期間の定めのない賃貸借の解約で実務担当者が押さえるべき全知識
法定更新後も6ヶ月待てば解約できると思っていたら、正当事由がなくて追い出せず、更新料も二度と請求できなくなっていた。
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期間の定めのない賃貸借の解約申入れの基本:民法617条と借地借家法27条の関係
期間の定めのない賃貸借契約において、解約の申入れができることは多くの実務担当者が知っています。ただ、「どの法律が適用されるか」という点で混乱が生じやすいのが現実です。
民法617条は、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる」と規定し、建物賃貸借については解約申入れの日から3ヶ月を経過することで契約が終了するとしています。条文の文言だけ読むと、「賃貸人も賃借人も3ヶ月前に申し入れれば解約できる」と読めてしまいます。
これが実務で誤解を招くポイントです。
借地借家法27条は民法617条の特則として機能します。建物の賃貸借において、賃貸人からの解約申入れについては、申入れの日から6ヶ月を経過することが必要とされ、さらにこの期間を短縮する特約は借地借家法30条によって無効とされます。賃貸人が3ヶ月前の予告条項を契約書に盛り込んでいても、借主に不利な特約として無効です。これは痛いですね。
一方、賃借人からの解約申入れには借地借家法27条は適用されません。賃借人は民法617条のとおり、解約申入れの日から3ヶ月を経過することで契約を終了させることができます。
| 申入れる側 | 根拠条文 | 予告期間 | 正当事由 |
|---|---|---|---|
| 賃貸人 | 借地借家法27条・28条 | 6ヶ月以上 | 必要 |
| 賃借人 | 民法617条1項2号 | 3ヶ月以上 | 不要 |
整理すると、「賃貸人は6ヶ月+正当事由、賃借人は3ヶ月だけ」という非対称な構造になっています。これが条文の読み違いによるトラブルの根本です。
なお、契約書の中途解約特約で「1ヶ月前予告で解約可能」と定めていても、賃貸人側からの適用は無効です(借地借家法30条)。賃借人側の中途解約特約は有効な場合もあるため、当事者間の公平性に大きな差があることを覚えておく必要があります。
公益財団法人不動産流通推進センター:法定更新後の期間の定めがない契約における借主からの解約申入れ(実務相談事例)
期間の定めのない賃貸借が生まれる3つのケース:法定更新・1年未満契約・合意なし締結
期間の定めのない賃貸借は、「最初から期間を定めずに締結した場合」だけではありません。実務で見落としがちな発生パターンが2つあります。
①法定更新後の契約
借地借家法26条1項は、契約期間の定めがある建物賃貸借について、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかった場合、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと規定しています。そのただし書きで「その期間は定めがないものとする」と明記されています。つまり法定更新が成立した瞬間に、その契約は期間の定めのない賃貸借になります。
②期間1年未満の契約
借地借家法29条1項により、1年未満の期間を定めた建物賃貸借は「期間の定めのない建物の賃貸借とみなす」とされています。例えば「6ヶ月契約」として締結した場合、その契約はそもそも法律上、期間の定めのない賃貸借として扱われます。「短期で貸してすぐ退去させられる」という判断は完全に誤りです。
③最初から期間を定めないで締結した場合
これは条文のとおりです。当事者の合意で期間を設けなかった契約は、当初から民法617条・借地借家法27条の適用対象となります。
なお、「永久貸与」と契約書に記載されていても、最高裁昭和27年12月11日判決は「長くお貸ししましょう、長くお借りしましょうという合意を表すものに過ぎず、存続期間を定めたものではない」と判示しており、この場合も期間の定めのない賃貸借として扱われます。「永久」と書いても解約できます。これは使えそうです。
3つのケースに共通するのは、どの場合も借地借家法27条・28条が適用され、賃貸人からの解約には正当事由が必要になるという点です。
弁護士竹村淳(オレンジライン法律事務所):期間の定めのない賃貸借契約の解約申入れ(借地借家法27条)マニアック解説
賃貸人からの解約で必須の「正当事由」とは何か:認められる条件と立退料の関係
賃貸人が期間の定めのない賃貸借を解約しようとする場合、6ヶ月の予告に加えて正当事由(借地借家法28条)が必要です。正当事由が認められない限り、何度申し入れても解約の効力は発生しません。
借地借家法28条が定める正当事由の判断要素は以下のとおりです。
実務上、最も重視されるのは「建物の必要性」の比較です。判例では、賃貸人が「家計上の必要から売却したい」という理由だけでは正当事由として認められないとしています(不動産賃貸相談事例より)。正当事由は厳しいところですね。
