利息の勘定科目を個人事業主が正しく使い分けるコツ

利息の勘定科目を個人事業主が正しく使い分けるポイント

事業用口座の利息を「受取利息」で仕訳すると、所得税を余分に払う羽目になります。

📋 この記事の3つのポイント
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預金利息の正しい勘定科目は「事業主借」

事業用口座に入る預金利息は「受取利息」ではなく「事業主借」で仕訳するのが正解。誤ると事業所得が水増しされ、所得税の過払いにつながります。

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不動産所得が赤字なら土地の利息は損益通算不可

不動産収入が赤字の場合、土地取得に対応する借入金利息(土地負債利子)は損益通算から除外されます。全額通算できると思い込むと税務調査リスクが生じます。

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支払利息・利子割引料・事業主借の3区分を整理する

事業用借入の利息は「支払利息(利子割引料)」、預金利息の受け取りは「事業主借」、事業目的外の貸付利息受け取りは「雑収入」と明確に使い分けることが重要です。


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利息の勘定科目の基本:支払利息・受取利息・事業主借の違い

 

個人事業主が取り扱う利息は、大きく「払う利息」と「もらう利息」の2種類に分かれます。そして同じ「もらう利息」であっても、その性質によって使う勘定科目がまったく異なる点が、最初の壁になります。

払う側、つまり事業用の借入金に対して支払う利息は、「支払利息」または「利子割引料」という勘定科目を使って経費に計上します。確定申告書(青色申告決算書)では「利子割引料」欄に記入する形になっています。支払利息と利子割引料はほぼ同じ内容ですが、利子割引料には手形の割引料も含まれる点で若干範囲が広いです。どちらを使っても税務上の問題はありません。

もらう側は少し複雑です。不動産従事者が最も混乱しやすいのが、「受取利息」と「事業主借」の使い分けです。

  • 🏦 事業用の預金口座に付いた利息…「事業主借」で仕訳(事業所得には含めない)
  • 📋 事業活動として貸し付けた相手から受け取った利息(取引先や従業員への貸付など)…「受取利息」で事業収入に計上
  • 👤 個人的な貸付から受け取った利息(友人へのお金の貸し借りなど)…「雑収入」または「事業主借」で処理し、確定申告では雑所得として申告

所得税法では、銀行預金の利息は「利子所得」として分類され、源泉分離課税によって金融機関が20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)を源泉徴収した時点で課税が完了します。確定申告で改めて申告する必要はありません。

つまり、利子所得が原則です。

事業用口座でも、預金利息は事業所得には含まれない——この認識が最初のポイントです。なお、元本の返済部分は経費に含まれないことも忘れないようにしましょう。

【仕訳例①:事業用口座に預金利息800円が振り込まれたケース】

借方 金額 貸方 金額
普通預金 800円 事業主借 800円

源泉徴収された税金(約204円相当)は個人の税金として完了しているため、帳簿には記載しないのが一般的です。これが基本です。

参考:不動産所得の確定申告での借入金利子の取り扱いについては、国税庁の公式情報が最も信頼性が高いです。

国税庁|No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算

個人事業主の支払利息を経費にする際の勘定科目と仕訳方法

不動産業に取り組む個人事業主の多くは、物件取得にあたって金融機関からローンを組んでいます。毎月の返済のうち、元本部分は単なる借入金の減少であり経費にはなりません。経費として認められるのは利息部分のみです。

利息部分の経費計上は「支払利息」または「利子割引料」の勘定科目を使います。仕訳は以下のように整理できます。

内容 借方(経費) 貸方
毎月のローン返済(元本10万円+利息1万円) 支払利息 10,000円 / 借入金 100,000円 普通預金 110,000円
事業用借入の利息のみ支払い 支払利息 ○○円 普通預金 ○○円

なお、利息の支払いは消費税の非課税取引です。そのため、消費税の仕入税額控除の対象にはなりません。会計ソフトで仕訳する際には、税区分を「非課税」に設定してください。これは必須です。

