法定共用部分が登記できない理由と実務での正確な判断基準

法定共用部分が登記できない根拠と宅建実務の判断基準

規約で「共用部分」と定めているのに、登記を怠ると第三者に主張すら通らない。

この記事の3ポイント要約
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法定共用部分は「登記不可」が原則

廊下・階段・エレベーターなど構造上の独立性がない部分は、区分所有法4条1項により登記そのものができない。規約で変更することも一切不可。

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規約共用部分は「登記なし=第三者対抗不可」

集会室・管理人室などは規約で共用とできるが、登記を怠ると区分所有法4条2項により第三者への対抗が認められない。大手分譲マンションでも未登記例が存在する。

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物件調査では固定資産税納付書の確認が必須

通常の建物登記事項証明書の申請だけでは規約共用部分の建物が出てこないケースがある。固定資産税納付書・評価証明書での照合が実務上の鉄則。

法定共用部分が登記できない理由を区分所有法4条で確認する

「廊下もエレベーターも登記されていないのに、なぜ誰でも使えるのか?」と疑問に思う方は多いです。答えは区分所有法4条1項に書かれています。

区分所有法第4条第1項はこう定めています。「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。」これが根拠です。

つまり、法定共用部分はそもそも「区分所有権の目的にならない」と法律が宣言しています。登記制度は所有権などの権利を公示するためのものですから、区分所有権の対象にならないものを登記する仕組み自体が存在しないのです。これが原則です。

🔍 法定共用部分に該当する代表例は以下のとおりです。

  • 建物の部分:共用玄関・ホール・廊下・階段室・エレベーター室・エレベーターホール・外壁・界壁(戸境壁)・床スラブ・バルコニー・アルコーブ・室外機置場
  • 建物の付属物:エレベーター設備・電気設備・給排水衛生設備・ガス配管設備・避雷設備・集合郵便受箱

これらはどれも「構造上または利用上の独立性がない」という共通点を持ちます。独立性がない、ということですね。廊下だけを切り取って独立して売買や使用することは、物の性質上あり得ません。だから登記の対象にすらならないのです。

また、「法定共用部分を規約で専有部分に変できないか?」と考える方もいますが、これは一切できません。法定共用部分は区分所有法上、専有部分の要件である「構造上の独立性」と「利用上の独立性」を満たすことが構造的にないからです。

参考:区分所有法4条の条文全文(e-Gov法令検索)

区分所有法の条文を直接確認できます。第4条1項(法定共用部分)と第4条2項(規約共用部分)の違いをそのまま読み比べられます。

https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069

法定共用部分と規約共用部分の登記の違いを整理する

法定共用部分が「登記できない」のに対して、規約共用部分は「登記できる(そして登記しないと第三者に対抗できない)」という点が、実務上最も重要な区別です。意外ですね。

区分所有法第4条第2項はこう定めています。「第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。」

以下に2種類の共用部分の特徴を整理します。

種類 具体例 登記の扱い 第三者対抗
法定共用部分 廊下・エレベーター・外壁・床スラブ 登記不可(そもそも登記制度の対象外 登記なしで当然に対抗可
規約共用部分 集会室・管理人室・駐車場・倉庫 登記可(表題部に「共用部分である旨」を記載) 登記がなければ第三者に対抗不可

この違いがなぜ生まれるかというと、法定共用部分は「誰が見ても共用だとわかる」ため登記によって公示する必要性がないのに対して、規約共用部分は「専有部分にもなり得る場所」を規約によって共用と定めたものだからです。外見から判別が難しいため、登記で公示しないと取引の安全が守られないのです。

法定共用部分が「本質的に共用」、規約共用部分が「取り決めで共用」と覚えておけばOKです。

参考:千葉いなげ司法書士事務所|区分建物の共有部分について詳しく解説しています。規約共用部分の登記と権利関係の解説部分が特に参考になります。

https://www.inage-zimusyo.com/blog/cat1/e_1357.html

宅建実務で注意すべき規約共用部分の未登記リスク

「管理規約に集会室を規約共用部分と書いてあるから大丈夫」と判断するのは、実は危険です。

区分所有法4条2項の規定が明確なように、管理規約で規約共用部分と定めていても、登記をしていなければ第三者に対抗できません。分譲主が倒産して財産が第三者に移転するような場面では、未登記の規約共用部分(管理人室など)をめぐってトラブルに発展するリスクが現実にあります。

公益社団法人・全日本不動産協会の機関誌「月刊不動産」(2023年5月号)でも、実際の物件調査での事例として以下が指摘されています。「大手分譲マンション業者の物件でも、駐車場は規約設定共用部分で登記されているのに、管理人室や集会場は登記されていない事例が見つかっている。」これは痛いですね。

