廃業等の届出・宅建業法が定める届出者と期限の全知識

廃業等の届出と宅建業法が定める届出者・期限・みなし業者の全知識

破産した宅建業者の廃業届は、代表役員ではなく第三者が提出しないと免許取消になります。

この記事の3つのポイント
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届出事由は全部で5種類

死亡・合併消滅・破産・解散・廃止の5つが廃業等の届出事由です。それぞれ届出義務者と免許失効のタイミングが異なります。

原則30日以内、死亡だけ起算点が違う

すべての届出は事由発生日から30日以内が原則ですが、個人業者の死亡のみ「死亡を知った日」が起算点になる例外があります。

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廃業後も「みなし業者」として業務継続が可能

免許が失効しても、既存契約の取引結了を目的とする範囲内では宅建業者とみなされ、引渡しや所有権移転登記などを適法に行えます。


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廃業等の届出とは何か・宅建業法第11条の全体像

宅建業法第11条は、宅建業者の地位に変動が生じた場合に、一定の者が免許権者へ届け出る義務を定めた条文です。廃業等の届出と聞くと「自分の意思でやめるとき」だけをイメージしがちですが、それだけではありません。

宅建業法が定める届出事由は全部で5種類あります。①個人業者の死亡、②法人の合併による消滅、③宅建業者の破産手続開始決定、④法人の解散(合併・破産以外の理由)、⑤宅建業の廃止、この5つが該当します。つまり、自分の意思に関係なく届出が義務になるケースが存在するということですね。

実務に従事していると「廃業は自分が決める」という感覚が強くなりますが、②や③のように会社・個人の意思とは無関係に届出義務が発生するパターンがある点は特に重要です。法律上は義務なので、該当する事実が発生した時点で速やかに確認が必要です。

届出先は、都道府県知事免許業者であればその都道府県知事、国土交通大臣免許業者であれば主たる事務所を管轄する国土交通省地方整備局です。なお2024年(令和6年)5月25日からは宅建業法改正により、大臣免許に関する申請・届出は都道府県窓口経由ではなく、地方整備局へ直接(郵送またはオンライン)提出する形に変されています。これは実務上、見落としやすい変更点です。

提出する書類は「廃業等届出書」と「免許証(返納)」が基本です。届出事由によっては証明書類の添付が求められる場合もあります。手数料は無料です。

岡山県:宅地建物取引業者の廃業等の届出(提出書類・営業保証金取戻しの手続きが詳しく掲載)

廃業等の届出・宅建業法が定める届出義務者と届出期限の違い一覧

5種類の届出事由には、それぞれ異なる「届出義務者」と「届出期限の起算点」が設けられています。ここが実務でも試験でも最もミスが起きやすい部分です。

まず届出義務者を整理します。

届出事由 届出義務者 届出期限
個人業者が死亡 相続人 死亡を知った日から30日以内
法人が合併により消滅 消滅した法人の代表役員だった者 合併の日から30日以内
破産手続開始決定 破産管財人 決定の日から30日以内
解散(合併・破産以外) 清算人 解散の日から30日以内
宅建業を廃止 廃業した個人または法人の代表役員 廃業の日から30日以内

特に注意が必要なのは「破産」の届出義務者です。破産管財人が届け出なければなりません。代表役員ではありません。破産が決定すると財産の管理・処分の権限は全て破産管財人(通常は弁護士)に移るため、破産した役員本人には届出の権限がなくなります。代表役員が届け出ようとしても誤りになります。これが原則です。

また「合併による消滅」と「解散」の届出義務者も混同しがちです。合併による消滅の場合は「消滅した法人の代表役員だった者」、解散の場合は「清算人」が届出義務者です。株主総会の決議で会社を解散する場合は清算人が届出をする点も覚えておいてください。

期限の起算点については、死亡のみ「死亡を知った日」が起算点になる点が大きな例外です。他の4事由はすべて「その事実が発生した日」が起算点になります。個人事業主の不動産屋の代表者が亡くなった場合、相続人がその事実を知るまでには時間がかかることがあります。たとえば、遠方で一人暮らしをしており発見が遅れたケースでも、知った日から30日以内に届け出れば法律上は問題ありません。

宅建不動産コンパス:宅建業法第11条・第76条「廃業等の届出」の条文と詳細解説(届出義務者・失効時期の表付き)

