特定用途制限地域の一覧と制限内容・調べ方を徹底解説
「用途地域がない土地だから制限もない」と思って重要事項説明書を作ると、業務停止処分のリスクがあります。
特定用途制限地域とは何か:用途地域との違いと法的根拠
特定用途制限地域とは、都市計画法第9条に基づいて指定される「地域地区」の一つです。用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)において、良好な環境の形成または保持のため、地域の特性に応じた合理的な土地利用が行われるよう、特定の建築物等の用途を制限するために定められます。
「用途地域がないエリアにルールを設ける」のが、この制度の本質です。
用途地域は市街化区域内に必ず定められますが、非線引き都市計画区域や準都市計画区域では用途地域の指定は必須ではありません。その結果、制限のない「白地地域」が生まれ、観光地の近くに風俗店が立地したり、静かな農村集落に大型商業施設が建つといった事態が起きかねません。そこで自治体が条例で定めるのが特定用途制限地域です。建築基準法第49条の2にも根拠規定があります。
もう一つ重要なのが、指定できるエリアの限定です。特定用途制限地域が定められるのは以下の2つだけです。
- 非線引き都市計画区域の中で、用途地域が指定されていない区域(いわゆる「白地地域」)
- 準都市計画区域の中で、用途地域が指定されていない区域
市街化調整区域には定めることができません。市街化調整区域はもともと「市街化を抑制する区域」であり、建築行為自体に原則として許可が必要な区域です。建築制限の目的と手段がすでに別の仕組みで担保されているため、特定用途制限地域を重ねて指定する必要性がないのです。これは宅建試験でも頻出の「ひっかけ」ポイントです。制限の対象は条例で自治体ごとに定められます。つまり同じ「特定用途制限地域」という名称でも、内容は市町村ごとに異なります。
参考リンク(都市計画法における特定用途制限地域の法的位置づけ)。
令和5年都市計画現況調査(国土交通省)- 全国の特定用途制限地域の指定状況をデータで確認できます
特定用途制限地域の一覧:制限される建築物の種類と代表的な事例
特定用途制限地域で制限される建築物の種類は、各自治体の条例によって異なります。ただし、全国の指定事例を見ると、制限の対象となりやすい建築物のパターンはある程度共通しています。
よく制限対象となる建築物の例をまとめると、以下のとおりです。
| 制限されやすい建築物の種類 | 代表的な制限理由 |
|---|---|
| パチンコ屋・マージャン屋 | 風紀・環境への悪影響 |
| キャバレー・ダンスホール | 風俗営業による環境悪化 |
| カラオケボックス | 騒音・深夜営業問題 |
| ゴルフ練習場 | 大規模開発による景観破壊 |
| ガソリンスタンド | 危険物取扱いによるリスク |
| 風俗施設(性風俗関連特殊営業) | 公序良俗・地域環境 |
| 危険性のある工場 | 騒音・有害物質排出 |
| 危険物貯蔵・処理施設 | 事故リスク・周辺被害 |
| 大型小売店舗(床面積〇〇㎡超) | 過度な商業集積防止 |
「大型店は通常の用途地域に関係する話だ」と思いがちですが、白地地域でも床面積要件付きで制限できる点は意外です。
全国の主な指定事例を具体的に見てみましょう。学術論文や国土交通省の資料によると、調査時点で全国に284区域(96自治体)の指定実績がありました(日本都市計画学会誌掲載論文、2025年10月)。都市から農村まで幅広い自治体で活用されています。
北海道ニセコ町(準都市計画区域)
ニセコ町は2009年(平成21年)5月18日に特定用途制限地域の都市計画を決定しました。良好な自然環境と田園環境の積極的な保全を目的とし、マージャン屋・パチンコ屋・キャバレー・ダンスホール・カラオケボックス・ガソリンスタンド・ゴルフ練習場・風俗施設・危険性のある工場・危険物貯蔵施設などを制限しています。国際的なリゾート地として外資系施設の進出も多いニセコ町で、景観と住環境を守るために都市計画を活用した好事例です。
