マンション管理計画認定制度のデメリットと費用負担を徹底解説

マンション管理計画認定制度のデメリットと対策を徹底解説

認定を取れば安心と思っているなら、50万円超の出費で組合が紛糾するケースもあります。

この記事でわかること
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費用・コストのデメリット

申請手数料+コンサル費用で合計30〜60万円超が相場。小規模マンションでは費用対効果が赤字になるケースも。

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手間・労力のデメリット

17項目の認定基準をすべて満たす書類準備と総会決議が必要。準備開始から認定まで最長1年以上かかることも。

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継続・更新のデメリット

有効期間は5年。更新のたびに再申請が必要で、修繕積立金の増額対応など継続的な管理負担が生じる。


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マンション管理計画認定制度の概要と認定基準17項目

マンション管理計画認定制度は、2022年4月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」の改正によって本格スタートした公的制度です。管理組合が策定した管理計画が国土交通省の定める基準を満たしている場合に、地方公共団体(市区町村・都道府県)から認定を受けられる仕組みです。

認定を受けるためには、5分野・17項目の基準をすべてクリアする必要があります。具体的には、管理組合の運営状況(管理者の選任・総会の定期開催など)、管理規約の整備状況、管理費と修繕積立金の経理区分・滞納対応状況、長期修繕計画の内容(計画期間30年以上・大規模修繕2回以上含むか)などが審査の対象となります。

17項目の認定基準は高くないように見えて、実際は「修繕積立金の額が国のガイドラインに照らして妥当か」「借入金残高が長期修繕計画に含まれているか」「一時的な積立金の徴収を予定していないか」といった、難易度の高い項目も含まれています。つまり、現状の管理体制を見直さなければ基準を満たせないマンションが少なくないのが現実です。

認定の有効期間は5年間。一度取得すればそれで終わりではなく、5年ごとの新申請が必要です。

不動産従事者にとっては、中古マンション取引における調査・説明義務の観点からも、この制度を正確に理解しておくことが重要になっています。

参考(国土交通省による認定基準の詳細はこちら)。

国土交通省|マンションの管理計画認定の基準(PDF)

マンション管理計画認定制度のデメリット①費用負担が想定以上に重い

「申請費用はそれほど高くない」と言われることがありますが、実際には複数の費用が積み重なります。これが最初のデメリットです。

まず、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」のシステム利用料として1万円(税込)が発生します。これに加え、自治体に支払う申請手数料は自治体や申請内容によって異なり、数万円から10万円程度が目安です。さらに大きいのは、マンション管理士などへのコンサルティング費用で、相場は30万〜60万円程度とされています。

合算すると、管理組合全体で約50万円前後のキャッシュアウトが発生するケースが一般的です。50万円という金額は、ちょうど東京都内で1戸あたりの月額修繕積立金が約1万円のマンション(50戸)なら約1カ月分の積立金に相当します。

特に問題になるのが小規模マンションです。15戸程度の小さなマンションでは、コンサル費用などの固定費はほぼ変わらない一方、長寿命化工事に伴う固定資産税の減額メリット(各区分所有者が受け取る分の合計)が約49.5万円にとどまり、費用対効果が紙一重になります。コンサル費用が高い場合は数字上で赤字になることもあります。痛いですね。

費用負担が大きいマンションほど、総会での合意形成に時間がかかります。「なぜそんなにかかるのか」という区分所有者の疑問に対し、メリットを数字で説明できる準備を事前に整えておくことが、理事会と不動産従事者の双方にとって不可欠です。

費用計算の一例として、認定取得のROI(投資対効果)をシミュレーションしているコンテンツを参考にするとよいでしょう。

認定取得は「コスパ」が良いのか?コンサル費 vs 減税額をガチ計算(note)

マンション管理計画認定制度のデメリット②書類準備と合意形成の労力が膨大

費用面と並んで深刻なのが、時間と労力のコストです。デメリットとして数字にあらわれないぶん、見落とされがちです。

認定申請には、管理者選任を決議した総会議事録の写し、管理規約の写し、直近事業年度の貸借対照表・収支計算書、修繕積立金の滞納状況を示す書類、長期修繕計画(作成または変更を決議した議事録含む)、組合員名簿・居住者名簿の更新記録など、多数の書類が必要です。

これらを一から揃えようとすると、書類が整っていないマンションでは作成・更新から始めなければなりません。整理が不十分な管理組合では、書類の掘り起こしだけで数カ月を要することもあります。

さらに、申請には管理組合の総会での普通決議(区分所有者・議決権の各過半数)が必要です。ただし、管理規約に別段の定め(特別多数決議を要するなど)がある場合はその規約が優先されるため、申請前に必ず現行の管理規約を確認しなければなりません。書類準備が基本です。

