NOI利回り計算をFPが教える不動産投資の本質

NOI利回りの計算をFPが解説する不動産投資の基本

表面利回り6%の物件を買ったのに、実際の手取りは4%台だったという話はめずらしくありません。

この記事のポイント3つ
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NOI利回りとは何か

表面利回りでは見えない「実質的な収益力」を測る指標。運営費用を差し引いた純収益で計算し、物件の本当の実力がわかります。

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FPが使う計算式

NOI利回り=(年間賃料収入−運営費用)÷物件価格×100。運営費用の範囲をどこまで含めるかで数値が大きく変わります。

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表面利回りとの差に注意

同じ物件でも、表面利回りとNOI利回りは1〜2%以上の差が出ることがあります。この差を見落とすと、収益計画が大きく崩れます。


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NOI利回りの意味と計算式をFPの視点で整理する

NOI(Net Operating Income)とは、不動産から得られる純営業収益のことです。日本語では「純収益」や「純営業利益」とも呼ばれ、FP(ファイナンシャルプランナー)の試験や実務でも頻繁に登場する重要な指標です。
この数値を物件価格で割ったものが「NOI利回り」であり、物件の収益性を評価するときの基本的な物差しとして使われます。計算式はシンプルです。

項目 内容
年間賃料収入(満室想定) 空室ゼロと仮定した年間の総賃料
− 運営費用(OPEX) 管理費・修繕積立金固定資産税・保険料など
= NOI(純営業収益) 実質的な年間収益
÷ 物件取得価格 購入価格(諸費用を含める場合もある)
× 100 利回り(%)として表示

具体的な数字で確認してみましょう。購入価格3,000万円のマンション区分で、年間賃料収入が180万円、管理費・修繕積立金・固定資産税などの運営費用合計が36万円だとします。NOIは180万円−36万円=144万円となり、NOI利回りは144万円÷3,000万円×100=4.8%です。
一方で同じ物件の表面利回りは180万円÷3,000万円×100=6.0%です。つまり数字の印象は大きく変わります。
同じ物件なのに1.2ポイントもの差が生じているということですね。不動産会社の広告に記載されている利回りの多くは「表面利回り」であるため、NOI利回りを自分で計算して確認する習慣がとても重要になります。FPの観点では、この差を把握せずに物件購入を進めることは、収益計画の大きな誤算につながると判断します。
FP2級・FP3級の試験でも、NOI利回りと単純利回り(表面利回り)の違いは頻出テーマです。単純利回りは「年間収入 ÷ 総投資額」で計算するのに対し、NOI利回りは「(年間収入 − 諸経費)÷ 総投資額」と定義されます。この違いをしっかり押さえておけばOKです。
日本FP協会のコラムでも、NOI利回りについて「運営管理費に厳密な定義がないこともあり、NOI利回りどおりの純収益が入ってくるわけではないことに注意が必要」と指摘されています。計算式だけ暗記するのではなく、「何が含まれているか」を確認する姿勢が大切です。
日本FP協会公式コラム(不動産投資における利回りの意味)— NOI利回りと表面利回りの基本的な違いをFP資格者が解説した信頼性の高い参考情報です。
https://www.jafp.or.jp/know/info/column/20220513.shtml

NOI利回り計算で使う運営費用の内訳と注意点

NOI利回りの精度は、運営費用(OPEX)をどこまで正確に洗い出せるかで決まります。見落としがちな費用項目は意外と多く、甘く見積もると利回りが過大評価されます。これが原則です。
主な運営費用の内訳は以下のとおりです。

  • 🏢 管理委託費:賃料収入の5〜10%程度が相場。管理会社に委託する場合、毎月発生する固定コストとして必ず計上します。
  • 🔧 修繕費・修繕積立金区分マンションでは管理組合への積立金が必須。一棟所有では大規模修繕コストを年割り換算して計上するのが正確です。
  • 🏛 固定資産税・都市計画税:年1回の納付ですが、月割りで運営費用に計上する必要があります。
  • 🔒 火災保険・地震保険:木造建物は鉄筋コンクリート造の1.5〜2倍程度になることもあります。
  • 💡 共用部の電気代・清掃費:一棟アパートや小規模マンションでは見落としやすい費用です。
  • 📋 確定申告・税理士費用:年間5〜10万円程度かかる場合があります。

