耐震改修促進税制と固定資産税の減額を正しく理解する完全ガイド

耐震改修促進税制と固定資産税の減額で知らないと損する全知識

工事が完了してから3ヶ月を過ぎると、固定資産税の減額申請は永久にできなくなります。

この記事の3つのポイント
🏠

減額の基本条件

昭和57年1月1日以前に建築された住宅で、工事費50万円超の耐震改修を行った場合、翌年度の固定資産税が最大1/2に減額されます。

申請期限は工事完了後3ヶ月以内

申請は工事完了日から3ヶ月以内に市区町村へ提出が必須。この期限を過ぎると減額は受けられず、取り返しがつきません。

📋

令和8年度改正で5年間延長確定

固定資産税の減額措置は令和13年3月31日まで5年間延長される見込みです。床面積要件の下限も50㎡から40㎡に緩和されます。


<% index %>

耐震改修促進税制による固定資産税の減額制度の基本要件

耐震改修促進税制(固定資産税の減額措置)とは、旧耐震基準で建てられた住宅に耐震改修工事を施した場合に、翌年度の固定資産税が減額される制度です。平成18年(2006年)の税制改正で創設され、住宅の耐震化を促進する目的で現在まで続いています。

この制度を利用するには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

要件 内容
①対象住宅 昭和57年1月1日以前から所在する家屋(旧耐震基準で建築されたもの)
②工事内容 現行の耐震基準に適合する耐震改修工事であること
③工事費用 1戸あたり50万円(税込)を超えていること
④工事期限 令和8年3月31日までに工事完了(延長後は令和13年3月31日まで)

ここで多くの方が見落としがちな点があります。対象は「昭和57年1月1日以前から所在する家屋」という点です。つまり、昭和57年(1982年)1月2日以降に建てられた住宅はどれだけ工事をしても対象外になります。これが条件です。

また、店舗兼住宅の場合は、居住用部分の床面積が全体の2分の1以上でなければ対象になりません。不動産の取引現場でも確認が必要な点です。

減額される金額の仕組みも重要です。1戸あたり120㎡相当分までの固定資産税が1/2に減額されます。120㎡を超える部分については、120㎡相当分に対してのみ減額が適用されます。つまり、広い家でも減額対象の上限は120㎡相当分ということですね。

さらに、この制度は固定資産税への適用です。都市計画税は対象外という点も忘れてはなりません。「固定資産税も都市計画税も両方減るはず」と思っていた方は要注意です。同じ税額通知書に記載されているからといって、都市計画税まで自動的に減額されるわけではありません。

耐震改修促進税制の固定資産税申請手続きと必要書類

申請手続きでもっとも重要なのは、工事完了から3ヶ月以内という期限です。この期限を過ぎると、申請そのものができなくなります。取り返しのつかない機会損失になります。

申請先は、住宅が所在する市区町村の税務担当窓口(固定資産税の担当課)です。税務署ではありません。不動産業務に慣れていても、「税金の手続きは税務署」と思い込む方が多いので注意が必要です。

提出が必要な書類は以下の4種類です。

  • ✅ 固定資産税減額申告書(市区町村所定の様式)
  • ✅ 工事請負契約書の写し
  • ✅ 耐震改修の費用が確認できる書類(領収書など)
  • ✅ 証明書類(増改築等工事証明書・住宅耐震改修証明書・住宅性能評価書のいずれか)

この証明書類の取得に時間がかかるケースがあります。特に住宅耐震改修証明書は地方公共団体の長が発行するもの、増改築等工事証明書は登録された建築士事務所に属する建築士や指定確認検査機関などが発行するものです。工事完了後に慌てて動くと3ヶ月以内に間に合わない可能性があります。工事の計画段階から証明書の手配を進めておくのが基本です。

申告は1回限りという点も覚えておく必要があります。複数年にわたって申請できるわけではなく、一度適用を受けた住宅には再度の適用はありません。また、新築住宅の軽減措置など他の減額措置を受けている住宅にも、この制度は適用されません。これだけ覚えておけばOKです。

