賃貸住宅管理業務処理準則廃止で変わる管理業務の全体像

賃貸住宅管理業務処理準則廃止と管理業法への移行を完全解説

200戸未満でも無登録のまま管理すると30万円の罰金を受ける可能性があります。

📋 この記事の3つのポイント
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処理準則は2021年6月に廃止

賃貸住宅管理業務処理準則は「賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)」の施行とともに廃止。内容はほぼそのまま法律上の義務として引き継がれた。

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200戸以上は登録が義務・違反は最大100万円の罰金

管理戸数200戸以上の事業者は国土交通大臣への登録が必須。無登録営業は1年以下の懲役または100万円以下の罰金という厳しい制裁の対象となる。

200戸未満でも任意登録で業務水準を高められる

200戸未満の業者は登録義務がないが、任意で登録することで法的な信頼性を得られる。国土交通省も小規模業者への登録を推奨している。


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賃貸住宅管理業務処理準則とは何か:制定の背景と目的

賃貸住宅管理業務処理準則は、国土交通省の告示に基づき定められた、賃貸住宅の管理業務を行う際の基準ルールのことです。かつて、賃貸管理業には宅地建物取引業のような直接的な法規制が存在しておらず、監督官庁もなく免許も不要でした。そこで「最低限のルールを任意の登録制度と合わせて定めよう」という流れで生まれたのがこの準則です。

国土交通省は2011年12月に任意の「賃貸管理事業者登録制度」を開始し、この準則はその登録業者が遵守すべき行動規範として機能していました。登録した事業者は準則に従う義務があり、重要事項の説明・書面交付、禁止行為不実告知誇大広告など)、財産の分別管理、秘密保持義務などが定められていました。

準則が必要になった背景には、賃貸管理をめぐるトラブルの増加があります。2010年の国土交通省調査によると、民間賃貸住宅のオーナーのうち約65%が「契約・管理をすべて業者に委託している」と回答しており、管理業務の重要性が年々高まっていました。オーナーの高齢化や相続に伴う兼業オーナーの増加、入居者の要求レベル上昇により、管理委託は増加傾向にあった一方、悪質業者によるトラブルが社会問題化していました。

ルールはありましたが、任意のルールでした。強制力が弱い点が課題として指摘され続け、最終的に法定化への道をたどることになります。

賃貸住宅管理業務処理準則の廃止:法定化への移行経緯

2020年6月12日、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)」が成立しました。そして2021年6月15日の施行と同時に、賃貸住宅管理業務処理準則は廃止となりました。これが「廃止」の正式な経緯です。

廃止といっても、内容が消えたわけではありません。準則が定めていたルールはほぼ同様の内容として「法律に基づく義務」へと昇格し、違反した場合の罰則も整備されました。つまり、任意ルールだったものが強制力を持つ法律になったということです。

廃止に至るプロセスを時系列で整理すると、以下のとおりです。

時期 できごと
2011年12月 国土交通省が任意の「賃貸管理事業者登録制度」を開始、業務処理準則を制定
2020年6月12日 「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」成立
2021年2月15日 賃貸住宅管理業者登録規程等を廃止する告示」公布
2021年3月1日 告示制度(任意登録制度)に基づく新規登録申請の受付停止
2021年6月15日 賃貸住宅管理業法の施行=処理準則(告示制度)の正式廃止
2022年6月15日 経過措置期間終了、200戸以上の無登録業者への罰則が本格適用

移行が段階的だったのは、準備期間を十分に設けるためです。法律の施行から1年間は経過措置として猶予が与えられ、200戸以上の業者は2022年6月15日までに登録申請を完了させれば罰則を免れることができました。経過措置を知らずに対応が遅れたケースも一部で見られたため、2021年以降は業界団体からも周知が強化されていきました。

参考:国土交通省 賃貸住宅管理業ポータルサイト(登録申請方法等について)

賃貸住宅管理業登録の方法 | 賃貸住宅管理業法ポータルサイト - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

賃貸住宅管理業務処理準則から賃貸住宅管理業法への主な変更点

処理準則が廃止され管理業法に移行したことで、「ほぼ同じ内容が引き継がれた」という表現がよく使われます。しかし実務的には、いくつか重要な変化があります。これが実務に直結するポイントです。

まず最大の変化は「登録の義務化」です。処理準則の時代は任意登録でした。法定化後は管理戸数200戸以上の業者には国土交通大臣への登録が義務付けられ、無登録のまま営業すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金という厳しい罰則が課されます。罰金だけでなく懲役刑もあります。

次に「業務管理者の配置義務」が新設されました。各営業所・事務所に1名以上の業務管理者(賃貸不動産経営管理士または宅地建物取引士として一定の要件を満たす者)を置くことが義務となりました。処理準則にはなかった新たな義務です。管理業務の知識・経験を持つ人材の確保が法律で求められるようになりました。

さらに「オーナーへの重要事項説明と書面交付の義務」が、罰則付きで厳格化されました。管理受託契約の締結前に、報酬や管理業務の内容・実施方法などを記載した書面を交付して説明しなければなりません。管理受託契約締結時にも別途書面の交付が必要です。この2枚の書面提供は見落とされやすいポイントです。

項目 処理準則(旧) 管理業法(現行)
登録の性質 任意 200戸以上は義務(違反で100万円以下の罰金)
業務管理者 規定なし 各営業所に1名以上の配置義務
重要事項説明 義務あり(罰則弱) 義務あり(30万円以下の罰金)
財産の分別管理 義務あり 義務あり(専用口座の設置等が具体化)
定期報告 義務あり 年1回以上の頻度で義務あり
サブリース規制 一部対応 特定転貸事業者として明示的に規制強化

