準防火地域 耐火建築物 建ぺい率の実務
「準防火地域で建ぺい率を甘く読むと、あなたの案件が一発で融資NGになります。」
準防火地域で耐火建築物にしたときの建ぺい率10%緩和の基本
準防火地域での建ぺい率10%緩和は、2019年前後の建築基準法改正で一気に実務に浸透した特例です。従来は防火地域内の耐火建築物だけが10%緩和の対象でしたが、今は準防火地域内の耐火建築物・準耐火建築物にも拡大されています。例えば、もともと建ぺい率60%の地域であれば、条件を満たせば70%まで建築面積を増やせます。敷地60㎡なら、建築面積36㎡が42㎡になり、約6㎡、畳約3枚分の増加です。ワンルームであれば1戸分の廊下+水回りがひねり出せる面積というイメージですね。
ここで押さえたいのは、「準防火地域にあるから10%緩和される」のではなく、「準防火地域かつ耐火建築物・準耐火建築物だから10%緩和される」という点です。準防火地域でも、木造で仕様規定を満たしていない一般的な在来工法の場合、緩和対象外になるケースがあります。つまり構造・仕様をどこまで耐火性能に振るのかで、建ぺい率と建築コストのバランスが変わるわけです。ここが基本です。
このとき、不動産実務で重要なのは「土地仕入れ時点で10%緩和を前提に収支を組んで良いかどうか」の判断です。設計者が「耐火建築物にすれば大丈夫です」と言っていても、コストアップで採算割れすれば、事業そのものが成立しません。結論は慎重なシミュレーションです。
準防火地域の耐火建築物・準耐火建築物に関する建ぺい率緩和の概要と、改正の背景・国交省資料の図表を確認したい場合は、制度解説がまとまっているページが役に立ちます。
準防火地域の耐火建築物の建ぺい率10%緩和の概要と背景の解説ページ
準防火地域で建ぺい率が10%緩和される具体条件と「落とし穴」
準防火地域の建ぺい率10%緩和には、実務でつまずきやすい条件がいくつかあります。まず前提として、建設予定地が都市計画で準防火地域に指定されていること、用途地域ごとに定められた建ぺい率があること、この二つを役所の都市計画課・建築指導課で確認するのがスタートです。ここまでは多くの担当者が押さえていますが、問題は「建築物の構造区分」を甘く見てしまう点です。仕様書レベルで耐火建築物・準耐火建築物になっていなければ、10%緩和は使えません。
例えば木造3階建ての共同住宅を計画する場合、準耐火建築物とするためには、主要構造部の耐火被覆や防火区画、開口部の防火設備など、多数の仕様を満たす必要があります。ここでコストを削って準耐火仕様から外れてしまうと、図面上は建ぺい率70%で計画していても、法的には60%上限扱いになり、一気にオーバーになります。つまり緩和だけ覚えて仕様条件を見落とすと危険です。
さらに、角地緩和や防火地域との重複指定が入ると、頭の中だけで計算しがちです。例えば、建ぺい率60%の準防火地域・角地指定の土地で、耐火建築物とすれば、「角地で10%+耐火建築物で10%」と短絡的に考えて80%までいけると判断する人もいます。しかし自治体によっては、上乗せの順番や上限値の考え方にローカルルールがあり、結果として70%止まりになることもあります。つまり事前協議が必須です。
このリスクを避けるには、スキーム検討段階で建築士と一緒に「建ぺい率計算シート」を作るのが有効です。エクセルでも構いませんが、用途地域・防火指定・角地指定・用途(戸建て、長屋、共同住宅、店舗併用など)を入力すると、自動で適用条文と上限建ぺい率を表示してくれるようにしておくと、提案スピードが上がります。まとめると、建ぺい率計算はツール化が有効です。
準防火地域で建てる耐火建築物のコストと収益性のバランス
準防火地域で10%の建ぺい率緩和を狙って耐火建築物・準耐火建築物にする場合、必ずコストとの比較が必要です。例えば木造2階建てアパートで、一般仕様から準耐火仕様に切り替えると、延床1㎡あたり5千〜1万円程度コストアップするという目安で語られることが多いです。延床400㎡の物件なら、追加コストは200万〜400万円規模になります。一方で、建ぺい率10%緩和により建築面積が増えることで、総延床も増やせるため、賃料収入も上積みできます。
仮に敷地80㎡、建ぺい率60%の地域で、建ぺい率緩和を使って70%まで増やすとしましょう。建築面積は48㎡から56㎡へ増えます。3階建てなら、延床144㎡から168㎡へと24㎡増加です。ワンルームなら約8〜10㎡で1戸が一般的なので、2戸分増やせるイメージになります。月8万円×2戸で16万円、年間192万円、10年で1,920万円の追加売上です。つまり、数百万円の追加コストを十分に回収できる可能性があるという計算です。
