帳簿の記載事項・宅建業法で押さえる保存と罰則

帳簿の記載事項・宅建業法で正しく実務に活かすポイント

帳簿の記載を怠ると、50万円の罰金で免許も5年間失います。

📋 この記事の3つのポイント
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法定記載事項を正確に把握する

宅建業法施行規則第18条で定める10項目+新築住宅追加4項目を理解し、記載漏れや虚偽記載による違反を防ぎましょう。

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保存期間は「5年」と「10年」の2パターンある

通常取引は閉鎖後5年、自ら売主となる新築住宅の場合は閉鎖後10年保存が必要です。間違えると法令違反になります。

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犯収法との兼用には保存期間の注意が必要

犯罪収益移転防止法の取引記録と帳簿を兼用する場合、保存期間が7年に延長されます。5年で廃棄すると犯収法違反になります。

帳簿の記載事項・宅建業法第49条の基本ルールを確認する

 

宅地建物取引業法第49条は、宅建業者に対して「事務所ごとに帳簿を備え、取引のあったつどその内容を記載しなければならない」と定めています。この条文の「取引のあったつど」という部分が実務上で最もミスを生みやすいポイントです。月末や年末にまとめて記載していた場合、それだけで法令違反とみなされる可能性があります。

帳簿は事務所ごとに備え付けが必要です。支店が3か所あれば、3か所それぞれに帳簿を置く必要があります。本店にまとめて一括管理していた場合、備付け義務違反として指示処分と50万円以下の罰金の対象となります。見落としがちなポイントです。

具体的な記載事項は、宅地建物取引業法施行規則第18条第1項で規定されています。以下が法定記載項目の一覧です。

No. 記載事項 備考
取引年月日 取引ごとに記載
宅地・建物の所在および面積 対象物件を特定する
取引態様(売買・交換・代理・媒介の別) 自ら売主か媒介かなど
取引の相手方・代理人・媒介取引当事者の氏名と住所
財産の移転元または移転先の名義(売買・その媒介・代理の場合)
取引に関与した他の宅建業者の商号・名称 共同仲介の場合に必要
宅地の場合:現況地目・位置・形状その他の概況
建物の場合:構造上の種別・用途その他の概況
売買金額・交換差金または賃料
報酬の額 受け取った報酬を記載
取引に関する特約その他の参考事項 任意的記載ではない

帳簿には書式の指定がない点も重要です。市販の取引台帳でも、自社オリジナルのExcel形式でも、上記の項目を満たしていれば適法です。また施行規則第18条第2項により、パソコン上のファイルや磁気ディスクでの管理も認められています。ただし「必要に応じてその事務所でプリントアウトできる環境を整えること」が条件です。データのみをクラウドに保管して事務所では確認できない状態は認められません。

記載は宅建士が行う必要はありません。これは実務上よく誤解されている点です。宅建士の記名・押印も法的には求められていないため、事務スタッフが担当しても問題ありません。

なお、帳簿には従業者名簿のような「閲覧義務」がない点も押さえておいてください。取引関係者から請求があっても、帳簿は閲覧させる必要はありません。この点は従業者名簿と混同しやすいため注意が必要です。

宅建業法第49条の原文は、国土交通省が運営するe-Govで確認できます。

宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)|第49条「帳簿の備付け」の条文を確認できます

帳簿の記載事項・新築住宅に追加される4項目と10年保存ルール

自ら売主となる新築住宅の取引については、通常の記載事項に加えて4つの項目を追加で記載しなければなりません。これは住宅瑕疵担保履行法の施行に伴い設けられたルールです。

追加記載事項は以下の4項目です。

  • 当該新築住宅を引き渡した年月日
  • 当該新築住宅の床面積
  • 宅建業者の販売瑕疵負担割合(複数業者が売主となる場合のみ)
  • 瑕疵担保保険法人の名称(保険に加入している場合)

この4項目は、新築住宅の売主として売買を行う宅建業者にのみ適用されます。新築住宅の媒介や代理を行う業者は、通常の記載事項のみで構いません。「売主」かどうかが分岐点です。

そして保存期間も変わります。通常の帳簿は各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間の保存が義務付けられています。一方、自ら売主となる新築住宅に係る帳簿は、閉鎖後10年間の保存が必要です。

なぜ10年かというと、住宅品質確保法(品確法)第95条により、新築住宅の売主には引渡しから10年間の瑕疵担保責任が課されているからです。万が一、構造耐力や雨水浸入に関するトラブルが発生した際に、取引の詳細を帳簿で確認できる状態を維持する必要があります。

売買が完了してから9年後にトラブルが起きたとしても、帳簿があれば対応できます。これは業者自身を守るためにも重要な記録です。

なお、保存期間の始期は「取引日」ではなく「各事業年度の末日に閉鎖してから」です。たとえば令和6年3月に取引が成立した場合、その年の事業年度末(多くの場合12月31日または3月31日)に帳簿を閉鎖し、そこから5年または10年が保存義務期間の起算点となります。取引日から5年で廃棄すると、実質的に保存期間が短くなる可能性があります。起算点の理解が条件です。

(公財)不動産流通推進センター|帳簿の保存期間の始期・新築住宅10年保存の根拠条文など実務的な解説が確認できます

帳簿の記載事項・犯罪収益移転防止法との兼用で保存期間が変わる落とし穴

多くの宅建業者が帳簿(取引台帳)と、犯罪収益移転防止法(以下「犯収法」)に基づく「取引記録」を兼用して管理しています。これ自体は法令上も認められており、岡山県の事務所設置ガイドラインにも「犯罪収益移転防止法上の取引記録と兼ねる場合、以下の事項が記載されていれば可」と明記されています。

