解除に関する事項を宅建の重要事項説明書に正しく記載する
記載漏れが1箇所あるだけで、あなたは業務停止14日間処分を受けます。
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解除に関する事項とは宅建業法第35条第1項第8号の何を意味するか
「契約の解除に関する事項」とは、宅地建物取引業法第35条第1項第8号によって、宅建士が重要事項説明書に記載し説明することを義務づけられた項目のひとつです。契約の存否に関わる根幹的な内容であるため、法律上は特に重く扱われています。
説明すべき内容は大きく3つに整理されます。まず「どのような場合に契約を解除できるのか」という解除原因、次に「どのような手続きで解除を行うのか」という解除の方法・手順、そして「契約を解除した場合の効果はどうなるか」という解除後の法的結果です。この3つが原則です。
実務上、解除条項として説明すべき内容は以下が代表的です。
- 手付解除(解除期限付):買主は手付放棄、売主は手付倍返しにより契約を解除できる
- 引渡し完了前の滅失・毀損による解除:物件が天災等で滅失・毀損した場合の取り扱い
- 契約違反による解除(違約解除):当事者の一方が債務不履行の場合の解除
- 融資利用の特約による解除(ローン解除):住宅ローン審査否認時の解除
- 譲渡承諾の特約による解除:借地権付建物取引において地主の承諾が得られない場合
- 瑕疵(契約不適合)による解除:引渡し後に判明した不具合に関する解除
これらのすべてを漏れなく記載することが求められます。「特約で定められている解除条項も含む」という点が実務上の落とし穴になりやすく、注意が必要です。
大阪府が公表した指導資料によると、解除条項の一部の記載漏れは頻繁に見られる違反パターンとして挙げられています。「うっかりミス」や「チェック漏れ」であっても宅建業法違反とみなされるため、日常業務での確認プロセスを整備しておくことが不動産従事者の基本姿勢となります。
大阪府による重要事項説明書の記載不備事例(宅建業法第35条違反)の具体的な事例集として、以下が参考になります。
大阪府:宅地建物取引業者さん、きちんと重要事項説明を行っていますか?(PDF)
解除に関する事項の手付解除と宅建業法第39条の関係を理解する
手付解除は、売買契約において最もよく問題になる解除類型のひとつです。基本ルールは「相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を返還して、それぞれ契約を解除できる」というものです。これが原則です。
ここで実務上、非常に重要な点があります。売主が宅建業者である場合、宅建業法第39条により手付金の額は売買代金の20%を超えてはならないという制限が課されます。たとえば売買代金が3,000万円であれば、手付金は最大でも600万円までしか受領できません。
さらに、売主が宅建業者の場合には「手付はいかなる性質のものであっても解約手付とみなされる」という強行規定があります。つまり、契約書に「この手付は証約手付である」と書いてあっても、解約手付として機能することは排除できません。買主に不利な特約は無効となります。
また、「履行の着手」という概念も実務で頻繁に問題になります。相手方がすでに履行の着手をした後は、手付解除をすることができません。
- 買主の履行着手の例:残代金の準備・融資の申込み完了など
- 売主の履行着手の例:物件の引渡し準備・抵当権抹消手続きの開始など
履行着手の判断は事案ごとに異なり、トラブルになりやすい箇所です。重要事項説明書を作成する際には、手付解除の期限(期日)と売買契約書の記載内容が一致しているかどうかも必ず確認してください。前述の大阪府の指導資料でも、「重要事項説明書では『相手方が履行に着手するまで』と記載されていたのに、売買契約書では手付解除の期限が別に定められており内容が異なっていた」という違反事例が紹介されています。厳しいところですね。
不動産流通推進センター:売主が宅建業者の場合の手付解除期限特約の有効性
解除に関する事項における融資特約(ローン特約)の実務的な注意点
融資利用の特約による解除、いわゆる「ローン特約」は、住宅ローンを利用する売買取引でほぼ必須の解除条項です。買主が住宅ローン審査に通過できなかった場合、一定期間内に限り違約金なし・手付金全額返還で契約を解除できる仕組みです。
重要事項説明書では「金銭の貸借のあっせん」(第12号)と関連づけて記載することが求められており、融資利用の特約による「契約解除期日」を必ず明記しなければなりません。融資特約には期限があります。
実務上で問題になりやすいポイントは、以下の3点です。
- 契約解除期日の記載:重説と売買契約書で同一の日付になっているか確認する
- 融資金額・金融機関名の具体的記載:「当社指定金融機関」や「実費」という曖昧な書き方は記載不備とみなされる
- 期日経過後の扱い:解除期限を過ぎてから審査否認となった場合は、原則として白紙解除の権利が失われ、違約解除として手付金没収や違約金発生のリスクがある
