抵当権消滅請求と代価弁済の違いと実務での使い分け
代価弁済を断っても、売買代金を売主に払わず抵当権者へ直接払わないと取引が無効になります。
抵当権消滅請求とは何か:民法379条の基本的な仕組み
抵当権消滅請求は、民法第379条に定められた制度です。 抵当権が付いたまま不動産を取得した第三取得者(買主)が、自ら抵当権者に対して「この金額を払うから抵当権を消してほしい」と請求できる権利です。 つまり、買主側に主導権があります。gyoseishoshi+1
第三取得者が提示できる金額は自由です。 たとえば、残債が3,000万円の物件を2,500万円で買った場合、2,500万円という売買代金を抵当権者に提示して抵当権の消滅を求めることができます。 残債より低い金額でも請求できるのが、この制度のポイントです。athome+1
請求を受けた抵当権者が承諾しない場合は、通知を受けてから2か月以内に任意競売(抵当権実行)の申立てをしなければなりません。 2か月以内に競売の申立てをしなければ、第三取得者が提示した金額で承諾したとみなされます。これが原則です。
参考)抵当権消滅請求とは|不動産用語集|三菱UFJ不動産販売「住ま…
民法第383条に基づき、第三取得者は登記済みの全債権者に対して書面を送付する必要があります。 一人でも漏れると手続きが無効になるリスクがあるため、登記簿の確認は丁寧に行ってください。
参考)抵当権消滅請求
参考:抵当権消滅請求の手続きと条文解説(三菱UFJ不動産販売)
代価弁済とは何か:民法378条の仕組みと抵当権消滅請求との主導権の差
代価弁済は、民法第378条に定められた制度です。 抵当権消滅請求とは逆で、抵当権者(銀行など債権者)のほうから、第三取得者に対して「売買代金をわたしに払ってほしい」と請求します。 主導権は債権者側にある、というのが原則です。f-madoguchi.co+1
なぜ債権者が動くのかというと、抵当権付き物件が第三者に売られた場合でも、債権者は売買代金の支払いを受けて抵当権を消滅させることができるからです。 売買代金が残債を下回っていても、代価弁済の請求自体は可能です。
参考)代価弁済とは?抵当権消滅請求との違いをわかりやすく解説
ただし、第三取得者が代価弁済に必ず応じる義務はありません。 請求を断ることも法律上は認められています。応じなかった場合、抵当権者はあらためて競売手続きを検討することになります。厳しいところですね。
参考)任意売却における抵当権消滅請求とは?代価弁済との違いも解説|…
代価弁済が成立する条件として重要なのは、「売買による取得」であること。 贈与によって不動産を取得した場合は代価弁済の対象外です。売買代金が前提となる制度であるため、無償取得では「代価」が存在しないからです。ameblo+1
参考:代価弁済の要件と注意点(クレアール司法書士講座)

抵当権消滅請求と代価弁済の違い:第三取得者・保証人・相続人で変わる適用範囲
この2つの制度は、「誰が使えるか」という点で大きく異なります。結論から言うと、保証人が使えるかどうかが明確に分かれます。
参考)任意売却でも抵当権は消せる?抵当権消滅請求の手続きや注意点も…
| 比較項目 | 代価弁済(民法378条) | 抵当権消滅請求(民法379条) |
|---|---|---|
| 主導権 | 抵当権者(債権者) | 第三取得者(買主) |
| 取得原因 | 売買のみ | 売買・贈与など(相続は除く) |
| 取得権利 | 所有権または地上権 | 所有権のみ |
| 保証人の利用 | ✅ 可能 | ❌ 不可 |
| 相続人の利用 | 状況により可 | ❌ 不可(地位承継のため) |
保証人が物件を購入した場合、代価弁済は利用できますが抵当権消滅請求は利用できません。 不動産実務では売主・買主の関係を正確に確認しないと、どちらの制度が使えるか判断を誤るリスクがあります。これは要注意です。
参考)任意売却における抵当権消滅請求とは?代価弁済との違いと請求ポ…
相続によって抵当権付き不動産を取得した者は、抵当権消滅請求ができません。 相続は被相続人の地位をそのまま引き継ぐため、第三取得者としての独立した請求権が認められないからです。
