土地区画整理法76条の許可基準と申請手順を解説

土地区画整理法76条の許可基準と申請手順を正しく理解する

仮換地の指定を受けた後でも、76条許可を取らずに建築すると除却命令が下されます。

🏗️ この記事の3つのポイント
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許可が必要な期間と対象行為

事業認可の公告日から換地処分の公告日まで、建築物・工作物の新築・増改築、土地の形質変更、5トン超の重量物設置は必ず許可が必要です。

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仮換地指定後も許可は免除されない

「仮換地が指定されれば自由に建てられる」は誤りです。仮換地指定後も引き続き76条許可の取得が義務付けられています。

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違反時は除却命令・原状回復命令

無許可で建築行為を行った場合、都道府県知事等から原状回復命令または建築物の除却命令が下され、行政代執行に至るケースもあります。


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土地区画整理法76条とは何か:制限の目的と対象期間

 

土地区画整理法第76条は、土地区画整理事業の施行地区内で行われる建築行為等を規制する条文です。この制限の目的は、事業の円滑な進行を妨げる行為を防ぐことと、権利者の「二重投資」を防止することの2点にあります。二重投資とは、事業中に建物を建てたものの、後の換地設計によって移転や除却を余儀なくされ、投資が無駄になる状況を指します。つまり権利者自身を守るための側面もある制限です。

制限が発生する期間は、法律で明確に定められています。具体的には、組合施行の場合は「第21条第3項の公告の日(組合設立認可の公告)または事業計画変更についての認可公告の日」から、「第103条第4項の公告(換地処分の公告)の日」までです。事業計画が認可されて公告された日から、事業が完全に完了する換地処分まで、制限は続きます。事業期間が長ければ十数年にわたることもあります。

この期間中に許可が必要となる行為は、大きく3種類です。

  • 土地の形質の変更:切土・盛土・造成・土の入れ替え・埋立など。畑を耕す行為や表層の整地は対象外です。
  • 建築物・工作物の新築・改築・増築:住宅はもちろん、物置・カーポート・フェンス・擁壁・広告看板なども含まれます。
  • 移動の容易でない物件の設置・堆積:土地区画整理法施行令第70条で定める、重量5トンを超える物件が該当します。ただし分割して各部分が5トン以下になるものは除かれます。

「住宅を建てるときだけ必要」というのは誤った認識です。小さな物置やカーポートも76条の対象になる点は、実務上よく見落とされます。

許可不要な行為の例として、建築基準法上の確認申請が不要な修繕・模様替え、建築工事に伴うガス・電気・電話・水道・下水道の引き込み管線類の設置などがあります。ただし「確認申請が不要だから76条申請も不要」とは限りません。判断が難しい場合は施行者(組合や市)に事前相談するのが原則です。

参考:土地区画整理法(e-Gov法令検索)で条文全文を確認できます。

土地区画整理法 第76条 条文全文(e-Gov 法令検索)

土地区画整理法76条の許可基準:審査でチェックされる4つの要素

76条許可の申請を出しても、自動的に許可されるわけではありません。許可権者(都道府県知事または市区町村長)は、施行者(区画整理組合など)の意見を踏まえたうえで審査を行います。審査で主にチェックされる要素を整理しましょう。

まず最も基本的な基準は、仮換地の使用収益開始がなされているかどうかです。横浜市が公開している審査基準では「法第98条第1項に基づく仮換地指定による使用収益の開始」がなされていることを許可の条件の一つとしています。仮換地の使用収益が開始されていない土地に建築行為を行おうとすると、事業の進行に直接的な支障が生じるリスクがあるため、審査上のハードルが高くなります。

次に重要なのが、建築物の移転リスクの有無です。換地設計が未確定の段階や、公共施設工事の予定ラインにかかる場所では、将来的に建物の移転が必要になる可能性があります。横浜市の審査基準では「事業施行期間中に当該建築物等の移転が生じないこと」を条件の一つとして明記しています。将来の移転が想定される場所への建築は、許可が下りないか、条件付きの許可となることがあります。

また、宅地の安全性の確保も審査対象です。造成が不十分で地盤に問題がある場合や、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の検査済証が交付されていない場合は許可を受けられません。

さらに、土地に関する権原の有無について、神戸市の審査基準では興味深い見解が示されています。「許可にあたって、建築行為者が土地について正当な所有権または借地権等の権利を有するものかどうか判断することを要求されるものではありません」とされています。つまり76条許可は、土地の権利関係とは独立した制度であるということです。これは重要なポイントです。