もちろん、これは満室稼働や賃料維持が前提のラフな試算です。空室率や賃料下落を考慮した上で、金融機関がどう評価するかも重要になります。収益還元法で評価する金融機関は、「延床増=評価額増」と見てくれることが多いですが、地銀・信金の中には、単純な積算評価を重視する先もあります。つまり金融機関のスタンスで効果が変わるということですね。
このようなケースでは、金融機関の担当者に「準防火地域+耐火建築物+建ぺい率緩和」を前提にしたプランと、「準防火地域+一般仕様+緩和なし」のプランをセットで提示し、どちらが融資評価上有利か確認するのが現実的です。物件の出口戦略(売却時の買い手想定)まで含めて比較しておくと、投資家への説明もしやすくなります。不動産投資向けシミュレーションソフトを1本導入しておくと、こうしたケーススタディを短時間で複数作れるので便利です。
準防火地域での建ぺい率緩和と既存不適格・建替え相談の実務対応
準防火地域では、古い木造住宅や長屋が密集しているエリアも多く、既存不適格建築物の建替え相談が頻繁に出てきます。ここでよくあるのが、「今建っているボリュームと同じくらいで建て替えたい」という要望です。ところが、現行法の建ぺい率・容積率を適用すると、今より小さな建物しか建てられないケースも少なくありません。ここに建ぺい率10%緩和をどう効かせるかが、営業としての腕の見せ所です。
例えば、現況が建ぺい率80%相当で建っている古家でも、地域の指定は60%ということがあります。この場合、緩和を使っても70%が上限ですから、「今より一回り小さいが、間取りを工夫して使い勝手を落とさない計画」を提案しないと、オーナーの納得を得にくくなります。つまり緩和があっても、過去の“違法に近い”ボリュームを完全には再現できないことが多いのです。厳しいところですね。
一方で、もともと建ぺい率70%指定の商業系地域の場合、準防火地域かつ耐火建築物であれば、80%まで建てられるケースもあります。この10%の差が、1階のテナント面積や駐車場台数を左右し、テナント誘致力や賃料水準に直結します。具体的には、1階で10坪(約33㎡)のテナントが2区画取れるか3区画取れるか、といったレベルの違いです。テナント1区画増えるだけで、年間賃料が200万〜300万円変わることもあります。
既存オーナーへの建替え提案で大事なのは、「今と同じように建てられます」ではなく、「今より安全で、収益性を維持・改善できる建て方」を数字で示すことです。建ぺい率10%緩和を踏まえた2〜3案を用意し、建築費とキャッシュフローを比較する資料をA4数枚にまとめておくと、面談時の説得力が上がります。つまり、建替え相談は“収支表セット”が原則です。
準防火地域で建ぺい率緩和を使うときの行政協議・図面チェックのコツ
最後に、実務でトラブルを避けるための行政協議と図面チェックのポイントを整理します。準防火地域で建ぺい率緩和を使う場合、まず都市計画図の防火指定、用途地域、建ぺい率・容積率の指定を最新のもの(紙ベースとオンラインの両方)で確認します。自治体によっては、地区計画や高度地区、景観条例が絡み、実質的な建築可能ボリュームが変わることもあるからです。つまり、都市計画図だけ見て判断しないことが重要です。
次に、建築士がまとめる法規チェックリストの中に、「準防火地域・耐火建築物・建ぺい率10%緩和」の欄を設け、設計初期段階でチェックを入れてもらう運用がおすすめです。これにより、基本設計の時点で緩和前提かどうかがはっきりし、事業収支に反映しやすくなります。さらに、配置図・各階平面図・求積図の段階で、建築面積の算定方法を細かく検証します。出入口の庇やピロティ、バルコニーなど、建築面積に算入するかどうか微妙な部分は、事前に行政と相談しておくと安心です。
実務では、完了検査直前に「この部分は建築面積に算入してください」と指摘され、わずか1〜2㎡の超過で是正が必要になる事例もあります。1〜2㎡と聞くと大したことがないように感じますが、その部分の柱・壁を撤去するとなると、工事費は数十万円単位で発生し、工期も延びます。引き渡しが1カ月遅れれば、その分賃料収入や売却代金の入金も後ろ倒しです。痛いですね。
こうしたリスクを抑えるために、最近はオンライン会議ツールを使って、行政・設計・不動産会社・オーナーが同席する事前協議を行うケースも増えています。図面を画面共有しながら建ぺい率の考え方をすり合わせておけば、後から「聞いていない」「想定と違う」といったトラブルを減らせます。つまり、コミュニケーションの設計もまた、建ぺい率緩和を使いこなすための重要な“インフラ”ということです。

