登録免許税の計算・相続での法務局への正しい申請手順

登録免許税の計算・相続時に法務局で必ず確認すべき全手順

遺贈された不動産を相続人以外が受け取ると、登録免許税が5倍になります。

📋 この記事の3つのポイント
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税率は「取得者の立場」で決まる

相続人が相続すれば0.4%、相続人以外への遺贈は2.0%と5倍の差が生まれます。評価額3,000万円の物件なら12万円と60万円の差です。

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免税措置には申請書への「一文」が必須

100万円以下の土地や数次相続では登録免許税が0円になりますが、申請書に法令条項を記載しないと免税は受けられません。

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「固定資産税課税標準額」は使用禁止

登録免許税の計算に使う数字は「評価額(価格)」であり、「固定資産税課税標準額」ではありません。この2つは明細書上で別欄に記載されており、間違えると計算額が大きく狂います。


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登録免許税の計算で使う「評価額」とは何か

 

登録免許税を正しく計算するには、まず使用すべき数字を正確に把握する必要があります。固定資産税の納税通知書に同封されている「課税明細書」を開くと、複数の金額が並んでいます。ここで多くの方が混乱するポイントが1つあります。

使うのは「価格(評価額)」の欄です。「固定資産税課税標準額」は絶対に使ってはいけません。

この2つは全くの別物です。固定資産税課税標準額は住宅用地の特例(1/6や1/3)などが適用された後の金額であり、評価額より大幅に低くなっているケースが多々あります。実際に司法書士の実務解説でも「固定資産税課税標準額と間違えることが多いので注意」と明示されているほど、誤りが頻出するポイントです。

課税明細書が手元にない場合は、不動産の所在地を管轄する市区町村役場(東京23区は都税事務所)の窓口で「固定資産評価証明書」を取得します。発行手数料は1物件あたり300円程度です。

固定資産評価証明書を取得できるのは、所有者本人、同一世帯の族、相続人、代理人などに限られます。誰でも取れるわけではありませんので、委任状の準備が必要な場合があります。証明書の取得費用が基本です。

相続登記の登録免許税の計算式は以下のとおりです。

計算ステップ 内容 端数処理
① 固定資産税評価額の合計 すべての対象不動産の「評価額」を合算 1,000円未満切り捨て → 課税標準額
② 税率をかける 課税標準額 × 税率(原則0.4%) 100円未満切り捨て → 登録免許税額
③ 最低税額 計算結果が1,000円未満の場合 一律1,000円に切り上げ

切り捨ての順序に注意が必要です。「各不動産ごとに1,000円未満を切り捨て」ではなく、「合計した後で1,000円未満を切り捨て」が正しいルールです。複数物件を申請する場合、この手順を間違えると税額に誤差が生じます。

法務局が公開している公式の計算ガイドはこちらで確認できます。

法務局(東京法務局管内)公式PDF:登録免許税の計算方法の公式資料

登録免許税の計算(売買・相続など)|法務局

登録免許税の計算における相続と遺贈の税率の違い

相続登記にかかる登録免許税の税率は、取得者の立場によって大きく異なります。これは見落としやすい点であり、実際の業務でも税率を誤って案内してしまう事例が起きています。

  • 📌 相続人が相続により取得:固定資産税評価額の0.4%(1,000分の4)
  • 📌 相続人が遺贈により取得:固定資産税評価額の0.4%(1,000分の4)
  • 🚨 相続人以外が遺贈により取得:固定資産税評価額の2.0%(1,000分の20)
  • 🚨 法定相続人以外が死因贈与により取得:固定資産税評価額の2.0%(1,000分の20)

相続人以外への遺贈は5倍の負担です。

具体的な金額で見てみましょう。固定資産税評価額が3,000万円の不動産を取得した場合、相続人が相続するケースでは登録免許税は12万円です。ところが相続人以外(たとえば内縁のパートナーや親しい友人など)への遺贈となると、登録免許税は60万円になります。差額は実に48万円です。

遺言書の内容によって税額がここまで変わるという事実は、お客様へのアドバイスにおいて非常に重要です。意外ですね。不動産を相続させる相手の「立場」をあらかじめ確認しておくことが、適正なコスト見積もりの前提となります。

なお、死因贈与については相続人であっても2.0%の税率が適用されます。「法定相続人に遺言で渡したから0.4%で大丈夫」と思っていると、死因贈与では話が変わります。このあたりは遺言の形式・内容と紐づけて確認することが原則です。

税率の詳細はこちらの大阪相続サポートセンターのQ&Aが参考になります。

相続人と相続人以外で税率がどう変わるかを詳しく解説

相続登記の登録免許税に関するQ&A|大阪相続サポートセンター

登録免許税の計算・相続に使う法務局への申請書と免税記載ルール

相続登記の登録免許税には、一定の条件を満たす場合に免税(非課税)となる措置が設けられています。令和7年度の税制改正により、この免税措置の適用期間は令和9年(2027年)3月31日まで延長されました。

免税措置には2つのパターンがあります。

免税の種類 適用条件 申請書記載文言
数次相続の場合 相続人が相続登記をしないまま死亡した場合(その亡くなった相続人を名義人とするための登記) 租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税
② 100万円以下の土地の場合 土地の固定資産税評価額が100万円以下(建物は対象外 租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税

