不動産テック上場企業の全体像とサービスで業務効率化を実現する方法
不動産テックを「導入しなくても今の仕事は回る」と思うと、競合他社に顧客を奪われます。
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不動産テックとは何か|上場企業が牽引する業界変革の背景
不動産テックとは、「不動産(Real Estate)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語で、AI・IoT・VR・クラウドなどのデジタル技術を活用して不動産業務を変革する取り組みの総称です。英語では「PropTech(プロップテック)」とも呼ばれます。
具体的には、AI査定・オンライン内見(VR)・電子契約・賃貸管理クラウド・不動産クラウドファンディングなど、幅広い技術とサービスが含まれます。一般社団法人不動産テック協会が2025年8月に発表した「不動産テックカオスマップ第11版」には、528ものサービスが12のカテゴリーに分類されており、前年比29サービス増という勢いで市場が拡大しています。
不動産業界でテック化が加速している背景には、複数の社会的要因があります。まず、少子高齢化による人手不足です。現場の業務量を圧縮しなければ、事業継続が難しくなっています。次に、コロナ禍で一気に進んだデジタル化の流れです。対面重視だった商習慣が変わり始め、オンライン完結型のサービスへの需要が高まりました。さらに2022年5月の宅建業法改正で電子契約が解禁されたことで、契約プロセスのデジタル化が法的にも後押しされています。
それにもかかわらず、いえらぶGROUPが2023年に実施した調査では、DXに前向きな不動産会社は48.0%にとどまり、全産業の平均値52.3%を下回っています。つまり、業界全体のデジタル化はまだ道半ばです。一方、DXに取り組んだ不動産会社の8割以上が業務効率化を実感しているというデータもあり、取り組む企業とそうでない企業の差が開き始めています。
取り組むか否かで生産性の差がつく時代に入っています。上場企業が提供するサービスを理解することは、不動産従事者として今後の競争で生き残るための重要な一歩です。
矢野経済研究所が発表した不動産テック市場予測の詳細はこちら(市場規模の根拠データを確認できます):
矢野経済研究所「不動産テック市場に関する調査(2024年)」
不動産テック上場企業の一覧|市場別・サービス区分で整理する
不動産テック系の上場企業は、事業内容によっておおきく「プラットフォーム型」「SaaS・ツール型」「リアル×テック融合型」「クラウドファンディング型」の4区分に分けられます。それぞれの代表的な上場企業を確認しましょう。
| 区分 | 企業名 | 市場 | 主なサービス |
|---|---|---|---|
| プラットフォーム型 | LIFULL(2120) | 東証プライム | 不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」 |
| リアル×テック融合型 | GA technologies(3491) | 東証グロース | 不動産流通プラットフォーム「@RENOSY」 |
| リアル×テック融合型 | SREホールディングス(2980) | 東証プライム | AI査定・「おうちダイレクト」 |
| SaaS・ツール型 | いい生活(3796) | 東証スタンダード | 「ESいい物件One」「pocketpost」 |
| SaaS・ツール型 | 日本情報クリエイト(4054) | 東証グロース | 仲介・管理向けプラットフォーム |
| SaaS・ツール型 | いえらぶGROUP(3280) | 東証グロース | 「いえらぶCLOUD」(取引社数12,000社超) |
| SaaS・ツール型 | Cocolive(137A) | 東証グロース | 不動産向けMA「KASIKA」 |
| クラウドファンディング型 | ロードスターキャピタル(3482) | 東証プライム | 「OwnersBook」 |
| クラウドファンディング型 | クリアル(2998) | 東証グロース | 「creal」(1万円〜投資可能) |
| リアル×テック融合型 | ツクルバ(2978) | 東証グロース | 中古住宅流通サイト「カウカモ」 |
| SaaS・ツール型 | タスキHD(166A) | 東証グロース | 「TASUKI TECH」(デベロッパー向けSaaS) |
| SaaS・ツール型 | プロパティデータバンク(4389) | 東証グロース | CREクラウド「@property」 |
これが基本です。上場企業である以上、財務情報が開示されており、サービスの継続性・安定性を確認しやすい点が大きな特徴です。
不動産テック協会のカオスマップ全体像の確認はこちら(業界全体のサービス区分を把握できます):
一般社団法人不動産テック協会「不動産テックカオスマップ第11版(2025年8月)」
注目の不動産テック上場企業3社|GA technologies・SREホールディングス・LIFULLの実力
