地図証明書・図面証明書の違いと不動産調査の注意点

地図証明書と図面証明書の違いを宅建業務で正しく使い分ける

地積測量図を取得しても、その図面の作成年代によっては境界の根拠にならず、売買後に測量し直すと面積が数十㎡も異なる事態が起きています。

📋 この記事の3ポイント要約
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地図証明書=公図の写し

土地の位置・隣接関係を示す「全体像の地図」。法14条地図と地図に準ずる図面(公図)の2種類があり、精度に大きな差がある。

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図面証明書=個別土地・建物の詳細図

地積測量図・建物図面・各階平面図など特定の不動産の寸法・面積・形状を示す。すべての土地に存在するわけではない。

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調査実務での落とし穴

昭和52年9月以前作成の地積測量図は信頼性が低く、公図と現地が一致しないケースが多数。取得・確認方法を誤ると重説ミスにつながる。

地図証明書とは何か:公図・14条地図の基本と宅建業務での位置づけ

 

法務局で「地図証明書」として交付されるのは、法務局が備え付けている地図または地図に準ずる図面、すなわちいわゆる「公図」の認証付き写しです。土地の全体像、つまり隣接する筆の位置関係や地番、道路・水路の配置などを確認するための書類で、不動産調査の最初のステップとして必ず取得するものです。

実は、ひとくちに「公図(地図証明書)」といっても内部には2種類が存在します。

種類 根拠 精度
法第14条第1項地図 国土調査・法務局地図作成作業による 非常に高い(座標値で管理)
地図に準ずる図面 明治時代の地租改正時の字限図が元 低い(形状・方位・縮尺が不正確な場合あり)

14条地図は境界点が世界測地系の公共座標で記録されており、現地への復元が可能です。一方、「地図に準ずる図面」は全国の多くの地域でまだ使われていて、明治時代に徴税目的で作成されたものが原型です。精度が甘く、現地と図面の形状がかみ合わないことも珍しくありません。

これが基本です。

取得した地図証明書のどちらにあたるかは、証明書上の「分類」欄を確認することで判別できます。「地図(法第14条第1項)」と表記されていれば高精度な14条地図、「地図に準ずる図面」と表記されていれば精度の低い旧字限図系の公図です。不動産調査の際、まずこの分類を確かめるのが宅建業務のスタートラインと言えます。

公図と現地の状況が乖離しているケースは、特に「地図に準ずる図面」では頻発します。国土交通省の「地籍調査Webサイト」によれば、都市部を中心に現地と公図のずれが問題となっており、公図だけを根拠にした境界判断は極めてリスクが高いと明記されています。

参考:公図と現地のずれに関する国土交通省の公式解説

公図と現況のずれQ&A|国土交通省 地籍調査Webサイト

図面証明書とは何か:地積測量図・建物図面など種類ごとの特徴

「図面証明書」とは、特定の1筆の土地や1棟の建物に関する詳細な図面の写しの総称です。地図証明書が「エリア全体の地図」であるのに対し、図面証明書は「個別不動産の設計図」と理解すると分かりやすいでしょう。図面証明書には以下の種類があります。

  • 建物図面・各階平面図:建物が敷地のどの位置に建っているか(建物図面)と、各階の形状・寸法・床面積(各階平面図)が1枚にまとめられた書類。新築登記・増築登記の際に提出される。
  • 土地所在図:1筆の土地の所在を示す図面で、地積測量図とセットで提出されることが多い。
  • 地役権図面:他人の土地を通行する権利(地役権)が設定された場合に作成される。

これは使えそうです。

ただし、図面証明書で最も重要な地積測量図は「すべての土地に存在するわけではない」という点に注意が必要です。地積測量図は登記申請の際に作成されるため、分筆・地積更正・新規登記などの登記がなされていない土地には存在しません。昭和35年4月以前に登記された土地や、それ以降でも昭和40年代前後まではそもそも地積測量図が添付されていないケースも多く見られます。

法務局で図面証明書を請求して「該当なし」と言われた場合、その土地は境界の詳細な図面が法務局に存在しないということになります。こうした場合は確定測量を改めて実施するか、隣地立会いによる境界確認を経た上で取引を進める必要があります。つまり図面証明書の「ない」という事実自体が重要な調査情報です。

参考:法務局が保管している各種図面の種類と違いについて

法務局に備えられている各種の図面について|橋本司法書士事務所

地図証明書・図面証明書の手数料と取得方法:令和7年4月改定版

地図証明書と図面証明書は、法務局の窓口・郵送・オンラインのいずれかで誰でも取得できます。令和7年4月1日に手数料が改定されたため、最新の金額を確認しておきましょう。

🏛️ 法務局窓口(書面請求)での手数料

証明書の種類 手数料(令和7年4月1日以降)
登記事項証明書(謄抄本) 600円/1通
地図等情報(地図証明書・図面証明書) 500円/1筆(1棟)

