売買の媒介報酬の上限・計算方法と改正の完全ガイド

売買の媒介報酬の上限・計算方法と違反リスクを徹底解説

800万円以下の物件で事前説明なしに33万円を請求すると、宅建業法違反で100万円以下の罰金になります。

この記事の3つのポイント
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速算式で上限額を正確に把握する

400万円超の売買なら「売買価格×3%+6万円+消費税」が片手の上限。両手なら2倍の額が受け取れる。

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2024年7月改正:800万円以下は最大33万円

低廉な空き家等の特例が拡充。ただし事前の依頼者への説明と合意が必須条件。手順を省くと違反になる。

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上限超過は100万円以下の罰金+行政処分

超過部分の報酬合意は民事上も無効。依頼者に返還義務が生じる。法人にも両罰規定が適用される。


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売買の媒介報酬の基本:宅建業法第46条が定める上限規制の仕組み

 

売買の媒介報酬(仲介手数料)は、宅地建物取引業法(宅建業法)第46条に基づき、国土交通大臣の告示によって上限額が定められています。「報酬は当事者同士の合意で自由に決めていい」と思っている不動産従事者もいますが、それは誤りです。

上限の範囲内であれば依頼者と自由に合意できますが、上限を超えた部分は法律上無効となります。

この規制が設けられた背景には、宅地建物取引業が国民生活に深く関係する事業であり、業務の適正な運営と取引の公正確保を図る必要があるという理念があります。つまり、消費者保護の観点から設けられた強行規定です。

不動産従事者として最低限おさえておくべき計算体系は以下のとおりです。

売買代金(税抜) 報酬の上限(依頼者一方につき)
200万円以下の部分 売買代金×5%
200万円超〜400万円以下の部分 売買代金×4%+2万円
400万円超の部分 売買代金×3%+6万円

上記の計算は「依頼者の一方」に対する上限です。つまり、売主と買主の双方から媒介の依頼を受けた場合(いわゆる「両手仲介」)は、それぞれから上限額を受け取ることができます。これが原則です。

実務でよく使う速算式は「売買価格×3%+6万円+消費税」です。これは400万円超の物件に限って使える式です。たとえば3,000万円の物件なら、(3,000万円×3%+6万円)×1.1=105万6,000円が片手の上限になります。

消費税が上乗せされることも忘れてはいけません。計算の際は消費税抜きの売買代金に割合を掛け、最後に1.1倍します。これが原則です。

なお、国土交通省の告示原文や報酬規定の最新情報は、国土交通省の公式ページで確認できます。改正が入るたびに内容が変わるため、定期的にチェックすることを強くおすすめします。

国土交通省|宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(告示原文)

売買の媒介報酬を正確に計算する方法:速算式と具体的な計算例

売買の媒介報酬の計算でつまずく不動産従事者は少なくありません。特に「速算式はどこまで使えるか」という点が混乱しやすいポイントです。

速算式「売買価格×3%+6万円+消費税」が使えるのは、売買代金が400万円超の場合に限られます。

具体的な例を3パターン見てみましょう。

売買価格(税抜) 速算式での計算 消費税込み上限額(片手)
500万円 500万×3%+6万円=21万円 23万1,000円
1,000万円 1,000万×3%+6万円=36万円 39万6,000円
3,000万円 3,000万×3%+6万円=96万円 105万6,000円

両手仲介(売主・買主双方の媒介を同一業者が担当)の場合は、それぞれから片手の上限額を受け取ることができます。たとえば3,000万円の物件で両手仲介なら、最大で105万6,000円×2=211万2,000円が上限です。

ただし、売主が事業者(法人や課税事業者)の場合は、建物部分に消費税が課されることがあります。このケースでは、宅建業者が受け取れる報酬の計算に使う「売買代金」は、消費税を含まない本体価格で計算しなければなりません。

実務上よくあるミスが、売主事業者のケースで消費税込みの金額をそのまま計算に使ってしまうことです。これは計算上の誤りにつながります。注意が必要です。

また、交換の媒介の場合は「売買代金」ではなく、交換対象物件の価格のうち高い方を基準に計算します。土地1,000万円と土地1,200万円の交換なら、1,200万円をベースに計算するということです。この点は売買と混同しやすいので、確認しておくべきポイントです。

