法定相続情報一覧図の必要書類と兄弟が相続人になる場合の注意点

法定相続情報一覧図の必要書類と兄弟が相続人になる場合

兄弟姉妹が相続人になる案件で、法定相続情報一覧図を「被相続人の出生から死亡の戸籍だけで申出したら差し戻しになった」という経験をした不動産担当者は少なくありません。

📋 この記事の3つのポイント
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兄弟相続では必要書類が大幅に増える

被相続人の両親・祖父母の出生から死亡までの戸籍除籍謄本が追加で必要になります。通常の子が相続するケースとは書類の範囲が全く異なります。

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代襲相続(甥・姪)が絡むとさらに複雑に

兄弟姉妹が先に死亡している場合、甥・姪の代襲相続が発生し、亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍も必要になります。

続柄の書き方は「兄・姉・弟・妹」が原則

法定相続情報一覧図での兄弟姉妹の続柄は「兄」「姉」「弟」「妹」と記載するのが原則。「兄弟」とまとめて書くことはできません。


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法定相続情報一覧図とは何か・兄弟相続との関係

法定相続情報一覧図とは、被相続人と法定相続人全員の関係を一目でわかるよう図式化し、法務局(登記所)の登記官が認証した公的証明書のことです。2017年5月に「法定相続情報証明制度」が施行されて以降、不動産の相続登記や銀行口座の解約・名義変、相続税申告など、多岐にわたる相続手続きで戸籍謄本の束の代替書類として利用できるようになりました。

この制度の最大のメリットは、一度取得すれば何通でも無料で再発行できる点です。保管期間は申出日の翌年から起算して5年間であり、この間は複数の手続きを並行して進めることが可能になります。不動産業務に関わる方であれば、相続登記の場面で活用する機会が多い書類です。

兄弟姉妹が相続人になるケースとは、具体的には「被相続人に子がなく、両(直系尊属)もすでに死亡している」状況です。民法上の相続順位は、第1順位が子(孫などの代襲相続人含む)、第2順位が直系尊属(父母・祖父母)、第3順位が兄弟姉妹(代襲相続人は甥・姪まで)と定められています。法定相続情報一覧図を作成する際は、このケースに該当するかどうかで用意すべき書類が大幅に変わります。

つまり兄弟相続は「書類量が多い」が原則です。

不動産従事者として依頼を受けた際、必要書類の全体像を正しく把握しておくことが、顧客への正確な説明と手続きの遅延防止に直結します。

法務局|「法定相続情報証明制度」について(制度の概要・利用できる手続き一覧)

法定相続情報一覧図の必要書類【基本セット】と取得費用の目安

まず、相続人のパターンを問わず共通して必要となる基本書類を押さえましょう。

書類 取得場所 費用(1通)
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本改製原戸籍謄本 各本籍地の市区町村役場 戸籍謄本:450円、除籍謄本:750円
被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票 最後の住所地の市区町村役場 300円程度
相続人全員の現在の戸籍謄本または戸籍抄本 各相続人の本籍地の市区町村役場 450円
申出人の氏名・住所が確認できる公的書類のコピー(運転免許証やマイナンバーカード等) 手持ちのものをコピー 実費のみ
法定相続情報一覧図(申出人が自分で作成) 法務局のひな形を使用 無料
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書 法務局HPよりダウンロード 無料

被相続人の出生から死亡までの戸籍は、通常1か所の役所で全てそろうことは稀です。婚姻や転籍を重ねた場合は複数の市区町村に請求する必要があり、1人の被相続人だけで10通以上の戸籍書類を集めるケースも珍しくありません。

なお、2024年3月1日から戸籍の広域交付制度がスタートし、被相続人の本籍地以外の窓口でも戸籍を一括請求できるようになっています。これは収集の手間を減らす上で有効です。ただし、この広域交付では代理人による取得はできない点に注意が必要です。

申出書類の提出先は、被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産の所在地、のいずれかを管轄する法務局(登記所)から選択できます。

申出から交付まで、一般的には1週間から10日程度かかります。郵送での申出と受取も可能ですが、その場合は返信用封筒と郵便切手の同封が必要です。

法務局|法定相続情報証明制度の具体的な手続(必要書類・申出書様式のダウンロード)

兄弟姉妹が相続人の場合に追加で必要になる書類の全体像

ここが、子や配偶者が相続人になる通常ケースとの最大の違いです。兄弟姉妹が法定相続人となるためには、「なぜ兄弟が相続人になるのか」を戸籍で証明しなければなりません。

具体的には、第1順位の子・孫がいないこと、第2順位の父母・祖父母が全員死亡していることを書類で示す必要があります。これを「不存在の証明」と呼び、通常の相続以上に広い範囲の戸籍収集が求められます。

追加で必要になる書類は以下の通りです。

  • 被相続人の父・母それぞれの出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 祖父母が死亡していることが確認できる除籍謄本(第2順位の直系尊属がいないことを証明)
  • 相続人である兄弟姉妹全員の現在の戸籍謄本(相続権の存在確認)

父母の戸籍を出生まで遡るという作業は、被相続人の戸籍収集と同じくらい手間のかかる作業です。父母がそれぞれ転籍や結婚を繰り返していれば、収集すべき役所が4か所以上になることもあります。