実際のトラブルシナリオを具体的に想定するとこうなります。

  • 分譲業者が債務整理に入る
  • 管理人室に抵当権が実行され、第三者が所有権を取得する
  • 管理規約で「規約共用部分」とされていても、登記がなければ第三者への対抗不可
  • 管理組合が管理人室を使用・占有できなくなるリスクが生じる

こうした事態を防ぐために、宅建業者として物件を調査する際には以下の対応が求められます。

  • 管理規約で規約共用部分とされている建物(集会室・管理人室・倉庫・駐車場など)について、登記が実際にされているかを確認する
  • 登記がなければ「管理規約では規約共用部分と定めているが、登記はされていない」旨を重要事項説明に明記する

つまり「規約に書いてある=安全」ではない、ということが原則です。

参考:全日本不動産協会・月刊不動産|売買重要事項の調査説明(区分所有建物の売買における注意点)。規約共用部分の未登記トラブルについて実例ベースで解説されています。

法定共用部分の登記に関する物件調査の実務手順

マンションの区分所有建物を扱う際、通常の建物登記事項証明書の取得だけでは情報が不足する場合があります。これは知っておくべき重要ポイントです。

大型の区分所有マンションでは、「土地上にあるすべての建物を出してください」と法務局の受付で依頼して初めて、駐車場・電気室・倉庫などの規約設定共用部分の建物が出てくることがあります。ただし、この方法でもすべての規約設定建物の登記事項証明書が出ない場合があります。

そこで活用するのが固定資産税の情報です。市区町村役場の固定資産税課で固定資産評価証明書を取得するか、売主に固定資産税納付書を持参してもらいます。納付書には土地・建物の固定資産評価額と家屋番号が記載されています。専有部分以外の家屋番号があれば、それが規約設定共用部分の建物である可能性があります。

実務での確認手順をまとめると以下のとおりです。

  1. 専有部分の建物登記事項証明書を取得する
  2. 法務局で「土地上のすべての建物」を依頼して登記事項証明書を取得する
  3. 固定資産税納付書を売主から確認し、専有部分以外の家屋番号をチェックする
  4. 別の建物(駐車場・倉庫等)があれば、そのすべての建物登記事項証明書を取得する
  5. 規約設定共用部分の登記がある場合は、司法書士に登記費用の概算見積もりを依頼し、買主へ説明する

固定資産税納付書を確認する、これだけ覚えておけばOKです。

なお、規約設定共用部分がある物件の登録免許税は、専有部分の建物価格・土地の敷地権割合価格・規約設定共用部分の建物価格がすべて加算されるため、通常の物件より高くなります。買主への費用説明の漏れはクレームに直結します。事前確認が条件です。

参考:全日本不動産協会・月刊不動産|区分所有建物の売買における注意点(物件調査のノウハウ Vol.50)

宅建業者だけが知っておくべき「敷地権登記の盲点」と対応策

法定共用部分の登記ができないという話から少し視野を広げると、区分所有建物の登記には「敷地権」という別の落とし穴も存在します。これは意外ですね。

昭和60年ごろから全国の法務局で大型マンションから順に「敷地権の登記」が実施されました。敷地権登記がある区分建物では、専有部分に設定した抵当権は原則として土地(敷地権)にも自動的に効力が及ぶ仕組みになっています。

ところが、専有部分の建物登記事項証明書に地役権などの情報が「一切記載されない」のに、敷地権の対象となっている土地の登記事項証明書には地役権設定の登記が行われているケースがあります。これは法務局の担当者自身が「敷地権登記制度のシステム上の欠陥」と認めているほどの問題点です。

このリスクを回避するために、区分所有マンションの取引では建物登記事項証明書だけでなく、必ず土地の登記事項証明書も取得することが実務の鉄則です。具体的には以下の点を確認します。

  • 土地の乙区欄に地役権質権仮登記などが設定されていないか
  • 敷地権の割合と日付が建物登記の表題部と一致しているか
  • 古いマンション(昭和60年以前)では敷地権化されていない共有持分方式になっていないか

古いマンションほどリスクが高い、という認識が必要です。

なお、区分所有法22条で定める「分離処分の禁止」によって、区分所有権と敷地利用権は原則として切り離して処分できません。しかし敷地権登記のない古い物件では土地と建物が別々に処分されているケースも存在します。相続登記を伴う取引では、集会所などが区分所有者名義で共有登記されているか、規約共用部分になっているかの確認が特に重要です。

参考:全日本不動産協会・月刊不動産|Vol.43 権利関係〜不動産登記法。区分建物の登記記録の構成・規約共用部分の登記・敷地権の登記それぞれの考え方を試験対策の視点でわかりやすく解説しています。

https://magazine.zennichi.or.jp/re-notary/10298