従前地(元の土地)において、仮換地がまだ指定されていない段階でも、一定の例外規定があります。横浜市の基準では①風水害・地震・火災等による崩壊・焼失、②現況建築物の老朽化が著しく危険な状態、③事業計画決定から10年以上経過した場合の生活環境維持・保全のための建築、④高齢・障害等の要因による生活環境維持・保全、⑤仮設建築物等で施行者が特にやむを得ないと認める場合——これらについては、条件を付したうえで許可できる規定が設けられています。事業が長期化した場合のセーフティネットとして理解しておきましょう。

参考:横浜市が公開している審査基準は、全国の自治体の中でも特に詳細な基準の一つです。

土地区画整理法第76条第1項に基づく審査基準(横浜市、2025年9月改訂版 PDF)

土地区画整理法76条の申請手順:建築確認より先に動くことが鉄則

76条許可申請の手順で、不動産従事者が現場でよく混乱するのが「申請の順序」です。結論から言うと、建築確認申請より先に76条許可を取得することが法律上の要件です。建築基準法上の確認申請書に76条許可書を添付して提出するのが正しい順序であり、確認申請を先に通してから76条を取ろうとすると手戻りが生じます。

申請の流れを整理しましょう。まず申請者は必要書類を準備し、施行者(区画整理組合など)に事前相談・申請書の提出を行います。施行者は現場調査などを行い「意見書」を作成して申請者に返却します。申請者はこの意見書を添付した申請書正本・副本を許可権者(市区町村長など)に提出します。許可権者は審査を行い、問題がなければ許可書を交付します。標準的な処理期間は自治体によって異なりますが、10日〜2週間程度が目安とされています。余裕を持ったスケジュールが必要です。

提出部数は自治体によって異なりますが、岸和田市では3部(正本1通・副本2通)、稲城市では2部(正本1通・副本1通)とされています。事前に各自治体の窓口で確認することが重要です。

申請書に添付する図書は行為の種類によって異なります。建築物の新築・増改築の場合は、付近見取り図・配置図・平面図・立面図・断面図のほか、仮換地証明または保留地証明の写し、使用収益開始通知書の写しなどが必要です。建築確認申請書の図書と共通する部分が多いため、両者を同時進行で準備することで効率化できます。

軽微な変更が生じた場合は「軽微な変更届」を提出することで再申請なく対応できます。ただし「軽微」の範囲は自治体や施行者の判断によるため、変更が生じた際は速やかに相談するのが得策です。許可書交付後に計画を取りやめる場合は「許可取やめ届」の提出が必要となります。

土地区画整理法76条の違反リスク:除却命令から行政代執行まで

76条許可を取らずに建築行為を行った場合、または許可条件に違反した場合、法律上どのようなリスクが生じるのかを正確に把握しておきましょう。

土地区画整理法第76条第4項は、「違反した者又はその権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、土地の原状回復を命じ、又は建築物その他の工作物・物件の移転もしくは除却を命ずることができる」と定めています。つまり都道府県知事等は、無許可建築物に対して原状回復命令または除却命令を出すことができます。厳しいところですね。

さらに同法第140条は、第76条第4項の命令に違反して原状回復または移転・除却をしなかった者に対し罰則を科すことを定めています。また、行政代執行法に基づき、行政が強制的に除却を実施し、その費用を義務者に請求する「代執行」に至るケースも存在します。滋賀県が公開している処分基準では、「違反の処分を行い、さらには代執行の実施を行うことが必要となる場合がある」と明記されています。

ここで特に注意が必要なのが「権利を承継した者にも命令が及ぶ」という点です。無許可建築物が建っている土地を購入した場合、前の所有者の違反行為による除却命令が新しい買主にも引き継がれる可能性があります。これは不動産取引上、非常に大きなリスクです。

重要事項説明では、取引対象地が土地区画整理事業の施行区域内にある場合、76条の制限について説明する義務があります。さらに踏み込んで、既存建物に76条許可が適正に取得されているかどうかを確認することが、トラブル防止につながります。特に区画整理事業が長期化しているエリアでは、過去の許可書類の確認を施行者事務所に依頼するのが有効な方法です。

違反建築物の除却命令等に関する処分基準(滋賀県、土地区画整理法第76条)