申告後の流れとしては、翌年度の固定資産税の課税通知書に減額が反映されます。工事完了後の翌年に届く納税通知書の内容を必ず確認しましょう。自治体によっては申告内容を審査してから減額が確定するため、通知書の税額が想定通りか確認することが重要です。

なお、工事が完了した翌年度の1年度分のみが対象です。複数年にわたって減額が続くわけではないので、単年度の優遇措置であるという点は顧客への説明でも正確に伝える必要があります。

国土交通省が提供する公式パンフレットや申請フローについては、以下のページで最新情報を確認できます。

国土交通省「住宅をリフォームした場合に使える減税制度について」|リフォーム促進税制の全要件・パンフレット・申請フローが確認できる公式ページ

耐震改修促進税制の固定資産税が通常より多く減額されるケース

耐震改修促進税制には、通常の1/2減額よりもさらに有利な条件が2つ存在します。これを知っているかどうかで、顧客への提案価値が大きく変わります。意外ですね。

ケース①:通行障害既存耐震不適格建築物の場合

「通行障害既存耐震不適格建築物」とは、市区町村耐震改修促進計画に記載された道路に接している旧耐震基準の建物を指します。災害時に倒壊すると道路をふさぐ恐れがあるとして、行政が特に耐震化を優先している物件です。

この種別に該当していた住宅が耐震改修を完了した場合、固定資産税の減額期間が通常の1年度分から2年度分に延長されます。つまり、2年間にわたって1/2の減額が受けられます。

仮に該当する住宅の固定資産税が年間10万円(120㎡相当分)であれば、通常なら5万円の節約が1年分だけですが、このケースでは合計10万円の節税になります。対象かどうかの確認は市区町村の担当課や耐震改修促進計画の内容を確認することで判断できます。

ケース②:耐震改修後に認定長期優良住宅に該当した場合

耐震改修工事を行い、その結果として長期優良住宅の認定(増改築による認定)を受けた場合、固定資産税の減額割合が1/2ではなく2/3に拡大されます。

たとえば固定資産税が年間15万円の住宅では、通常の1/2減額なら7.5万円の節税ですが、2/3減額なら10万円の節税になります。差額は2.5万円です。これは使えそうです。

長期優良住宅の認定を受けるためには、耐震性のほか省エネ性・劣化対策・維持管理のしやすさなど複数の基準をクリアする必要があります。工事費や手続きコストが増えるため、すべての物件で合理的かどうかの見極めは必要ですが、もともと大規模リノベーションを予定している物件であれば十分に検討の余地があります。

ケース 減額割合 減額期間
通常の耐震改修 固定資産税の1/2 翌年度1年分
通行障害既存耐震不適格建築物 固定資産税の1/2 翌年度から2年分
長期優良住宅認定取得 固定資産税の2/3 翌年度1年分

この情報は検索上位の記事では触れられていても、顧客への説明で漏れがちな部分です。特に旧耐震の収益物件を扱う際や、資産価値向上を目的とした大規模改修の相談を受けた際には、積極的にこれらの選択肢を提示できると差別化につながります。

本巣市「住宅耐震改修に伴う固定資産税の減額について」|通行障害建物や長期優良住宅ケースの減額内容が表で確認できる自治体公式ページ

耐震改修促進税制の固定資産税が受けられない意外な対象外条件

「要件を満たしているはずなのに実は対象外だった」というケースは、実務の現場で起こりやすい落とし穴です。事前に対象外条件を把握しておくことがトラブル回避の第一歩です。

①賃貸住宅は対象外

これは重要な点です。耐震改修促進税制の固定資産税減額は、自己の居住用住宅が対象です。賃貸として貸し出している住宅には適用されません。「建物の耐震性を高めるための工事なのだから、賃貸でも使えるはず」という認識で進めてしまうと、工事完了後に申請が通らないという事態になりかねません。

