都道府県立自然公園一覧と不動産取引で知るべき規制

都道府県立自然公園の一覧と不動産取引で必ず知っておくべき規制

自分の土地でも木を1本切るだけで100万円以下の罰金になる場合があります。

この記事の3ポイント要約
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全国311か所・国土の5%超を占める

都道府県立自然公園は令和7年3月末時点で全国311か所、約191.5万haが指定されており、日本の国土面積の約5.07%に相当します。リゾート地・観光地周辺の物件では必ず確認が必要です。

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民有地でも建築・伐採に許可が必要

特別地域に指定された土地では、たとえ自己所有の土地であっても工作物の新築・木竹の伐採などに都道府県知事の許可が必要です。無許可行為は1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。

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重要事項説明での告知義務がある

都道府県立自然公園内の不動産取引では、自然公園法第73条に基づく条例による規制内容を重要事項説明書に記載・説明する義務があります。記載漏れは宅建業法違反につながります。


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都道府県立自然公園とは何か:国立公園・国定公園との違い

日本の自然公園には「国立公園」「国定公園」「都道府県立自然公園」の3種類があります。これらはすべて自然公園法に基づく制度ですが、指定主体と管理主体がそれぞれ異なります。

国立公園は環境大臣が指定・管理し、国定公園は環境大臣が指定して都道府県が管理します。これに対し都道府県立自然公園は、都道府県知事が条例に基づいて指定・管理を行います。つまり都道府県立自然公園は「三段階の自然公園制度の中で最もローカルな区分」です。

規制の根拠も異なります。国立・国定公園は自然公園法が直接適用されますが、都道府県立自然公園は各都道府県の条例によって規制内容が決まります。これが重要です。規制の強さや手続きの詳細が都道府県ごとに違うため、「他の都道府県で知っている知識がそのまま使えない」ことが多いのです。

令和7年3月末時点のデータを見てみましょう。環境省の公表値によると、都道府県立自然公園は全国で311か所、面積は約191.5万haに達します。日本の国土面積は約3,779万haですので、国土の約5.07%が都道府県立自然公園に指定されていることになります。国立公園(35か所・約244.8万ha)や国定公園(57か所・約139.1万ha)と合算すると、自然公園全体では国土面積の約15.2%にのぼります。

つまり約7分の1の日本の国土が何らかの自然公園として保護されているということです。不動産取引でこの認識が薄いと、思わぬ調査漏れにつながります。

種別 指定主体 管理主体 公園数 面積(ha) 国土比率
国立公園 環境大臣 環境省 35 2,447,855 6.48%
国定公園 環境大臣 都道府県 57 1,391,216 3.68%
都道府県立自然公園 都道府県知事 都道府県 311 1,915,027 5.07%

(出典:環境省「自然公園面積の総括」令和7年3月31日現在)

不動産従事者にとって特に関係が深いのが都道府県立自然公園です。国立・国定公園に比べて指定範囲が身近なリゾート地・観光地周辺に集中しやすく、民有地として取引される件数が最も多い区分だからです。

参考:自然公園の種別・面積・制限内容を体系的に確認できる環境省の公式データページ

環境省 自然保護各種データ一覧(国立公園・国定公園・都道府県立自然公園)

都道府県立自然公園 一覧:地域別の全国指定状況

都道府県立自然公園の数は都道府県によって大きく異なります。1か所しかない県もあれば、18か所もある県もあります。不動産取引で関わる可能性が高い地域を把握しておくことが重要です。

まず群馬県については自然公園法に準拠しない独自条例の県立公園(赤城県立公園・榛名県立公園など6か所)があり、都道府県立自然公園には含まれません。これは意外な例外です。

