共用部分の変更と過半数の決議要件を正しく理解する方法

共用部分の変更と過半数の関係を正しく理解する

共用部分の「重大な変更」は4分の3以上の決議が必要なのに、規約を改正しないと2026年法改正後も旧ルールが適用されます。

この記事の3つのポイント
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軽微変更と重大変更の違い

「形状・効用の著しい変更を伴わない」軽微変更は過半数決議で可決でき、著しい変更を伴う重大変更は原則4分の3以上の特別決議が必要です。

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2026年4月改正で要件が変わる

改正区分所有法の施行後は「出席した区分所有者の4分の3以上」が基本となり、定足数(過半数出席)が新たに要求されます。規約改正が未対応だと旧要件が適用されます。

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例外的に3分の2以上に緩和されるケース

バリアフリー工事や共用部分の瑕疵除去(耐震補強など)に限り、出席者の3分の2以上の賛成で共用部分の重大変更が可決できます。


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共用部分の変更と過半数・4分の3の基本的な違い

 

区分所有法における「共用部分の変更」には、求められる決議要件がまったく異なる2種類があります。これを混同していると、総会の決議が無効になるリスクがあります。

まず「軽微変更(普通決議事項)」とは、共用部分の形状または効用の著しい変更を伴わない変更のことです。具体的には、廊下の照明をLEDに交換する、外壁の塗装を同等仕様で塗り直すなど、機能や外観を大きく変えない修繕・改良工事が該当します。この軽微変更は、区分所有者および議決権の各過半数(過半数決議)で決することができます。

一方「重大変更(特別決議事項)」とは、共用部分の形状または効用に著しい変化をもたらす変更です。たとえばエントランスホールを大幅に改築してその機能や用途を変える、共用駐輪スペースを室内ゴミ置き場に転用するなどが該当します。重大変更は原則として区分所有者および議決権のそれぞれ4分の3以上の特別決議が必要です。

つまり過半数が原則です。

ただし旧法(改正前)には一つの緩和規定があり、「区分所有者の頭数(定数)」については、規約を定めることで4分の3以上の要件を過半数まで引き下げることができました。一方「議決権」については規約があっても過半数への緩和はできず、常に4分の3以上が必要でした。頭数だけが過半数への緩和対象だという点は宅建試験でも頻出のひっかけポイントです。

この基本的な構造をしっかり把握しておくことが、2026年以降の法改正対応の土台になります。

区分所有法第17条の詳細な条文と解説については、公益財団法人マンション管理センターのQ&Aが参考になります。

📎 公益財団法人マンション管理センター「Q2-8.共用部分の変更にはどのような手続きが必要ですか」

共用部分の変更における過半数決議と重大変更の具体例比較

実務では「どこからが重大変更か」の判断に迷うケースが多くあります。ここでは代表的な工事を軽微変更と重大変更に分けて整理します。

変更の種類 具体例 決議要件
軽微変更(普通決議) 外壁・屋上防水の大規模修繕工事、廊下のLED化、砂利道のアスファルト舗装 区分所有者および議決権の各過半数
重大変更(特別決議) 駐輪スペースをゴミ置き場に改装、エントランスを大幅増築、屋上に大型アンテナを新設 区分所有者および議決権の各4分の3以上(旧法原則)
重大変更・緩和対象(改正法) バリアフリー工事(スロープ・エレベーター設置)、耐震補強・アスベスト除去などの瑕疵除去 出席者の3分の2以上(改正法第17条5項)

特に見落としがちなのが、外壁の大規模修繕工事です。意外ですね。工事金額が数千万円に及ぶため「重大変更に違いない」と思いがちですが、既存の外壁と同等仕様での修繕であれば、形状・効用の著しい変更を伴わないと判断され、過半数の普通決議で通ります。

一方、共用の駐輪スペースを用途変更してゴミ置き場にリフォームする場合は、機能(効用)が著しく変わるため重大変更となり、特別決議が必要です。金額の大小ではなく、形状・効用が著しく変わるかどうかで判断する。これが原則です。

また共用部分の変更が特定の専有部分の使用に「特別の影響」を及ぼす場合は、その専有部分の所有者の個別承諾も別途必要になります(区分所有法第17条第2項)。多数決で可決されたとしても、特定の住戸の使用が著しく妨げられる工事であれば、その住戸のオーナーの同意なしには進められません。これは、多数決原理の例外として個人の権利を保護するための規定です。

2026年4月施行の区分所有法改正が共用部分の変更の過半数要件に与える影響

2024年に成立した改正区分所有法が、令和8年(2026年)4月1日から施行されました。共用部分の重大変更に関する決議要件が大きく見直されています。不動産実務に携わる方はこの変更を正確に把握しておくことが必要です。

改正の核心は「分母が変わった」という点です。旧法では賛成要件の分母が「全区分所有者数」と「全議決権」でした。そのため100戸のマンションで75戸以上(4分の3)の賛成が必要で、所在不明で連絡が取れない区分所有者も分母に含まれるため、事実上の壁となっていました。

