に建物がなかった」という理由で法定地上権の不成立を前提に競売価格を評価しています。もし法定地上権が成立してしまうと、土地の価値が大幅に下がり、一番抵当権者が不当に不利益を被ることになります。

最高裁はこのケースについて、法定地上権は成立しないと判断しています(最判昭和47年11月2日)。一番抵当権者保護の観点からです。

ところが、後順位抵当権(二番抵当)が実行された場合はどうでしょうか?最高裁は別の判断を下しています。二番抵当権設定時には建物が存在しており、かつ土地と建物が同一人所有であるため、二番抵当の実行による競売では法定地上権が成立しうるという結論になります(最判平成2年1月22日)。

つまり同じ土地でも、どの抵当権が実行されたかによって法定地上権の成否が変わります。複雑ですね。

実行された抵当権 抵当権設定時の建物状況 法定地上権
一番抵当(土地) 更地 ❌ 不成立
二番抵当(建物) 建物あり(一番設定後に建築) ✅ 成立しうる

競売物件を調査する際は、競売申立ての原因となった抵当権が何番目の抵当権なのか、そして各抵当権の設定時点で建物が存在したかどうかを時系列で整理することが必要です。裁判所の競売資料(3点セット)をもとに登記簿の甲区・乙区を突き合わせる作業が基本です。

法定地上権の成立要件:不動産業従事者が実務で見落としやすい盲点

実務経験者でも見落としやすい盲点が2つあります。1つ目は「建物の滅失と再築」の問題です。

抵当権設定時に建物が存在していたが、その後建物が滅失し、競売前に再築された場合、新しい建物について法定地上権は成立するでしょうか?

判例は、旧建物を基準に法定地上権の成否を判断します(最判昭和52年10月11日)。つまり旧建物について成立要件を満たしていれば、新築建物についても法定地上権が成立します。ただし、地上権の内容(存続期間・地代)は旧建物を基準に定められます。

旧建物が小さな木造平屋で新建物が大きなRC造マンションになっていても、地上権の範囲は旧建物の敷地の範囲に限られるという点は重要です。これが実務上のトラブルにつながるケースがあります。

2つ目の盲点は「借地権との競合」です。

土地所有者が第三者に土地を賃貸し、その後その第三者が建物を建て、さらにその建物に抵当権が設定されたケースでは、そもそも土地と建物の所有者が異なるため、法定地上権の成立要件②「同一人所有」を満たしません。この場合、競売後の建物所有者は土地を使う権限がなくなる可能性があり、問題は深刻です。

  • 土地:X所有 → Yに賃貸
  • 建物:Y所有(Xから賃借した土地の上に建築)
  • 建物に抵当権設定 → 競売
  • → 法定地上権は不成立(XとYは別人のため)
  • → 落札者Zは土地利用権を取得できない可能性あり

この状況でZが安心して建物を利用できるかどうかは、Yが持っていた賃借権を競売落札者が引き継げるかという別の問題になります。それで大丈でしょうか?

実際には、借地権付き建物の競売では裁判所の許可が必要(民事執行法83条)になるため、競売の前段階で手続きが複雑になります。競売入札を検討する際は、土地の利用権の種類と名義人を必ず確認しましょう。

法定地上権の問題は、判例の積み重ねによって細かいルールが形成されており、条文を読むだけでは実務対応が難しい分野です。競売入札前に物件調査を徹底することが、後々のトラブル防止に直結します。

以下のリンクは、法定地上権に関する最高裁判例の原文を確認できる公式データベースです。実務での判断に迷った際、判例の結論だけでなく「理由」部分まで読む習慣をつけると理解が深まります。

最高裁判所判例検索システム(裁判所公式):法定地上権関連判例を直接検索できます。

裁判例検索

法務省:民法388条(法定地上権)の条文確認と改正経緯の参照に使えます。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

宅建 抵当権_物上代位と法定地上権