高齢者等配慮対策等級〔専用部分〕3以上で得する住宅性能活用術

高齢者等配慮対策等級〔専用部分〕3以上を不動産取引で最大限活用する方法

等級3を取得しても、書類の種類を間違えると1,000万円の贈与税非課税が一切使えません。

この記事のポイント
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等級3の基準を正確に把握する

廊下幅780mm・浴室短辺1,300mm以上など、専用部分の具体的な寸法基準を理解することが取引時の説明力に直結します。

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税制優遇・フラット35Sとの連動を理解する

贈与税非課税1,000万円・フラット35S金利Bプランなど、等級3以上が条件となる制度を把握しておくと、顧客への提案力が格段に上がります。

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証明書の種類と取得手続きを使いこなす

住宅性能証明書・住宅性能評価書・設計内容説明書の違いを理解し、適切な場面で正確に案内できるかどうかが実務のカギです。


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高齢者等配慮対策等級〔専用部分〕3以上とはどういう制度か

「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく住宅性能表示制度の中に、「9-1 高齢者等配慮対策等級(専用部分)」という評価項目があります。住戸内における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度を、等級1〜5の5段階で表示するものです。つまり、等級3以上はその中でも「バリアフリーとして一定以上の対策が講じられている」と国が認めた水準ということになります。

この評価は大きく2つの視点で構成されています。1つは「移動時の安全性に配慮した処置」、もう1つは「介助の容易性に配慮した処置」です。等級2以下では移動時の安全性だけが評価対象ですが、等級3以上になると介助用車いすの使用者が基本的な生活行為を行えるよう配慮する「介助の容易性」の要件が加わります。この点が、等級2と等級3の間にある大きな壁です。

等級が重要な理由はシンプルです。等級3以上であるかどうかが、複数の住宅取得支援制度の利用条件として明示されているからです。不動産業務に関わる方が「なんとなくバリアフリーの話でしょ」と思っていると、顧客が受け取れるはずだった数百万円の優遇を逃すことになりかねません。

等級3が条件のひとつです。ここをしっかり押さえておくことが業務品質に直結します。

等級 水準の概要 介助の容易性対策
等級5 自走式車いすでの移動も考慮した高度な対策 廊下幅850mm以上・出入口800mm以上
等級4 介助用車いすでの移動が余裕を持って可能な水準 廊下幅780mm以上・出入口750mm以上
等級3 ✅ 介助用車いすでの基本的生活行為が可能な最低水準 廊下幅780mm以上・出入口750mm以上(等級4と同数値、浴室短辺1,300mm以上)
等級2 移動時の安全性のみに基本的配慮 なし
等級1 建築基準法の最低水準のみ なし

不動産取引では「等級の有無」だけでなく「何等級か」まで確認するのが原則です。

参考:住宅性能評価・表示協会による等級の詳細説明(専用部分・共用部分の違いも含む)

住宅性能評価・表示協会「高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)」

高齢者等配慮対策等級〔専用部分〕3以上の具体的な基準と寸法

等級3の内容を実務で使えるレベルまで理解するには、「日常生活空間」という概念を把握することが最初のステップです。これは、主たる玄関・便所・浴室・脱衣室・洗面所・寝室(特定寝室)・食事室と、それらを結ぶ主たる経路のことを指します。等級3の基準は、この「日常生活空間内」が対象となります。

具体的な数値基準は以下の通りです。不動産業務の現場で図面を見るとき、これらの数字をチェックリストとして活用できます。

  • 🔹 廊下の有効幅員:780mm以上(柱の箇所は750mm以上)。これは一般的な新聞紙の横幅(約800mm)とほぼ同じ感覚です。
  • 🔹 出入口の幅員:750mm以上(浴室は600mm以上)。
  • 🔹 浴室の短辺:内法で1,300mm以上(一戸建て)、1,200mm以上(共同住宅)。面積はそれぞれ2.0㎡以上・1.8㎡以上が必要。
  • 🔹 特定寝室の面積:内法で9㎡以上(畳約5.5枚分)。
  • 🔹 便所:便器は腰掛け式とし、長辺が1,300mm以上か、前方または側方と壁の距離が500mm以上であること。
  • 🔹 段差:日常生活空間内の床は原則段差なし。ただし玄関くつずりと玄関外側の高低差が20mm以下かつくつずりと土間の高低差が5mm以下であれば適用除外
  • 🔹 階段:けあげ(R)と踏面(T)が「550mm≦T+2R≦650mm」かつ「T≧195mm」の式を満たすこと。蹴込みは30mm以下。
  • 🔹 手すり:階段の少なくとも片側・便所(立ち座り用)・浴室(浴槽出入り用)に設置。玄関・脱衣室には設置できるスペースを確保。

