仮使用承認と建築基準法の手続きと認定基準を徹底解説
検査済証がなくても、仮使用承認を取れば建物を合法的に使えます。
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仮使用承認(仮使用認定)とは何か:建築基準法第7条の6の基本
建築基準法では、工事が完了した建物を使用するためには、完了検査を受けて「検査済証」の交付を受けることが大前提です。建築基準法第7条の6は、この原則を規定するとともに、例外的に完了検査前の使用を認める仕組みを設けています。それが「仮使用承認」、現行法では「仮使用認定」と呼ばれる制度です。
つまり仮使用承認が原則です。
制度の誕生は昭和51年の建築基準法改正にさかのぼります。増築工事中に営業を続けていたデパートで重大な火災事故が発生し、「工事中の建物に不特定多数の人を立ち入らせることの危険性」が社会問題となりました。この教訓を受けて仮使用承認制度が創設され、一定の安全基準を満たさなければ完了検査前の建物は使えない、という仕組みが整備されたのです。
現在の条文では、建築基準法第7条の6第1項の「ただし書き」として、次の3つのいずれかに該当すれば、検査済証の交付を受ける前でも建物を使用してよいとされています。
- 第一号:特定行政庁が安全上・防火上・避難上支障がないと認めたとき
- 第二号:建築主事または指定確認検査機関が国土交通大臣の定める基準に適合していると認めたとき
- 第三号:完了検査の申請が受理された日から7日を経過したとき
第三号に注目です。完了検査の申請受理から7日が経過すると、行政側の判断を待たずに自動的に使用できるようになります。これは意外に見落とされがちなルールで、段取り次第では手間とコストを省けるケースもあります。
ただし不動産実務上、最も重要なのは第一号・第二号に基づく正式な「仮使用認定」です。申請→書類審査→現場検査という流れを踏んで認定を受けることで、完了検査前の建物を継続的・計画的に使用することが可能になります。
なお、平成27年(2015年)6月1日の建築基準法改正以前は「仮使用承認」という名称のもと特定行政庁だけが扱える制度でした。改正後は「仮使用認定」に名称が変わり、指定確認検査機関も認定を行えるようになりました。これが手続きの迅速化につながっています。
参考:平成27年の建築基準法改正による仮使用認定制度の内容と指定確認検査機関の権限拡大について
国土交通省「建築基準法の改正について(平成27年)」(PDF)
仮使用承認が必要な建築物と不要な建築物:建築基準法の使用制限の全体像
仮使用承認(仮使用認定)が必要になるかどうかは、建物の種類と工事の内容によって決まります。すべての建物に使用制限がかかるわけではありません。これを正確に把握していないと、必要のない手続きに時間とコストを費やしたり、逆に必要な手続きを怠って法令違反になったりするリスクがあります。
使用制限がかかる建物と工事の組み合わせ
- 建築基準法6条1項の一号〜三号建築物を「新築」する場合:必ず使用制限あり
- 一号〜三号建築物で「避難施設等に関する工事を含む増築・改築・大規模修繕等」を行う場合:原則として使用制限あり(ただし戸建住宅・倉庫などは除外)
ここで重要なのが「避難施設等」という概念です。廊下・階段・出入口・バルコニー・排煙設備・非常用照明・防火区画などが対象となります(建築基準法施行令第13条)。これらに関係する工事を含む場合に限って使用制限が生じます。逆に言えば、避難施設等に無関係な改修工事であれば、一号〜三号建築物であっても使用制限はかかりません。
意外ですね。
使用制限がかからない建物・工事
- 四号建築物(木造2階建て以下の一般的な戸建て住宅など):いかなる工事であっても使用制限なし
- 共同住宅以外の住宅・居室のない建築物の増築等:使用制限なし
- 避難施設等に関係しない軽易な工事(手摺の塗装・ガラスの取替えなど):使用制限なし
