公図の見方と記号を完全解説、不動産調査の精度が上がる

公図の見方と記号の意味を正しく理解する

公図を「なんとなく」読んでいると、契約後に数百万円規模の損失につながるリスクがある。

📋 この記事の3つのポイント
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公図の基本記号を正確に読む

地番・筆界・縮尺・精度区分など、公図に記載される各要素の意味と見方を体系的に整理します。

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「道」「水」「+」記号が示す危険サイン

無地番地や筆界未定を示す記号を見落とすと、建築制限・売却困難・融資不可につながる実務上のリスクがあります。

公図と現況のズレを確認する手順

明治時代の旧公図を元にした図面は現況と大きく異なる場合があります。ズレを発見する具体的な確認方法を解説します。


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公図の基本構造と地番・筆界の見方

 

公図とは、法務局(登記所)に備え付けられた図面で、土地の位置・形状・地番・隣接関係を示した地図のことです。正式には「不動産登記法第14条に基づく地図」と「地図に準ずる図面」の2種類に分かれますが、実務の現場では両者をまとめて「公図」と呼ぶのが一般的です。

まず図面内に書かれている数字に着目してください。これがすべて「地番(ちばん)」です。地番は土地一筆ごとに法務局が管理する番号であり、普段使う住居表示(郵便住所)とは別物です。たとえば住居表示が「〇〇市△△町1丁目2番3号」であっても、地番は「〇〇市△△町123番地4」のように全く異なるケースが大半です。

これは基本が原則です。

不動産取引の実務では、売買契約書・登記申請・抵当権設定の際に「地番」を正確に使わないと手続きが通らなくなります。住居表示だけをもとに法務局へ行っても、目的の公図が取得できない場合があるため、事前に地番を確認しておくことが重要です。地番は、法務局に備え付けの「ブルーマップ(住居表示と地番を重ね合わせた地図)」か、法務局窓口の担当者に問い合わせれば特定できます。

次に、図面内の「線」について確認します。公図上に引かれているすべての区画線は「筆界(ひっかい・ふでかい)」と呼ばれ、登記上の土地と土地の境目を示しています。ここで注意が必要なのは、筆界はあくまで「登記上の線」であり、現地に存在するブロック塀やフェンス(所有権界)と必ずしも一致しないという点です。公図の線と現地の塀の位置がズレている「越境」のトラブルは不動産実務でも頻繁に起きています。公図を確認した後、必ず現地での照合作業を行うことが不可欠です。

なお、地番の枝番(例:123-4)が付いている場合は、もともとの土地から「分筆」された土地であることを示しています。

公図の見方・読み方(地番・筆界・縮尺・記号を詳しく解説)

公図の記号一覧:縮尺・精度区分・イロハ表記の読み方

公図には図面内の区画だけでなく、下部の表記欄にも重要な情報が記載されています。ここを見落とすと、その公図がどの程度信頼できるかを判断できません。

縮尺について、公図でもっとも多く見られるのは「600分の1(1/600)」です。これは、明治時代の地租改正時に尺貫法で作成されたことに由来しており、「1間=1分」という比率がそのまま残っています。市街地の14条地図では250分の1や500分の1、山林・原野では1000分の1や2500分の1など、地域によって縮尺が異なります。縮尺なしの図面が存在することも珍しくなく、その場合は距離や面積の推測ができません。600分の1の公図であれば三角スケールを当てることでおおよその寸法を読み取ることも可能ですが、精密な測量の代わりにはなりません。あくまで目安程度と考えておくのが原則です。

精度区分は「甲1・甲2・甲3・乙1・乙2・乙3」の6段階で、甲1が最も誤差が小さい区分です。法務局の下部表記欄に記載されており、市街地地域では「甲2まで」、山林・原野地域では「乙3まで」が許容誤差の基準とされています。一般的な実務で精度区分を細かく意識する場面は多くありませんが、「地図に準ずる図面」で精度区分欄に斜線が引かれている場合は、精度に関する記録がない古い図面である可能性が高く、境界確認においては別途測量が必要です。

分類と種類の欄には「14条地図(地図)」か「地図に準ずる図面」かが記載されています。14条地図は高精度で座標値も持つ信頼性の高い地図ですが、現時点では全国の約59%にとどまっています(法務局地図作成事業のデータより)。残りの約41%は精度の低い「地図に準ずる図面」です。つまり、手にした公図が14条地図でない可能性は決して低くありません。

左上のイロハ表記は、図面内に地番を書き込むスペースが狭すぎる場合に、枠外に地番を表記したものです。「イ」「ロ」「ハ」などのカナが書かれていたら、その記号に対応する地番が別途枠外に記されているので確認が必要です。

法務局公式:「地図」と「地図に準ずる図面(公図)」の違い(法務局山形地方法務局)

公図の「道」「水」記号と赤線・青線の読み方

公図を見ていると、数字の地番が記されていない区画に「道」または「水」という文字が書かれていることがあります。これが実務上でもっとも重要な記号のひとつです。

これらは「無地番地(むちばんち)」と呼ばれ、登記簿上の所有者が存在しない(あるいは国・市町村が所有する)公共的な土地です。旧来の公図(旧公図)では、道路にあたる部分を赤く塗った「赤線(あかせん)」、水路にあたる部分を青く塗った「青線(あおせん)」で区別していましたが、現在の公図では着色がなく「道」「水」の文字のみで表記されています。