これが条件です。図面確認の際にこれらの数値を拾う習慣をつけておくと、説明時の精度が大きく変わります。

一点、意外と見落とされやすいのが「浴室の段差」の扱いです。等級3では浴室出入口の段差について「20mm以下の単純段差」または「浴室内外の高低差120mm以下、またぎ高さ180mm以下で手すりを設置」という条件を満たせば適用除外として認められます。つまり、浴室だけは一定の条件付きで段差が許容されているのです。意外ですね。

参考:住宅金融支援機構が発行するバリアフリー基準の詳細資料(寸法基準図あり)

フラット35「バリアフリー性に関する基準〔高齢者等配慮対策等級3〕」(PDF)

高齢者等配慮対策等級〔専用部分〕3以上が条件となる税制優遇と住宅ローン

不動産従事者として最も重要な情報のひとつが、等級3以上に連動する各種の経済的メリットです。顧客が受け取れる恩恵の総額は、場合によっては数百万円規模になります。これを理解しているかどうかが、提案の質を大きく左右します。

① 住宅取得等資金贈与の非課税特例(贈与税非課税)

直系尊属(父母・祖父母など)から住宅取得資金の贈与を受ける場合に、省エネ等住宅に該当すると1,000万円まで贈与税が非課税になります。この「省エネ等住宅」の要件のひとつが「高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上」です。それ以外の住宅は500万円が上限となるため、等級3以上かどうかで非課税枠に500万円の差が生じます。2026年12月31日まで適用される制度なので、現在進行形の取引に直接影響します。

1,000万円と500万円の差は大きいですね。

② フラット35S(金利Bプラン)

住宅金融支援機構の長期固定金利住宅ローン「フラット35」の優遇版である「フラット35S」の金利Bプランでは、高齢者等配慮対策等級3以上の住宅が要件のひとつとなっています。当初5年間、金利が一定幅(金利Bプランでは0.25%)引き下げられます。なお、フラット35S金利Aプランでは一戸建ての場合は等級4以上が必要ですが、共同住宅(マンション)の専用部分であれば等級3でも金利Aプランの対象になる点は見落とされがちです。

つまり、新築マンションと新築一戸建てでは必要な等級が異なります。これは知ってると得する情報です。

③ フラット35S(中古住宅)

中古住宅においても、フラット35S金利Aプランのバリアフリー性の要件として高齢者等配慮対策等級3以上が明示されています。中古物件を取り扱う際にも等級の確認を怠らないことが重要です。

制度名 等級の要件 メリット
贈与税非課税特例 等級3以上(専用部分) 非課税枠500万円 → 1,000万円に拡大
フラット35S 金利Bプラン(新築) 等級3以上(専用部分) 当初5年間0.25%金利引き下げ
フラット35S 金利Aプラン(新築マンション専用部分) 等級3以上で可(一戸建ては等級4以上が必要) 当初5年間0.5%金利引き下げ
フラット35S 金利Aプラン(中古住宅 等級3以上(専用部分) 当初5年間0.5%金利引き下げ

参考:住宅金融支援機構によるフラット35S技術基準の公式一覧

住宅金融支援機構「【フラット35】S プランと技術基準」

参考:国税庁による住宅取得等資金贈与の非課税制度の詳細

国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

高齢者等配慮対策等級〔専用部分〕3以上の証明書の種類と確認手順

等級3以上であることを制度利用に活用するためには、適切な書類が必要です。「等級3らしい家だから大丈夫」では通用しません。書類の種類を間違えると制度が使えないケースがあるため、不動産従事者として正確に把握しておく必要があります。

住宅性能評価書(設計・建設)

住宅性能表示制度に基づき、国土交通大臣の登録を受けた「登録住宅性能評価機関」が評価・発行します。「設計住宅性能評価書」は設計段階で交付され、「建設住宅性能評価書」は工事完了後の検査を経て交付されます。費用は設計・建設の両方で合計30万円前後が目安です。交付までの標準期間は一戸建てで約2週間です。