廃業等の届出・宅建業法における免許失効のタイミングと実務への影響

免許がいつ失効するかは、届出事由によって2パターンに分かれます。知らないと実務上の重大なリスクになります。

ひとつ目は「当然に免許が失効するパターン」です。個人業者が死亡した場合は死亡した時点で、法人が合併により消滅した場合は消滅した時点で、それぞれ免許は自動的に効力を失います。届出が遅れたとしても免許はすでに失効済みです。このパターンでは届出が遅れても罰則は原則ありません。

ふたつ目は「届出があって初めて免許が失効するパターン」です。破産・解散・廃止の3つはこちらに該当します。つまり、届出をするまでは免許がまだ有効なままということです。裏を返すと、廃業届を出さずに宅建業を継続すれば業務は続けられる、というわけではありません。

廃業届を怠った場合のリスクは免許取消です。届出が義務である以上、届出を怠ること自体が問題になります。免許が取り消されると、その後5年間は新たな免許を受けることができません。再び宅建業を始めようとしても5年間はブランクが生じる、これは大きなデメリットです。

さらに免許が失効した後に宅建業を続けた場合は無免許営業となり、宅建業法第12条違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金(もしくは両者の併科)という宅建業法上で最も重い罰則が科せられます。法人の場合は1億円以下の罰金です。

愛知宅建業免許.com:廃業届が必要な場合と届出者の解説(令和6年改正後の大臣免許の提出先変更情報も記載)

廃業等の届出後に知っておくべき「みなし業者」ルールと注意点

廃業等の届出をして免許が失効した後でも、宅建業を一切行えなくなるわけではありません。宅建業法第76条が定める「みなし業者」のルールが適用されます。

みなし業者とは、免許が失効した後も、失効前に締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内において、なお宅建業者とみなされる制度です。つまり既存の契約は履行できるということですね。

具体的な場面を考えてみましょう。不動産の売買契約を締結して手付金を受け取った後、引渡し前に免許の有効期間が満了してしまったとします。この場合でも、その契約の引渡し・所有権移転登記などを行うことは適法にできます。廃業前の契約が中途で止まってしまえば、買主側に重大な損害が生じます。そうならないよう、顧客保護の観点からみなし業者の制度が設けられています。

ただし、みなし業者として行えるのは「既存の契約を結了する目的の範囲内」に限られます。新たに売買や仲介の契約を結ぶことは一切できません。廃業後に新規の顧客から相談を受けて取引を行えば、それは無免許営業になります。既存契約の結了と新規営業の境界線は明確にしておく必要があります。

みなし業者のルールが適用される事由は、免許有効期間の満了・破産・解散・廃止・死亡・合併消滅・免許取消しと幅広く定められています。いずれの場合も共通の考え方は「すでに締結した契約のお客様を守る」ことです。

公益財団法人不動産流通推進センター:廃業後のみなし業者と瑕疵担保責任に関する解説(実務上の注意点が記載)

廃業等の届出後に忘れやすい営業保証金の取戻し手続きと期間の注意点

廃業等の届出をして一連の手続きが終わった気になりがちですが、実務でもう一つ重要な後続手続きがあります。営業保証金(または弁済業務保証金分担金)の取戻しです。

営業保証金は宅建業開業時に法務局に供託するもので、主たる事務所につき1,000万円、支店1か所につき500万円の金額が設定されています。廃業によって免許が失効したからといって自動的に戻ってくるわけではありません。

取戻しには原則として「取戻し公告」が必要です。官報に公告を行い、公告掲載の翌日から6か月以内に債権者からの申し出がなければ、はじめて営業保証金を取り戻すことができます。つまり最低6か月は待たなければならないということです。半年という期間は、一般的な事務手続きよりもかなり長い期間です。

取戻し公告を行わない場合は、免許が失効してから10年が経過した後でないと取り戻せません。公告なしで放置すると10年もの間資金が動かせなくなります。これは痛いですね。

保証協会(宅建協会・全日など)に加入して弁済業務保証金分担金を納めていた業者の場合は、加入していた保証協会に連絡して手続きを進める形になります。保証協会経由の場合は取戻し公告の手続きが不要になるケースもあり、一般的に手続きが簡略化されます。

廃業時には「廃業届の提出」「免許証の返納」「営業保証金の取戻し手続き」の3つをセットで進めることが基本です。また、廃業に伴う従業員の労働関係の手続きや税務署への届出も別途必要になるため、行政書士や税理士など専門家への相談も検討に値します。

愛知宅建業免許.com:宅建業の営業保証金・取戻しの手続きと公告期間の詳細解説