住宅瑕疵担保保証金の金額と供託の全知識

住宅瑕疵担保保証金の金額と供託の仕組みを完全解説

届出を1日でも遅らせると、翌日から新築住宅の売買契約が全件締結できなくなります。

📋 この記事の3つのポイント
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供託金額は「過去10年分の引渡戸数」で決まる

1戸なら2,000万円。戸数が増えるほど1戸あたりの単価は下がるが、累積額は大きくなる。保険加入した住宅は戸数から除外できる。

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基準日は毎年3月31日・届出期限は3週間以内

届出を怠ると、基準日翌日から50日経過後は新築住宅の売買契約が一切締結できなくなる。罰則は50万円以下の罰金。

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55㎡以下の住宅は「2戸で1戸」と数える特例あり

小規模住宅は供託金算定の戸数カウントが半分になる。ワンルームマンション販売業者には特に影響が大きいルール。


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住宅瑕疵担保保証金とは何か:制度の背景と目的

住宅瑕疵担保保証金は、新築住宅の買主を守るための「資力確保制度」の中核をなす仕組みです。2005年に発覚した耐震偽装問題をきっかけに立法化されました。欠陥住宅を販売した業者が倒産してしまい、補修費用を支払えないまま買主が多大な損害を被る事例が多発したことが、この法律が生まれた直接的な理由です。

それを受けて2009年(平成21年)10月1日に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」が施行されました。

つまり、制度の目的はシンプルです。

宅建業者自ら売主として新築住宅を販売する場合、その業者が万が一倒産しても、買主が補修費用を確保できるよう「あらかじめお金を積んでおく」仕組みがこの供託制度です。業者が倒産した場合、買主は供託所(法務局)に直接還付を請求できます。

対象となる取引は「宅建業者が自ら売主 × 宅建業者以外が買主」という構図に限定されています。宅建業者同士の売買や、媒介・代理のみを行う業者には資力確保義務は発生しません。この点は実務でも混同されやすいポイントなので注意が必要です。

また、「新築住宅」の定義も明確に定められており、建設工事の完了から1年以内かつ居住実績のないものに限られます。1年を超えた未入居物件や、入居済みの物件は「新築住宅」には該当せず、この制度の対象外となります。

住宅瑕疵担保責任保険協会:住宅瑕疵担保履行法の概要(制度の目的・対象・保険法人一覧)

住宅瑕疵担保保証金の金額の算出方法:供託額早見表と計算例

供託金額は「固定額」ではありません。過去10年間に引き渡した新築住宅の戸数に応じて算出される変動額です。これが意外と知られていないポイントで、「1戸なら2,000万円」という認識だけで止まっている不動産従事者も少なくないようです。

具体的な算定式は以下のとおりです。

供託金額 = 引き渡し住宅戸数 × 戸数に応じた乗ずる額 + 加える額

引渡戸数の合計 戸数に乗ずる額 加える額
1戸以下 2,000万円 0円
1戸超10戸以下 200万円 1,800万円
10戸超50戸以下 80万円 3,000万円
50戸超100戸以下 60万円 4,000万円
100戸超500戸以下 10万円 9,000万円
500戸超1,000戸以下 8万円 1億円
1,000戸超5,000戸以下 4万円 1億4,000万円

実際の金額感を数字でイメージするなら、3戸引き渡した場合は「3戸 × 200万円 + 1,800万円 = 2,400万円」、30戸であれば「30戸 × 80万円 + 3,000万円 = 5,400万円」、100戸では「1億円」となります。

1戸あたりの供託額は戸数が増えるほど小さくなる仕組みです。

供託金は現金だけではなく、国債証券・地方債証券などの有価証券でも代用できます。ただし有価証券には評価率の違いがあります。国債は額面の100%として算入されますが、地方債や政府保証債は90%、その他の有価証券は80%として計算されます。現金と有価証券を組み合わせて供託することも可能です。

