半島振興法の対象地域と税制優遇を徹底解説

半島振興法の対象地域と税制優遇の完全ガイド

旅館の建物を取得しても、固定資産税がほぼゼロになる地域があなたの担当エリアに存在します。

この記事のポイント3つ
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全国23地域・194市町村が対象

半島振興法は国土交通・総務・農林水産の3大臣が指定。北海道から鹿児島まで22道府県にわたる広範なエリアが対象地域です。

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固定資産税が初年度10分の1になるケースあり

対象業種・対象設備の要件を満たせば、固定資産税が3年間にわたって大幅軽減。不動産取得税の課税免除を設ける自治体もあります。

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令和7年改正で2035年3月まで延長

令和7年3月に議員立法で改正が成立し、法期限が令和17年(2035年)3月31日まで10年延長。不動産取引の長期計画に組み込める制度です。


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半島振興法の対象地域とは何か——指定の仕組みと3つの要件

半島振興法(昭和60年法律第63号)は、三方を海に囲まれ、幹線交通体系から離れているなど地理的に不利な立場に置かれた半島地域を振興するため、1985年に議員立法で成立した法律です。当初は10年の時限立法として制定されましたが、その後4度の延長が行われ、直近では令和7年(2025年)3月26日の改正により、法期限が令和17年(2035年)3月31日まで10年間延長されました。

対象地域の指定は、都道府県知事が主務大臣(国土交通大臣・総務大臣・農林水産大臣の3大臣)に申請し、国土審議会の議を経て行われます。自治体が自動的に指定されるわけではありません。

指定を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 二以上の市町村の区域からなり、一定の社会的経済的規模を有する地域であること
  • 高速自動車国道・空港等の高速輸送施設、その他の公共的施設の整備が他地域より低位であること
  • 産業の開発程度が低く、雇用増大のために企業立地促進等の措置が必要な地域であること

これらの要件がある以上、半島という地形を持っていても、交通インフラが整備されている都市近郊の半島は指定を受けにくい構造になっています。指定されているのか否かで、後述する税制優遇の有無が変わります。これは重要な点です。

現在の指定状況は、全国23地域・22道府県・194市町村(令和7年4月現在)です。市町村数でいうと、東京23区をすべて並べた数の8倍以上に相当する広さが対象となっています。

参考:国土交通省による対象地域の公式一覧・地図はこちら

地方振興:半島振興対策の推進(国土交通省)

半島振興法の対象地域——全国23地域の一覧と都道府県別の範囲

全国23地域の指定状況を把握することは、不動産従事者にとって物件調査やエリア戦略の大前提です。以下に全指定地域を整理します。

地域名 道府県
渡島 北海道
積丹 北海道
津軽 青森県
下北 青森県
男鹿 秋田県
南房総 千葉県
能登 富山県・石川県
伊豆中南部 静岡県
紀伊 三重県・奈良県・和歌山県
丹後 京都府
島根 島根県
江能倉橋島 広島県
室津大島 山口県
佐田岬 愛媛県
幡多 高知県
東松浦 佐賀県・長崎県
北松浦 佐賀県・長崎県
島原 長崎県
西彼杵 長崎県
宇土天草 熊本県
国東 大分県
大隅 宮崎県・鹿児島県
薩摩 鹿児島県

ここで押さえておきたいのが、指定範囲が「市町村全域」とは限らないという点です。例えば、函館市・松阪市・諫早市・鹿屋市などは「一部地域のみ」が対象になっています。Wikipediaの一覧表でも「函館市(一部)」「松阪市(一部)」と括弧書きで示されているとおりです。物件が同じ市内にあっても、対象区域内かどうかで適用できる優遇措置がまったく異なります。確認が必要です。

また、紀伊地域の和歌山県は非常に特殊で、和歌山市を除くほぼ全市町村が対象地域に指定されています。県全体が半島的地形であることから、適用範囲が県内の圧倒的多数を占める珍しいケースです。不動産業者が和歌山県内の物件を扱う際には、まず半島振興法の対象かどうかをチェックするクセをつけておくと、顧客への提案力が高まります。

参考:Wikipedia掲載の半島振興対策実施地域対象市町村の一覧

半島振興法 — Wikipedia(対象市町村一覧)

半島振興法の対象地域で使える税制優遇——固定資産税・不動産取得税・法人税

対象地域内の物件取引において、税制面で使える優遇措置が複数あります。これらを知らずに取引を進めると、顧客に数百万円規模の節税チャンスを逃させることになりかねません。痛いですね。

「半島税制」と呼ばれるこの優遇制度は、半島振興対策実施地域に指定された市町村が「産業振興促進計画」を策定している場合に適用されます。指定地域であっても、市町村が計画を策定していなければ適用されない点に注意が必要です。

🏛 国税(法人税)の優遇:5年間の割増償却

製造業・旅館業・農林水産物等販売業・情報サービス業等を営む事業者が、対象設備(機械装置、建物・附属設備、構築物)を取得・建設・改修した場合に、5年間の割増償却が認められます。機械・装置は普通償却限度額の32%増、建物・附属設備や構築物は48%増で計上できます。例えば取得価額1億円の建物を10年定額法で償却する場合、割増償却によって初年度から5年間は通常より多くの費用を計上でき、その期間の法人税負担が実質的に軽減(繰り延べ)されます。