ダーウィン法律事務所|仲介事業者向け:媒介報酬に関する法規制と違反した場合の効果(弁護士解説)

2024年7月改正:売買の媒介報酬「800万円以下特例」の正しい使い方

2024年7月1日、宅地建物取引業者の報酬規定が改正され、売買価格が800万円以下の物件に関する媒介報酬の上限が大きく引き上げられました。

改正前の通常計算だと、たとえば200万円の物件で片手の上限は「200万×5%=10万円(税抜)=11万円(税込)」に過ぎません。不動産業者にとって採算が合わず、低廉な空き家の流通が進まないという社会問題がありました。

この改正により、800万円以下の物件であれば、依頼者の一方から最大30万円(税込33万円)まで受け取ることが可能になりました。売主・買主双方から受け取れば最大66万円です。

ただし、この特例には重要な条件があります。それが「事前の説明と依頼者の合意」です。

✅ 特例適用の必須条件

  • 媒介契約の締結に際し、あらかじめ依頼者に報酬額を説明すること
  • 依頼者の合意を得ること
  • その具体的な金額を媒介契約書に明記すること

「法律で上限が33万円に改正されたので33万円です」と事後的に請求するだけでは不十分です。事前の説明と合意がなければ、宅建業法違反を問われる可能性があります。

また「低廉な空き家等」という表現から、空き家だけが対象と誤解されがちですが、改正後は空き家に限らず800万円以下の宅地・建物全般(居住中の家屋や更地を含む)が対象です。これは意外と知られていない点です。

買主からも特例報酬を受け取る場合には、買主との媒介契約締結時にも同様の事前説明・合意が必要です。買主との媒介契約は後回しにしがちですが、ここをおろそかにするとトラブルの原因になります。

不動産の見方|媒介報酬改正後の注意点:上限請求に関する誤解と適切な対応(詳細解説)

売買の媒介報酬を超過受領したときの罰則:100万円以下の罰金と行政処分のリスク

売買の媒介報酬の上限を超えて受け取った場合、どうなるのでしょうか。これを軽視している業者が、実際にペナルティを受けるケースが存在します。

宅建業法第46条2項に違反して上限を超える報酬を受領した場合、100万円以下の罰金が科されます。

さらに注意が必要なのは、両罰規定の存在です。違反した担当者個人だけでなく、法人(会社)に対しても同じく罰金刑が科されます。会社全体が処罰対象になるということです。

刑事罰だけではありません。行政処分として、指示処分・業務停止処分・免許取消処分のいずれかが科される可能性があります。業務停止になれば、停止期間中の営業ができなくなるため、ビジネス上の損失は計り知れません。

また、民事上の効果として、上限を超えた部分の報酬合意は無効とされます。裁判所の判例でも、「告示所定の額を超える契約部分は強行法規違反で無効」と明確に判断されています。つまり、すでに超過分を受け取っていた場合は、依頼者への返還義務が生じます。

「依頼者が同意しているから問題ない」という認識は通用しません。大阪府の事例では、売主・買主が同意していたにもかかわらず、法定上限を超えた報酬を受領した仲介業者が実際に処分を受けています。これは厳しいところですね。

一方、仲介手数料以外に受け取れる費用として認められているものもあります。それは「依頼者から依頼された広告費用」と「依頼者の承諾を得た特別な調査費用(遠隔地の現地調査等)」です。これら以外の名目で費用を受け取ると、超過報酬と見なされるリスクがあります。「広告料」「コンサル費」といった名目でも、実質的に報酬と判断されると違反になる可能性があります。

ダーウィン法律事務所|宅建業法違反となる主な行為と違反した場合の業者の責任(弁護士解説)

売買の媒介報酬における「両手仲介」の上限と囲い込みリスクの実態

売買の媒介報酬で不動産従事者が特に理解しておくべき構造が「両手仲介」と「片手仲介」の違いです。これは、受け取れる報酬総額に直結する問題であり、業界の慣行としても深く根づいています。