FPが試算に使う運営費用の目安は、年間賃料収入の15〜25%です。地方の築古物件では30%を超えることもあります。
注意が必要なのは、ローン返済(元本・利息)はNOI利回りの計算には含めないという点です。NOIはあくまで「物件そのものの収益力」を測るものであり、資金調達の影響を除いた数値です。ローンを含めた手残りを計算したい場合は、別途「キャッシュオンキャッシュ利回り(CCR)」などの指標を使います。
減価償却費もNOIの計算には含みません。減価償却費は税務上の費用であり、実際のキャッシュアウトではないためです。「営業利益+減価償却費=NOI」と覚えておくと、会計知識と混同せずに済みます。
FP3級の過去問(2023年1月 第55問)では、年間収入合計1,050万円・年間費用合計300万円・投資総額1億2,000万円という条件でNOI利回りを求める問題が出題されました。計算は(1,050万円−300万円)÷1億2,000万円×100=6.25%となります。費用を引き忘れて年間収入そのままで計算する誤りが最も多いパターンです。費用控除の意識が条件です。

FPが実務で使うNOI利回りの目安と判断基準

NOI利回りをどう判断するかは、立地・物件種別・築年数によって大きく変わります。「高ければ良い」と単純に考えると判断を誤ります。

エリア・物件種別 NOI利回りの目安 備考
都心区分マンション(築10年以内) 3.0〜4.5% 資産性重視・売却益狙い
都心区分マンション(築20〜30年) 4.5〜6.0% 修繕リスクに注意
土地・建物込みの一棟アパート(新築〜築10年) 6.0〜8.0% 空室リスクが収益を左右
地方一棟アパート(築20年超) 8.0〜12%以上 修繕・空室で実質大幅低下も
すでに土地を所有している場合 7〜8% 建築費のみが投資額となるため高めになりやすい

一般的に、土地・建物への投資ではNOI利回り4〜6%程度が理想とされています。これは注目すべき数字です。
重要なのは、NOI利回りが高い物件が必ずしも「良い投資」ではないという点です。地方の築古アパートで表面利回り12%・NOI利回り8%という数字は魅力的に見えます。しかし空室率が30%に達すれば実際のNOIは大幅に下がり、大規模修繕が発生した年はキャッシュフローがマイナスになることも珍しくありません。
FPが顧客のライフプランにおける不動産投資を評価するときは、NOI利回りに加えて「空室率の想定」「修繕費の積み上げ」「出口(売却)時の価格」を必ずセットで検討します。NOI利回りはあくまで出発点の指標ということですね。
なお、空室率については国土交通省の「住宅・土地統計調査」(2018年)によると、全国の賃貸住宅における空き家率は18.5%という数字が出ています。NOI利回りの計算で空室率を設定するときは、一般的に20%で計算されることが多いです。この数値をゼロで計算すると、実態より楽観的な見通しになってしまいます。
また、金融機関の融資審査では「NOI利回りが借入金利を十分に上回っているか」を確認します。NOI利回りが借入金利の1.3倍以上であることが融資承認の目安とされることがあります。NOI利回りを正確に計算できていないと、融資審査の通過・落下を左右する判断材料が狂ってしまいます。

表面利回りとNOI利回りの差をFP試験の視点で整理する

FP2級・FP3級の試験では、表面利回り(単純利回り)とNOI利回り(純利回り)の違いが繰り返し出題されます。混同しやすいポイントを整理しておきましょう。

  • 📌 表面利回り(単純利回り)=年間の総収入 ÷ 総投資額。費用を一切引かない「粗利ベース」の利回り。計算が簡単なため広告に多用されます。
  • 📌 NOI利回り(純利回り・実質利回り)=(年間の総収入 − 諸経費)÷ 総投資額。費用を引いた「純収益ベース」の利回り。実際の収益力を正確に反映します。

