床面積の算定方法と国土交通省通達を宅建業務で正しく使う
広告記載の壁芯面積を信じてお客様に説明すると、住宅ローン控除の審査で要件を満たさず、クレームに発展します。
床面積の算定方法の基本:国土交通省通達と建築基準法施行令の関係
床面積の算定方法は、建築基準法施行令第2条第1項第3号に次のように定められています。
> 「建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。」
これが出発点です。つまり、床面積とは「建物を真上から眺めたときに見える範囲」を、壁や柱などの区画の中心線を基準に測った面積、ということになります。
ただし、この条文だけでは実務上の判断が難しいケースが多数あります。そこで重要になるのが国土交通省(旧建設省)が発出している通達です。代表的なものは以下の2本です。
| 通達名 | 発出年月日 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 建設省住指発第215号 | 昭和39年2月24日 | ピロティ・バルコニー・アーケードなど各型式別の算定基準 |
| 建設省住指発第115号 | 昭和61年4月30日 | 吹きさらし廊下・屋外階段・出窓・機械式駐車場など詳細規定 |
これら2本の通達が、現在でも宅建実務の現場で「床面積の算定基準」として使われています。
基本となるのは「屋外部分とみなされる部分は算入しない」という原則です。それは「周囲の相当部分が壁などの風雨を防ぎ得る区画を欠き、かつ屋内的用途に供しない部分」を意味します。シンプルに言えば、「完全に外気にさらされており、かつ生活に使わない空間」は床面積ゼロとなる、ということです。
大切なのはこの「かつ」の部分です。外気に開放されていても屋内的に使われていれば算入されますし、逆に閉鎖的な空間であれば開放感があっても算入される、という双方向の判断が必要になります。原則を掴んでおけば大丈夫です。
参考リンク(国土交通省公式・昭和39年通達)。
参考リンク(国土交通省公式・昭和61年通達)。
床面積の算定:バルコニー・吹きさらし廊下・ポーチの不算入条件
バルコニーやポーチは「床面積ゼロ」と思っている方が多いですが、条件付きです。
バルコニー・ベランダについては、昭和61年通達で「吹きさらしの廊下に準じる」とされています。つまり、外気に有効に開放されている部分の高さが1.1m以上、かつ天井高の1/2以上である廊下については、幅2mまでの部分を床面積に算入しない、というルールが適用されます。
これを図に整理すると次の通りです。
| 部位 | 不算入になる条件 | 算入になるケース |
|---|---|---|
| バルコニー・ベランダ | 吹きさらし状態、開放高1.1m以上かつ天井高の1/2以上、幅2m以内 | 壁で相当部分囲まれている(奥行きが間口の1/2以上) |
| ポーチ(玄関) | 原則不算入。出入り通行専用と認められる場合 | シャッター等の閉鎖的設備がある場合 |
| 吹きさらし片廊下 | 50cm以上の空地に面する吹きさらし部分 | 閉鎖的な場合 |
特に注意が必要なのが、バルコニーの奥行きが間口の1/2以上になる場合です。昭和39年通達では「奥行き(d)が間口(l)の1/2以上になると相当部分が壁等で囲まれているとみなす」と規定されています。インナーバルコニーや半屋外のような深いバルコニーは、床面積に算入されるケースがあるわけです。
また吹きさらし廊下の「2mまでは不算入」というルールも、見落とされやすいポイントです。廊下幅が2mを超えていたら、超えた部分は床面積に算入されます。マンションの共用廊下などを扱う場面では特に意識が必要です。これは覚えておけば大丈夫です。
床面積の算定:出窓・ロフト(小屋裏収納)の不算入条件と宅建業務への影響
出窓とロフトは、不動産広告で「実質的な広さのアピールポイント」として使われやすい部位です。しかし、条件を満たさなければ当然床面積に算入されます。条件を理解せずに説明すれば、後々トラブルになりかねません。