不動産賃貸と自宅を兼用している物件がある場合は、家事按分が必要になります。たとえば自宅兼賃貸物件のローン利息が月3万円で、賃貸スペースが延床面積の60%を占めるなら、経費にできる利息は月18,000円(3万円×60%)です。私的利用分の12,000円は「事業主貸」として処理し、経費には含めません。

【仕訳例②:住宅兼事務所ローンの利息を家事按分(60%事業利用)】

借方 金額 貸方 金額
支払利息(利子割引料) 18,000円 普通預金 30,000円
事業主貸 12,000円

按分の根拠(面積・使用時間など)はあらかじめ記録しておくことで、税務調査時の説明が格段に楽になります。

確定申告時に経費計上した利息は、青色申告決算書の「利子割引料」欄にまとめて記入します。ここに正確な金額を記入することで、その年の所得を正当に圧縮できます。

参考:freee公式サイトによる個人事業主のローン返済時の勘定科目の解説

freee|個人事業主がローン返済をした際の勘定科目は?経費計上に関して解説

不動産所得が赤字のとき「利息の勘定科目」処理で損する落とし穴

不動産従事者が特に注意すべきなのが、不動産所得が赤字になった年の土地部分の借入金利息の取り扱いです。これを知らないと、確定申告で大きな誤りを犯すことになります。

原則として、土地・建物を購入するために使った借入金の利息は全額経費として計上できます。ただし、不動産所得が赤字になった場合は、土地取得に対応する部分の利息(土地負債利子)は損益通算から除外されます。これは所得税法第69条のルールです。

損益通算とは、不動産所得の赤字を給与所得など他の所得の黒字と相殺して、課税所得を下げる節税手法です。金額が大きいほど節税効果も大きくなるため、多くの不動産オーナーが活用しています。しかし、赤字の内訳に土地取得分の利息が含まれていると、その部分は相殺に使えません。

土地負債利子の計算方法は以下のとおりです。

$$土地負債利子 = 借入金利息合計 \times \frac{土地取得に要した借入金}{借入金総額}$$

たとえば、土地3,000万円・建物2,000万円の物件を3,500万円借入れで取得し、年間利息が70万円だった場合を考えます。

  • 建物取得に充当した借入金:2,000万円
  • 土地取得に充当した借入金:3,500万円 − 2,000万円 = 1,500万円
  • 土地負債利子:70万円 × 1,500万円 ÷ 3,500万円 = 約30万円

この30万円が損益通算から除外されます。

不動産所得の赤字が20万円だった場合、赤字20万円はすべて土地負債利子の範囲内なので、損益通算に使える赤字はゼロになります。痛いですね。仮に赤字が50万円だったとしても、土地負債利子30万円を差し引いた20万円しか他の所得と損益通算できません。

この取り扱いを知らずに全額損益通算してしまうと、後から修正申告や税務調査での指摘を受け、加算税と延滞税を合わせると数万円〜数十万円の追加納付が生じることもあります。確定申告書B第一表に記入する際は、収支内訳書の「土地等を取得するために要した負債の利子の額」欄に土地負債利子を正確に記入するようにしましょう。

参考:LIFULL HOME’Sによる土地負債利子の計算方法と確定申告注意点の解説

LIFULL HOME’S|借入金利息で取扱いに注意が必要な3つのケース!土地負債利子は損益通算不可

業務開始前の利息と親族借入の利息:勘定科目の注意点【独自視点】

不動産投資の初期段階では、物件を取得してから実際に入居者を迎えるまでの空白期間が生まれます。この間に発生する借入金の利息について、「もう経費に計上していい」と思い込んでいる方が非常に多いです。意外ですね。

実は業務開始前に発生した利息は、経費ではなく建物の取得価額(取得費)に加算するのが原則です(所得税法基本通達37-27)。業務開始前とは、入居者の募集や仲介会社への依頼など、実際に賃貸業務に着手するより前の期間を指します。

