保証協会加入の報告は業者でなく協会がする義務

保証協会加入の報告と手続きを正しく理解する

保証協会に加入したとき、免許権者への報告は自分でやらなくていい。

この記事の3ポイント
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報告義務は保証協会にある

宅建業者が保証協会に加入・脱退した際の免許権者への報告義務は、宅建業者自身でなく保証協会が負います(宅建業法第64条の4)。

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期限を守らないと社員資格を失う

事務所増設時の分担金追加納付は2週間以内、還付充当金の納付も通知から2週間以内が期限です。遅れると即座に社員の地位を失います。

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加入前の取引も還付対象になる

保証協会に加入する前に行った取引であっても、顧客(被害者)は弁済業務保証金からの還付を受けられます。知らないと取引姿勢が変わります。


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保証協会加入の報告義務は「保証協会」が行う仕組み

宅建業者が保証協会に加入するとき、「自分で都道府県庁や国土交通省に報告しなければならない」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし実際には、宅地建物取引業法第64条の4第2項に明確に定められており、免許権者への報告義務を負うのは保証協会です。宅建業者自身には、この報告義務はありません。

具体的には、次の2つのタイミングで保証協会が「直ちに」免許権者へ報告します。

  • 新たに社員が加入したとき
  • 社員がその地位を失ったとき

報告先は「当該社員である宅建業者が免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事」です。つまり、都道府県知事免許の宅建業者なら都道府県知事、大臣免許であれば国土交通大臣が報告先となります。保証協会の指定主体である国土交通大臣に一律報告するわけではない点が、過去の宅建試験でも繰り返し問われています。

「直ちに」という言葉は法律用語として重要です。これは「速やかに」や「遅滞なく」より厳しい義務で、理由のいかんを問わず即座に行動しなければならないことを意味します。

報告の主体が保証協会である理由は、制度設計にあります。保証協会は複数の宅建業者をまとめて管理・監督する立場にあり、加入・脱退という社員の状況変化を一元的に把握して行政機関に通知する役割を担っているからです。宅建業者が個別に報告する煩雑さを省きつつ、行政側の監督機能を維持する合理的な仕組みといえます。

宅建業者の立場からすると、「自分では報告しなくてよい」という理解が正しいのです。ただし、保証協会が正確に報告できるよう、加入手続きや変事項の申告は適切に行う必要があります。それが基本です。

宅建業法第64条の4の条文は、e-Gov法令検索で確認できます。

e-Gov 法令検索|宅地建物取引業法(第64条の4ほか)

保証協会加入の手続きと弁済業務保証金分担金の流れ

保証協会への加入は、宅建業免許の申請と並行して進めるのが一般的です。免許が下りるまでに加入手続きを完了させることで、スムーズに開業できます。加入手続きには通常1か月〜1か月半程度かかるため、早めに動くことが大切です。

加入時に納付する弁済業務保証金分担金の金額は次の通りです。

事務所の種別 分担金の額
主たる事務所(本店) 60万円
従たる事務所(支店)1か所ごと 30万円

この分担金は、営業保証金(本店のみで1,000万円、支店ごとに500万円追加)に比べて圧倒的に少額です。本店のみの業者で比べると、1,000万円が60万円で済む計算になります。これが大多数の宅建業者が保証協会への加入を選ぶ最大の理由です。

分担金の納付は金銭のみが条件です。営業保証金は金銭と国債証券などの有価証券でもよかったのに対し、弁済業務保証金分担金は金銭のみという違いがあります。これはよく混同されるポイントです。

分担金の納付タイミングも重要です。保証協会に加入する前(加入日まで)に納付しなければなりません。加入後に払えばいいと思っている方がいますが、それは誤りです。

保証協会への加入手続きの大まかな流れを整理すると次の通りです。

  1. 都道府県庁に宅建業免許の申請書類を提出する
  2. 保証協会への加入書類を準備・提出する(免許申請と並行可)
  3. 入会審査を経て入会金・弁済業務保証金分担金などを納付する
  4. 事務所での面談(代表者と専任宅建士が参加)
  5. 免許通知のハガキが届いたら保証協会にFAXし、最終承認

入会金や年会費なども含めると、加入時のトータルコストは弁済業務保証金分担金の60万円を含め、概ね110万円前後になります。これは証協会(ハト・ウサギどちらも)でほぼ同水準です。

なお、加入に際して会社名義の口座が必要になります。代表者個人の口座では受け付けてもらえない支部も多いため、事前に法人口座を開設しておくことを忘れずに。口座開設には時間がかかる場合があるので早めに準備するのが原則です。

全宅保証(ハト)の加入案内PDFは下記から確認できます。

公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)公式サイト

保証協会加入後に事務所を増設した場合の報告と分担金の追加納付

保証協会に加入後、新たに支店を開設・増設する場合にも手続きが発生します。これを見落として社員の地位を失うケースがあり、実務上の落とし穴の一つです。

事務所を増設した場合、その日から2週間以内に、1か所につき30万円の弁済業務保証金分担金を保証協会に追加納付しなければなりません。 このタイムリミットを過ぎると、即座に社員の地位を失います。

