滌除とナニワ金融道で知る抵当権消滅の仕組みと現代実務
あなたは「滌除(てきじょ)は今でも使える手法だ」と思っているかもしれませんが、実は平成15年の民法改正で完全に廃止されており、現在の不動産取引で滌除を主張しても法的効力は一切ありません。
滌除(てきじょ)とは何か:ナニワ金融道が描いた旧民法の制度
滌除とは、抵当権の設定された不動産を取得した第三取得者が、自己が適当と認める評価額を債権者に提示し、その金額を支払うことで抵当権を消滅させる制度です。 「滌(てき)」という漢字には「洗い流す」という意味があり、滌除とは文字どおり「抵当権を洗い流す」ことを指します。mc-law+1
この制度が世に広まったきっかけのひとつが、漫画『ナニワ金融道』です。 作中では、帝国金融が10億円の抵当権のついたビルを2,500万円で購入し、銀行に対して1億円で滌除を飲ませるという衝撃的な手法が描かれました。 これほどの価格差が成立したのは、滌除制度が本質的に「第三取得者に有利すぎる」という構造を持っていたからです。gentosha-go+1
平成15年以前であれば、このように「目をつけた不動産物件を債権者に対抗して安価に取得する方法」として、結構有効な手段だったと言えます。 つまり合法の抜け穴でした。
参考)https://www.rincs.biz/blog_murakami/2015/12/8382.html
滌除の仕組みと増価競売:不動産業者が知るべき旧制度の構造
滌除の流れは大きく3ステップです。
- 第三取得者が不動産の評価額を自己申告し、その金額を債権者(抵当権者)に提示する
- 債権者が承諾すれば、その金額の支払いで抵当権が消滅する
- 債権者が承諾しない場合は、1ヶ月以内に「増価競売」を請求しなければならない
増価競売とは何でしょうか? 競売において第三取得者の申出金額より1割以上高値で売却できないとき、抵当権者が自ら申出金額の1割増しで買い受ける義務を負う競売のことです。 これが抵当権者にとって「ギャンブル性が強い」制度と批判された最大の理由です。8111+1
仮に帝国金融のように「1億円で滌除申請」された場合、銀行は競売で1億1,000万円以上の落札が見込めなければ「自腹で1億1,000万円払って買い取る」選択を迫られます。 これは痛いですね。増価競売の仕組みがあったからこそ、ナニワ金融道の帝国金融は銀行を追い詰めることができたのです。
参考:滌除・増価競売の廃止(平成15年改正)について詳しく解説しているページです。不動産実務者向けに制度変更の経緯が整理されています。
滌除は廃止済み:平成15年の民法改正と現在の抵当権消滅請求の違い
廃止されたのは平成15年(2003年)の民法改正で、施行は2004年4月1日からです。 滌除の「不合理性」が批判されたため廃止され、現行制度として「抵当権消滅請求」が導入されました。 廃止済みです。sumai1+1
旧制度(滌除)と新制度(抵当権消滅請求)の主な違いは下表のとおりです。
| 比較項目 | 滌除(旧制度) | 抵当権消滅請求(現行) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 旧民法378条 | 民法379条 |
| 請求できる者 | 所有権・地上権・永小作権の第三取得者 | 所有権を取得した第三取得者のみ |
| 債権者の対抗手段 | 増価競売(1割増し義務あり) | 通常競売(2ヶ月以内に申立) |
| 制度の性質 | 第三取得者が有利すぎる | 債権者・第三取得者のバランスを改善 |
現行の抵当権消滅請求では、地上権取得者は対象外になった点が特に重要です。 不動産業務で地上権が絡む案件を扱う場合は、この差異を必ず確認してください。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/description/?n=1695
参考:滌除と抵当権消滅請求の違いを実務目線で整理した法律事務所の解説ページです。
滌除(平成15年改正民法施行前)の基本 | モノリス法律事務所
ナニワ金融道が描いた「合法の手口」:不動産業者にとっての教訓
静岡産業大学のリレーエッセイでも指摘されているように、帝国金融の取る手法はすべて金融のルールに則っており、意外なことにすべて合法でした。 契約書や手形も一般銀行が使うものと同じです。
参考)「ナニワ金融道」ふたたび
滌除の手口を具体的に整理するとこうなります。
- 😈 肉欲棒太郎が所有するビル(10億円の抵当権付き)を格安で取得
- 💰 帝国金融がそのビルの「第三取得者」になる
- 📋 銀行に対し、1億円という低評価額で滌除を申請
- 🏦 銀行は増価競売するリスクを負い、結果として1億円を受け入れる
これがプロの金融屋のやり方です。 抵当権者にとって、滌除の申請を受けたときの判断は「承諾か、増価競売のリスクを取るか」という究極の二択でした。現代の不動産業者が滌除の手法を「使える制度」と思い込んでいると、法的に無効な主張をしてしまうリスクがあります。現行法上は一切適用されません。ameblo+1
参考:ナニワ金融道に登場する金融・法律用語を丁寧に解説した法律学者のページです。滌除・短期賃貸借・代物弁済等の実際の条文との対応が確認できます。
現代の不動産実務で「滌除」を知る意義:抵当権消滅請求の活用ポイント
滌除は廃止された制度ですが、その後継である抵当権消滅請求は現在も有効に機能しています。 抵当権付き不動産を第三取得者として取得した場合、この制度を活用することで、競売を回避しながら安定した所有権を確保できる場面があります。
参考)「抵当権消滅請求」とは
現行の抵当権消滅請求を利用する際の主な注意点は以下のとおりです。
- ⏰ 債権者に対する通知から2ヶ月以内に競売申立がない場合、請求が実現する
- 🚫 停止条件付きで不動産を取得した者(条件成否未定中)は請求できない
- 📝 共有持分のみの取得者も請求できない(平成9年判例で確定)
- 💴 抵当権抹消費用は別途発生し、司法書士依頼の場合は1件あたり2〜3万円程度が目安
これだけ覚えておけばOKです。「滌除=廃止」「抵当権消滅請求=現行制度」という対比を頭に入れておくことが、不動産実務で法的リスクを避ける最低限の知識です。
ナニワ金融道が生々しく描いたように、不動産と抵当権をめぐる攻防は制度の細部を理解した者が圧倒的に有利です。 現行の抵当権消滅請求の要件・手続きを今一度確認しておくことで、買主の立場でも売主の立場でも、法的に適切な判断が下せるようになります。
参考)https://matsuokaoncivillaw.private.coocan.jp/Lecture2002/Security/05ClearanceOfMortgage.htm
参考:現行の抵当権消滅請求の実務手順と注意点を解説したページです。実際の申請方法の参考になります。