ただし、注意点があります。

  • すでに賃貸業を営んでいる人が新たな物件を追加取得する場合:業務開始前でも利息は全額経費に計上できる
  • 初めて不動産賃貸業を始める人が最初の物件を取得する場合:業務開始までの利息は取得費に加算し、経費処理は業務開始後から

2棟目・3棟目を取得する既存の不動産オーナーと、これから初めて賃貸物件を購入する方では、まったく処理が異なります。これは見落としやすいです。

もう一つ、親族からの借入れに関しても確認しておきましょう。収益物件の購入で親族から資金を借りることは珍しくありません。利息の経費計上ができるかどうかは、生計が同じかどうかで大きく変わります。

借入先の親族との関係 支払利息の経費計上 貸した親族側の扱い
生計が別の族(別世帯・一人暮らしの子など) ✅ 経費に計上できる 雑所得として確定申告が必要
生計が同一の親族(同居の配偶者・親など) ❌ 経費に計上できない 所得なしとみなされる

同一生計の親族との間では、利息の支払いそのものが税務上なかったものとして扱われます。「利息を払ったのだから経費にしよう」と仕訳しても認められません。

これらの利息を誤って経費に計上していた場合、税務調査では真っ先に確認される項目の一つです。結果として否認された場合には、所得の再計算と追徴課税が発生します。

参考:澁谷典彦税理士事務所によるコラム「開業日と業務開始前の借入金利子について」

澁谷典彦税理士事務所|「開業日」と業務開始前の借入金利子について

利息の勘定科目を確定申告で正しく記入する方法と青色申告の活用

支払利息・受取利息・事業主借の3つを正しく仕訳できていても、確定申告書への記入が間違っていては意味がありません。ここでは、不動産収入のある個人事業主が確定申告で利息関連をどの欄に記入するかを確認します。

【支払利息(借入金利息)の記入箇所】

不動産所得がある個人事業主は、確定申告で「不動産所得用の収支内訳書」または「青色申告決算書(不動産所得用)」を使います。支払った借入金利息は、この書類の「借入金利子」欄に記入します。事業所得と不動産所得の両方がある場合は、それぞれの書類に分けて記入が必要です。

  • 📌 青色申告決算書(事業所得用):「利子割引料」欄に事業用借入の利息を記入
  • 📌 収支内訳書(不動産所得用):「借入金利子」欄に不動産取得ローンの利息を記入
  • 📌 不動産所得が赤字の場合:「土地等を取得するために要した負債の利子の額」欄にも記入が必要

青色申告を選択することには、利息の処理においても大きなメリットがあります。青色申告特別控除(最大65万円)を活用すると、事業収入から65万円を差し引いた額が課税所得になります。たとえば、年間の支払利息が30万円で青色申告特別控除が65万円なら、合計95万円を経費・控除として所得から減らせます。

65万円の控除を受けるには、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存と、複式簿記による帳簿の作成が条件です。簡易簿記であれば控除額は10万円に下がります。これが条件です。

【受取利息・事業主借の確定申告への影響】

事業用口座の預金利息は「事業主借」で処理し、確定申告の事業所得には影響しません。確定申告書の収支内訳書や青色申告決算書に預金利息を記載する欄はないため、そのまま提出して問題ありません。

一方、取引先などへの事業上の貸付から得た利息は「受取利息」として事業所得に含め、青色申告決算書の収入欄に記入します。個人的な貸付から得た利息は「雑所得」として確定申告書の雑所得欄に別途記入します。雑所得と事業所得は別枠で申告するということですね。

帳簿管理をクラウド会計ソフトで行うことで、確定申告書への転記ミスが大幅に減ります。マネーフォワード クラウドやfreeeといったサービスは、銀行口座の明細を自動取得して仕訳を提案してくれるため、利息の仕訳も自動で振り分けられるケースが増えています。利息の勘定科目が自動で「事業主借」に設定されているかどうかを最初に確認しておくと安心です。

参考:マネーフォワードによる個人事業主の利息仕訳の総合解説

マネーフォワード クラウド|個人事業主の利息の仕訳は?勘定科目や注意点をわかりやすく解説

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