離島振興法の対象地域と不動産実務で活かせる全知識
沖縄の離島物件を「離島振興法の対象」と思って案内すると、実は法的に別制度が適用されます。
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離島振興法の対象地域とは何か——指定の仕組みと77地域256島の全体像
離島振興法は昭和28年(1953年)に議員立法で制定された、10年間の時限法です。その後10年ごとに改正・延長が繰り返され、現在の法律は令和15年3月31日を期限として令和5年4月1日に全部施行されています。つまり、すでに70年以上にわたって継続されてきた制度です。
「対象地域」とは正式には離島振興対策実施地域と呼ばれます。
国土交通省の主務大臣が国土審議会の意見を聴いたうえで指定する地域です。令和7年4月1日時点で、全国77地域・256島(有人離島)がこの指定を受けています。都道府県別の内訳を見ると、北海道・宮城・山形・東京・新潟・石川・静岡・愛知・三重・滋賀・兵庫・島根・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・高知・福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島という幅広い道府県に広がっています。面積合計は約5,300平方キロメートル超、人口は令和2年国勢調査で約339,000人です(鹿児島県合計分を含む全体概数)。
ここで重要なのが「対象から外れている地域」の存在です。
| 地域 | 適用される法律 | 所管官庁 |
|---|---|---|
| 北海道〜鹿児島・トカラ列島の256島 | 離島振興法 | 国土交通省 |
| 沖縄の離島 | 沖縄振興特別措置法 | 内閣府(沖縄担当) |
| 奄美群島 | 奄美群島振興開発特別措置法 | 国土交通省・内閣府 |
| 小笠原諸島 | 小笠原諸島振興開発特別措置法 | 国土交通省・内閣府 |
不動産従事者にとって「対象地域かどうか」は税制優遇や補助金の種類が変わる分岐点です。これが基本です。
国土交通省が公開している最新の「離島振興対策実施地域一覧(令和7年4月1日現在)」では、各島の面積・人口まで確認できます。実務で使う際はこちらの最新版を参照してください。
参考:離島振興対策実施地域一覧(国土交通省・PDF)
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/content/001886615.pdf
離島振興法の対象地域の指定基準——内海・外海・人口の3条件
「この島は対象地域に入るのか」を判断するために、指定基準を知っておくことは実務的に価値があります。
国土審議会が定める指定基準は、内海離島と外海離島に分かれています。
- ✅ 内海離島の主な基準:本土との最短航路距離がおおむね10km以上、定期航路の寄港回数が1日おおむね3回以下、人口おおむね100人以上
- ✅ 外海離島の主な基準:定期航路または航空路が運航されている、人口おおむね100人以上
つまり、「橋でつながっていない」「人が住んでいる」「航路で1日3回以下の往来」という状況が基本条件です。
逆に、架橋によって本土と「常時陸上交通」が確保された場合は、指定の解除対象になります。これが不動産実務で盲点になりやすい点です。例えば、和歌山県串本町の大島は橋が架かった後、法律上の離島ではなくなった例として引用されています。ただし、令和4年(2022年)の離島振興法改正に際して、衆議院で「架橋整備後も直ちに指定解除しないよう配慮すること」という決議が採択されています。つまり、架橋=即解除ではなくなりつつある、という流れが出てきています。
これは使えそうです。架橋計画が進む島のエリアを担当する場合、「指定が解除されるか否か」の動向は物件の価値判断に直結するため、国土審議会の議事録を定期チェックする習慣をつけておくことをおすすめします。
参考:国土審議会 離島振興対策分科会(国土交通省)
離島振興法の対象地域で使える税制優遇——不動産取得税・固定資産税の免除を見落とすな
対象地域内で設備投資を行う事業者には、「離島税制」と呼ばれる国税・地方税の優遇措置が用意されています。不動産従事者として顧客に案内できる内容を、ここで整理します。
まず国税(法人税・所得税)の優遇は、取得価額の一定割合を5年間にわたって割増償却できる制度です。機械・装置については普通償却限度額の32%増し、建物・附属設備・構築物については48%増しで費用計上できます。資本金5,000万円以下の事業者であれば、500万円以上の設備投資から適用対象になります。
地方税については、多くの道府県・市町村が不動産取得税と固定資産税を3年間免除しています。笠岡市(岡山県)の条例例では、「家屋及びその敷地である土地についての固定資産税を、最初に課税すべき年度以降3箇年度に限り免除」と定めています。
- 🏗️ 対象業種:製造業、旅館業、農林水産物等販売業、情報サービス業等