供託場所は、宅建業者の「主たる事務所の最寄りの供託所(法務局)」と法定されています。支店や営業所ではなく、あくまで本店所在地の最寄りです。この点を間違えると供託が無効とみなされるリスクがあるため注意してください。

なお、供託額の上限は120億円と定められており、非常に大規模な事業者でも120億円を超える供託は不要です。

島根県:住宅瑕疵担保責任の履行確保方法(供託金額の算定表・計算例あり)

住宅瑕疵担保保証金の金額に影響する55㎡以下の特例と保険加入の控除

供託金額の計算には、実務上よく見落とされる「2つの重要な特例」があります。どちらも適切に活用すれば供託額を正確に把握でき、余分な資金拘束を回避できます。

1つ目は「55㎡以下の小規模住宅は2戸で1戸と数える」特例です。

たとえば床面積が50㎡のワンルームマンションを10戸販売した場合、通常であれば10戸分の供託額が必要に思えます。しかし55㎡以下の住宅は2戸をもって1戸とカウントするため、10戸は「5戸」として計算します。これにより供託額は「5戸 × 200万円 + 1,800万円 = 2,800万円」となります。10戸カウントで計算すると「10戸 × 200万円 + 1,800万円 = 3,800万円」ですから、差額は1,000万円です。

計算のベースが変わるということですね。

ワンルームマンションや1LDK中心に販売している業者にとっては、この特例が大きな影響を持ちます。物件の床面積を把握せずに単純に戸数だけで供託額を計算してしまうと、過剰供託になりかねません。

2つ目は「住宅瑕疵担保責任保険に加入した住宅は、供託戸数から除外できる」点です。

保険加入済みの住宅については、その保険法人が補修費用をカバーする仕組みになっているため、供託の必要がありません。保険に加入した住宅戸数を引いた残りの戸数だけで供託額を計算すればよいことになります。

この2つの特例は資金効率に直結するため、大切です。

なお、住宅瑕疵担保責任保険への加入は供託の「代替手段」として機能し、保険と供託を住宅ごとに使い分けることも法律上認められています。A住宅は供託、B住宅は保険加入というように、物件ごとに柔軟に選択できるため、事業規模や資金繰りに応じた対応が可能です。

国土交通省:Q&A4.保証金の供託(55㎡以下の特例・供託金算定の詳細)

届出期限と罰則:基準日・3週間・50日の3つの数字を押さえる

住宅瑕疵担保保証金の制度で最も「うっかりミスが起きやすい」のが届出に関するルールです。ここを誤ると、新築住宅の売買契約が全件停止になるという重大なペナルティが待っています。

まず整理しておきたい3つの数字があります。

  • 🗓️ 基準日:毎年3月31日(1年に1回)
  • ⏰ 届出期限:基準日から3週間以内(4月21日まで)
  • ⛔ 契約停止日:届出を怠ると基準日の翌日から起算して50日を経過した日以降

「基準日の翌日から50日」という数字に注意が必要です。

間違えやすいのは「基準日から50日」と計算してしまうパターンで、実際には「基準日の翌日」から起算します。つまり基準日が3月31日なら、翌日の4月1日から数えて50日後、すなわち5月20日以降に新たな新築住宅の売買契約が締結できなくなります。

届出を怠った場合の制裁は2段階です。まず「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。さらに資力確保措置自体を行わずに届出も怠った場合は、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその併科」という重い罰則が待っています。

売買契約の停止は営業上、致命的なダメージです。

毎年3月31日に向けて逆算した対応スケジュールを組んでおくことが重要です。具体的には、3月中旬までに供託状況を確認し、必要な追加供託を完了させ、4月21日までに免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)に届出を済ませるという流れです。