片手仲介とは、売主側買主側それぞれ別の業者が担当する取引形態です。この場合、1社が受け取れるのは片方の依頼者からの報酬のみです。

両手仲介とは、1社が売主・買主の双方の媒介を担当する形態です。売主・買主の双方から報酬を受け取れるため、片手仲介の2倍の報酬になります。

たとえば4,000万円の物件なら、片手では(4,000万円×3%+6万円)×1.1=138万6,000円、両手では277万2,000円です。これだけの差が生まれます。

業者が両手仲介を強く望む構造的な理由がここにあります。問題となるのが「囲い込み」と呼ばれる行為です。売主から依頼を受けた業者が、他社からの買主紹介を意図的に拒否し、自社で買主を見つけて両手仲介を狙うケースです。これは売主の利益を損なう行為であり、宅建業法上の義務違反に当たります。

代理(片方の代理人として契約する形態)の場合は、媒介報酬の上限計算額の2倍まで受け取ることができます。ただし双方代理は禁止されているため、売主の代理を務める場合、買主の代理にはなれません。つまり代理の場合は、1社が一方から媒介の2倍、他方から媒介分まで受け取れますが、合計は「売買価格×6%+12万円+消費税」が上限となります。

実務での報酬計算に誤りが生じやすい場面の一つが、複数業者が絡む取引です。たとえば売主代理の業者Aが上限満額を受け取る契約をしていた場合、買主側の業者Bは買主から媒介報酬を受け取ることができなくなります。複数業者が関わる際は、事前に各社が受け取る報酬額を共有・確認することが実務上不可欠です。

【独自視点】売買の媒介報酬トラブルを防ぐ:媒介契約書の記載と事前合意の実務ポイント

売買の媒介報酬に関するトラブルは、改正法施行後に急増しています。その原因の多くは「報酬改正の法的な意味を正確に理解していなかった」ことにあります。実務でトラブルを防ぐために、以下のポイントを押さえておきましょう。

まず重要なのは、媒介契約書への金額明記です。報酬告示の上限はあくまで「上限」であり、「当然に最高額を請求できる」という意味ではありません。依頼者との間で合意した具体的な金額を、媒介契約書に明記することが必要です。

口頭での合意だけでは後々のトラブルを招きます。「言った・言わない」の争いになると、証明が困難です。書面に残すことが基本です。

売主への対応は比較的スムーズです。売り出し前に媒介契約を締結するのが通常のフローだからです。一方、買主との媒介契約については、初回面談でいきなり契約書を求めると警戒されることも少なくありません。

そのような場合でも、少なくとも「物件を案内する前」か「購入申込み前」の段階で、報酬に関する説明と合意を得ることが現実的な対応策です。特に800万円以下の物件を案内する際は、事前に買主の予算を把握したうえで、該当する可能性があれば早期に説明しておくことが重要です。

媒介契約を更新する場合にも注意が必要です。更新時に報酬額が変わる場合は、従前の契約と同一内容とはみなされません。変更後の報酬額を明示した媒介契約書を改めて締結(または合意書面の作成)しなければなりません。これを怠ると、従前の報酬額での契約が自動更新されたとみなされ、後から高い報酬額を請求してもトラブルになります。

実務上、媒介報酬に関するトラブルが生じた場合や、複雑な取引で法的判断が必要な場合は、不動産問題に詳しい弁護士や宅建業者向けの専門顧問への相談を検討することが賢明です。トラブルが大きくなる前に動くことが、業務停止処分などの最悪のシナリオを避けることにつながります。

以下に、媒介報酬実務で確認すべきチェックポイントをまとめます。

  • 💬 売主・買主それぞれとの媒介契約書に報酬額を明記しているか?
  • 🔢 速算式の適用は400万円超の物件か確認しているか?
  • 🏚️ 800万円以下物件は特例適用の事前説明・合意を得ているか?
  • 📑 媒介契約新時に報酬額の変更があれば書面を作成しているか?
  • 🚫 広告費・調査費等の名目が実質的な超過報酬になっていないか?
  • 🤝 複数業者が関わる取引で、各社の報酬額を事前に共有しているか?

国土交通省|空き家等に係る媒介報酬規制の見直し(改正概要PDF)

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