住宅性能証明書

住宅性能評価書の評価項目のうち、耐震性・省エネルギー性・バリアフリー性の3項目のみを対象に証明するものです。贈与税非課税特例の申請に使う場合はこちらの書類でも対応可能です。発行機関は指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、または住宅瑕疵担保責任保険法人です。

設計内容説明書

フラット35S(バリアフリー性)の物件検査申請に添付する書類として使用されます。「設計内容説明書【高齢者等配慮対策等級3以上】」という形式があり、バリアフリーに特化した内容確認が可能な書類です。

中古住宅の場合は「既存住宅性能評価書」が対応します。ただし、既存住宅では評価できない項目も存在するため、取り扱い時は事前に評価機関に確認するのが安全です。

  • 📄 住宅性能評価書:新築時に評価機関が全項目を評価・発行。約30万円・約2週間。
  • 📄 住宅性能証明書:3項目限定の証明書。贈与税特例申請でも使用可。
  • 📄 設計内容説明書:フラット35S物件検査用。バリアフリーの詳細確認に特化。
  • 📄 既存住宅性能評価書:中古住宅向けの評価書。評価可能な項目に制限あり。

書類の種類が条件です。顧客に制度説明をする前に、どの書類が必要かを必ず確認する習慣をつけましょう。

なお、贈与税申告に際しては住宅性能証明書に加えて「確認済証の写し」または「検査済証の写し」の添付が必要な場合があります。書類の過不足は申告不備につながるため、税理士への確認も合わせて案内できると安心です。

不動産取引で等級3の見落としを防ぐ独自チェックポイント

実務では「物件に等級3の評価があると把握していなかった」「逆に等級3だと思い込んでいた」というケースが現場で起こります。等級の記載ミス・取り違え・確認漏れは、顧客の不利益に直結します。ここでは、現場で役立つ独自の確認ポイントを整理します。

💡 ポイント1:「等級3相当」は等級3ではない

よく混同されるのが「相当」という表現です。「耐震等級3相当」と同様に、「バリアフリー等級3相当」という表現は、住宅性能評価機関による第三者評価を受けていないことを意味します。設計上は基準を満たす仕様でも、評価書・証明書が発行されていなければ贈与税非課税特例もフラット35Sも利用できません。「等級3相当」は等級3ではない、これが原則です。

💡 ポイント2:共同住宅では「専用部分」と「共用部分」が別評価

マンション等の共同住宅では、「9-1 専用部分(住戸内)」と「9-2 共用部分(共用廊下・エレベーター等)」が別々に評価されます。フラット35Sや贈与税特例の要件では専用部分の等級が対象ですが、長期優良住宅の認定では共用部分の等級3以上も別途必要になります。取引物件が共同住宅の場合、双方の等級を確認することが重要です。

💡 ポイント3:築年数が経過した物件では等級の再評価が必要な場合がある

住宅性能評価を新築時に受けていても、リフォームや増改築によって構造や寸法が変わっていると、等級の適合性が変わっている可能性があります。中古物件に「住宅性能評価書(建設)あり」の記載があっても、工事後の現状と評価書が一致していないケースがあります。この場合、既存住宅性能評価の取得を検討する必要があります。

💡 ポイント4:等級を訴求できるとき・できないとき

重要事項説明書には住宅性能評価書の有無を記載する欄があります(2018年宅建業法改正)。しかし、評価書がない場合でも「このお家は等級3相当です」と口頭で伝えることはリスクを伴います。根拠書類なく等級を標榜することは、宅建業法上の誇大広告につながる可能性があります。口頭説明と書面の内容を一致させておくことが基本です。

これは使えそうです。現場でのトラブルを未然に防ぐために、確認フローを社内マニュアルに組み込んでおくと実務が安定します。

等級3の訴求は証明書が条件です。書面の確認を怠らないことが、不動産従事者としての信頼につながります。顧客が将来の売却・相続・リフォームを考えた際にも、等級情報が明確に残っていることは大きな資産価値の根拠となります。登録住宅性能評価機関のリストは国土交通省のウェブサイトで確認できます。

参考:国土交通省による住宅性能表示制度の全体ガイドとバリアフリー基準の位置づけ

国土交通省「住宅性能表示制度ガイド」(PDF)