また、サブリース(特定転貸事業者)に関しては、管理業法で明示的かつ強力に規制が新設されました。特定転貸借契約の締結前にオーナーへ重要事項説明を行い書面を交付しなければならず、違反すると50万円以下の罰金が課されます。誇大広告・不当勧誘の禁止も明文化されました。

つまり、処理準則の廃止は「ルールの消滅」ではなく「ルールの強化」と捉えるのが正確です。

参考:日本賃貸住宅管理協会 賃貸住宅管理業法 罰則・監督処分一覧

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会|賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律解説|罰則・監督処分
賃貸住宅管理適正化法の施行当日から、全ての賃貸住宅管理業者が適切に管理業務を行えるよう、法律概要の解説から、実務的な疑問点の解決まで幅広く整理していますので、大いにご活用いただき、この賃貸管理の新しい時代のスタートを迎える準備しましょう。

賃貸住宅管理業務処理準則廃止後の登録義務と罰則を正確に理解する

実務で特に混乱しやすいのが「誰が、何をしたら罰則対象になるのか」という点です。ここを整理しておくと業務リスクを大幅に軽減できます。

まず「登録義務の対象」について確認しましょう。管理戸数が200戸以上の賃貸住宅管理業者は国土交通大臣への登録が必須です。この「200戸」とは自己所有物件の管理を除いた委託管理の戸数です。自分が所有している物件の自主管理分はカウントされないため、実際に委託を受けている戸数を正確に把握することが重要になります。

重要な点があります。200戸未満であっても、任意で登録した場合は法律の規制がすべて適用されます。登録すると義務の対象になるため、「任意だから登録しておく」という選択は、義務を背負う覚悟とセットです。国土交通省は200戸未満でも登録を推奨していますが、登録後は全ての行為規制・罰則の対象となる点は理解しておく必要があります。

罰則の体系を確認すると、最も重いのは「無登録営業」で、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(もしくは併科)です。次いで「業務停止命令違反」や「サブリース業者による不実告知・停止命令違反」が6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金。「管理受託契約時の書面未交付」や「業務管理者の未配置」「帳簿の未備付け」などは30万円以下の罰金の対象となります。

罰則は行為者個人だけでなく、所属する法人にも同時に課される「両罰規定」が採用されています。担当者が違反すれば会社も同時に罰則を受けます。これは法人として管理体制の整備を徹底させるための仕組みです。担当者一人の問題では済みません。

違反リスクが特に高い場面は、①管理戸数が200戸を超えたタイミングでの登録申請漏れ、②事業所の増設時に業務管理者の配置を忘れること、③オーナーとの管理受託契約新時に書面交付を省略することなどです。日常業務のチェックリストに組み込んでおくのが現実的な対策になります。

参考:全国賃貸住宅新聞「200戸以上の管理受託、無登録は罰則へ」

【管理業法を解説!~前編~】200戸以上の管理受託、無登録は罰則へ
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、管理業法)の移行期間が残り2日に迫る。15日以降、200戸以上の賃貸管理事業者が営業許可を申請していない場合、無許可営業となり、法律上罰則対象となる。管理会社は管理業法を理解し、法律にの...

賃貸住宅管理業務処理準則廃止が不動産従事者の実務に与える独自の視点

処理準則の廃止と管理業法への移行は、不動産業界にとって単なる「看板の架け替え」ではありませんでした。業界の外からは目立ちにくいですが、実務の現場では「業務の可視化」と「説明責任の重さ」という2つの質的変化が起きています。

処理準則の時代は、登録していない業者には準則のルールが一切適用されませんでした。市場に存在していた多数の小規模管理業者の多くは、法的な行動基準を持たないまま業務を行えていたのです。現在でも200戸未満は任意登録ですが、法律という「見える基準」ができたことで、オーナーや入居者から「あなたの会社はなぜ登録しないの?」という目が向けられやすくなりました。

もう一つ、実務における変化として見落とされがちなのが「オーナーへの定期報告義務の具体化」です。管理業法では「年1回以上の頻度でオーナーに報告する」ことが義務化されました。報告内容は家賃等の金銭収受状況、維持保全の実施状況、入居者からの苦情の発生・対応状況です。これが義務になったことで、管理会社はオーナーとの間に定期的なコミュニケーションの場を設ける必要が生まれました。

これは使えそうです。定期報告をしっかり行っている業者ほど、オーナーとの長期的な信頼関係を築きやすく、解約率の低下や管理戸数の安定につながります。法律の義務という側面だけでなく、事業の継続性を高める経営ツールとして捉え直すことで、実務の動機づけが変わるでしょう。

さらに、管理業法には「従業者証明書の携帯義務」という規定があります。管理業務に従事する従業員は、その従業者であることを証明する証明書を携帯しなければなりません。処理準則にはなかった規定です。入居者やオーナーの求めに応じてこれを掲示する義務もあり、管理業者の「人」の信頼性を担保する仕組みが整備されました。入居者が「この人は本当に管理会社の人なの?」と感じる場面での安心感につながります。

業務管理者の配置義務によって、賃貸不動産経営管理士という国家資格の重要性も一段と高まりました。各営業所・事務所に1名以上の業務管理者(賃貸不動産経営管理士または宅地建物取引士として要件を満たす者)が必要なため、資格保有者を持つことが事業継続の条件になっています。資格保有者であれば処遇交渉にも有利に働くでしょう。

参考:国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト「管理業者の業務」

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/administrator_duties.html