敷地売却決議の要件と手続きを宅建事業従事者が押さえるべき理由
要除却認定を受けていないマンションで敷地売却決議を進めると、決議そのものが無効になります。
敷地売却決議の要件は建替え決議と「ここ」が違う
マンション敷地売却決議の成立要件として、区分所有者の頭数・議決権・敷地利用権の持分価格の各5分の4以上の賛成が必要です。これは「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替円滑化法)」第108条第1項に規定されています。
一見、建替え決議と同じに見えます。同じではありません。
建替え決議(区分所有法第62条)は「区分所有者数」と「議決権」の2つで各5分の4以上の賛成が必要です。一方、敷地売却決議では「区分所有者数」「議決権」に加え、「敷地利用権の持分価格」という第3の要素が追加されています。
この「敷地利用権の持分価格」というのは、土地に対してどれだけの割合の権利を持っているかを価格ベースで測る指標です。同じ区分所有者数・議決権を満たしていても、敷地利用権の持分価格の割合が足りなければ決議は成立しません。宅建事業従事者が顧客に対して敷地売却の説明をする際、建替えと混同しやすい部分ですので注意が必要です。
また、手続きの根拠法令も異なります。建替え決議は区分所有法に基づきますが、敷地売却の手続きはすべて円滑化法(マンション建替円滑化法)に沿って行われます。これにより、手続きの流れや使用書式、申請先がそれぞれ異なることになります。
| 項目 | 建替え決議(区分所有法) | 敷地売却決議(円滑化法) |
|---|---|---|
| 賛成要件 | 区分所有者数・議決権 各5/4以上 | 区分所有者数・議決権・敷地利用権持分価格 各5/4以上 |
| 前提条件 | なし(老朽化以外でも可) | 特定要除却認定が必須 |
| 根拠法令 | 区分所有法第62条 | マンション建替円滑化法第108条 |
| 建設する建物の制限 | マンションのみ | 用途制限なし(オフィスビル等も可) |
なお、2026年4月施行の改正区分所有法により、老朽化等の一定要件を満たす場合は建替え・敷地売却の決議要件が4分の3へ緩和される仕組みも導入されています。法改正の内容は常に最新情報を確認しておく必要があります。
公益社団法人 全日本不動産協会「マンション・敷地売却制度」(制度概要・決議要件の法的根拠を確認できます)
敷地売却決議の前提条件:要除却認定の2種類と対象マンション
敷地売却決議が成立するには、そのマンションが事前に行政から「要除却認定」を受けていることが不可欠です。ここが重要です。
要除却認定には2種類あります。「要除却認定」と「特定要除却認定」です。この2つは似て非なるものです。
要除却認定を受けると、建替え時に容積率の緩和特例(通常より大きな建物を建てられる)が利用できるようになります。ただし、これだけでは敷地売却や団地の敷地分割は行えません。
特定要除却認定を受けると、要除却認定の効果に加えて、マンション敷地売却や団地における敷地分割も可能になります。つまり、敷地売却決議を進めるには「特定要除却認定」の取得が条件です。
特定要除却認定の対象となる要件は以下の5つです。
- 🔴 耐震性の不足(旧耐震基準のマンションで耐震診断の結果、基準を満たさないもの)
- 🔴 火災に対する安全性の不足(スプリンクラーや防火設備の不備など)
- 🔴 外壁等の剥落により周辺に危害を生じるおそれ
- 🔴 給排水管の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
- 🔴 バリアフリー基準への不適合
2020年の円滑化法改正により、従来の「耐震性不足」のみから上記5つに拡充されました。要除却認定の対象が広がったことで、耐震性には問題がなくとも外壁の剥落や配管の腐食といった問題を抱えるマンションも制度を利用できるようになっています。
注意すべき点は、「築年数が古い」だけでは認定されないということです。要除却認定は主観的な老朽感ではなく、専門家による調査・診断の結果に基づき、特定行政庁(市区町村長や都道府県知事など)が客観的基準で認定します。また、認定を受けると管理組合に除却についての努力義務が発生し、不動産取引における重要事項としての説明義務の対象にもなります。
