書類保存状況を正しく把握し法的リスクを回避する
書類の保存期間を5年と思い込んでいると、実は10年保存が必要な契約書を誤って廃棄し、行政処分の対象になります。
書類保存状況の基本:宅建業法が定める保存期間と対象書類
不動産業に従事していると、日々膨大な書類を扱います。しかし「とりあえず5年保存しておけば大丈夫」という認識で管理している事務所が、実は少なくありません。これは危険な思い込みです。
宅地建物取引業法(宅建業法)第49条および施行規則第18条では、取引に関する帳簿および書類の保存が義務付けられています。具体的な保存期間は書類の種類によって異なり、一律ではありません。主な書類と保存期間をまとめると、以下のようになります。
- 📄 取引台帳(宅建業法施行規則第18条の帳簿):5年間(自社が売主となる新築住宅の場合は10年間)
- 📄 重要事項説明書(35条書面):5年間(新築住宅の売主業者は10年間)
- 📄 売買契約書・媒介契約書:5年間(新築住宅の売主業者は10年間)
- 📄 37条書面(契約締結時の書面):5年間(新築住宅の売主業者は10年間)
- 📄 管理業務に関する帳簿(マンション管理業者):5年間
新築住宅の売主として業務を行う場合、保存期間が10年に延長されます。これを知らずに5年で廃棄した場合、宅建業法違反として業務停止処分や、最悪の場合は免許取消処分の対象となります。
重要なのは「取引が完結した日から」ではなく、「帳簿を閉鎖した日から」起算するケースもある点です。つまり保存開始の起算点にも注意が必要です。
監督官庁(都道府県または国土交通省)による立入検査の際、書類保存状況が不十分と判断されると、指示処分・業務停止処分といった行政処分が下されます。事務所ごとに書類の整備状況が確認されるため、複数の支店を持つ会社は全拠点での管理徹底が求められます。
保存期間が条件です。まず自社の業態(売主か媒介か、新築か中古か)を整理するところから始めてください。
書類保存状況の確認方法:管理台帳の作り方と運用のコツ
書類を保存しているだけでは不十分です。「どこに、何が、いつまで保存されているか」が一目でわかる状態でなければ、立入検査の際に対応できません。
書類保存状況を可視化するために有効なのが、管理台帳の整備です。Excelや専用の不動産管理ソフトを活用し、以下の項目を記録することが推奨されます。
- 📌 書類の種類(重説、37条書面、媒介契約書など)
- 📌 取引番号または物件番号
- 📌 取引年月日
- 📌 保存開始日
- 📌 保存期限(廃棄予定日)
- 📌 保存場所(キャビネット番号、フォルダ名など)
- 📌 電子保存か紙保存かの区別
管理台帳を作っただけで安心してはいけません。年に1回、保存期限を確認して廃棄すべき書類と継続保存すべき書類を仕分けるルーティンを組み込むことが大切です。これを「書類保存状況の棚卸し」と呼ぶ事務所も増えています。
棚卸しのタイミングは、年度末(3月)または会社の決算期に合わせると、業務サイクルと連動させやすくなります。担当者を固定し、チェックリストを用いることで属人化を防げます。
これは使えそうです。管理台帳があるだけで、スタッフ全員が同じ基準で書類を扱えるようになります。
不動産管理ソフト(例:「いい按配」「宅建ソフト」「不動産管理クラウド」など)には書類管理機能が付いているものもあります。紙の台帳から移行するだけで、保存期限のアラート機能が使えるため、廃棄漏れ・保存漏れの両方を防ぎやすくなります。書類保存状況の管理に課題を感じている場合は、こうしたツールの導入を検討する価値があります。
書類保存状況と電子化:e-文書法・電子帳簿保存法の要件を正しく理解する
「紙をスキャンして保存すればOK」と思っていませんか。実はそれだけでは法的に有効な電子保存とはみなされないケースがあります。
e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)および電子帳簿保存法では、電子データとして保存する際の要件が細かく定められています。不動産業において特に注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 🖥️ 見読性の確保:保存したデータをいつでもPC画面や書面に出力できる状態を維持すること
- 🖥️ 完全性の確保:スキャン後に改ざんされていないことを証明できること(タイムスタンプの付与など)
- 🖥️ 機密性の確保:不正アクセスを防ぐアクセス権限の設定
- 🖥️ 検索性の確保:日付・金額・取引先名などで検索できる状態にすること
これらの要件を満たさない場合、電子データで保存していても「適法な保存」とは認められません。その結果、原本の紙を廃棄してしまっていたら、書類が「存在しない」と扱われる最悪の事態になります。
厳しいところですね。とはいえ、要件を満たすシステムを導入すれば、紙の保管スペース削減と法的安全性の両立が可能です。