以下に地域別の指定状況をまとめます。

地域 都道府県 公園数 主な公園名(例)
北海道 北海道 11 富良野芦別道立自然公園、野幌森林公園、朱鞠内道立自然公園 など
東北 青森県 7 浅虫夏泊県立自然公園、岩木高原県立自然公園 など
岩手県 7 花巻温泉郷県立自然公園、五葉山県立自然公園 など
宮城県 8 県立自然公園松島、蔵王高原県立自然公園 など
秋田県 8 秋田白神県立自然公園、太平山県立自然公園 など
山形県 6 庄内海浜県立自然公園、最上川県立自然公園 など
福島県 10 霊山県立自然公園、磐城海岸県立自然公園 など
関東・甲信越 茨城県 9 花園花貫県立自然公園、大洗県立自然公園 など
栃木県 8 前日光県立自然公園、益子県立自然公園 など
群馬県 0 ※独自条例の県立公園(赤城・榛名など)が6か所
埼玉県 10 県立奥武蔵自然公園、県立長瀞玉淀自然公園 など
千葉県 8 県立養老渓谷奥清澄自然公園、県立九十九里自然公園 など
東京都 6 都立高尾陣場自然公園、都立滝山自然公園 など
神奈川県 4 県立丹沢大山自然公園、県立真鶴半島自然公園 など
長野県 5 御岳県立公園、塩嶺王城県立自然公園 など
新潟県 13 瀬波笹川流れ粟島県立自然公園、直峰松之山大池県立自然公園 など
北陸・東海 富山県 6 有峰県立自然公園、五箇山県立自然公園 など
石川県 5 山中・大日山県立自然公園、白山一里野県立自然公園 など
福井県 1 奥越高原県立自然公園
岐阜県 15 恵那峡県立自然公園、奥飛騨数河流葉県立自然公園 など
静岡県 4 日本平・三保松原県立自然公園、浜名湖県立自然公園 など
愛知県 7 渥美半島県立自然公園、南知多県立自然公園 など
三重県 5 赤目一志峡県立自然公園、伊勢の海県立自然公園 など
関西 滋賀県 3 三上・田上・信楽県立自然公園 など
京都府 3 府立るり渓自然公園、府立保津峡自然公園 など
大阪府 2 府立北摂自然公園、府立阪南・岬自然公園
兵庫県 11 但馬山岳県立自然公園、雪彦峰山県立自然公園 など
奈良県 3 県立矢田自然公園、県立吉野川津風呂自然公園 など
和歌山県 12 高野山町石道玉川峡県立自然公園、白崎海岸県立自然公園 など
中国・四国 鳥取県 3 三朝東郷湖県立自然公園 など
島根県 11 鬼の舌震県立自然公園、宍道湖北山県立自然公園 など
岡山県 7 高梁川上流県立自然公園、吉備路風土記の丘県立自然公園 など
広島県 6 三倉岳県立自然公園、山野峡県立自然公園 など
山口県 4 長門峡県立自然公園、羅漢山県立自然公園 など
徳島県 6 箸蔵県立自然公園、土柱高越県立自然公園 など
香川県 1 大滝大川県立自然公園
愛媛県 7 四国カルスト県立自然公園、金砂湖県立自然公園 など
高知県 18 横浪県立自然公園、四国カルスト県立自然公園 など
九州 福岡県 5 太宰府県立自然公園、脊振雷山県立自然公園 など
佐賀県 6 黒髪山県立自然公園、天山県立自然公園 など
長崎県 6 大村湾県立公園、島原半島県立公園 など
熊本県 7 金峰山県立自然公園、芦北海岸県立自然公園 など
大分県 5 国東半島県立自然公園、豊後水道県立自然公園 など
宮崎県 6 尾鈴県立自然公園、矢岳高原県立自然公園 など
鹿児島県 10 トカラ列島県立自然公園、薩南海岸県立自然公園 など
沖縄県 4 久米島県立自然公園、伊良部県立自然公園 など

公園数が多い都道府県ランキングを見ると、高知県(18か所)、岐阜県(15か所)、新潟県(13か所)、和歌山県(12か所)、兵庫県・島根県・北海道(各11か所)といった順になります。都市部でも東京都に6か所、神奈川県に4か所、大阪府に2か所の指定があります。都市部の不動産取引でも油断は禁物です。

なお名称については注意が必要です。「〇〇道立自然公園」(北海道)「県立〇〇自然公園」(埼玉・千葉・京都・大阪・奈良)「〇〇県立公園」(長崎・長野)など、都道府県によって命名ルールが異なります。これが基本です。重要事項説明書で公園名を確認する際に誤認しないよう、都道府県ごとの命名パターンを把握しておきましょう。