地上権を取得した場合も注意が必要です。 代価弁済では地上権取得者も対象になりますが、代価弁済によって消滅するのは「その地上権者への抵当権行使」であり、不動産全体の抵当権が消えるわけではありません。所有権と地上権で効果が異なるのが原則です。
参考)https://ameblo.jp/micrayh8856/entry-12879347839.html
抵当権消滅請求の手続き:所有権移転登記後に発送する書類と2か月の期限管理
実務上、抵当権消滅請求を行う手順は明確に決まっています。手続きを間違えると制度が使えなくなるため、順序をしっかり把握しておきましょう。
参考)https://www.shinginza.com/tekijyo.htm
手続きの流れは以下の通りです。
- 🏠 売買契約を締結し、所有権移転登記を完了させる(これが前提条件)
- 📮 登記された全抵当権者に対して、民法第383条に基づく書面(催告書)を内容証明郵便で送付する
- ⏳ 抵当権者が書面を受け取った日から2か月以内に競売申立がなければ承諾とみなされる
- 💰 第三取得者が提示した金額を支払い、抵当権消滅手続きへ進む
重要なのは、所有権移転登記が完了「した後」でないと手続きを開始できない点です。 売買契約だけ締結した状態では抵当権消滅請求はできません。これだけ覚えておけばOKです。
2か月の期限中に抵当権者が競売を申立てた場合、第三取得者の請求は拒否されたことになります。 競売が進む可能性があるため、提示金額と残債の差が大きい場合は、抵当権者が競売に動く可能性も念頭に置く必要があります。
参考)抵当権消滅請求によって競売を回避できるか – 不動産ジャーナ…
この2か月の期間は、買主にとってはスケジュール上の不確定要素になります。売買取引のクロージングを急ぎたい場合には、代わりに代価弁済での交渉を検討するほうがスムーズなケースもあります。 状況に応じた使い分けが条件です。
参考:抵当権消滅請求の手続きの流れ(新銀座法律事務所)
実務でよくある混同パターン:旧「滌除」制度との違いと不動産業者が陥りがちなミス
不動産業界の経験者の中には、「滌除(でいじょ)」という旧制度を知っている方もいます。実は抵当権消滅請求は、2004年(平成16年)の民法改正によって「滌除」が廃止され、それに代わって導入された制度です。
旧「滌除」制度では、債権者が第三取得者の提示額に不満な場合、単に競売申立てをするだけでなく「増価競売」(提示額の10分の1以上を加えた価格で競売)をする必要がありました。 現在の抵当権消滅請求では、債権者は単純に2か月以内に競売申立をすればよいため、制度として簡略化されています。意外ですね。
実務でよく起きる混同パターンをまとめます。
- ❌ 「贈与で取得した物件にも代価弁済が使える」→ 使えません。売買取得のみが対象
- ❌ 「保証人は抵当権消滅請求で抵当権を消せる」→ できません。代価弁済なら可能
- ❌ 「売買契約後すぐに抵当権消滅請求の書面を送れる」→ 所有権移転登記完了後でないと不可
- ❌ 「代価弁済を断ればそのまま普通に取引できる」→ 断った後も抵当権は残ったまま
特に「所有権移転登記の前に書面を送ってしまう」ケースは、実務上のミスとして起きやすいものです。 登記完了を確認してから動くのが基本の流れで、順序を逆にすると手続き全体が無効になります。これは痛いですね。
代価弁済では、売買代金の全額を抵当権者に支払う必要があります。 「一部だけ払えばいい」という誤解も現場では見られます。一部弁済では抵当権は消滅しないため、全額支払いが条件です。
参考)https://ameblo.jp/micrayh8856/entry-12879347453.html
不動産実務でこれらの制度を活用する場面では、司法書士や弁護士への確認を挟むことで、手続きミスによる損失リスクを大きく減らせます。 特に競売申立の2か月期限が絡む取引では、スケジュール管理を専門家とともに進めることが実務的な対策になります。
参考)抵当権抹消手続きは3ステップ! 必要書類や申請書の書き方につ…
参考:抵当権抹消登記の申請書と必要書類(法務局公式)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001415367.pdf

担保権消滅請求の理論と実務