よく誤解されるのが大手ハウスメーカーの鉄骨2階建て住宅です。「住宅だから四号建築物だろう」と思いがちですが、ヘーベルハウス・セキスイハイム・ダイワハウスなどに代表される鉄骨2階建ての戸建て住宅は「三号建築物」に該当します。新築時には使用制限がかかるため、検査済証が交付される前の家具搬入は法的にNGになります。これは違反建築として通報やパトロールで発覚するケースもあります。
三号建築物は要注意です。
また、「別棟での建て替え」の場合は注意が必要です。既存建物の敷地内に新しい建物を別棟で建てる場合、既存建物への法的な使用制限はかかりません。ただし、新しい建物(棟単位で見ると「新築」)については完了検査が必要です。この点を混同しないようにすることが実務上のポイントになります。
参考:使用制限の根拠となる建築基準法第7条の6の条文と、使用制限がかかる建物・工事の範囲についての詳細
建築法規.com「検査済証の交付前に使用できるor使用できない建築物」
仮使用承認の認定基準:平成27年国土交通省告示第247号のポイント
仮使用認定を受けるためには、平成27年国土交通省告示第247号に定められた基準を満たす必要があります。これが認定の可否を判断する根拠となる技術基準です。おおまかには次の3つが柱になっています。
① 仮使用部分が建築基準関係規定に適合していること
仮使用しようとする部分は、建築基準法の関係規定にきちんと適合している必要があります。「工事中だからまだ完成していない部分があってもいい」というわけにはいきません。仮使用する範囲については、完成状態として基準をクリアしていることが大前提です。
② 工事部分と仮使用部分が防火上有効に区画されていること
工事をしている区域と、人が使用する区域を明確に分ける「防火区画」が必要です。単なるバリケード(Bバリ)では認められないことが多く、原則として高さ3m以上の鋼板などによるしっかりした仮囲いが求められます。工事作業者と利用者の動線を明確に分けることで、万一の事故や火災時の被害を最小限に食い止める狙いがあります。
③ 敷地内に安全な避難通路が確保されていること
仮使用部分から道路まで、施行令第127条から第128条の2に適合する有効幅員の敷地内通路が確保されている必要があります。仮囲いを設置した結果として通路が狭くなったり、駐車場と避難経路が重複したりする計画は認められません。
条件はこの3点が基本です。
加えて、建て替えの場合の特有の扱いとして、新旧2棟が一時的に同じ敷地に並立することで建蔽率・容積率・採光などの集団規定を一時的に超えてしまうことがあります。この点については、告示第1第3項第2号ホにより「やむを得ないと認められる場合」は既存建築物の除却完了までの間、一部の規定について適合していなくても差し支えないとされています。ただし非常用進入口や排煙設備などは確実に確保が必要です。
仮使用期間の上限は原則3年以内です。これは平成27年国土交通省告示第247号第3項第一号ニに定められています。工事計画の長期化により安全管理の状況が変化するリスクを防ぐための上限です。3年を超える期間を設定することはできません。
参考:告示の内容と認定基準の詳細は国土交通省の技術的助言でも解説されています
国土交通省「国住指第558号 仮使用認定の基準適用に関する技術的助言」(PDF)
仮使用承認の申請先・手続きの流れと費用:不動産実務で押さえるべきこと
仮使用認定の申請先は、工事の内容によって3種類に分かれます。どこに申請するかを間違えると手続きがやり直しになるため、事前に確認しておくことが重要です。
申請先の選び方
- 指定確認検査機関または建築主事:告示第247号の基準に適合する場合に申請可能。平成27年の改正から指定確認検査機関でも認定できるようになりました。
- 特定行政庁:既存部分に避難施設等の工事を含む場合や、告示基準に適合しない場合は特定行政庁への申請が必要です。ただし申請すれば必ず認定されるわけではないため、事前相談が欠かせません。
ポイントは「確認申請と仮使用認定申請は別々の窓口に出すことも法的には可能」という点です。しかし実務上は手続きの一貫性を保つために、同じ窓口にまとめるのが一般的です。
手続きの基本的な流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①事前相談 | 仮使用の範囲・期間・消防協議の要否などを確認 |