立退料は正当事由を「補完」するものです。立退料を支払えば正当事由なしに必ず解約できるわけではありませんが、正当事由の評価を高める要素として機能します。実務では賃料の6ヶ月〜数年分が提示されるケースが多く、物件の立地や築年数、借主の居住期間によって大きく異なります。
なお、解約申入れから6ヶ月が経過し、契約が終了したはずでも、賃借人が引き続き建物を使用しており、かつ賃貸人が遅滞なく異議を述べなかった場合は、借地借家法26条2項(27条2項で準用)により、従前の条件で契約が更新されたものとみなされます。解約申入れをしたにもかかわらず、異議を言わずに放置していると「また更新した」ことになるため、実務上は速やかに明渡請求を行うことが条件です。
弁護士法人桜北総合法律事務所:賃貸借契約の解約・解除(賃貸人からの解約と正当事由の解説)
法定更新後に更新料が「永遠に消える」リスクと契約書の実務対策
法定更新が成立したとき、賃貸借契約は期間の定めのないものへ移行します。これが意味するのは「以後、更新そのものが発生しなくなる」という事実です。つまり、更新がなければ更新料を請求する機会は二度と来ません。
更新料の請求が法律上当然に発生するわけではありません。あくまで当事者間の合意に基づくものであり、契約書への記載が根拠になります。法定更新後の更新料については、「法定更新の場合も更新料を支払う」旨が契約書に明記されている場合のみ請求できるとするのが実務上の原則です。契約書への記載が条件です。
更新料が明記されていなければ請求できないだけでなく、法定更新に一度移行すると「その後の合意更新への復帰も容易ではない」点が実務的な痛手となります。契約書に「以後2年ごとに合意更新する」などの条項を設けることが現実的な対策です。
管理会社が法定更新を防ぐために実施すべきポイントを整理します。
- 📅 更新対象者を期間満了の3〜4ヶ月前に抽出し、早期に通知する
- 📋 契約書に「法定更新の場合も新賃料の1ヶ月分の更新料を支払う」旨を明記する
- 🔒 更新料だけでなく「法定更新後も保証人の責任が継続する」旨を記載する
- 💻 クラウド型賃貸管理システムで更新期日の管理を自動化する
管理会社が更新通知の送付を失念し、気づいたときには法定更新が成立していたというケースは決して珍しくありません。更新料収入が年間で数十万円単位になる管理物件では、更新業務の漏れが直接的な収益減につながります。管理物件数が多いほど、属人的な対応を排除してシステム管理に移行することが重要です。
なお、更新料の金額が「家賃2〜3ヶ月分を大きく超える場合」は、消費者契約法に基づき無効とされる可能性があります(最高裁判例参照)。社会通念上の相当な範囲で設定することが求められます。
株式会社いい生活:法定更新で更新料は請求できる?賃貸管理で知っておくべき契約・運用のポイント
解約申入れを一度出したら撤回できない:実務で起きる「やっぱり住み続けたい」問題
解約の申入れは、一方的な意思表示です。民法540条2項は「解除の意思表示は撤回することができない」と規定しており、これは解約の申入れにも適用されます。つまり、解約申入れは相手方の同意がない限り、撤回できません。
実務でよく起きるのが以下の場面です。賃借人が「来月で解約します」と申し入れた後、「転勤がなくなったので住み続けたい」と撤回を申し出るケースです。この場合、賃貸人が同意しない限り、法律上は撤回できません。賃貸人(または管理会社)は、予告期間満了日をもって退去を求めることができます。
逆のパターンも重要です。賃貸人が解約申入れを行った後に「やはり必要ではなかった」と撤回しようとしても、賃借人が同意しない限り撤回はできません。解約申入れを「軽い通知」のように扱うと、取り返しのつかないことになります。
また、賃借人から「退去したい」という口頭の申し入れがあっても、書面での確認をしておかないと、後日「そんな話はしていない」と主張されるリスクがあります。解約申入れは口頭でも有効ですが、証拠として残すために書面や電子メールでの確認を徹底することが管理会社の実務上の鉄則です。書面保管が基本です。
さらに、賃貸人が解約申入れをした理由が「騒音を理由とした借地借家法28条の正当事由」としての申入れであった場合でも、最高裁昭和48年7月19日判決によれば、「特定の理由のみで解約する旨を明らかにしていない限り、申入れはおよそ賃貸借を終了させる意思表示と解すべき」とされています。申入れ書の書き方1つで意図しない結果になることがあるため、弁護士等の専門家への確認を経てから書面を作成することをおすすめします。
公益財団法人不動産流通推進センター:建物賃貸借契約の賃借人が中途解約予告後にした解約撤回の有効性(相談事例)
公益社団法人全日本不動産協会:解約予告の撤回(民法540条2項に基づく解説)

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