参考:Wikipediaによる都道府県立自然公園の一覧(地域別詳細リスト)

都道府県立自然公園 – Wikipedia(全都道府県別の公園名一覧)

都道府県立自然公園の区域区分と不動産取引における建築制限の実態

都道府県立自然公園内の土地は、規制の強さによって「特別地域」と「普通地域」に大別されます。不動産取引において最重要となるのが、この区分の把握です。

令和7年3月末時点のデータによると、都道府県立自然公園全体のうち特別地域が約35.5%(約67.9万ha)、普通地域が約64.5%(約123.6万ha)を占めています。国立公園の特別地域比率が約74.9%であるのと比較すると、都道府県立自然公園は普通地域の割合が高い特徴があります。

特別地域の制限は非常に厳しいです。大阪府の例では、特別地域内で工作物(建築物・道路・構造物)の新築・改築・増築、木竹の伐採、土地形状の変更、広告物の設置などを行う場合には知事の許可が必要とされています。無許可で行為をした場合、または中止命令・原状回復命令に違反した場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(大阪府立自然公園条例第29条)。

一方の普通地域では「届出制」が原則です。一定の基準を超える工作物の新築・土地形状の変更・広告物の設置などは知事への届出が必要となります。一般的な住宅を建てる場合は普通地域であれば届出で対応できるケースが多いですが、規模や用途によっては注意が必要です。

  • 🔴 特別保護地区・第1種特別地域:建築はほぼ不可。学術研究など特別な場合のみ許可が認められる。木竹の伐採も極めて厳しく制限される。
  • 🟡 第2種特別地域:農林漁業活動との調整を前提に許可制。建蔽率容積率・高さに厳しい制限あり(例:建蔽率20%・容積率40%など)。木竹伐採にも制限がある場合が多い。
  • 🟡 第3種特別地域:通常の農林活動は容認されるが、開発行為は許可制。
  • 🟢 普通地域:一定の基準を超えた行為に届出が必要。一般的な住宅程度なら対応しやすい場合が多い。

「第2種特別地域で建蔽率20%・容積率40%」という例を見ると、その厳しさが実感できます。100坪(約330㎡)の土地であれば建蔽率20%で建築面積は最大66㎡(約20坪)しか建てられません。通常の住宅建築と比較すると大幅な制約です。一般的な木造2階建て住宅(建築面積50〜70㎡程度)でも許可申請が必要なケースが出てきます。

重要なのは「規制内容が都道府県ごとの条例で決まる」という点です。同じ「第2種特別地域」であっても、A県とB県では具体的な基準が異なる場合があります。つまり他県の知識が使えない場面があるのです。必ず当該都道府県の担当窓口(農と緑の総合事務所、環境部局など)に直接確認することが原則です。

参考:自然公園法に基づく都道府県立自然公園の建築制限・許可制度をわかりやすく解説

【自然公園法わかりやすく】風光明媚な地での宿泊施設・別荘建築について(伊達不動産)

都道府県立自然公園 一覧の調査方法と重要事項説明の注意点

不動産取引の実務では「対象物件が都道府県立自然公園内に該当するかどうか」を正確に調査する必要があります。これが漏れると宅建業法違反につながります。

まず調査の大前提として認識してほしいのは、「都道府県立自然公園の民有地は私有地として取引されうる」という点です。国立・国定公園も民有地を含みますが、都道府県立自然公園はとりわけ民有地の割合が高く、別荘地や山林、農地として取引される事例が多くあります。相続で取得した別荘地が都道府県立自然公園の特別地域に指定されていたというケースは、実務上よく遭遇します。

調査方法は主に2つです。

1つ目は「環境アセスメントデータベース(EADAS)」を使う方法です。環境省が提供する地理情報システム(GIS)で、自然公園の区域と種別を地図上で確認できます。操作はシンプルで、地図上の地点をクリックするだけで公園名と区域区分が表示されます。初めて使う場合でも操作ガイドが55ページ分用意されており、手順に沿って進めるだけで確認可能です。これは使えそうです。

環境省 環境アセスメントデータベース EADAS(自然公園区域の地図確認ツール)