ただし、兼用するとき必ず守らなければならないルールがあります。それが保存期間の問題です。

宅建業法上の帳簿の保存期間は閉鎖後5年です。ところが犯収法上の「取引記録」は、取引が行われた日から7年間の保存が義務付けられています(犯収法第7条第3項)。この2つを兼ねた記録として帳簿を管理している場合、宅建業法の5年で廃棄してしまうと、犯収法上の7年保存義務に違反することになります。

つまり、兼用している帳簿は最低でも7年間保存しなければなりません。これを知らずに5年経過後に廃棄している業者は少なくありません。痛いですね。

具体的なケース別の保存期間をまとめると、以下のとおりです。

取引の種別 宅建業法上の保存期間 犯収法兼用時の保存期間
通常の売買・媒介・代理 閉鎖後5年 取引日から7年
自ら売主となる新築住宅の売買 閉鎖後10年 10年(宅建業法が上回るため)
賃貸の媒介・代理 閉鎖後5年 犯収法の対象外(売買のみ)

賃貸借取引については、犯収法に基づく取引記録の作成義務対象は売買取引(宅地・建物の売買、その代理・媒介)に限られているため、賃貸の帳簿は宅建業法の5年保存で足ります。これが条件です。

犯収法に関する義務を詳しく確認したい場合は、不動産流通推進センターが公表しているハンドブックが参考になります。

(公財)不動産流通推進センター|「犯罪収益移転防止のためのハンドブック」帳簿との兼用に関する記載もあります

帳簿の備付けを怠ると免許を5年間失う・違反時の罰則の実態

帳簿の備付けや記載を怠った場合、どのような罰則が待ち受けているのかを正確に把握しておく必要があります。宅建業法上、帳簿の備付け義務違反は「指示処分」と「50万円以下の罰金」の対象となっています。

50万円の罰金だけでも十分に痛手ですが、本当に怖いのはその先です。罰金刑が確定すると、宅建業法第5条第1項第3号の欠格要件に該当します。つまり、免許の欠格要件に引っかかり、その後5年間は免許を受けることができなくなります。

事務所を1か所しか持たない中小規模の宅建業者であれば、これはすなわち5年間の廃業を意味します。帳簿の記載漏れが原因で廃業に追い込まれるケースは、決して他人事ではありません。

違反の対象となる行為は「備付け自体を怠ること」だけではありません。以下のケースも同様に罰則の対象となります。

  • 法定記載事項に漏れがある(記載漏れ)
  • 事実と異なる内容を記載した(虚偽記載)
  • 帳簿を各事業年度末に閉鎖していない
  • 保存期間中に帳簿を廃棄した

「帳簿はつけているが、報酬の額を記載していなかった」というケースも違反です。記載漏れは意図の有無にかかわらず罰則の対象となります。なお、帳簿の備付け義務違反と従業者名簿の備付け義務違反では、処分の重さが異なります。帳簿違反は「指示処分+罰則」であるのに対し、従業者名簿違反は「業務停止処分+罰則」の対象となる点も覚えておきましょう。

また、行政による立入検査(宅建業法第72条)が実施された際に帳簿の不備が発覚するケースも少なくありません。検査を受けてから慌てて整備しても遅いため、日常的な管理体制が重要です。

行政による監督処分の詳細や過去の処分事例については、各都道府県の宅建行政窓口に掲示された処分情報でも確認できます。

岐阜県建築指導課|宅建業法上の義務・帳簿の備付けと違反時の監督処分についての行政解説

帳簿の記載事項・実務担当者が今すぐチェックすべき3つの盲点

帳簿の法的要件を理解したうえで、実務の現場では特定のポイントが見落とされやすいことがわかっています。ここでは、実際の監査や立入検査で指摘されやすい3つの盲点を整理します。

盲点①:「自ら貸主として締結した賃貸借契約」は帳簿への記載が不要

宅建業者が自ら貸主として賃貸借契約を結んだ場合、これは宅建業に該当しません。宅建業とは「他人のために行う取引」を指すため、自らが当事者として行う賃貸借は業務の対象外です。したがって、帳簿への記載義務もありません。「すべての取引を記載しなければならない」と思い込んでいる場合は、ここで整理しておきましょう。これが基本です。

盲点②:帳簿は「案内所」には備える必要がない

案内所(モデルルームや現地販売所など)には、標識の掲示義務や専任宅建士の設置義務はありますが、帳簿の備付け義務はありません。帳簿の備付けが必要なのは「事務所」のみです。案内所で取引があった場合でも、それはその案内所を管轄する事務所の帳簿に記載すれば問題ありません。

盲点③:契約書のコピーをまとめておくだけでは帳簿として認められない

取引に関する契約書の写しを時系列でファイリングしている業者がいますが、これだけでは帳簿としては認められません。不動産流通推進センターの相談事例でも「取引した契約書のコピーをまとめて保存するだけでは、帳簿としては認められない」と明確に回答されています。法定の記載項目が網羅された台帳形式のフォーマットを別途作成する必要があります。これは使えそうです。

これら3つの盲点を踏まえたうえで、自社の帳簿管理が現行法に適合しているかを確認することが重要です。特に、開業から年数が経過した業者ほど「昔からやってきた方法」に慣れてしまい、法改正の内容が反映されていないケースがあります。

帳簿管理の実務的な参考書式については、各都道府県が公開している取引台帳のひな形が役立ちます。

茨城県|宅地建物取引業運営の手引き(帳簿の参考書式がダウンロード可能)

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