厳しいところですね。しかし、この認定があることによって区分所有者が分配金を受け取りながら新たな居住先を確保できる道が開かれます。宅建事業従事者として、顧客から対象マンションについて問い合わせを受けた際は、要除却認定の有無と種類を必ず確認するようにしましょう。
旭化成マンション建替え研究所「要除却認定マンションとは?認定の条件や認定を受けることによるメリットを解説」(2種類の認定の違いや認定を受けた事例を解説しています)
敷地売却決議の手続きの流れと各ステップの法定要件
敷地売却の手続きには法律で定められた順序があります。これが基本です。手順を誤ると有効な決議になりません。以下の流れを押さえておきましょう。
ステップ1:建物診断の実施
まず専門家による耐震診断・建物調査を実施し、特定要除却認定の適用可能性を確認します。
ステップ2:特定要除却認定の申請
調査結果をもとに特定行政庁へ申請します。申請には管理組合の総会決議(過半数の賛成による普通決議)が必要です。
ステップ3:買受計画の認定
管理組合が選定したデベロッパー(買受人予定者)が、都道府県知事等に買受計画を申請し認定を受けます。この認定は敷地売却決議の前に行われる必要があります。
決議の前に買受人が確定するというのは意外に感じる方もいるかもしれません。しかし、売却後の土地利用方法・スケジュール・資金計画・代替住居の提供方針などを含む買受計画の中身を区分所有者が確認した上で賛否を判断できるようにするための仕組みです。後から買受人を変更することは認められません。
ステップ4:敷地売却決議(集会の開催)
集会の開催日の2ヶ月以上前に招集通知を発出し、売却の必要性・耐震改修や建替えをしない理由などを通知します。開催日の1ヶ月以上前には区分所有者への説明会の開催が必要です。決議では次の事項を定めます。
- ✅ 買受人となるべき者の氏名・名称
- ✅ 売却代金の見込額
- ✅ 分配金額の算定方法
この集会において、区分所有者の頭数・議決権・敷地利用権の持分価格の各5分の4以上の賛成を得ることで、敷地売却決議が成立します。
ステップ5:敷地売却組合の設立認可申請
決議成立後、売却合意者5人以上が発起人となって組合設立の認可を都道府県知事等に申請します。定款・資金計画の作成には決議合意者の4分の3以上の同意が必要です。
ステップ6:不参加者への売渡請求
決議に賛成しなかった区分所有者に対して、参加の意思を確認する催告を行います。その後、組合は不参加者の区分所有権・敷地利用権を時価で買い取ることができます。売渡請求は決議日から1年以内に行わなければなりません。この期限は絶対です。期限を過ぎると権利を失います。
ステップ7:分配金取得計画の認可
組合が分配金取得計画(各区分所有者が取得する分配金・補償金・権利消滅期日など)を都道府県知事等に申請・認可を受けます。権利消滅期日に組合への権利移転と担保権・借家権の消滅が生じます。
ステップ8:買受人への売却・解散
組合が買受人にマンションと敷地を売却して事業完了。その後、組合は解散します。
国土交通省「マンション敷地売却ガイドライン」(手続きの詳細と各ステップの実務上の注意点が記載されています)
敷地売却決議で決める「3つの必須事項」とその重要性
敷地売却決議では、単に「売却する・しない」を決めるだけではありません。決議の際に必ず定めなければならない3つの事項があります。この3つが揃っていないと決議自体が有効になりません。
① 買受人となるべき者の氏名または名称
誰に売却するかを明確にします。決議で定める買受人は、都道府県知事等から買受計画の認定を受けた者でなければなりません。決議後に「別のデベロッパーに変えたい」という変更は認められないため、管理組合は買受人の選定を慎重に行う必要があります。
② 売却代金の見込額
マンションと敷地をいくらで売却するかの見込み金額です。区分所有者はこの金額をもとに、取得する分配金のイメージを確認した上で賛否を判断することができます。
