34条書面・35条書面・37条書面の違いと記載事項を完全解説
35条書面の重説、相手が宅建業者でも書面の交付だけは絶対に省略できません。
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34条書面(媒介契約書)とは何か・役割と交付タイミング
34条書面とは、宅建業法第34条の2に基づき、宅建業者が依頼者との間で媒介契約を締結した際に作成・交付する書面のことです。一般的には「媒介契約書」と呼ばれています。
この書面の目的は、「この物件の売却活動をどのような条件で宅建業者に依頼するのか」という取り決めを書面で明確にすることです。つまり売主と宅建業者の間の業務委託契約書にあたります。
交付タイミングは、媒介契約を締結した後に「遅滞なく」交付しなければなりません。また、相手方が要らないと言っても交付は省略できません。宅建業者間の取引であっても同様に交付が必要です。
ここで非常に重要な点があります。34条書面の交付義務が発生するのは、「売買または交換の媒介契約」の場合に限られています。
賃貸(貸借)の媒介契約では、書面の交付義務はありません。
これは意外と見落とされやすい落とし穴です。賃貸仲介を主業務にしている担当者は特に注意が必要な点です。
| 媒介契約の種類 | 34条書面の交付義務 |
|---|---|
| 売買・交換の媒介契約 | ✅ あり(義務) |
| 賃貸(貸借)の媒介契約 | ❌ なし(義務なし) |
記名押印の義務については、34条書面には宅建業者(会社)が記名押印します。宅建士の記名は不要である点も、35条書面・37条書面との大きな違いです。
34条書面の主な記載事項は以下のとおりです。
- 🏠 物件を特定するために必要な表示
- 💴 売買すべき価額または評価額
- 📋 媒介契約の種類(一般・専任・専属専任の区別)
- 💰 報酬に関する事項
- 📅 媒介契約の有効期間
- 🚫 媒介契約の解除に関する事項
- ⚠️ 契約違反の場合の措置
- 📜 標準媒介契約約款に基づくか否か
- 🔗 指定流通機構(レインズ)への登録に関する事項
- 🔧 既存建物の場合:建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項
建物状況調査(インスペクション)のあっせんに関する記載は、2018年の法改正で新たに追加された項目です。中古売買に携わる方は特に確認しておきましょう。
参考:宅建業法に基づく媒介契約書の交付義務と記載事項の詳細は、国土交通省の解説資料で確認できます。
35条書面(重要事項説明書)の記載事項と宅建業者間の扱い
35条書面は、不動産取引における「事前説明の書類」です。契約が成立する前に、宅建士が買主・借主になろうとする者に対して交付し、説明を行います。
説明義務を果たせなかった場合の罰則は厳しいものがあります。重要事項の説明を怠った宅建業者には、業務停止処分が下される可能性があるうえ、宅建士証の提示を怠っただけでも10万円以下の過料が科されます。
説明は重要です。
宅建業者が相手方の場合の扱いについては、2017年(平成29年)の法改正以降、大きく変わりました。買主・借主が宅建業者である場合、重要事項の「説明」は省略可能です。ただし、35条書面の交付だけは省略できません。これは頻出の引っ掛けポイントです。
「業者相手だから重説も書面も不要」という思い込みは違反になりかねません。
35条書面の主な記載事項は非常に多岐にわたります。大きく4つのカテゴリに整理すると実務でも管理しやすくなります。
- 🏗️ 全取引共通の記載事項:登記情報、法令上の制限、ライフラインの整備状況、未完成物件の状況など
- 🏢 建物のみに記載する事項:石綿(アスベスト)使用調査の内容、耐震診断の結果など
- 🏬 区分所有建物(マンション)の追加記載事項:管理費・修繕積立金の額とその滞納額、管理組合の規約など
- 🔑 賃貸借契約における追加記載事項:契約期間・更新に関する事項、敷金の精算方法など
特に実務で注意が必要なのが、水害ハザードマップの記載義務です。2020年8月から、水防法に基づく水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の記載が義務化されています。古い書式をそのまま使い続けているとこの項目が漏れてしまうリスクがあります。書式は定期的に最新版を確認しましょう。
また、2022年の法改正により、35条書面への宅建士の押印が不要となりました。記名のみで足ります。それ以前は「記名押印」が必須だったため、実務経験の長いベテランの担当者ほど古い習慣で押印しているケースが見受けられます。
IT重説(オンラインによる重要事項説明)に関しても触れておきます。条件を満たせばテレビ会議等を通じたオンラインでの重説が認められています。主な要件は以下のとおりです。
- 💻 双方向でやりとりできるIT環境で実施すること
- 📄 重要事項説明書等を事前に相手方へ送付しておくこと
- 🪪 宅建士が宅建士証を画面上に提示し、相手方が視認できたことを確認すること
- 📡 映像・音声の状況が良好であることを開始前に確認すること
映像・音声が乱れたまま強行すると要件を満たさず、説明義務を果たしたことにならない場合があります。IT重説の実施前には必ず接続確認を行うことが原則です。
参考:IT重説の要件と実施方法の詳細については、国土交通省の実施マニュアルが参考になります。
賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明 実施マニュアル概要(国土交通省PDF)
37条書面(契約書面)の記載事項・必要的と任意的の違い
37条書面は「契約書面」とも呼ばれ、売買・交換・賃貸借いずれの契約が成立した後に、宅建業者が契約当事者(売主・買主、または貸主・借主の双方)に対して遅滞なく交付する書面です。
ここが重要な点です。35条書面が「買主・借主側への事前説明」なのに対し、37条書面は「両当事者への契約確認」です。交付先が異なります。