重要なのは「祖父母の死亡確認」です。直系尊属は父母だけでなく祖父母も含まれるため、父母が死亡していても祖父母が存命であれば、祖父母が第2順位の相続人となります。祖父母の死亡の記載がある除籍謄本を取得し、祖父母も相続人にならないことを証明する必要があります。

これは盲点になりやすい部分ですね。

さらに、被相続人が亡くなる前に兄弟姉妹の一人がすでに死亡していた場合は、代襲相続が発生します。その場合は、死亡した兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍一式も追加で必要になります。

法務局|主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例(兄弟姉妹・代襲相続パターンを含む)

兄弟相続における法定相続情報一覧図の続柄・書き方の注意点

必要書類が揃ったら、法定相続情報一覧図を実際に作成します。兄弟姉妹が相続人のケースには、続柄の書き方にも独自のルールがあります。

まず基本的なルールとして、法定相続情報一覧図に記載する続柄は、被相続人を基準にした続柄です。「兄弟」とまとめて書くことはできません。被相続人の兄弟姉妹であれば「兄」「姉」「弟」「妹」と個別に記載します。

甥・姪が代襲相続人となる場合は「甥」「姪」と記載します。

以下の書き方ポイントも合わせて確認してください。

確認項目 正しい書き方 NG例・注意点
続柄の記載 「兄」「姉」「弟」「妹」「甥」「姪」など 「兄弟」とまとめて書くのはNG
氏名の記載 戸籍に記載された通りの字体(旧字体・外字も忠実に) 略字・通称字に置き換えてはNG
用紙サイズ A4縦1枚(2枚になる場合は「1/2」「2/2」と明示) B5やA4横は不可
下部余白 用紙下部5cmは空欄のまま 認証文が入るため記載禁止
住所記載 任意だが、記載すると住民票の提出が省略可能になるケースあり 住民票通りの正確な表記が必要(番地の省略はNG)
相続放棄した者 一覧図には記載する(相続放棄の情報は別途書類で対応) 省略すると登記官の確認で不備となる

住所の記載は任意ですが、記載しておくことで不動産の相続登記申請時に相続人の住民票の写しの提出が省略できる場合があります。記載する場合は住民票に記載された通りに番地を書き、「1-2-3」のような略記もNGです。

なお、法定相続情報一覧図において相続放棄をした人の氏名は記載する必要があります。一覧図は法定相続人を明らかにするものであり、相続放棄や遺産分割協議の結果は反映されません。相続放棄の事実は、別途相続放棄申述受理証明書などで証明します。

一覧図の写しは何通でも無料で取得できる点も覚えておきましょう。

チェスター相続税理士法人|被相続人との続柄の書き方(続柄の詳細な記載ルール解説)

不動産業務で見落としがちな兄弟相続の独自リスクと実務対策

実務で兄弟相続の案件を担当する際、特に注意が必要な点が3つあります。これらは一般的な解説記事ではあまり触れられていないポイントです。

① 「異父母兄弟・異母兄弟(半血兄弟姉妹)」の存在

被相続人の父母のどちらか一方のみが同じ「半血の兄弟姉妹」が存在する場合、その相続分は全血兄弟姉妹の2分の1になります(民法900条4号)。この場合、被相続人の父もしくは母の戸籍を詳細に確認しなければ半血の兄弟姉妹の存在が把握できないため、父母の出生から死亡までの戸籍収集がさらに重要になります。

これは見落としやすい点ですね。半血兄弟姉妹の存在が後から発覚すると、遺産分割のやり直しや登記の更正が必要になり、顧客に余分なコストと時間を負担させることになります。

② 戸籍収集に予想以上の時間がかかる

兄弟姉妹が相続人の案件では、郵送で戸籍請求を繰り返すケースが多く、書類収集だけで1か月以上かかることがあります。2024年3月から広域交付制度が使えるようになりましたが、代理人(行政書士・司法書士も含む)は広域交付での窓口取得ができないため、依頼された専門家は郵送請求に頼らざるを得ない状況です。

不動産取引のスケジュールが迫っている場合は、早期に戸籍収集を開始するよう顧客に案内することが実務上の重要なポイントです。

③ 法定相続情報一覧図の写しが使えない金融機関が存在する

法定相続情報一覧図の写しで相続手続きが完結できない金融機関や信用組合が、今も一部存在します。事前に手続き先の機関へ確認することが必要です。特に、相続放棄がある案件では一覧図の写しだけでは対応できないケースもあります。

このリスクを知っているか否かで、顧客への説明の質が大きく変わります。

一方で、法定相続情報一覧図は相続登記・銀行口座の解約・相続税申告・有価証券の名義変更・自動車の名義変更など複数の手続きを同時並行で進める場合に非常に有効です。複数の手続きに同じ戸籍の束を何度も提出し直す手間が省けます。不動産の相続登記と金融機関の口座解約を同時に進める場合は、法定相続情報一覧図を事前に取得しておくことを強くおすすめします。

司法書士や行政書士など専門家へ依頼する場合の相場は、法定相続情報一覧図の作成代行で1万円(税抜き)前後からが一般的ですが、兄弟相続で戸籍収集の範囲が広い場合は別途費用がかかることが多いため、見積もりの確認が必要です。