不動産テック上場企業の中でも、とくに事業規模と技術的な独自性の両面で注目度が高い3社を詳しく取り上げます。
🔷 GA technologies(GAテクノロジーズ)
2013年設立、2018年に東証マザーズ(現グロース)上場を果たした同社は、中古不動産流通プラットフォーム「@RENOSY(リノシー)」を主軸に事業を展開しています。2025年7月期第3四半期の売上高は累計1,695億円超(前年同期比+28.7%)と、不動産テック上場企業の中でも際立った成長を続けています。
新築ではなく中古住宅をメインに取り扱う点がGA technologiesの大きな特徴です。欧米では中古住宅の流通比率が8〜9割を超えるのに対し、日本では依然として新築中心であり、中古流通市場には大きな成長余地があるとGA technologies自身が見立てています。グロース上場企業の中では唯一3年連続でDX銘柄に選出されており、AI活用の深度でも業界トップクラスです。さらに子会社イタンジが提供する「ITANDI BB」は、業者間の物件情報共有において月間約1,900万PVを誇ります。これは使えそうです。
🔷 SREホールディングス
ソニーグループを親会社に持つ同社は、リアルの不動産仲介事業とAI・ITプラットフォームを組み合わせた独自のビジネスモデルが強みです。2025年12月期予想売上高は350億円(前年比+31.1%)で、経常利益率の向上も顕著です。
膨大な取引データを学習させた「不動産価格推定エンジン」は業界内でも注目度が高く、AIによる査定精度は人的査定と比較して一定水準以上の精度を実現しています。不動産仲介会社向けには、SaaSモデルで「おうちダイレクト」を提供しており、定期的なサブスクリプション収益を確保しつつ、仲介会社のDXを後押しする構造になっています。つまり、SREのサービスを活用することで仲介会社もAI査定の恩恵を受けられます。
不動産業界へのAI活用事例詳細はこちら(SREの査定AI活用の実態を確認できます):
「大手からベンチャーまで!不動産業界におけるAI活用事例を解説」
🔷 LIFULL(ライフル)
1997年創業、「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」という不動産・住宅情報ポータルサイトで知られるLIFULLは、東証プライム上場企業です。2025年9月期の売上高は281億円(前年比+6.9%)で、ポータル事業を中核に安定した収益基盤を持ちます。
物件掲載数・問い合わせ数ともに業界最大クラスのトラフィックを誇り、不動産会社にとっては集客チャネルとしての重要度が高いサービスです。2025年12月には、いえらぶGROUPとの連携により、不動産業務支援SaaS上でLIFULL HOME’Sへの掲載改善提案が可能になるなど、プラットフォームとSaaSが連携するエコシステムが広がっています。ポータルサイトとしての安定した広告モデルを持ちながら、テック側への展開を着実に進める姿勢が見られます。
不動産テック上場企業のサービスを業務に活かす|仲介・管理・査定別の選び方
上場企業のサービスを業務に取り込む際は、「自社の業務フローのどこが課題か」を先に整理することが大切です。不動産テックのサービスは多岐にわたるため、目的を絞らないと導入コストだけがかさむことになります。
📌 賃貸仲介業務に課題がある場合
物件入力・物確(物件確認)・追客など、日常的な繰り返し業務の負担が重い場合は、業務支援系のSaaSが有効です。いえらぶGROUPが提供する「いえらぶCLOUD」は、賃貸・売買・管理のすべてに対応したオールインワンシステムで、取引社数は12,000社超と業界内で高いシェアを誇ります。GA technologiesの子会社イタンジが提供する「ITANDI BB」も、業者間の物件確認が1クリックで完了するなど実務レベルでの効率化が実証されています。入力業務が3倍に効率化した事例も報告されており、現場への導入インパクトは大きいです。
📌 売買仲介・追客に課題がある場合
売買仲介では、顧客への物件提案や追客のタイミング管理が成約率に直結します。Cocolive(ココリブ)が提供する不動産向けMAツール「KASIKA」は、不動産売買に特化したマーケティングオートメーションで、顧客の行動データを元に追客を自動化する機能を持ちます。物件提案から追客メールの配信まで、一連の営業プロセスを仕組み化できるため、担当者ごとの対応品質のばらつきを減らせます。これが条件です。
📌 AIを活用した査定・価格分析を強化したい場合
SREホールディングスが提供する「不動産価格推定エンジン」は、仲介会社向けのSaaSとして提供されており、AI査定の精度を業務に組み込む選択肢として注目されています。査定にかかる時間の短縮はもちろん、根拠のあるデータを顧客に提示できる点が差別化につながります。
📌 投資物件や不動産クラウドファンディングを扱う場合