佐賀県唐津市(主要幹線・田園住居地域・観光地周辺)
唐津市では、国の特別名勝「虹の松原」周辺において、景観を守るためのより厳しい規制が行われています。主要幹線沿道や田園住居地域でも風俗・パチンコ関連施設の建設が制限されています。観光資源の保護と無秩序な開発の抑制を両立させた事例です。
青森県むつ市
白地地域全域(約14,209ha)に特定用途制限地域を設定(平成28年4月)。99%のエリアで床面積500㎡以上の店舗等の立地を禁止しています。東京ドームの面積が約4.7haですから、むつ市の指定区域はその約3,000倍以上の広大なエリアにわたります。郊外での大型商業施設の無秩序な立地を広域的に抑制するための取り組みです。
山口県光市(工業特化エリア)
工業を中心とするエリアでは、住宅をはじめとする人が集まる建物の建築を制限するゾーンも設定されています。工業と住居の混在を防ぎ、産業集積地の環境維持を図っています。
参考リンク(唐津市・ニセコ町の事例含む特定用途制限地域の具体的な指定内容)。
特定用途制限地域とはなにかわかりやすくまとめた(イクラ不動産)- ニセコ町の制限建築物一覧など実例を詳しく解説
特定用途制限地域と特別用途地区の違い:重説作成での混同リスク
宅建事業従事者にとって最も注意が必要なのが、「特定用途制限地域」と「特別用途地区」の混同です。名前が非常に似ており、重要事項説明書の作成時に誤って記載してしまうケースがあります。
2つの制度の根本的な違いは「用途地域の内か外か」です。
| 項目 | 特定用途制限地域 | 特別用途地区 |
|---|---|---|
| 指定できる場所 | 用途地域がないエリア(非線引き区域・準都市計画区域) | 用途地域があるエリア内 |
| 法的根拠 | 都市計画法第9条第15項・建築基準法第49条の2 | 都市計画法第9条第13項・建築基準法第49条 |
| 制限の方向性 | 特定の用途を制限するのみ | 制限を加重・緩和どちらも可能 |
| 目的 | 白地地域に最低限のルールを設ける | 用途地域のルールをカスタマイズする |
特別用途地区は用途地域内でのルール調整です。たとえば、商業地域内でも「学校の近くだからパチンコ店はNG」という文教地区、「京都や奈良の景観を守るため建物の高さを制限する」という風致地区などが代表例です。特別用途地区では制限の緩和も可能で、本来はホテルが建てられない用途地域でも、特別用途地区の指定によって建築を認めるケースもあります。
一方、特定用途制限地域は緩和はなく「制限するだけ」の制度です。
重説作成で混同が起きやすい場面として特に注意したいのが、都市計画図の読み方です。特別用途地区は用途地域と重なって表示されますが、特定用途制限地域は用途地域のない白地部分に単独で表示されます。都市計画情報の電子地図で確認する際に、どちらの区域の制限を読んでいるか意識することが重要です。
参考リンク(特別用途地区と特定用途制限地域の違い・重説作成での調査方法)。
【重説作成】特別用途地区と特定用途制限地域ってどう違う?調査方法もご紹介!- 不動産管理会社の宅建士による実務的な解説
特定用途制限地域の調べ方:重要事項説明書作成での確認手順
重要事項説明書に特定用途制限地域の制限内容を正確に記載するためには、段階的な確認が必要です。確認を怠ると、宅建業法第47条に基づく告知義務違反となり、業務停止処分(最長1年)や、故意の場合は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されることもあります。これは大きなリスクです。
ステップ①:自治体の都市計画情報で区域を確認する
まず、取引する土地の市区町村名に「特定用途制限地域」を加えてウェブ検索します。多くの自治体はホームページ上で都市計画図や電子地図を公開しており、対象物件の住所が特定用途制限地域の区域内にあるかどうかを調べることができます。
例:「唐津市 特定用途制限地域」「ニセコ町 特定用途制限地域」といった検索で、各市町村の公式ページがヒットします。
ステップ②:条例別表で制限内容を確認する