出窓の不算入条件(昭和61年通達)
昭和61年通達では、出窓が床面積に算入されないための条件を以下の3つとしています。
- 🪟 下端の床面からの高さが30cm以上であること
- 🪟 周囲の外壁等から水平距離50cm以上突き出ていないこと
- 🪟 見付け面積の1/2以上が窓であること
3条件すべてを満たした場合に限り、出窓部分は床面積に算入されません。たとえばキッチンカウンター部分に出窓風の構造物があっても、見付け面積の半分以上が窓でなければ算入対象になります。
ロフト(小屋裏収納)の不算入条件
ロフトや小屋裏収納が床面積に算入されないための条件は次の通りです。
- 🏠 天井高が1.4m以下であること(勾配天井の最高部分でも1.4m以内)
- 🏠 床面積が直下階の1/2以下であること
- 🏠 居室として使用しないこと(固定式の窓・採光・換気を居室水準にしない)
1.4mという高さは、成人が立てない高さです。ちょうど小学校低学年の子どもが頭を少しかがめる程度の空間をイメージしてください。この条件を1つでも外れると、ロフト部分が床面積に算入され、容積率に影響します。
宅建業務で物件を扱う際、「ロフト付き」を広告で強調するケースがありますが、建築時の条件を確認せずに「延床面積に含まれない」と説明するのは危険です。売主から提供された図面・確認済証で必ず確認することが原則です。
参考リンク(ロフト・小屋裏収納の床面積算定について)。
小屋裏収納・床下収納の設計基準とは【階段の可否・高さ制限も解説】 – 確認申請ナビ
壁芯面積と内法面積の違い:宅建業者が住宅ローン控除で見落とすリスク
これは宅建業務で最も見落とされやすく、かつクレームに直結しやすいテーマです。
壁芯(へきしん)面積とは、壁の中心線から測った面積のことです。建築基準法上の「床面積」はこの壁芯で算定します。一方、内法(うちのり)面積とは、壁の内側の寸法で測った面積で、マンションの区分所有建物の登記簿面積に使われます。
一般的に、壁芯面積と内法面積の差は5〜8%程度といわれています。たとえば壁芯で表示されている90㎡のマンションであれば、登記簿の内法面積は83〜85㎡程度になるイメージです。
| 用途 | 採用される面積の種類 |
|---|---|
| 分譲マンション広告・販売図面 | 壁芯面積(建築基準法上の床面積) |
| 分譲マンションの登記簿 | 内法面積 |
| 一戸建て・テナントの登記簿 | 壁芯面積 |
| 住宅ローン控除の要件判定 | 登記簿上の面積(マンションは内法面積) |
| 不動産取得税・登録免許税の軽減要件 | 登記簿上の面積 |
ここが重要な落とし穴です。住宅ローン控除の適用要件のひとつに「床面積が50㎡以上(令和8年以降は一部緩和あり)」があります。この判定に使う面積は、マンションであれば登記簿上の内法面積です。
広告で「55㎡」と表記されていても、内法面積では「51㎡」になるケースがあります。見た目では余裕があるように見えても、控除要件の根拠として使える面積はより小さい数字です。このことをお客様に説明せずに「控除が使えます」と断言してしまうと、後で控除の申請が通らなかったときに大きなクレームになる可能性があります。
壁芯と内法のどちらを使うか。これが条件です。
お客様への説明時には、広告面積(壁芯)と登記簿面積(内法)の両方を確認し、「この数字は〇〇面積です」と明示することが大切です。重要事項説明書でも面積の種類を正確に記載する義務があることを忘れないでください。
参考リンク(壁芯・内法の違いと税制への影響)。
壁芯と内法とはなにかわかりやすくまとめた(床面積の計算方法) – IQRAふどうさん
容積率算定と床面積:駐車場・地下室・自転車駐輪場の緩和規定を見逃すな