③ 分配金の額の算定方法
売却代金をどのような基準・計算式で各区分所有者に配分するかを定めます。持分面積、住戸の位置、敷地利用権の割合などをどう反映させるかで、各区分所有者が受け取る金額が変わります。これが利害関係者にとって最も関心の高い部分です。
これは使えそうですね。顧客から「敷地売却とは何か」と聞かれたとき、単純に「5分の4以上の賛成で売れる仕組み」と説明するだけでは不十分です。「誰に・いくらで・どう分配するか」の3点を決議で定めるという構造を理解しておくと、説明の精度がぐっと上がります。
また、決議に賛成しなかった区分所有者(不参加者)には「催告」が行われ、参加を拒否した場合は組合から売渡請求を受けます。売渡請求の時価は、取り壊しを前提とした不動産鑑定の方式で算出されるため、通常市場価格とは異なる場合があります。
不参加者の側に立って考えると、売渡請求を受けた場合、拒否することはできません。区分所有法上の売渡請求権は「形成権」であるため、請求の意思表示が相手に到達した時点で、自動的に売買が成立します。
顧客が反対者の立場になりうるケースでも、売渡請求の仕組みと時価算定の方法について事前に情報提供できると、信頼性の高い対応につながります。
宅建事業従事者が実務で直面する敷地売却決議の独自リスクと重要確認点
敷地売却制度は手続きの複雑さゆえに、見落としやすいリスクが複数あります。宅建事業従事者として実務に携わる立場で、特に意識すべきポイントを整理します。
📌 重要事項説明における要除却認定の確認
要除却認定を受けたマンションの売買に関わる場合、その認定の事実は重要事項説明書への記載が必要な事項です。認定を受けると管理組合に除却の努力義務が生じ、将来的に敷地売却や建替えが行われる可能性があります。これは購入者の意思決定に大きく影響します。認定の有無と種類(要除却 or 特定要除却)を管理組合・行政から正確に確認してから説明することが求められます。
📌 特定要除却認定の申請は「普通決議」でよいが、敷地売却決議は「5分の4」
認定申請に必要な総会決議は過半数の賛成による普通決議で足ります。しかし、肝心の敷地売却決議には5分の4以上が必要です。結果として「認定は取れたが、決議が成立しなかった」というリスクが現実に存在します。認定後に4分の1超の反対票が集まれば計画は頓挫し、それまでの費用(診断費用・専門家費用など)が無駄になります。
📌 手続き全体に要する時間は数年単位
建物診断から買受人への売却まで、スムーズに進んでも数年単位の時間がかかります。顧客が「敷地売却を急ぎたい」と希望しても、法律上の各ステップには待機期間・認可申請・公告・通知などが伴い、スケジュールを短縮できる余地は限られています。期待値の適切なコントロールが必要です。
📌 分配金は「税制上の特例の対象外」
建替え事業で取得した資産には各種税制上の特例(買い替え特例など)が適用されることがありますが、マンション敷地売却制度で受け取る分配金はそれらの対象外になります。顧客が「売却後に新しい住宅を取得する」場合の税負担は、通常の不動産売却と同様に考える必要があります。
📌 2026年4月施行の改正区分所有法の影響
今まさに(2026年3月時点)、区分所有法の大改正が施行直前の段階にあります。老朽化等の一定事由がある場合は決議要件が4分の3に緩和される新制度も導入されるため、既存の敷地売却決議の実務に変化が生じる可能性があります。顧客への説明の際は、最新の法改正内容を踏まえた上で行うことが重要です。
これらの確認事項を抜け落ちなく把握しておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。宅建事業従事者として敷地売却案件に関わる際は、「制度を知っている」だけでなく「実務上のリスクを踏まえた説明ができる」レベルまで理解を深めておきましょう。
スマート修繕「マンションの敷地売却と要除却認定制度とは?」(要除却認定の種類と敷地売却の実務的な観点からの解説が充実しています)

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