ロードスターキャピタルの「OwnersBook」やクリアルの「creal」は、不動産クラウドファンディングプラットフォームとして上場企業が運営しているため、財務情報や運用実績の透明性が高いのが特徴です。顧客への投資提案の際、上場企業が運営するプラットフォームであることは信頼性の根拠として活用できます。
不動産業界のDX推進状況の調査データはこちら(取り組み企業と未取り組み企業の差を確認できます):
いえらぶGROUP「DXに前向きな不動産会社は48.0%、全産業平均を下回る」(PR TIMES)
不動産テック上場企業が増える今、業界従事者が知るべき独自視点|「上場」という条件が取引相手選びを変える
不動産テックサービスを導入する際、多くの不動産従事者は「機能」や「価格」を最初に比較します。ただ、上場企業かどうかという観点も、実は業務に直結する重要な判断基準になります。
上場企業であるということは、四半期ごとに決算情報が開示されており、サービスの継続性や企業の財務健全性を外部から確認できるということです。SaaSツールを導入したものの、提供会社が突然サービスを終了した場合のコストは甚大です。顧客データの移行・業務フローの再構築・新規ツールの選定と導入訓練。現場へのダメージは大きいです。
実際に、不動産テック業界ではM&Aや資金難によるサービス終了のリスクが以前から指摘されています。非上場のスタートアップを中心に、資金調達ができなくなった段階でサービス提供が突然停止するケースも国内外で起きています。上場企業であれば、少なくとも株主・投資家に対して財務開示義務があるため、経営状況の急変を事前にキャッチしやすい環境があります。
一方で、上場企業であれば必ずしも安心とは言い切れない側面もあります。たとえばGA technologiesのような急成長企業は、利益率よりも売上拡大を優先するフェーズにある場合があり、経常利益率が数%にとどまっている時期もあります。上場企業のサービスを選ぶ際は、利益率・財務の安定性・サービスの継続実績も合わせて確認するのが原則です。
また、上場企業が提供するサービスの多くは、プライバシーポリシーや情報セキュリティ対策の開示水準が高い傾向にあります。不動産業務では顧客の個人情報・取引履歴・資産情報など非常にセンシティブなデータを扱うため、データ管理体制が整った企業のサービスを選ぶことが将来的なコンプライアンスリスクの回避につながります。
「上場企業のサービスを使うから安心」ではなく、「上場している企業だからこそ情報を確認する手段がある」という視点で選定するのが賢明です。上場しているかどうかを確認するだけなら、東証の新規上場会社情報や各社のIRページで調べることができます。確認が必須です。
東証上場企業のIR情報確認はこちら(各社の財務状況・開示情報を確認できます):
日本取引所グループ「新規上場会社情報」
不動産テック上場企業と市場トレンド|2030年に向けて不動産従事者が動く理由
矢野経済研究所の調査によると、2022年度の不動産テック市場規模は9,402億円(前年度比+21.1%増)でした。これが2030年度には2兆3,780億円、つまり約2.5倍に拡大すると予測されています。東京ドーム換算ではなく、日本の全不動産業者の年間総取引の規模と比較しても、無視できないボリュームです。
このうち、BtoC領域(消費者向けサービス)は2030年度に1兆8,600億円と、約2.6倍に拡大予測がされています。つまり、テクノロジーが一般消費者に届くスピードが上がっており、不動産会社が「テックを使っていない」状態は、顧客から見えやすくなります。
2025年8月のカオスマップ第11版で特に注目されるのは、生成AI分野の急拡大です。前年比116%増という伸びで掲載サービスが増加しており、物件説明文の自動生成・チャットボット対応・契約書レビューの自動化など、現場の実務に直結するAIツールが急速に普及し始めています。
こうしたトレンドを受け、不動産テック上場企業各社も生成AIへの対応を急いでいます。GA technologiesはAIを中核に据えた投資プラットフォームへの転換を宣言し、2025年12月期の事業利益は前年比+88.6%という大幅増益となっています。SREホールディングスはAI査定の精度向上と、不動産仲介会社向けサービスの機能拡充を進めています。いえらぶGROUPは、2025年12月にLIFULL HOME’Sと連携し、物件掲載の改善提案機能を業務支援SaaS内に搭載しました。
不動産テックを「取引相手が使うもの」ではなく「自社が使うツール」として捉え直す必要があります。不動産テック上場企業が提供するサービスのほとんどは、BtoBを主体としており、仲介会社・管理会社・デベロッパーなど不動産業務の現場に向けて提供されているものです。
市場の拡大は続きます。ただし、同じ市場の中で差がついていくのは、今どのサービスを選んで動き始めているかです。上場企業のサービスを比較検討することは、財務情報や実績を根拠に「安定して使えるか」を判断できるという意味で、不動産従事者にとって合理的な一歩になります。
不動産テック市場規模の推移と将来予測のデータはこちら(市場拡大の具体的な数値を確認できます):
矢野経済研究所「2024年版 不動産テック市場の実態と展望」

不動産テックの課題