💻 オンライン請求での手数料

受取方法 手数料
オンライン請求・郵送受取 470円
オンライン請求・窓口受取 440円

オンライン請求は「登記・供託オンライン申請システム(かんたん証明書請求)」から申請できます。手数料はインターネットバンキングで電子納付するため、収入印紙が不要で、1通あたり最大60円の節約になります。複数物件を一括請求する機会の多い宅建業者にとってはコスト管理上も無視できない差です。

なお、「内容を事前確認したいだけ」という段階では、「登記情報提供サービス」が便利です。PDFで即時閲覧でき、図面は1件あたり361円(令和7年4月改定後の登録利用料。個人は閲覧のみで300円等、プランによって異なる)と安価ですが、このPDFには法的な証明力がありません。金融機関への提出・登記申請など公的手続きに使用する場合は必ず法務局から証明書を取得してください。

手数料は改定されることがあるため、最新情報は法務省公式サイトで確認するのが確実です。

参考:法務省による最新の登記手数料一覧

登記手数料について|法務省

地積測量図の作成年代で信頼性が大きく異なる:不動産調査での注意点

宅建業者が見落としやすいのが、図面証明書として取得した地積測量図の「作成年代による信頼性の差」です。法務局は請求があれば信頼性の高いものも低いものも区別せず交付します。見た目が整っていても、内容の精度は作成時期によって天と地ほど違います。

📅 地積測量図の信頼性・年代別早見表

作成時期 特徴と信頼性 宅建業務でのリスク
昭和35年〜昭和52年9月 境界標の表記義務なし、机上分筆が横行、精度が極めて低い ほぼ参考にならない。確定測量を要検討
昭和52年10月〜平成5年9月 境界標の表記が追加、精度向上。ただし現地特定は困難 隣接関係の把握程度に留める
平成5年10月〜平成17年3月 境界標の記載義務化・筆界確認書・引照点表示が義務化 信頼度中程度。引照点からの復元が可能
平成17年3月以降 世界測地系公共座標を使用。現地特定・復元性が高い 信頼度が高く、境界根拠として活用可能

特に問題になるのが「地積測量図・暗黒時代」と呼ばれる昭和41年〜昭和52年9月の時期です。この時期は高度成長期の開発ブームで机上分筆が横行しており、現地を実測せずに図面を作成したケースが多数あります。境界標もなく、測量士の立会いも不要だったため、今になって面積が大幅に食い違うというトラブルが相続・売買の現場で頻発しています。

厳しいところですね。

土地家屋調査士の現場では、登記申請日が昭和52年9月30日以前かどうかを確認するのが実務の定石です。この日付より前の地積測量図は「境界の根拠にならない可能性が高い」と判断して調査を進めるのが安全です。宅建業者としても、重要事項説明書を作成する際に地積測量図の作成年代を確認し、精度に疑義がある場合はその旨を明示するか、確定測量の実施を売主に求めることがトラブル予防の基本となります。

参考:地積測量図の信頼性と年代別変遷について

地積測量図の変遷|三井住友トラスト不動産

地図証明書・図面証明書をオンラインで請求する手順と実務上の使い分け

宅建業務では日常的に複数の物件調査を並行するため、オンライン請求を活用することが時間・コスト両面で効率的です。法務省の「登記・供託オンライン申請システム」(通称「かんたん証明書請求」)を使えば、自宅やオフィスから24時間請求が可能です。

オンライン請求の基本手順

  1. 法務省「かんたん証明書請求」サイトでユーザー登録(無料)
  2. 申請書の種類として「地図・図面証明書交付請求書」を選択
  3. 「地図証明書」か「図面証明書」かを選び、地番・家屋番号を入力
  4. 受取方法(郵送 or 窓口受取)を選択し、手数料を電子納付
  5. 指定方法で受取

ここで注意すべき点があります。地図証明書と図面証明書は法務省のシステム上では「別の請求書」として扱われます。公図(地図証明書)と地積測量図(図面証明書)を同時に取得したい場合、それぞれ別々に請求手続きが必要です。1つの申請でまとめて取れると思い込んでいると、片方の書類が不足したまま調査を進めてしまうことになりかねません。

🔍 業務での使い分けの目安

  • まず取得すべきもの → 地図証明書(公図):対象地の全体像、隣接地番、道路・水路の有無を把握するため
  • 次に確認すべきもの → 図面証明書(地積測量図・建物図面):面積・形状・建物配置など詳細を確認するため
  • 図面証明書が「該当なし」の場合 → 確定測量の実施または現況測量の検討へ

調査の流れとしては「地図証明書で土地の全体像をつかみ、図面証明書で詳細を確認する」が基本です。

なお、地図証明書を請求する際に注意したいのが「地番」と「住居表示」の違いです。住居表示が実施されている地域では、日常使いの住所(丁目・番・号)と登記上の地番が異なります。法務局への請求には必ず地番が必要で、住居表示で請求しても書類を発行してもらえません。地番が不明な場合は、固定資産税納税通知書・登記識別情報・法務局備え付けのブルーマップ・登記情報提供サービスの地番検索機能などで事前に確認することが必要です。

参考:法務局による地図・図面証明書のオンライン請求方法

登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方|法務局

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