電子帳簿保存法は2022年改正で大きく変わりました。不動産業者がよく扱う電子取引データ(メールで受け取った契約書PDF等)は、2024年1月から電子データのままでの保存が義務化されています。印刷して紙で保存する方法は、原則として認められなくなっています。
国税庁:電子帳簿保存法関係 法令解釈通達(参考:電子取引データの保存要件の詳細)
電子保存を正しく運用するには、タイムスタンプ機能を持つ文書管理システムの活用が現実的な解決策です。「電子帳簿保存法対応」を明示しているクラウドサービスを選ぶと、要件確認の手間を大幅に省けます。
書類保存状況の監査対応:立入検査で実際に確認される項目
都道府県の宅建業担当部局や国土交通省による立入検査(監査)では、書類保存状況が重点確認項目の一つです。実際にどのような点が確認されるのかを知っておくことは、日常的な管理体制の構築に直結します。
立入検査で担当者が確認する主な書類と観点は以下のとおりです。
- 🔍 帳簿(宅建業法第49条に基づくもの)の作成・保存の有無
- 🔍 重要事項説明書(35条書面)の交付・保存状況
- 🔍 37条書面の作成・保存状況
- 🔍 媒介契約書の作成・保存状況
- 🔍 従業者名簿の整備状況(5年間保存義務)
- 🔍 保存期間が経過した書類の廃棄記録(廃棄したことの記録も重要)
見落としがちなのが「廃棄記録」です。保存期限が来た書類を適切に廃棄したこと自体も、記録として残しておくことが推奨されます。「いつ、誰が、どの書類を廃棄したか」を台帳に記載しておくことで、書類の欠落を廃棄漏れと誤解されるリスクを防げます。
つまり、捨てた記録も保存が必要ということです。
立入検査は事前通知なしに実施されることがあります。東京都の場合、年間約200件以上の立入検査が実施されており、違反が見つかった場合は指示処分、業務停止処分、さらに悪質な場合は免許取消処分へと発展します。業務停止処分になると、その期間中は新たな取引ができなくなるため、会社の売上に直接的なダメージを与えます。
国土交通省:宅地建物取引業者の監督処分の基準(参考:行政処分の種類と基準の詳細)
監査対応の実務では、書類保存状況の確認を日常業務に組み込んでいる事務所ほど、検査をスムーズに通過しています。特に、書類の保管場所を示した「フロアマップ」や「書庫配置図」を用意しておくと、検査担当者への説明が格段に楽になります。
書類保存状況の落とし穴:廃棄タイミングと保存免除に関する独自視点
一般的な解説記事では「保存期間は5年(または10年)」と書かれていますが、実務では「いつから5年なのか」という起算点の解釈がばらついていることが問題になります。これが、多くの事務所が陥る見えにくい落とし穴です。
宅建業法施行規則では、帳簿は「各事業年度の末日をもって閉鎖」し、「閉鎖後5年間保存」とされています。つまり起算点は「取引完結日」ではなく「帳簿閉鎖日(=事業年度末)」です。たとえば2020年4月に完結した取引の帳簿記録は、2020年度末(2021年3月31日)に閉鎖され、そこから5年後の2026年3月31日まで保存が必要になります。取引完結から数えると約6年間保存することになります。
意外ですね。「取引が終わったら5年」と思って2025年に廃棄していたら、実はまだ保存義務が続いていた、というケースが発生します。
さらに見落とされがちなのが「書類の複数該当」です。一つの書類が複数の法令の保存義務を同時に受けることがあります。たとえば、売買契約書は宅建業法上の保存義務に加え、税務上の帳簿書類としての保存義務(法人税法上は7年間、または欠損が生じた事業年度については10年間)も発生します。宅建業法上の保存期間が満了しても、税務上の保存期間が残っている場合は廃棄できません。
- 📌 宅建業法の保存期間:5年(新築売主は10年)
- 📌 法人税法上の帳簿書類の保存期間:7年(欠損がある場合は10年)
- 📌 電子帳簿保存法の電子取引データ:7年(消費税の関係で10年のケースも)
これらが重なった書類は、最も長い保存期間が満了するまで廃棄できません。これだけは覚えておけばOKです。
こうした複合的な保存義務を管理するには、書類の種類ごとに適用される法令と保存期間を一覧にした「書類保存ルール一覧表」を事務所内に掲示することが効果的です。各スタッフが迷ったときに参照できる環境を整えるだけで、廃棄ミスと保存漏れの両方を大幅に減らせます。
不動産流通推進センター:宅建業法に基づく帳簿・書面の保存に関する解説(参考:保存義務の対象書類と期間の実務的解説)
書類保存状況の管理は、一度仕組みを作れば維持コストは低く抑えられます。今日から始めるとすれば、まず自社の書類一覧を紙1枚に書き出し、それぞれに適用される保存期間と起算点を記入することから着手するのが現実的です。

アップグレードされた耐火&防水ドキュメントバッグ – ロック可能な17インチ x 12インチ x 5インチ ウォレットプロテクター付き – 夜間でも素早く見つける反射 – 書類と貴重品を火や水から守る – 消防士デザイン