ただし、賃貸住宅のオーナーへの朗報もあります。令和8年度の地方税制改正要望では、賃貸住宅の耐震改修に係る固定資産税を工事完了翌年から2年間1/2に減額する制度が別途整備されつつあります。この動向は今後も注目が必要です。

②「昭和57年1月1日以前から所在」という条件の解釈

新築日ではなく「所在していた」という点がポイントです。昭和56年に建築が始まり昭和57年以降に完成した建物であれば、厳密には対象外になるケースもあります。登記情報や建築確認申請書などで建築時期を正確に確認することが必要です。

③同一住宅での2回目適用は不可

この制度は1回限りです。過去に同じ住宅で耐震改修促進税制を利用したことがある場合、追加の耐震改修を行っても再度の適用は受けられません。中古住宅の売買の場面では、過去の減額申請の履歴を確認する習慣をつけておくと安心です。

④他の減額措置との重複は不可

新築住宅の固定資産税減額措置を受けている期間中は、耐震改修に係る減額措置との重複適用はできません。たとえば、新築後の軽減期間が終了していない住宅でリフォームを行っても、耐震改修の減額は適用されません。これだけ覚えておけばOKです。

⑤都市計画税は対象外

繰り返しになりますが、この減額措置は固定資産税のみに適用されます。都市計画税には適用されません。固定資産税と都市計画税は同じ納税通知書に記載されることが多いため、「両方減額されると思っていた」という誤解が生じやすい点です。顧客に説明する際には、固定資産税だけが対象という点を明確に伝える必要があります。

耐震改修促進税制の固定資産税に関する令和8年度改正と今後の方向性

令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日公表)において、耐震改修促進税制を含むリフォーム促進税制の大幅な延長が盛り込まれました。不動産業務に携わる方にとって、この改正内容は早急に把握しておくべき情報です。

固定資産税の減額措置:5年間延長

現行の適用期限は令和8年3月31日でしたが、改正により令和13年(2031年)3月31日まで5年間延長される見込みです。これにより、令和8年4月1日以降に工事を完了した案件でも引き続き制度を活用できるようになります。ただし、この延長は関係法律の国会成立が前提であるため、最終確定の確認は必要です。

所得税の耐震改修特別控除:3年間延長

所得税側の特別控除(住宅耐震改修特別控除)も3年間延長され、令和10年(2028年)12月31日まで適用される見込みです。

床面積要件の下限が50㎡から40㎡に緩和

これは実務上の大きな変化です。従来、対象となる住宅の居住部分の床面積の下限は50㎡でしたが、改正後は40㎡に緩和されます。1Kや1DKのコンパクトな住戸も対象に入る可能性が広がります。都市部の単身向け賃貸物件を扱う事業者にとっては注目すべき変更点です。

改正内容をまとめると以下の通りです。

項目 現行 改正後(見込み)
固定資産税の適用期限 令和8年3月31日 令和13年3月31日(5年延長)
所得税控除の適用期限 令和7年12月31日 令和10年12月31日(3年延長)
床面積要件(下限) 50㎡以上 40㎡以上に緩和

また、令和8年度改正では、ハザードエリア内の一定の新築住宅を減額対象外とする方向性も示されています。防災の観点からリスクの高いエリアへの住宅立地を抑制する政策意図が含まれており、今後の土地活用や新築プランの検討においても意識しておく必要があります。

耐震改修促進税制は補助金制度と組み合わせることも可能です。国や地方公共団体から耐震改修補助金を受け取っていても、一定の要件を満たしていれば減税制度を別途利用できる場合があります。補助金の交付額を控除した自己負担額が50万円を超えているかどうかが要件の確認ポイントです。

令和8年度税制改正大綱の詳細は国土交通省の公式情報で確認できます。

国土交通省「住宅をリフォームした場合に使える減税制度について(最新情報)」|令和8年度改正大綱に基づく延長情報・改正概要が掲載されている公式ページ
ミライアス「令和8年度税制改正大綱|不動産売買に関する重要な変更点」|固定資産税・不動産取得税・登録免許税の各改正ポイントをわかりやすくまとめた解説記事