「2週間くらいなら少し遅れても大丈夫では」と思うかもしれません。厳しいところですね。しかし法律上、期限を1日でも超えれば社員資格は消滅します。社員の地位を失うと、今度は1週間以内に1,000万円以上の営業保証金を自分で供託しなければならなくなります。これは大きな出費です。

地位を失った後の流れをまとめると次の通りです。

  • 社員の地位を失った日から 1週間以内に営業保証金を供託
  • 供託完了後、免許権者に届け出る
  • 保証協会はこの事実を「直ちに」免許権者に報告する
  • 供託を怠ると業務停止処分の対象になる

一度社員の地位を失うと、弁済業務保証金分担金をすぐに納付し直しても地位は回復しません。これが意外と知られていないポイントです。もし社員の地位を回復したければ、再度、保証協会への加入手続きをゼロからやり直す必要があります。

支店を出すタイミングは事業拡大の喜ばしい瞬間ですが、それと同時に2週間というカウントダウンが始まっていると意識してください。加入している保証協会の支部へ速やかに連絡し、追加納付の手続きを確認することを強くおすすめします。これだけ覚えておけばOKです。

保証協会加入の報告をめぐる「加入前の取引」への還付という落とし穴

多くの不動産従事者が誤解しているのが「保証協会加入前の取引は弁済対象外」という思い込みです。実際には全く逆で、宅建業者が保証協会の社員になる前に取引した顧客であっても、その取引で生じた債権については弁済業務保証金から還付を受ける権利があります(宅建業法第64条の8)。

例えば、2024年1月に顧客と取引を行い、同年4月に保証協会に加入した宅建業者がいた場合、その顧客は取引が「加入前」であっても弁済を請求できます。宅建業者は「加入前のことだから関係ない」とは言えないわけです。

ただし例外があります。還付を受けられないのは宅建業者同士の取引です。宅建業者が他の宅建業者と取引して損害を被った場合、弁済業務保証金からの還付は受けられません。これは平成29年の法改正で明確化された内容です。

還付の限度額は、弁済業務保証金分担金の額ではなく、営業保証金と同じ基準で計算されます。本店のみの業者なら1,000万円が上限、支店1つを加えると1,500万円、という具合です。分担金は60万円しか納付していなくても、還付上限額は1,000万円以上に設定されている点は、一般消費者保護の観点から重要な仕組みです。

還付の手続きとして、被害者(顧客)はまず保証協会の認証を受ける必要があります。認証なしに直接供託所に請求することはできません。認証を得た後、供託所に還付請求をして弁済を受けるという流れです。

加入前の取引も対象になるということは、保証協会に加入した瞬間から「過去の取引リスク」も担保の対象になるということです。つまり、加入のタイミングを意識して取引の安全管理を行うことが求められます。

弁済業務保証金の還付制度の詳細は下記が参考になります。

宅建業保証協会(弁済業務保証金)の重要ポイントと解説|宅建レトス

保証協会が実施する必要的業務と、不動産業者が活用すべきサポート

保証協会は、弁済のための機関というだけでなく、会員である宅建業者に対してさまざまなサポート業務を提供しています。これらを理解しておくことは、実務上の活用につながります。

保証協会が「必ず行わなければならない業務(必要的業務)」は次の3つです。

  • 苦情解決業務:宅建業者の取引相手から寄せられた苦情を受け付け、解決を図る。苦情の申出内容とその解決結果は、社員全員に周知する義務があります。
  • 研修業務:宅建士および宅建業の業務に従事する者(従事しようとする者を含む)への研修を実施する。
  • 弁済業務:社員の取引相手が被った損害に対し、弁済業務保証金から代わりに弁済する。

この3つは保証協会である以上、任意でやめることができない必須業務です。つまり原則です。

一方、保証協会が「行ってもよい業務(任意的業務)」には、一般保証業務、手付金等保管業務、不動産無料相談所の開設、研修費用の助成などがあります。これらは保証協会によって実施の有無や内容が異なります。

特に注目しておきたいのが研修業務です。保証協会の会員になると、宅建士や業務従事者向けの研修が定期的に開催されます。法改正への対応や業務知識の更新のために積極的に活用することで、コンプライアンス体制の強化につながります。研修は無料または低コストで受けられるケースが多く、事務所全体のレベルアップにつながるためコスト対効果が高いサービスです。

なお、保証協会は2つしか指定されていません。ひとつは全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証、通称ハト)、もうひとつは不動産保証協会(全日、通称ウサギ)です。宅建業者はどちらか一方にしか加入できないため、最初の選択が重要になります。加入したら重ねて他の保証協会の社員になることはできません。それが条件です。

保証協会の業務については下記の公式サイトで最新情報を確認できます。

公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)公式サイト