- 🏢 対象設備:機械・装置、建物・附属設備、構築物
- 📋 手続き:市町村から「産業振興促進事項への適合確認」を受けた後、税務署に申告
実際に利用した旅館業者(3億3,200万円の設備投資)は、「法人税の繰延べができ、固定資産税の免除で節税できた」と話しています。これはデベロッパーや民泊・ホテル参入を検討する顧客への提案材料になります。
重要な注意点として、「過疎地域持続的発展市町村計画において産業振興促進事項に記載された区域」は対象外になります。同一の島が離島振興計画と過疎計画の両方に記載されている場合、どちらが適用されるかを事前に市町村窓口で確認することが原則です。
参考:離島振興のための国税・地方税の優遇措置について(国土交通省・PDF)
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/content/001628022.pdf
離島振興法の対象地域における空き家・定住促進の最新動向——令和5年改正で何が変わったか
令和4年(2022年)11月に改正離島振興法が成立し、令和5年(2023年)4月1日から全部施行されました。この改正は不動産業者に直接関係する内容を複数含んでいます。
最大のポイントは、「空家活用」が振興計画の配慮規定に明記されたことです。従来の離島振興計画では住宅の「改修」が主なメニューでしたが、改正後は「新築」も対象に加わり、さらに空き家の活用・改修が振興計画に明示的に位置づけられました。これは、対象地域内で空き家バンクや移住促進事業を展開する不動産業者にとって追い風になる変化です。
また、改正では都道府県の責務として離島市町村への支援努力義務が明記されています。従来は国の責務だけでしたが、都道府県も積極的に動く義務が生じたため、県単位での補助金・助成制度が整備されやすくなりました。離島エリアの担当者は、都道府県窓口への問い合わせを強化することで、活用できる補助メニューを漏らさずに把握できます。
その他の改正事項として注目されるのは以下の点です。
- 🏠 住宅の確保:定住促進に向けた住宅確保の規定が強化(空き家改修だけでなく新築も対象)
- 🌿 再生可能エネルギー:離島における再エネ導入・活用の役割が法目的条項に追記
- 👥 関係人口:継続的に関係する島外人材の活用が法目的に明記
- 🏫 小規模離島:日常生活環境の維持に関する規定が拡充
離島への移住希望者が増加傾向にある今、空き家のリノベーションや定住促進施設の整備は、対象地域において国・都道府県の補助を受けやすいビジネスになっています。物件案内と同時に「補助金の情報提供」ができる不動産業者は、島外からの移住希望者に強い訴求力を持てます。
参考:改正離島振興法の概要(日本離島センター)
https://www.nijinet.or.jp/Portals/0/pdf/publishing/shima/273/shima_273_03.pdf
離島振興法の対象地域と特定有人国境離島——二重指定エリアで使える上乗せ支援とは
あまり知られていませんが、離島振興法の対象地域のなかには、さらに「有人国境離島法(2016年制定)」による特定有人国境離島地域としても指定されている島が存在します。
特定有人国境離島地域に含まれる離島は71島で、領海・排他的経済水域の保全上重要な役割を持つ島々です。長崎県の対馬・壱岐島・五島列島などが代表例として挙げられます。これらは離島振興法の支援に加えて、有人国境離島法による追加的な支援措置が重ねて適用されます。
具体的に、この二重指定エリアで使える上乗せ支援には次のようなものがあります。
- 💼 雇用拡充支援:新たな雇用を生む創業・起業・事業拡大に対し、設備投資・人件費・広告宣伝費を最大3/4、年間上限1,200万円、最長5年間補助(長崎県・特定有人国境離島地域の場合)
- ✈️ 航路・航空運賃の低廉化:住民向けの船・飛行機運賃が補助によって低廉化される
- 🏘️ 地域社会維持推進交付金:自治体が地域社会の維持に使える交付金制度が別途運用されている
不動産業者の観点から見ると、この二重指定エリアでは「事業用不動産への投資家」が受けられる優遇が段違いに厚くなります。同じ離島対象地域でも、単独指定と二重指定では支援の手厚さが大きく異なります。
なお、有人国境離島法は令和9年(2027年)3月に期限を迎えます。現在、新島・式根島など6島を新たに特定有人国境離島地域に加える方向での議論が進んでいる(2026年2月時点)ことも、最新の動きとして押さえておく必要があります。有人国境離島法の対象拡大は、対象地域の不動産価値に直結する情報です。
参考:離島の振興に関する法律と施策の現在(笹川平和財団 Ocean Newsletter)
参考:国境離島地域における事業者向け支援制度(長崎県)
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/kenseijoho/kennokeikaku-project/kokkyoritou/kokkyo-shien/