| ②書類準備 | 申請書・配置図・平面図(仮使用範囲明示)・工事工程表など |
| ③申請書提出 | 仮使用開始予定日の原則30日前までに提出 |
| ④書類審査 | 申請内容が基準を満たしているか審査 |
| ⑤現場検査 | 仮使用部分と工事部分の区画・通路確保を現地で確認 |
| ⑥認定通知書交付 | 認定後に「仮使用認定通知書」が交付され、使用開始可能に |
仮使用開始の30日前までに申請するというルールが条件です。現場検査で是正箇所が見つかると使用開始日がずれ込むため、十分な余裕をもって手続きを始めることが重要です。
申請費用の目安
大阪建築防災センターの手数料規程を参考にすると、仮使用認定申請手数料は仮使用部分の面積によって以下のとおりとなっています(非課税)。
- 500㎡以内:4万円
- 500㎡超〜2,000㎡以内:5万円
- 2,000㎡超〜5,000㎡以内:6万円
- 5,000㎡超〜10,000㎡以内:8万円
これはあくまで検査機関に支払う申請手数料の目安であり、別途、完了検査申請手数料も加算されます。また設計者・施工者への手続き委任費用が別途かかるケースもあります。小規模建物で申請メリットが小さいと判断されることがあるのは、こうしたコスト面の事情もあります。これは有料です。
参考:指定確認検査機関への仮使用認定申請に必要な図書のリストと手数料の詳細
不動産従事者が見落としがちな仮使用承認の独自視点:消防法との二重手続きと取引上のリスク
多くの不動産従事者が仮使用承認を「建築基準法だけの問題」と考えています。しかし実際には、消防法上の手続きも別途必要になる場合があり、この「二重手続き」を見落とすと完了検査前の建物を使えない事態が起きます。これは見落とすと痛いです。
消防法上の「仮使用申請」との違い
建築基準法上の「仮使用認定」とは別に、消防法では防火対象物の工事中の使用について消防機関との事前協議・届出が求められる場合があります。病院・福祉施設・大型商業施設など、消防法施行令第12条〜第15条が適用される建物では、建築基準法の仮使用認定を取得しても、消防側への手続きが完了していなければ実際に使用を開始できません。担当窓口も条件も異なる別制度ですが、どちらも「仮使用」という言葉が使われるため混同されやすいのが実情です。
つまり2つの手続きが条件です。
実務上は、建築基準法の仮使用認定申請と並行して消防機関への事前相談・協議を進めることが重要です。申請書類の副本を消防へ照会する形で手続きが一体化されているケースもあります(日本ERIなどの仮使用認定申請要領に記載あり)が、消防独自のタイムラインがあるため、余裕をもって動き始める必要があります。
不動産取引で問題になるケース
仮使用承認はあくまで「仮の使用許可」であり、完了検査・検査済証の取得を免除するものではありません。仮使用認定通知書は再発行に1通5,000円かかるものですが、仮使用期間が終了した後に完了検査を受けずに放置すると、その建物は「検査済証なし」の状態になります。
検査済証のない建物は不動産取引において重大なリスクをはらんでいます。住宅ローンの審査が通りにくくなること、増築・用途変更が原則としてできなくなること、売却価格が下がること、フラット35の利用ができないことなどが挙げられます。仮使用認定を受けた後に完了検査を受けていないまま建物が使われ続けているケースは、特に昭和〜平成初期の中古物件市場にも残存しており、調査時に注意が必要です。
「仮使用認定を取得したから問題ない」は間違いです。
売買取引や賃貸借契約の締結前に物件の法的状況を確認する際は、「建築確認済証・検査済証・仮使用認定通知書の有無と交付日」をセットで確認することを習慣にするとよいでしょう。特に大規模な増改築歴がある商業ビル・医療施設・福祉施設では、仮使用認定の有効期限(最大3年)が切れた後に完了検査が行われているかどうかを確認する必要があります。期限切れの状態で使用が続いていれば、違法使用と判断されるリスクがあります。
参考:仮使用認定後の完了検査の重要性と、検査済証がない建物が不動産取引で抱えるリスクについての詳細