改正法では、以下の2段階の要件に変更されました。

旧法(2026年3月まで) 改正法(2026年4月1日以降)
出席要件(定足数) 特別な出席要件なし 区分所有者・議決権の各過半数が出席委任状・書面投票含む)
賛成要件(多数決) 全区分所有者・全議決権の各4分の3以上の賛成 出席した区分所有者・議決権の各4分の3以上の賛成

100戸のマンションで考えるとわかりやすいです。旧法では75戸の賛成が必須でしたが、改正法では60戸が出席していれば、そのうち45戸(60の4分の3)の賛成で可決できます。結果として賛成必要戸数が75戸→45戸に減り、かなり現実的な数字になります。

また、規約により賛成割合を「2分の1超」の範囲で自由に設定することもできるようになりました。これにより頭数だけでなく議決権割合も規約で緩和できるようになった点が旧法との大きな違いです。

ただし注意点があります。

改正法のメリットを享受するためには、管理規約を改正法に対応した内容に改定しておく必要があります。規約改正が未対応のままだと、2026年4月1日以降の総会でも旧法ルールが適用されるリスクがあります。管理規約の見直しはできる限り早く着手することが重要です。

2026年4月施行の区分所有法改正の全体像については、弁護士法人による詳細解説が参考になります。

📎 神戸さきがけ法律事務所「共用部分の重大変更決議の要件の緩和」

バリアフリー・耐震工事では過半数出席+3分の2以上に緩和される理由

2026年4月施行の改正区分所有法では、重大変更のうち特定の工事に限り、賛成要件がさらに緩和されます。改正法第17条第5項に定められたこの緩和措置を知っておくと、実務上の対応が変わります。

3分の2への緩和が適用されるのは、以下の2ケースです。

  • 共用部分の瑕疵除去に必要な変更:設置・保存に瑕疵があり他人の権利を侵害するおそれがある場合の除去工事。具体的には耐震補強工事、アスベスト除去工事、老朽化した給排水管の全面更新など。
  • 高齢者・障害者のバリアフリー化に必要な変更:高齢者・障害者等の移動の利便性・安全性を向上させるための工事。具体的にはエレベーターの新設、スロープの設置、段差解消工事など。

これらの工事では「出席した区分所有者および議決権の各3分の2以上」の賛成で可決できます。4分の3以上と3分の2以上では数字だけ見ると小さな差に思えますが、実態は大きく異なります。たとえば60戸が出席している総会では、4分の3なら45戸の賛成が必要なのに対し、3分の2なら40戸の賛成で足ります。5戸分の差は、実際の総会では決議の成否を左右します。

厳しいところですね。高齢化や老朽化が進む多くのマンションでは、エレベーターの後付け設置や耐震改修の必要性が増しており、この3分の2緩和が背景的な後押しとなります。

なお、標準管理規約の改正版(令和7年改正)においても、この3分の2緩和が管理規約のひな形に取り込まれています。自身のマンションの管理規約が標準管理規約に準拠しているかを確認し、必要に応じてアップデートすることが実務上の優先事項となります。

国土交通省が令和7年に改正した標準管理規約の内容については、以下の公式情報が最も正確です。

📎 国土交通省「マンション標準管理規約(令和7年10月改正)」

共用部分の変更における過半数と規約改正を怠った場合の実務リスク

2026年4月の法改正が施行された現在、管理規約を改正法に対応させていないマンションでは具体的にどのようなリスクが生じるのかを整理します。これは不動産従事者が管理組合や区分所有者にアドバイスする際に特に重要な視点です。

最も深刻なリスクは「決議の無効」です。改正法施行後に開催される総会で共用部分の重大変更を議決する場合、管理規約が旧法ベースのままだと、旧法の要件(全区分所有者の4分の3以上)が適用されてしまいます。この状態で改正法の計算方法(出席者の4分の3以上)で決議を進めると、後日その決議の効力が争われ、工事の差し止めや損害賠償請求に発展するリスクがあります。

たとえば100戸のマンションで62戸が出席し、49戸が賛成した場合を考えます。改正法ベースだと「出席62戸の4分の3=46.5戸以上の賛成」という計算で可決できますが、旧法ベースだと「100戸の4分の3=75戸以上の賛成」が必要なため否決です。同じ総会でも、規約がどちらに対応しているかで結果がまったく変わります。

規約改正が必要です。

また規約改正そのものも特別決議事項(区分所有法第31条)です。つまり規約を改正法対応に変えるにも、旧法ルールに従った4分の3以上の賛成が一度必要です。先に旧法ルールで規約改正を通し、それから以降の重大変更は改正法ルールで進める、という順序が正しい対応です。多くのマンションでは2026年3月末までに規約改正を完了させるよう指導が行われています。

さらに忘れてはならない点として、改正法施行後に発送された招集通知に基づく総会から改正法が適用されます(改正法附則第2条第2項)。招集通知の発送日が2026年4月1日以降かどうかが、旧法・新法のどちらが適用されるかの分岐点です。この「招集通知の日付」という基準は実務的な判断で見落とされやすいポイントです。

法改正後の実務対応における規約改正の手順については、弁護士による詳細な解説が参考になります。

📎 牛島総合法律事務所「区分所有法の改正」(2025年6月)

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