資本金1,000万円以下の事業者なら500万円以上の設備取得から適用対象です。比較的小規模な宿泊施設や加工施設の取得でも使える水準です。

🏘 地方税の優遇:固定資産税・不動産取得税の不均一課税

地方税については、道府県・市町村ごとに条例で定める形で措置が設けられています。代表的な例として、旅館業用建物に対する固定資産税の不均一課税があります。

  • 初年度:税率0.14%(通常税率1.4%の10分の1)
  • 第2年度:税率0.35%(通常の4分の1)
  • 第3年度:税率0.70%(通常の2分の1)

これは3年間の措置です。通常1.4%がかかる固定資産税の初年度負担がほぼゼロになるイメージです。仮に評価額1億円の旅館建物なら、通常なら年140万円の固定資産税が、初年度はわずか14万円で済む計算になります。

不動産取得税についても、鹿児島県の鹿屋市などでは課税免除を設けているケースがあります。設備取得時の一時コストを大きく抑えられます。

ただし、令和5年度からは「半島税制」と「過疎税制」の対象地域が重複している市町村では、過疎税制を優先適用することになっています。半島と過疎の両方の指定を受けているエリアでは、どちらの税制が適用されるかを事前に確認することが条件です。

参考:国土交通省発行の最新版・半島税制パンフレット(令和7〜8年度版)

半島振興のための国税・地方税の優遇措置について(国土交通省PDF)

半島振興法の対象地域での産業振興促進計画——不動産業者が確認すべき手続きの流れ

税制優遇を使うには、一定の手続きが必要です。流れを把握しておくことで、顧客への提案がよりスムーズになります。

まず、国税(法人税)の割増償却を受けるには、市町村の窓口で「産業振興促進計画への適合確認」を取得し、税務署に提出するという手順が基本です。

  1. 事業者が市町村の窓口に「確認申請書」を提出
  2. 市町村が産業振興促進計画との適合性を確認
  3. 確認書と税務申告書類を税務署に提出
  4. 割増償却の優遇措置が適用される

地方税(固定資産税・不動産取得税)については、道府県または市町村に不均一課税の申請を別途行う必要があります。国税とは窓口が異なります。

対象業種についても整理しておきます。法律上の対象は以下の4区分です。

  • 製造業(食料品・木材・繊維・金属・機械・輸送用機器等)
  • 旅館業(ホテル・旅館等)
  • 農林水産物等販売業(農畜産物卸売業・鮮魚小売業・酒小売業等/当該地域の農林水産物を主に域外の人に販売する目的の事業に限る)
  • 情報サービス業等(情報サービス業・有線放送業・インターネット附随サービス業)

純粋な不動産賃貸業は対象業種に含まれていません。この点は注意が必要です。ただし、旅館業を目的とした建物取得であれば適用対象となりうるため、民泊・宿泊施設への転用を検討している顧客への提案には活用の余地があります。

また、補助金を活用して設備を取得した場合は、補助金額を差し引いた金額が取得価額の計算対象になります。補助金との組み合わせを検討する場合も、取得価額の計算方法に注意が必要です。

参考:法令本文は e-Gov 法令検索で確認できます

半島振興法 — e-Gov 法令検索(経済産業省)

半島振興法の対象地域——令和7年改正の内容と不動産業者への影響

令和7年(2025年)3月26日、「半島振興法の一部を改正する法律」が議員立法により成立しました。この改正は、単なる期限延長にとどまらない点で注目に値します。

🔑 改正の主な内容

まず最も重要なのが、法の有効期限が10年間延長され、令和17年(2035年)3月31日までとなった点です。これにより、半島税制や関連補助制度は2035年まで継続的に活用できる見通しが立ちました。不動産投資や施設整備の長期計画に組み込みやすくなったと言えます。

次に、今回初めて「半島振興基本方針」を国が策定することが規定されました。これまで個別の半島振興計画は都道府県が作成していましたが、今後は国全体の基本方針が示されることで、各地域の振興施策がより体系的に進む仕組みになります。

さらに、能登半島地震の教訓を踏まえ、災害防除・軽減に関する規定が強化されました。「国土強靱化の観点」が法律の目的条文に明記されています。能登地域のように半島地域は災害時の孤立リスクが高く、道路・インフラ整備が今後重点的に進む可能性があります。これは対象地域内の不動産価値にも将来的に影響する視点です。

また、「地域の風土等により形成された景観地の保存及び活用」が配慮規定として追加されました。景観資源の保全・活用に関する取り組みが法的根拠を持つことになったため、古民家再生や景観を活かした宿泊施設開発において、今後の補助事業が拡充される可能性があります。

令和5年度以降、過疎税制との重複適用ルールが変されたことは前述しましたが、令和7年の改正後に各自治体が新たな半島振興計画を策定し直しています。条件が変わっている可能性があるため、古い情報のままでは判断を誤るリスクがあります。担当エリアの最新計画は自治体窓口で確認するのが原則です。

参考:国土交通省による半島振興法改正の概要プレスリリース

半島振興基本方針を初めて策定(国土交通省)