FP2級の過去問(2022年5月 学科)では「NOI利回りは年間の総収入を総投資額で除して算出される利回りである」という選択肢が不適切として出題されています。「総収入」ではなく「純収益(総収入−諸経費)」が正しい定義です。「総収入」と「純収益」の違いが条件です。
具体的な数字で差を確認します。年間賃料240万円・運営費用48万円・物件価格4,000万円の物件の場合、表面利回りは240万円÷4,000万円×100=6.0%、NOI利回りは(240万円−48万円)÷4,000万円×100=4.8%となります。差は1.2ポイントです。
この差が大きい物件ほど、コスト管理が収益性に与える影響が強いと読み取れます。管理費の見直しや保険の適正化によって運営費用を下げられれば、NOI利回りを改善できます。改善の余地を探す目線が重要ですね。
試験対策として押さえておきたいのは、次の2点です。まずNOI利回りの分子は「年間収入−年間諸費用」です。そして分母は「総投資額(物件価格)」です。この計算式をそのまま過去問に当てはめる練習を繰り返すことで、計算問題の得点率は安定します。
FP2級・FP3級の過去問解説サイト(foraz.jp)— NOI利回りの計算問題の解説が充実しており、試験対策として確認できます。
https://foraz.jp/learn/fp3-202301-gakka-q55/

NOI利回りをFP実務で応用するキャップレートとの比較

NOI利回りの発展的な活用法として、欧米の不動産投資家が標準的に使う「キャップレート(Cap Rate)」との関係を知っておくと、物件評価の解像度が大きく上がります。この視点は一般的なNOI利回り解説にはほとんど登場しません。意外ですね。
キャップレートとNOI利回りは計算式が同じで「NOI ÷ 物件価格 × 100」です。では何が違うかというと、使い方の方向性が異なります。NOI利回りは「この物件の収益率は何%か」と求める方向で使うのに対し、キャップレートは「この地域・物件種別の市場標準NOI利回りは何%か」という市場データとして使い、物件の適正価格を逆算するために使います。

  • 🔢 物件の適正価格を逆算する式: 適正価格 = NOI ÷ キャップレート
  • 📍 例: NOIが年間150万円、市場キャップレートが5.0%の場合 → 適正価格 = 150万円 ÷ 0.05 = 3,000万円
  • ⚖️ 割高判定の例: 同じNOI150万円の物件が3,500万円で売り出されていれば、キャップレートは約4.3%となり、市場平均5.0%を下回る=割高と判断できます。

この逆算を使うと、売り出し価格が適正かどうかを瞬時に判断できます。これは使えそうです。
日本では「利回り」という言葉が表面利回りと混用されるため、この考え方が普及しにくい背景があります。しかし外資系不動産ファンドや機関投資家との取引では、キャップレートは共通言語として使われています。
FP2級・1級の試験でもDCF法やNPV法・IRR法など、NOI利回りと関連する不動産投資判断の指標が出題されます。DCF法は「不動産が保有期間中に生み出す純収益と復帰価格を現在価値に割り引いて収益価格を求める手法」であり、NOI利回りはその前提となる純収益(NOI)の計算に使われます。つながりを意識しておくと理解が深まります。
物件の取引価格の妥当性を確認する際は、国土交通省が公開している「不動産取引価格情報検索」が役立ちます。エリア別・物件種別の実際の取引価格を無料で調べられるため、キャップレートの逆算に使う「物件価格の相場」を確認する際に活用できます。
国土交通省 不動産取引価格情報検索 — エリア別・物件種別の実際の不動産取引価格を検索・確認できる公的データベース。NOI計算の際の物件価格の妥当性検証に役立ちます。
https://www.land.mlit.go.jp/webland/