物件明細書の記載例と不動産競売で絶対に見るべき注意点

物件明細書の記載例と競売入札で知るべき基礎知識

物件明細書の記載を「正確」と信じて入札すると、落札後に数百万円規模の損失が生じることがあります。

物件明細書の記載例:3つの重要ポイント
📄

物件明細書は「裁判所の意見書」に過ぎない

記載内容に公信力はなく、競売完了後も訴訟で権利関係が覆る可能性があります。入札前に必ず確認が必要です。

⚠️

法定地上権・賃借権の記載は最重要

「法定地上権あり」「引き継ぐ賃借権あり」などの記載は、落札後の物件活用に直接影響します。記載例を正確に理解することがリスク回避の第一歩です。

🔍

3点セットの中でも最重要書類

現況調査報告書・評価書・物件明細書の3点セットのうち、権利関係を整理した物件明細書が入札判断の核となります。

物件明細書の記載例:基本構成と各項目の意味

 

物件明細書は、民事執行法62条に基づいて執行裁判所の裁判所書記官が作成する書類です。 主な記載事項は以下の3つに大別されます。mc-law+1

  • 不動産の表示:所在地・地番・地目・地積(土地)、家屋番号・種類・構造・床面積(建物)を登記記録どおりに記載する
  • 売却によって効力を失わない権利:買受人が引き継ぐ必要のある賃借権や仮処分の執行など
  • 売却によって設定されたとみなされる地上権の概要法定地上権が成立する場合はその内容

記載例として、土地・建物が一括売却される最も標準的なケースでは次のように表示されます。

参考)https://www.courts.go.jp/okayama/vc-files/okayama/file/20202023.pdf

  • 【物件番号1】土地:所在 ○○市○区○○町、地番 ○○番○○、地目 宅地、地積 ○○.○○㎡
  • 【物件番号2】建物:所在 同上○○番○○号、家屋番号 ○○番○○、種類 居宅、構造 木造瓦葺2階建、床面積 1階○○.○○㎡ / 2階○○.○○㎡

地番と住所(住居表示)は異なることが多いため、番地と地番を混同したまま現地確認を怠ると、まったく別の土地の情報を見ていた、というトラブルに発展します。これは基本中の基本です。

区分所有建物(マンション)の場合は記載項目が増え、一棟の建物の表示・専有部分の表示・敷地権の目的たる土地の表示・敷地権の表示の4段構えになります。 記載漏れや誤りが生じやすい箇所でもあるため、登記事項証明書と照合する作業が欠かせません。

参考)https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/bukkenmokuroku_hudousan/index.html

物件明細書の記載例から読み解く「法定地上権」の落とし穴

物件明細書の中で特に難解なのが、「売却により設定されたものとみなされる地上権の概要」の欄です。 ここに「法定地上権なし」と記載されていても、競売完了後の訴訟で「実は法定地上権が成立する」と裁判官が判断するケースが実際に起きています。

参考)【不動産競売における物件明細書の記載の効力(誤りの是正・公信…

これは意外ですね。

つまり、物件明細書の記載はあくまで書記官の一応の認識であり、その後の裁判で覆る可能性があるということです。

具体的にどういう状況かを整理します。

  • 問題が起きやすい典型例:土地の占有者が賃貸借契約書を競売の段階では提出せず、競落後の訴訟で初めて提出し「借地権がある」と認定されるケース
  • 法的根拠:物件明細書には公信力がなく、自縛力もない(民事執行法・学説・判例で確立)
  • 実害:「法定地上権なし」を前提に落札価格を決めたのに、事後的に法定地上権が認められると土地の活用が著しく制限される

法定地上権が認められると、土地所有者は借地人(建物所有者)に土地明渡を求めることが原則としてできなくなります。 地上権は賃借権より権利が強く、建物の売却にも土地所有者の承諾が不要なため、土地の価値が大幅に下がります。

参考)法定地上権の成立要件や地上権・賃借権との違いを分かりやすく解…

物件明細書の1枚目には「本書面の記載は関係者の権利関係を最終的に決める効力はありません」という注意書きが明記されています。 この一文を流し読みしないことが原則です。

物件明細書上で法定地上権の記載がある物件を検討する際は、競売専門の弁護士や司法書士に権利関係の精査を依頼することを検討してみてください。みずほ中央法律事務所のような不動産競売専門事務所への相談が一つの選択肢になります。

物件明細書の記載例:賃借権・占有者情報の正しい読み方

「買受人に対抗できる賃借権等」の欄は、落札後に物件をそのまま使えるかどうかを左右する重要な記載です。ここに何かが書いてある場合、その権利は競売で消えずに引き継がれます。