37条書面には説明義務はありません。宅建士が説明する必要はなく、宅建士以外の従業員が交付することも可能です。ただし、書面への記名は宅建士が必ず行わなければなりません。
なお、2022年の法改正によって、押印は不要となっています。
37条書面の記載事項は「必要的記載事項(絶対的記載事項)」と「任意的記載事項(相対的記載事項)」に分かれます。この区別を把握しているかどうかが、実務でのミスを防ぐ鍵になります。
必要的記載事項(必ず記載):
- 📌 当事者の氏名・住所
- 🏠 物件を特定するために必要な表示
- 🔧 既存建物の場合:建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項
- 💴 代金・交換差金・借賃の額、支払い時期・方法
- 📅 物件の引渡し時期
- 📝 移転登記の申請時期(売買・交換のみ)
任意的記載事項(定めがあれば記載):
- 🛡️ 契約不適合担保責任(瑕疵担保責任)に関する定め
- 💰 代金・交換差金の融資に関する定め(売買のみ)
- ⚠️ 契約の解除に関する定め
- 💸 損害賠償額の予定または違約金に関する定め
- ✅ 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(売買・交換のみ)
- 💳 割賦販売に関する定め(売買のみ)
任意的記載事項は、「定めがない場合は記載不要」です。これは違反にはなりません。
注意すべきは、35条書面の記載事項と37条書面の記載事項には重複する項目があることです。「代金・借賃の額・支払時期・方法」「物件の引渡時期」「移転登記の申請時期」の3項目は、35条書面では任意的記載事項(定めがあれば記載)ですが、37条書面では必要的記載事項(必ず記載)となっています。この違いは実務でも混同しやすい部分です。
参考:37条書面の記載事項と実務上の留意点については、全宅連の月刊不動産に詳しい解説があります。
Vol.67 宅建業法~37条書面の交付(月刊不動産・全日本不動産協会)
34条書面・35条書面・37条書面の三大書面を比較表で整理
三大書面の違いを理解するうえで、一覧で比較できると実務上の判断が格段に速くなります。
| 比較項目 | 34条書面 (媒介契約書) |
35条書面 (重要事項説明書) |
37条書面 (契約書面) |
|---|---|---|---|
| 交付タイミング | 媒介契約締結後、遅滞なく | 契約成立前 | 契約成立後、遅滞なく |
| 交付先 | 依頼人(売主・交換を行う者) | 買主・借主になろうとする者 | 売主・買主・貸主・借主(両当事者) |
| 書面化が必要な取引 | 売買・交換のみ(賃貸は不要) | 売買・交換・賃貸すべて | |
| 説明義務 | なし | あり(宅建士が行う) | なし |
| 宅建士の関与 | 不要(業者が記名押印) | 記名・宅建士証提示が必要 | 記名が必要(押印は不要) |
| 業者間取引の扱い | 交付必要 | 説明省略可・書面交付は必要 | 交付必要 |
この比較表を頭に入れておくだけで、日常業務のなかで「今どの書面が必要な場面か」を素早く判断できます。これが基本です。
特に実務での判断ミスが起きやすいのが「交付先」の違いです。35条書面の交付先は「買主・借主側のみ」ですが、37条書面は「両当事者」です。売主への交付を失念するミスが現場では発生しやすいため、チェックリストに組み込んでおくことをおすすめします。
また、どの書面も相手方の承諾があれば電磁的方法(電子書面)による提供が可能です。2022年の法改正以降、三大書面すべてで電子化対応が認められています。電子化の流れを押さえておくと、今後の業務効率化に直結します。これは使えそうです。
三大書面を正確に運用するために不動産従事者が知るべき実務ポイント
三大書面の知識は資格試験のためだけではありません。実際の取引現場において書面の不備や交付漏れが起きると、業務停止処分や罰金という形で直接的なリスクに直結します。
罰則の一覧を確認しておきましょう。
- 🚨 37条書面の交付義務違反:50万円以下の罰金(業務停止処分の可能性あり)
- 🚨 重要事項説明(35条)の義務違反:業務停止処分の対象
- 🚨 宅建士証の提示義務違反(重説時):10万円以下の過料
- 🚨 34条書面の交付義務違反:業務停止処分の対象
「うっかり」が50万円の罰金につながります。痛いですね。
さらに実務で見落とされがちなのが「35条書面と37条書面に記名する宅建士は同一人物でなくてよい」という点です。35条書面に記名した宅建士と、37条書面に記名する宅建士が異なっていても問題ありません。また、37条書面に記名する宅建士は専任の宅建士である必要もありません。この柔軟性を知っておくと、担当者が急遽変わったときの対応がスムーズになります。
業務上のリスクを具体的に管理するうえで、三大書面に関する法改正の動向を把握しておくことも重要です。特に2022年5月施行の改正(押印廃止・電子化対応)は実務への影響が大きく、自社の書式や運用マニュアルが最新の内容に対応しているかを確認しましょう。古い書式のまま押印欄を残していると、顧客から「なぜ印鑑が必要なのか」と問われる場面もあります。
最後に、実務で三大書面の精度を高めるための3つの確認ポイントをまとめます。
- ✅ 交付タイミングの確認:35条は「契約前」、34条・37条は「契約後、遅滞なく」
- ✅ 交付先の確認:37条書面は売主・買主の両当事者に必ず交付する
- ✅ 書式の最新化:2022年改正・ハザードマップ義務化等に対応した書式を使用する
参考:宅建業法違反に対する罰則の詳細と監督処分基準については、国土交通省の公式文書で確認できます。
宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準(国土交通省PDF)

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