2つ目は「各都道府県の担当窓口への照会」です。EADASで概要を把握した後、詳細な区分や制限内容は担当窓口に直接確認するのが確実です。照会する際は「この土地は都道府県立自然公園またはその条例が適用される地域ですか?」と尋ね、該当する場合は「どの区分(特別地域・普通地域)に当たりますか?」と続けて確認します。地図の精度の問題で回答に時間がかかる自治体もあるため、余裕をもって調査することが重要です。

重要事項説明書への記載については、宅建業法施行令第3条第1項第17号に基づき、以下の事項の説明が義務付けられています。

  • 📌 自然公園法第73条第1項:都道府県立自然公園(特別地域内)の条例による行為制限
  • 📌 自然公園法第20条第3項:特別地域内の行為制限(国立・国定公園)
  • 📌 自然公園法第21条第3項:特別保護地区内の行為制限
  • 📌 自然公園法第48条:風景地保護協定の承継効

重要事項説明の記載漏れは大きなリスクにつながります。宅建業法第47条1号違反となると、業務停止処分や最悪の場合は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処される可能性もあります。規制の記載漏れに注意が必要です。

特にリゾート物件・観光地周辺の物件、相続案件(親の別荘・山林など)、観光地名(富士・箱根・伊豆・日光・南房総・高野山など)がエリアに含まれる物件は、都道府県立自然公園に該当する可能性が高いです。これらのエリアでは必ずEADASと自治体窓口の両方で確認することをおすすめします。

参考:不動産重要事項説明における自然公園法の解説と調査ポイント

不動産の重要事項説明書における「自然公園法」とはなにか(イクラ不動産)

不動産従事者が見落としやすい都道府県立自然公園 一覧の独自視点:規制変更と廃止・昇格の動向

多くの解説記事では触れられていない、不動産従事者として知っておくべき重要な観点があります。それが「都道府県立自然公園の昇格・廃止による規制変のリスク」です。

都道府県立自然公園は固定されたものではなく、国定公園や国立公園に「昇格」する事例が過去に多数あります。たとえば長野県の「中央アルプス県立自然公園」は2020年に中央アルプス国定公園へ移行し、北海道の「厚岸道立自然公園」は2021年に厚岸霧多布昆布森国定公園に移行しました。福島県の「只見柳津県立自然公園」も2021年に越後三山只見国定公園に編入されました。

昇格するとどうなるのでしょうか?都道府県立自然公園から国定公園に変わると、管理権限が都道府県知事から引き続き都道府県知事のままである一方で(国定公園は都道府県が管理)、指定権限は環境大臣に移り、規制の根拠が条例から自然公園法の直接適用に変わります。つまり規制内容や手続きが変更されるのです。痛いですね。

逆に和歌山県では2009年に「大池貴志川県立自然公園」が指定解除されたケースもあります。指定解除によって制限がなくなる場合は、その土地の活用可能性が広がるため、不動産価値にプラスの影響を与えることもあります。

不動産従事者として注意すべき実務上のポイントは次のとおりです。

  • 🔍 取引時点での最新の区域指定情報を必ず確認する(都道府県立自然公園は変更・廃止・昇格があるため、過去の物件調査書をそのまま流用するのは危険)
  • 🔍 売却・活用計画がある別荘地・山林の相続案件では、取得後に規制変更が生じていないか確認する
  • 🔍 環境省のEADASや環境省の公表データは定期的に更新されているため、最新のデータを参照する
  • 🔍 都道府県立自然公園の区域内での「看板設置」「広告掲出」なども規制対象となる場合があるため、売却時の現地看板にも注意が必要

また不動産鑑定の現場では、都道府県立自然公園の特別地域に該当する土地は制限の厳しさに応じた「減価」が行われます。特に第1種・第2種特別地域の土地は、同じ立地・面積でも普通地域の土地と比較して地価が大幅に低く評価されることがあります。売却査定時には区域区分の確認が価格算定の精度に直結します。これは覚えておけばOKです。

参考:不動産鑑定評価における自然公園法の減価要因と評価への影響

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識:自然公園法の適用土地の評価(profession-net)