都市計画法53条との違いと、重要事項説明での使い分け方

不動産の重要事項説明において、「都市計画法53条」と「土地区画整理法76条」は混同されやすい2つの制限です。両者の違いを整理しておくことは、誤った説明によるトラブルを防ぐうえで不可欠です。

都市計画法53条は、都市計画施設(道路・公園など)や土地区画整理事業等の市街地開発事業の区域内において、「事業計画等の決定公告日より前」から建築物を建築しようとする場合に必要な許可です。将来的に都市計画施設が整備される予定があるエリアに適用され、木造2階建てなど移転・除却が比較的容易な建物については許可が認められやすい傾向があります。

一方、土地区画整理法76条は、「事業計画の決定公告日以降〜換地処分の公告日まで」の期間に適用されます。事業が現に進行している状態での制限であり、工事の直接的な妨げになると判断された建築行為は許可が下りません。53条よりも格段に厳しい制限です。

| 項目 | 都市計画法53条 | 土地区画整理法76条 |

|:—|:—|:—|

| 適用時期 | 事業計画決定公告日より前 | 事業計画決定公告日〜換地処分公告日 |

| 制限の強さ | 比較的緩やか | 厳しい |

| 許可権者 | 都道府県知事等 | 都道府県知事等(市の場合は市長) |

| 主な判断基準 | 移転・除却の容易さ | 事業施行への障害有無 |

重要事項説明では、取引地が「53条のみ」「76条のみ」「両方」のいずれに該当するかを正確に把握する必要があります。区画整理事業が始まる前の段階では53条が適用され、事業が始まると76条が適用されます。事業の段階を確認せず「都市計画施設の区域内だから53条の許可を受ければいい」と判断するのは危険です。

施行者である組合や自治体の窓口に問い合わせることで、現時点での適用法令と事業の進捗状況を確認できます。取引前に必ず確認することが重要です。

都市計画法53条許可と土地区画整理法76条許可の違いの解説(行政書士かねこ事務所)

不動産従事者だけが知る76条許可の”落とし穴”:現場で起きやすいミスを防ぐ

法律の条文を理解していても、現場では予期せぬ落とし穴があります。不動産従事者が実際の業務で遭遇しやすいミスや盲点を取り上げます。

落とし穴① 「仮換地指定後は自由に建てられる」という誤解

「仮換地の指定を受けたのだから、もう建築しても大丈夫」と思い込むケースが後を絶ちません。しかし神戸市や稲城市の審査基準でも明確に記載されているとおり、「仮換地指定済みの土地であっても許可は必要」です。仮換地指定と76条許可は別の手続きです。仮換地指定は「どの土地を使ってよいか」を定めるもので、76条許可は「その土地でどんな行為をしてよいか」を定めるものです。両者を混同しないことが原則です。

落とし穴② 建築確認申請と76条申請の順序の逆転

前述のとおり、76条許可は建築確認申請より先に取得する必要があります。ところが、施主が先に建築業者と話を進め、確認申請の準備が整った段階で「76条申請がまだだった」と気づくケースがあります。スケジュールに余裕のない現場では、標準2週間の処理期間が計画全体に影響します。早めに動くことが必要です。

落とし穴③ 外構工事や小屋も対象であることを見落とす

「家本体の建築確認は取ったけれど、物置やカーポートは確認申請不要の規模だから76条申請も不要」という誤解が多く見られます。幸手市の案内でも「基礎を有する物置やカーポート、広告看板も法76条の対象」と明記されています。建築確認が不要な規模であっても、76条の制限は適用されます。確認申請の要否と76条申請の要否は、別々に判断することが条件です。

落とし穴④ 事業完了後の制限解除の把握不足

換地処分の公告が行われた後は、76条の制限は解除されます。しかし「まだ工事しているから制限がある」と誤解し、不要な手続きに時間をかけてしまうケースもあります。施行者または自治体に事業の完了状況を確認し、換地処分公告日を把握することで、不要な手続きを省くことができます。これは使えそうです。

現場でのトラブルを防ぐために最も有効な方法は、施行者(組合事務所や自治体の担当課)への事前相談を早い段階で行うことです。各自治体の窓口は相談を受け付けており、申請が必要かどうかの判断から必要書類の確認まで、丁寧に案内してもらえます。

土地区画整理法76条の対象行為について物置・カーポートも含む旨の解説(幸手市)

条解・判例 土地区画整理法