参考)競売資料 – 商工法務グループ

記載のパターンと意味をまとめると次のとおりです。

記載内容 意味 実務上の影響
「該当なし」または空欄 引き継ぐ賃借権なし 落札後すぐに利用・転売可能
「賃借権あり(賃料○万円・期間○年)」 入居者の賃借権を引き継ぐ 賃貸物件としての取得になる
「短期賃貸借の期限○年○月○日経過間近」 もうすぐ消える権利 期限後は明渡請求できる可能性あり

参考)https://www.bit.courts.go.jp/info/info_39311.files/info_39311_01.pdf

「占有者あり(不法占拠の疑い)」 退去交渉が必要 明渡しに時間・費用がかかる

対抗要件を具備した賃借権は、競売公告に記載がなくても消滅しないとする最高裁判例があります(最判昭和46年10月14日)。 この判例を知らずに「記載されていない=引き継ぐ権利なし」と解釈すると、落札後に賃借人が退去を拒否し、数ヶ月~1年以上の明渡訴訟を抱えるリスクが生じます。痛いですね。

賃借権の有無が不明確な物件は入札前に現地確認と法的調査を徹底することが条件です。

物件明細書の記載に誤りがあった場合の対応策

物件明細書の記載が誤っていた場合、手続き上の対応として2つの方法があります。

  • 売却許可決定前:執行裁判所への書記官処分への異議申し立て(民事執行法62条3項)
  • 売却許可決定後:執行抗告の申し立て

重大な誤記載があれば裁判所は売却不許可とすることができます。 ただし「重大な誤り」の判断は厳格で、軽微な記載漏れでは不許可にならないケースが多いのが現実です。

誤記載への実体法上の効力という点では、物件明細書に公信力はありません。 「借地権なし」と書いてあっても、後の訴訟で借地権の存在が認められれば、買受人はその権利を引き受けなければならない可能性があります。これが原則です。

民事執行規則30条の4という規定もあり、物件明細書の記載が誤っている場合は、売却基準価額の決定において物件明細書の記載と異なる事項を明示する措置が義務づけられています。 これを活用することで、入札者は価格判断の誤りを一定程度防ぐことができます。

参考:不動産競売の物件明細書の記載の効力(公信力なし)についての解説

みずほ中央法律事務所「不動産競売における物件明細書の記載の効力(誤りの是正・公信力なし)」

プロが見落としやすい:未登記建物と物件明細書記載例の死角

競売の現場で見落とされがちなのが、未登記建物と法定地上権の関係です。抵当権設定時に土地上に建物が建っていれば、その建物が未登記であっても法定地上権は成立します。 物件明細書に「建物の登記なし」と記載されていても、それだけで法定地上権が不成立とはなりません。

未登記建物の存在は現況調査報告書の写真や現地確認で初めて発覚することが多く、物件明細書だけを見ていると完全に見落とします。3点セットをセットで読むことが大前提です。

参考)競売物件まる裸!競売で公開される資料「3点セット」の内容とは

さらに注意が必要なのが、占有者に関する情報です。腐乱遺体が落札後に発見されたケースで、現況調査報告書・物件明細書・評価書のいずれにも記載がなかった事例が実際に記録されています。 物件明細書の記載は執行官が調査した時点の「スナップショット」にすぎず、すべてのリスクを網羅しているわけではありません。

参考)【執行官の調査は信用できない?】競売を扱う際に覚えておきたい…

  • 現況調査は入札公告の数ヶ月前に実施されており、現時点の状況と異なる場合がある
  • 心理的瑕疵(孤独死・事故死)のうち自然死や日常生活中の不慮の事故による死亡は告知義務がなく、記載されないことも多い
  • 建物の老朽化・修繕状況は評価書を合わせて確認しないと判断できない

物件明細書に記載がない=問題なし、という思い込みは禁物ですね。入札前に3点セット全体を読み込み、不明点は競売専門家に確認する手間を惜しまないことが最大のリスク回避策です。rad-st+1

参考:競売3点セットの読み方と活用方法についての解説

「不動産競売の3点セットとは?物件明細書・現況調査報告書・評価書の見方」rad-st.jp

参考:BIT(不動産競売物件情報サイト)での物件明細書の公開と記載内容の確認方法

裁判所BIT「物件明細書」解説ページ

A5 ドキュメントファイル 卓上フォルダ チケットケース レシートフォルダー 13分類 持ち運び 伸縮可能 仕切り 手形 資料 領収証 明細書 パスポート 小物収納 不透明カーキ