区域内と確認できたら、次はその自治体が定める条例の別表を取得します。制限の対象となる建築物の種類、床面積の上限、階数の条件などが記載されています。内容は自治体ごとに大きく異なるため、必ず当該市町村の最新条例を参照してください。都市計画課または都市整備部など、用途地域を担当する部署に電話確認するのが確実です。
ステップ③:国土交通省の全国データで補完確認する
国土交通省は毎年「都市計画現況調査」を実施しており、全国の特定用途制限地域の指定状況をまとめたデータを公開しています。どの自治体で指定されているかを俯瞰的に把握したい場合に活用できます。特に地方の物件を初めて扱う際には、このデータで事前に当該市町村の指定有無を確認しておくと、調査漏れを防ぐことができます。
ステップ④:重要事項説明書への記載
全宅連の標準書式では「特別用途地区・特定用途制限地域」の欄が設けられており、具体的な地区名・制限内容を記載する構成になっています。制限がある場合は区域の名称と具体的な制限内容の概要を記入します。「制限あり」だけでなく、建てられない建築物の種類が伝わるよう記載することが重要です。
📌 調査ツールとして、国土数値情報ダウンロードサービス(国土交通省)の「用途地域」データも活用できます。GISソフトと組み合わせることで、白地地域かどうかの広域判断にも役立ちます。
参考リンク(重要事項説明における法令制限の調査方法まとめ)。
重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧(国土交通省)- 都市計画法上の制限の説明義務範囲の公式解説
宅建業務での特定用途制限地域に関する実務的な落とし穴と対策【独自視点】
教科書的な制度の説明だけでは気づきにくい、実務で起こりがちな落とし穴があります。宅建事業従事者として、特に注意すべき3つのポイントを紹介します。
落とし穴①「用途地域がないからフリーと思い込む」問題
白地地域の物件は「用途地域のしばりがないから何でも建てられる」という認識が現場に残っていることがあります。これは危険な誤解です。特定用途制限地域が指定されていれば、条例に違反した建築物は建てられません。
さらに見落としやすいのが、白地地域であっても建蔽率の上限が都市計画法で定められているケースです。白地地域の建蔽率は原則として60%と定められており(都市計画法第33条等)、用途地域と同じ感覚で扱うと数字がずれる場合があります。「用途地域がない=無制限」は間違いが基本です。
落とし穴②「条例の改正に気づかない」問題
特定用途制限地域の制限内容は、自治体が条例で定めています。条例は議会の議決で改正可能です。過去に調査した物件を再取引するとき、以前確認した制限内容がそのまま有効とは限りません。
特に近年は大型小売店規制や特定用途誘導地区の設定など、地域の経済政策と連動した条例改正が増えています。取引ごとに最新の条例を確認することが鉄則です。
落とし穴③「複数制度の重複を見落とす」問題
特定用途制限地域はほかの制度と重なって指定されることがあります。たとえば準都市計画区域内で景観計画区域と重複している場合、建築物の外観・高さの制限も別途かかります。特定用途制限地域の確認だけで調査を終えてしまうと、景観法上の制限の説明が漏れ、重説の記載不足につながります。
都市計画課への問い合わせ時には「その他に土地の利用に関係する規制はありますか」と一言確認する習慣を持つと、制度の重複チェックができます。これは時間もかからず、トラブル防止に効果的です。
宅建士として1件1件の調査を丁寧に積み重ねることが、業務停止処分や損害賠償リスクを回避する最短ルートです。重説作成の漏れが300万円の罰金や業務停止処分に発展しうることを踏まえると、調査の手間は小さな投資と言えます。
参考リンク(重要事項説明の義務違反と罰則内容)。
重要事項説明|違反した場合の責任と罰則(愛知宅建業免許.com)- 業務停止処分・免許取消処分の条件と流れを解説

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