無剰余取消と予納金の仕組みと回避策を徹底解説

無剰余取消と予納金:仕組み・回避策・実務対応

予納金を60万円納めて競売申立てをしても、無剰余取消になれば手続費用を差し引いた残金しか返ってきません。

📋 この記事のポイント
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無剰余取消とは

後順位抵当権者の競売申立てに対し、買受可能価額が手続費用+優先債権の合計を下回る場合、裁判所が競売手続を取り消す制度(民事執行法63条)。

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予納金の扱い

取消しになると、手続費用として使われた分は戻らず、残金のみ返還。60万円納めても全額は返ってこない。

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回避の期限は1週間

裁判所からの無剰余通知を受け取った日から1週間以内に対抗措置をとらないと、競売手続は取り消される。

無剰余取消の基本:競売申立てが却下されるケース

 

後順位抵当権者が競売を申立てても、落札代金が手続費用と優先債権を合わせた額を下回ると見込まれる場合、裁判所は「無剰余」と判断します。 民事執行法63条1項が根拠で、「配当を受けられない競売は認めない」という原則が働くためです。ninbai-call+1

分かりやすい例を挙げましょう。住宅ローン残債が3,000万円で、競売予想価格が2,000万円の物件に、第2抵当権者が競売を申立てた場合を考えます。 落札後はまず第1抵当権者に2,000万円が充当されるため、第2抵当権者には1円も回ってきません。これが典型的な無剰余のケースです。

参考)【競売】無剰余取消とは|競売の手続きが却下される例

無剰余取消は債務者を守る制度ではありません。 実際には第1抵当権者(住宅ローン債権者)の利益を保護するための仕組みで、「今はまだ住宅ローンを返済させた方がいい」という趣旨です。つまり第1抵当権者のための制度ということですね。

予納金の仕組み:競売申立てに必要な費用と無剰余取消後の扱い

競売申立てには、まず裁判所への予納金が必要です。 東京地裁などの大規模庁では通常60万円から70万円程度が相場とされています。fukuokanishi+1

予納金は「預り金」ではなく、競売手続を進めるための費用に充当されます。 物件の調査費用、評価費用、公告費用などにどんどん使われていくため、手続きが進めば進むほど消耗します。500ミリリットルのペットボトルを開けた後、中身が少しずつ減っていくイメージが近いです。

参考)http://www.mankan-online.com/column-hiramatsu/016.html

無剰余取消になると、予納金の残金は返還されますが、それまでに費やされた手続費用は戻りません。 具体的には、裁判所の物件調査費や評価費用に充当された分が差し引かれた後の残額だけが申立債権者に戻ります。費用負担だけが残る点は痛いですね。

参考)http://www.emg-law.jp/Qamp;A/Qamp;A_II-29.html

無剰余取消の通知と1週間という期限:実務で注意すべき点

裁判所が無剰余と判断した場合、差押債権者に通知が届きます。 そこからわずか1週間以内に対抗措置をとらないと、競売手続は自動的に取り消されます(民事執行法63条2項)。1週間は短いです。

参考)https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/muzyouyokaihi_hudousan/index.html

優先債権者が複数いる場合は、全員から同意書を集めて裁判所に提出する必要があります。 法人が優先債権者の場合は、裁判所から資格証明書や印鑑証明書の添付も求められることがあります。

参考)不動産競売における無剰余取消について

また、登記簿謄本には現れない「公租公課(税金の滞納)」が優先債権として突然浮上することがあります。 裁判所は税務署・市町村・都道府県税事務所へ催告する運用をとっているため(民事執行法49条2項3号)、想定外の優先債権が出現するリスクは常にあります。これは事前調査だけでは防ぎにくい落とし穴です。

参考:無剰余取消の実務的な流れと注意点(福岡西法律事務所コラム)

不動産競売における無剰余取消について|福岡西法律事務所

無剰余取消を回避する3つの方法と実務上の選択肢

無剰余通知を受けた後も、1週間以内に次の3つのいずれかを実行すれば取消しを回避できます。

  • 申出額に相当する保証を提供する(手続費用+優先債権合計額以上の額を差押債権者自身が買い受ける旨の申出と保証の提供)
  • 剰余を生じる見込みがあることを証明する(高順位の抵当権が弁済消滅しているなど、配当の見込みが生じたことを証明)
  • 優先債権者の同意を得ていることを証明する(最も現実的とされる方法)

実務上、最も採用されやすいのが優先債権者の同意書を取り付ける方法です。 第1抵当権者にとってみれば、競売で損失を被ることへの了解を求められる形になりますが、交渉次第で同意が得られることもあります。

参考)【不動産競売と無剰余取消し】後順位抵当権者でも競売は成立する…

保証提供の方法は、現金・執行裁判所が相当と認める有価証券・支払保証委託契約締結証明書の3種類から選べます(民事執行規則32条1項)。 差押債権者が物件自体を取得したい場合に使われる方法です。3つの選択肢があるということですね。

参考:競売と無剰余取消の仕組みを詳しく解説しているページ

【競売】無剰余取消とは|競売の手続きが却下される例|不動産お金の悩み相談室

不動産業従事者が見落としがちな「形式的競売」と無剰余取消の関係

遺産分割や共有物分割を目的とした「形式的競売」では、担保権の処理方法が通常の強制競売とは異なります。 消除主義・引受主義・二分説のいずれを適用するかという問題に加え、対象物件がオーバーローンの場合、無剰余取消を「適用するか・準用するか」という論点が生じます。

参考)【形式的競売における無剰余取消の適用の有無(オーバーローン不…

これは検索上位の記事ではあまり取り上げられていない論点です。しかし実務では共有不動産の整理や相続案件で形式的競売を申立てるケースも少なくなく、オーバーローン物件を扱う不動産業従事者にとっては見落とせないポイントです。

具体的には、担保権の負担がある物件を形式的競売にかける際、無剰余取消の規定を準用すると手続きが止まる可能性があります。 申立て前に「強制競売か形式的競売か」「担保権処理はどのアプローチか」を整理しておくことが実務上の安全策です。整理が条件です。

参考:形式的競売と無剰余取消の適用問題(法律専門サイト)

形式的競売における無剰余取消の適用の有無|Mc法律事務所

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