申請書への記載が条件です。重要なポイントは、この免税措置は「申請書に法令の条項を記載しないと適用されない」という点です。口頭で伝えても、書類を添付しても、条項の記載がなければ免税は受けられません。法務局は申請書の記載内容をもとに審査を行うためです。

「①数次相続」と「②100万円以下の土地」では適用する条項が異なり(第1項と第2項)、混同しないよう注意が必要です。間違えると免税措置が受けられないまま登記が完了してしまう可能性があります。

免税措置は土地のみが対象です。建物の評価額がいくら低くても、建物については免税措置が適用されません。これは盲点になりやすいポイントです。農村部や郊外の小規模な土地を多数抱えた相続案件では、この免税措置がコスト削減に直結します。

法務局の公式ページで免税措置の全詳細と申請書様式が確認できます。

申請書の記載例(Word形式)もダウンロード可能な法務局の公式情報

相続登記の登録免許税の免税措置について|法務局

登録免許税の計算でミスしやすい特殊ケース(マンション・私道・共有持分)

一戸建てであれば固定資産税評価額をそのまま合算するだけですが、物件によっては計算がやや複雑になります。実務上でも誤りが起きやすい特殊ケースを3つ整理します。

🏢 マンション(敷地権付区分建物)の場合

マンションは「専有部分(建物部分)」と「敷地権(土地部分)」を分けて計算する必要があります。

  • 専有部分の建物評価額:課税明細書の建物評価額をそのまま使用
  • 土地部分の評価額:敷地全体の評価額 × 敷地権割合で計算

敷地権割合は登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されており、例えば「120000分の2100」のような形式で示されています。分母の桁数が大きく見落としやすいため、登記事項証明書を必ず取得して確認することが基本です。

🛣️ 私道・公衆用道路が含まれる場合

私道(公衆用道路)の土地は、固定資産税が非課税のため、課税明細書に評価額が記載されていないか「非課税」とだけ書かれていることがあります。しかし、登録免許税は課税されます。

この場合の評価額は「近傍宅地の1㎡あたりの固定資産税評価額 × 地積 × 30/100」で計算します。ただし管轄の法務局によって取り扱いが異なる場合があるため、必ず事前に管轄法務局に確認してください。

また、私道は固定資産税の課税明細書に記載されないケースがあります。被相続人が所有する全不動産を漏れなく把握するために、市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得することが唯一の確実な手段です。

🤝 共有持分のみを相続する場合

不動産の一部が共有名義であり、被相続人の持分だけを相続する場合は、不動産全体の評価額ではなく「不動産全体の評価額 × 持分割合」が課税標準の基礎となります。

たとえば、評価額5,000万円の土地について被相続人の持分が2分の1であれば、課税標準の計算の基礎は2,500万円です。こうした持分の計算も、合算後に1,000円未満を切り捨てるルールが適用されます。持分割合の確認は登記事項証明書が条件です。

こちらの専門家サイトで複雑な権利関係のケースも詳細に解説されています。

マンション・私道・共有持分など複雑な権利関係における登録免許税の計算を解説

相続登記の登録免許税の計算方法・納付方法と免税になるケースを解説|司法書士法人不動産名義変更手続センター

登録免許税の計算後・法務局への納付方法と3年以内義務化の注意点

登録免許税の納付には3つの方法があります。それぞれに特徴と注意点があるため、状況に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。

納付方法 利用条件 注意点
収入印紙 原則30,000円以下(実務上は超過でも可) 割印・消印禁止。申請書と別紙に貼り、契印が必要
現金(納付書) 金融機関または税務署で納付 法務局では現金納付不可。領収証書を申請書に添付
電子納付(インターネットバンキング) オンライン申請の場合のみ クレジットカード不可。書面申請では使えない

法務局では現金は直接受け付けていません。これは意外と知られていない事実です。「法務局の窓口で現金を払えばいい」と思っていると、当日に対応できず申請が遅れる可能性があります。

収入印紙は郵便局でも購入できますが、法務局内に購入窓口が設置されているケースも多いため、当日の流れとしては法務局で印紙を購入してそのまま申請するのが実務上もっとも効率的です。

納付のタイミングも重要です。登録免許税は法務局へ相続登記を申請する「前に」納付する必要があります。申請後に払うのではなく、領収証書または印紙を申請書に添付した状態で窓口に持参するのが正しい手順です。

⚠️ 相続登記義務化について

令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。不動産の所有者が亡くなったことを知った日から3年以内に相続登記を申請しないと、10万円以下の過料の対象となります。

この義務化は過去の相続にも遡って適用されます。つまり、2024年4月以前に発生した相続でも、未登記のままであれば義務の対象です。まずは3年の期限から逆算して対応することが大切ですね。

なお、相続登記の申請義務を简易に果たすための「相続人申告登記」という制度も新設されており、こちらは登録免許税がかかりません。ただしこれは所有権の名義変ではなく、相続申告義務の履行のための簡易措置です。最終的には正式な相続登記が必要になります。

相続登記義務化と罰則の詳細は法務省の公式情報を参照してください。

法務省による相続登記義務化の背景・内容・手続きの公式案内

相続登記の申請義務化について|法務省

八次改訂 登録免許税の軽減のための住宅用家屋証明の手引き