「融資承認取得期日が過ぎれば自動的に権利が消滅する」という点は、買主への説明義務としても非常に重要です。期限を過ぎてから解除しようとすると、買主は売買代金の20%相当の違約金を請求されるケースがあります。3,000万円の物件であれば600万円です。これは使えそうです。
また、ローン特約の類型には「解除権行使型」と「解除条件型」の2種類があります。
| 類型 | 内容 | 注意点 |
|:—|:—|:—|
| 解除権行使型 | 審査否認後、買主が積極的に「解除します」という意思表示をして解除する | 意思表示を期限内に行う必要がある |
| 解除条件型 | 期限内に審査承認が得られない場合、自動的に契約が解除される | 期限到来時点で条件が成就しなければ自動失効に注意 |
重要事項説明の際には、どちらの類型の特約なのかを明確に説明し、買主が期限管理をできるようサポートすることも宅建業者の実務上の責務です。
不動産流通推進センター:契約解除期間経過後のローン解除について
解除に関する事項の35条書面と37条書面の記載ルールの違い
「解除に関する事項」は、重要事項説明書(35条書面)と契約書面(37条書面)の両方に関係する項目です。ただし、記載のルールが異なります。ここを混同している不動産従事者は実務でミスしやすいので、整理しておきましょう。
35条(重要事項説明書)では、「契約の解除に関する事項」と「損害賠償額の予定・違約金に関する事項」はともに絶対的説明事項です。つまり、定めがない場合にも「定めがない」という事実を説明・記載しなければなりません。解除についての取り決めがゼロの契約など現実にはほぼありませんが、あったとしても「定めなし」と明示する必要があります。定めがあろうとなかろうと記載が必要です。
一方、37条(契約書面)では、「契約の解除に関する事項」は相対的記載事項(任意的記載事項)の扱いです。定めがある場合にのみ記載が義務づけられます。定めが存在しない場合は記載しなくてもよいことになります。ただ実際の取引において解除条項のない契約書はほとんどないため、実務上はほぼ必ず記載することになります。
| 項目 | 35条書面(重説) | 37条書面(契約書) |
|:—|:—:|:—:|
| 契約の解除に関する事項 | ◎ 絶対的説明事項(定めがなくても記載) | △ 相対的記載事項(定めがあれば記載) |
| 損害賠償額の予定・違約金 | ◎ 絶対的説明事項 | △ 相対的記載事項 |
| 代金・借賃の額 | × 不要 | ◎ 絶対的記載事項 |
もうひとつ重要なのが、35条書面と37条書面の内容の整合性です。前述の大阪府指導資料でも事例として紹介されていたように、重説では「相手方が履行に着手するまで手付解除可能」と書いておきながら、売買契約書では「○月○日まで手付解除可能」と期限が別途定められており、両書面の記載内容が食い違っていたという違反事例があります。
重説を作成するときは必ず売買契約書の解除条項を参照しながら、一致しているかどうかを1条ずつ確認することが原則です。「売買契約書のひな型をそのまま流用したら大丈夫」という思い込みは危険です。個別の取引条件や特約によって内容が変わることがあるからです。
解除に関する事項の記載漏れが招く行政処分と実務上のリスク管理
重要事項説明書の「解除に関する事項」に記載漏れがあった場合、宅建業法第35条第1項違反として行政処分の対象になります。処分は軽い順に「指示処分」「業務停止処分(最大1年以内)」「免許取消処分」の3段階です。
大阪府が公表した処分事例では、重要事項説明書の記載不備と契約書不備が重なった案件において、業務停止14日間の処分が科された事例が紹介されています。複数の違反行為が重なると処分期間が延長されます。これは痛いですね。
また、宅建業法第47条に基づく「重要な事項についての不告知・不実告知」として故意に重要事項を告げなかった場合には、業務停止処分にとどまらず、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方(併科)という刑事罰の対象にもなります。「うっかりだった」では済まないケースもある、ということです。
実務でのリスク管理として、次のチェックポイントを社内フローに組み込むことが有効です。
- 📋 作成段階:売買契約書のすべての解除条項を確認し、重説の記載と1対1で照合する
- 🔍 確認段階:手付解除期限・ローン解除期日・違約金の割合(%)が売買契約書と一致しているか数値レベルで確認する
- ✅ 最終チェック:複数人による確認(ダブルチェック)を取引ごとに実施する
- 📎 特約チェック:買換え特約・停止条件付特約などの個別条項が記載漏れしていないか確認する
市販の重要事項説明書の書式を使用している場合でも、「市販の書式だから安心」は禁物です。法定要件を満たしていない書式も少なくなく、使用前に自ら内容を確認する責任があります。書式の問題は「業者の責任」として処分の対象になります。解除条項の記載が原則です。
不動産従事者向けの実務チェックツールとしては、国土交通省が公表する標準書式や、全宅連・全日本不動産協会が提供するひな型書式を活用することで、記載漏れのリスクを下げることができます。最終的な内容確認は自社の責任においてしっかり行いましょう。