  • 「道」と書かれた区画 → 里道(法定外公共物)。かつての農道・細道が多く、道路法が適用されない場合があります。建築基準法上の道路として認定されていないケースもあるため、接道義務を満たせず「再建築不可」となる土地が隣接している危険があります。
  • 「水」と書かれた区画 → 水路・河川敷(法定外公共物)。現況がすでに水路として機能していない場合でも、用途廃止の手続きを踏まなければ建物を建てたり、購入したりすることができません。水路をまたいで宅地に接するケースでは、市区町村から占用許可を取得しての橋(暗渠)設置が必要で、この手続きが取得できないと建築が不可能になります。

「道」「水」の記号が対象地の接道部分に関わっている場合は特に注意が必要です。

ここで不動産実務上の重要な落とし穴を整理しておきます。現況の公図に「道」と書かれていても、実際には家屋が建ち並んでいるケースがあります。反対に、公図上では何も表記がなくても、現地に細い水路が残っているケースも存在します。これは明治期以降の転写ミスや地形変化が積み重なった結果です。

法定外公共物(里道・水路)に関するリスクは不動産取引上も大きく、占用使用料の発生・購入手続きの長期化・建築制限など、金銭的にも時間的にも大きなコストが伴います。そのため、公図上で対象地に「道」「水」が接している場合は、必ず市区町村の担当窓口に問い合わせて管理状況を確認するのが原則です。

不動産流通推進センター「マイスター」:対象不動産に水路・里道が存するリスク(PDF)

公図の「+(プラス)」記号と黒い丸●の意味

公図を見ていると、数字の地番が「1-1+1-3+1-4」のように「+(プラス)」でつながれている区画を目にすることがあります。これを見て「共有地かな?」と思ってしまうと大きな誤解です。

この記号が示しているのは「筆界未定(ひっかいみてい)」の状態です。過去の地籍調査の際に、隣接する土地所有者との境界が確定できなかった、あるいは所有者が立会いに応じなかったために、複数の地番がまとめて処理されたことを意味しています。

筆界未定地のリスクは非常に深刻です。

影響する手続き 具体的な内容
分筆・合筆 境界が未確定のため不可
地積更正登記 未確定のため原則不可
売買・融資 関係する筆界未定地の所有者全員の承諾が必要になるケースあり
地積調査 解消には専門家(土地家屋調査士)の関与が必要

特に売却時のトラブルは深刻です。筆界未定が解消されないまま売却しようとすると、住宅ローンを利用する買主への担保評価がつかず、融資が下りない可能性が高いです。これが条件です。解消するためには「筆界特定制度」の利用(法務局申請)や、土地家屋調査士による境界確定作業が必要で、費用も時間もかかります。

次に、境界線上に打たれた黒い丸(●)の意味も整理しておきましょう。

  • ●が4つ連なっている → 市町村界(市区町村の境界)
  • ●が3つ連なっている → 大字界(町の境界)
  • ●が2つ連なっている → 字界(小字の境界)

黒丸の数で行政区画の境界レベルがわかるということですね。これらは「地籍図の様式を定める省令」によって細かく規定されており、黒丸の大きさは0.3mm・間隔は2.0mmと定められています。実務上、この記号が取引の可否を直接左右することは少ないですが、広大な土地の調査や境界トラブルの際には参照する価値があります。

さらに14条地図には「㊉(丸に十字)」や「Φ(縦線入りの丸)」に似た記号が描かれていることがあります。㊉は「細部図根点」、Φは「図根多角点」と呼ばれる測量基準点です。地籍調査時の測量に使われた基準点の記録であり、一般的な不動産調査では特に気にする必要はありません。意外ですね。

公図の見方〜境界線上の黒い丸の意味(地籍図の様式を定める省令による規定)

公図と現況のズレを見抜く独自確認の手順

「公図と現況が一致しないのはレアなケースだ」と思っている不動産従事者は少なくありません。しかし現実には、法務局に備え付けられている公図の半数近くが明治時代の測量に基づく「地図に準ずる図面」であり、現況とのズレは日常的に起きています。

地図に準ずる図面は600分の1縮尺で作成されていますが、当時の測量技術の限界から、現地では大きな誤差が生じている場合があります。さらに、転写作業の手作業ミスや折り目の破損なども重なり、信頼性は14条地図に比べてかなり低いと言わざるを得ません。

ズレを確認するための実務的な手順は以下の通りです。

地積測量図との照合

法務局では公図と合わせて「地積測量図」も取得できます(1通500円程度)。地積測量図は分筆登記や地積更正の際に提出された精密な測量図面で、各辺の長さや面積が数値で記載されています。公図の形状と地積測量図の数値・形状が大きく異なる場合は、現況確認が必須です。地積測量図が存在しない土地では、特に注意が必要です。

② 現地でのメジャー計測

接道部分の幅(間口)については、公図だけで判断するのは危険です。実際にメジャーを当ててみると、ブロック塀の厚みや越境部分のせいで有効幅が2m未満になっているケースがあります。建築基準法上の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接すること)を満たせない場合、そのまま再建築不可になります。これは必須作業です。

③ Googleマップ航空写真との比較

現地訪問前の事前調査として、Googleマップの航空写真モードと公図の形状を重ねて見比べる方法は非常に有効です。「公図には道と書かれているのに、航空写真では建物が建っている」「公図の形と全然違う」といった大きな矛盾を早期に発見できます。

④ 法務局窓口での旧公図・変更履歴の確認

現在の公図だけでは判断が難しい場合、法務局で旧公図(古い原図)を閲覧申請することができます。旧公図には赤線・青線の着色が残っているケースもあり、「道」「水」の状況がより明確に把握できる場合があります。また、法務局の担当者に直接相談することで、地番の確認や転写ミスの疑いがある区画の整理に協力してもらえることもあります。

公図だけで判断するのはリスクがあります。複数の資料・現地確認・専門家への相談を組み合わせることで、初めて公図の情報を実務に活かせるということですね。

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