届出先は「免許権者」です。国土交通大臣から免許を受けている業者なら大臣へ、都道府県知事から免許を受けているなら当該知事へ届け出ます。

国土交通省中部地方整備局:資力確保措置の届出・罰則に関する案内

保証金の不足・取り戻しと主たる事務所移転時の対応

実務では、供託後に状況が変化するケースも少なくありません。「供託後に還付が発生して残高が不足した場合」と「事業所を移転した場合」は、それぞれ別の対応が必要です。ここは見落としやすい箇所です。

まず、供託額が不足した場合の対応について説明します。

買主から還付の請求があり、供託金が減少した場合、宅建業者は「国土交通大臣から不足の旨の通知を受けたとき」または「不足を自ら知ったとき」のいずれか早い時点から2週間以内に不足額を追加供託しなければなりません。さらに、その追加供託を行ってから2週間以内に免許権者へ届け出る必要があります。

2週間という期限は短いですね。

カレンダーを意識して迅速に動かないと、この2週間はあっという間に過ぎます。還付通知が届いた段階でただちに手続きを開始するよう社内フローを整えておくことが重要です。

次に、主たる事務所を移転した場合の扱いです。これも実務でよく問われるポイントです。

供託方法によって対応が異なります。「金銭のみで供託している場合」は、新しい最寄り供託所への「保管替え請求」という手続きを行えばよく、実際に現金を引き出して再供託する必要はありません。一方、「有価証券を含む形で供託している場合」は保管替えが使えず、旧供託所から実際に供託物を引き出してから、新しい最寄り供託所に改めて供託しなければなりません。

この手続きの違いは見落としやすいため、供託内容を常に把握しておくことが条件です。

一方、過去10年分の引渡戸数が減少した結果として、現在の供託額が法定額を上回る「過剰供託」の状態になることがあります。その場合は、基準日において法定額を超える部分について「免許権者の承認を受けて」超過額を取り戻すことができます。取り戻しには承認が必要な点に注意してください。自己判断で勝手に引き出すことはできません。

国土交通省:供託金の取戻し手続きについて(過剰供託の還付申請方法)

供託より保険加入が主流になった理由と、不動産業者が知るべき保険選択のポイント

実務の現場では、供託よりも「住宅瑕疵担保責任保険への加入」を選ぶ業者の方が圧倒的に多いのが実態です。その背景には、供託の最大のデメリットである「資金の長期拘束」があります。

供託金は10年間、基本的に取り戻すことができません。

1戸であれば2,000万円が10年間ロックされます。この金額は、中小規模の不動産業者にとって経営資金の大きな部分を占めることもあります。一方、保険加入の場合は保険料を支払えばよく、2,000万円という大きな現金を長期間拘束される事態を避けられます。

これは使えそうです。

住宅瑕疵担保責任保険を取り扱える保険法人は、国土交通大臣が指定した専門機関に限られます。一般の損害保険会社では取り扱っていない点は覚えておく必要があります。保険金額は2,000万円以上、有効期間は引渡し時点から10年以上であることが要件として定められています。

保険料は「売主である宅建業者が負担する」のが原則です。買主が支払う保険ではありません。また、いったん締結した保険契約は、国土交通大臣の承認を受けた場合を除いて変更・解除できません。たとえ買主が購入後10年以内に転売したとしても、保険契約を解除することは認められないため注意が必要です。転売後も保険は継続されます。

独自視点として付け加えると、投資用マンション(買主が自己居住しない物件)も住宅瑕疵担保履行法の対象になります。「居住しないから対象外」と誤解する業者が実務では一定数いますが、工事完了から1年以内かつ未入居の住宅である限り、買主が自己居住目的かどうかに関わらず対象です。

保険法人を選ぶ際は、補修費用の填補率・調査費用・仮住居費用のカバー範囲を確認することが大切です。指定保険法人はいくつかあり、保険料水準や検査の流れも各社で異なります。複数の保険法人の見積もりを比較してから選択することで、コスト面での最適化が図れます。

国土交通省:住宅瑕疵担保責任保険の概要(保険金の支払い対象・要件・指定法人一覧)