「床面積の算定方法」と「容積率の算定」は密接につながっています。建築基準法第52条では、延べ面積(各階の床面積合計)をもとに容積率を計算しますが、一定の部分については延べ面積への算入を緩和する規定があります。これを知らないと、本来活用できたはずの面積を無駄にしてしまうことになります。
自動車車庫・駐車場の緩和
自動車車庫等の床面積は、その建築物の各階の床面積合計の1/5を限度として、容積率の算定上の延べ面積から除くことができます。たとえば各階床面積合計が200㎡の建物であれば、最大40㎡までの車庫面積を容積率計算から除外できます。これは使えます。
住宅の地階の緩和
住宅(専ら居住の用に供する部分)の地階の床面積については、住宅の延べ面積の1/3を限度として容積率の算定から除くことができます。たとえば地上2階・地下1階の各階が同面積の住宅なら、地下部分の床面積は全て容積率から除外できる計算になります。
機械式駐車場・機械式駐輪場の特別規定
これは見落とされやすいルールです。吊り上げ式・機械式立体駐車場など、床として認識することが困難な構造の場合は特別な算定方法が適用されます。
- 🚗 機械式駐車場:1台につき15㎡として床面積を算定
- 🚲 機械式駐輪場:1台につき1.2㎡として床面積を算定
通常の床がない構造でも一定面積を計上する必要があります。「床がないから面積ゼロ」は間違いです。
これらの緩和規定を正しく把握することで、容積率ギリギリのプロジェクトで合法的に床面積を最大化できます。反対に、算定を誤って容積率オーバーになると、建築確認が通らなくなります。売買後に発覚した場合は契約不適合責任の問題にも発展するため、宅建業者として押さえておくべき知識です。
参考リンク(容積率緩和・車庫の不算入規定)。
【実務視点】床面積の算定ミスが引き起こす宅建業務のリスクと確認ポイント
ここまで各部位のルールを見てきました。最後に、宅建業者として実際に業務でどこを確認すべきかを整理します。
まず、売買対象物件の床面積には「複数の数字が存在する」ことを前提に動くことが重要です。建築確認申請の面積・登記簿の面積・広告表示の面積、これらが同じとは限りません。特にマンションでは、壁芯と内法の違いによって5〜8%の差が生まれるため、数字の出所を確認することが第一歩です。
次に確認すべきは、床面積に不算入のはずの部分が正しく扱われているかです。たとえばロフトについて、建築時の確認申請では「天井高1.4m以下・直下階の1/2以下」として不算入扱いになっていたとします。ところが後のリフォームで天井が変更されていたり、固定階段が設置されていたりすると、条件から外れる可能性があります。中古物件では特に、現況と登記・確認申請内容が一致しているかを必ず照合してください。
また、お客様からよく出る質問に「バルコニー面積を加えると何㎡ですか?」があります。このとき「バルコニーは床面積に含まれません」と答えるだけでは不十分です。奥行きの条件、幅2mのルール、囲まれ方の程度によっては算入部分が生じることを念頭に置いてください。
実務上の確認ポイントをまとめると以下のようになります。
- ✅ 図面と登記簿面積の照合(壁芯・内法の区別を明示)
- ✅ バルコニーの奥行き・囲われ方の確認(幅2m・奥行きが間口の1/2基準)
- ✅ ロフト・小屋裏の天井高・面積要件の確認(1.4m以下・直下階の1/2以内)
- ✅ 出窓の3条件チェック(床面高30cm以上・突き出し50cm以内・窓1/2以上)
- ✅ 容積率算定対象面積の確認(駐車場1/5緩和・地下住宅1/3緩和の適用有無)
- ✅ 住宅ローン控除等の要件確認には登記簿面積(内法)を使う
床面積の算定を正確に行うことは、重要事項説明の精度に直結します。国土交通省の2本の通達は分量が多くありませんので、印刷して手元に置いておくことをおすすめします。算定で迷ったとき、条件の根拠として確認できるようになると、お客様への説明の説得力が格段に上がります。
参考リンク(建築基準法施行令 第2条 – e-Gov法令検索)。