総会での審議では「本当に必要か」「費用に見合うか」といった質問が集中するケースが多く、理事会が丁寧な説明を繰り返す必要が出てきます。合意形成に時間がかかれば、準備開始から認定まで1年以上を要することも珍しくありません。

不動産従事者がオーナーや管理組合に対して制度を紹介する場合は、この「合意形成コスト」を事前に伝えておくことが、後のトラブル回避につながります。

マンション管理計画認定制度のデメリット③修繕積立金の増額を迫られるリスク

多くの解説記事では触れられていない、現場で最も揉めやすいデメリットがこれです。

認定基準の一つに「修繕積立金の額が国土交通省の修繕積立金ガイドラインに照らして妥当であること」があります。現状の積立金額が基準を下回っている場合、認定を取得するためには増額が必要になります。段階増額積立方式を採用しているマンションで積立不足が生じている場合は特に注意が必要です。

修繕積立金の増額は区分所有者の直接的な金銭負担に直結するため、総会での合意が最も難しい議題の一つです。高齢の区分所有者や経済的に余裕のない方からの反発が予想され、賛否が二分するケースも少なくありません。

また、国土交通省は2024年2月に、段階増額積立方式で修繕積立金を引き上げる場合の増額幅を最大約1.8倍とする方針を示しました。これは認定基準の要件にも影響する内容であり、現状の積立金額によっては大幅な見直しが必要になります。

つまり、認定取得を目指すことで積立金の不足が「見える化」され、やむを得ず増額せざるを得ない状況が生まれるリスクがあります。「認定を取ろうとしたら修繕積立金を上げなければいけなくなった」という状況は、居住者にとって予期せぬデメリットになり得ます。

不動産従事者として、中古マンションの売買に関わる場面では、このような積立金の見直し可能性もリスク情報として把握しておく必要があります。

マンション管理計画認定制度のデメリット④5年ごとの更新と継続的管理負担

認定の有効期間は5年間です。一度取得して終わりではないという点は、制度のデメリットとしてしっかりと認識しておく必要があります。

5年ごとに更新申請を行い、再度審査を受けなければなりません。更新費用として再びシステム利用料や申請手数料が発生するほか、状況によってはコンサルタントへの依頼も必要になります。

さらに、認定基準の根拠となる長期修繕計画は、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」で5年程度ごとの見直しが推奨されています。認定を維持するためには、この見直しサイクルを守り続けなければなりません。修繕費用の相場が変動した場合や建物の劣化が想定より進んだ場合、計画の大幅な修正が必要になることも起こります。

5年後の更新時に、「前回の認定取得から住民構成が変わり合意形成が難航した」「役員が総入れ替えになり制度の経緯を知っている人がいない」といった事態も現場ではよく起きます。管理組合の運営ノウハウを引き継ぎ、情報共有の仕組みを整備しておくことが条件です。

また、認定を「取り続けること」のプレッシャーは理事会役員の精神的な負担にもなり得ます。特に小規模マンションで役員のなり手が少ない場合、更新業務が特定の個人に集中するリスクもあります。厳しいところですね。

不動産従事者が管理組合に制度を提案する際は、「取得後の5年間をどう運営するか」まで含めたサポート体制を示すことが、信頼関係の構築につながります。

参考(マンション管理センターによる手続き支援サービスの詳細)。

公益財団法人マンション管理センター|管理計画認定手続支援サービス

マンション管理計画認定制度のデメリット⑤自治体ごとの「上乗せ基準」という盲点

制度を調べた多くの方が見落としがちな、独自視点のデメリットがあります。それが、自治体ごとの「上乗せ基準」の問題です。

管理計画認定制度の認定基準は国土交通省が定める17項目が基本ですが、地方公共団体が独自の「上乗せ基準」を設定することが認められています。例えば、防災マニュアルの整備や定期的な防災訓練の実施、コミュニティ活動に関する規定の有無などを独自基準として定めている自治体も存在します。

問題なのは、マンション管理センターによるマンション管理士の事前確認は、国の基準(17項目)のみが対象であり、自治体の独自基準はその対象外であることです。つまり、事前確認をパスしたからといって、その自治体の認定基準をすべて満たしているとは限りません。

申請しようとしている自治体の独自基準を事前に確認せずに進めた場合、書類を整えて申請した後に「独自基準を満たしていないため認定できない」という事態になりかねません。これは時間と費用の無駄につながる重大なリスクです。

一方で、「独自基準はなく、国の基準と同一」とホームページに明記している自治体(西東京市、台東区、佐野市など)も多くあります。まず所在地の自治体のウェブサイトや担当窓口に確認する、というアクションを最初のステップとして設定しておくのが現実的です。

不動産従事者が客付け・売付けの業務において管理計画認定の有無を確認する際も、自治体ごとの基準の違いを念頭に置いてリサーチすることが重要です。

参考(自治体の認定基準Q&Aはこちら)。

公益財団法人マンション管理センター|管理計画認定手続支援サービスQ&A(PDF)