PHC杭の施工方法:種類・手順・管理のポイント
「プレボーリング中は孔壁が崩れなければ掘削液は不要」と思っていると、杭が地中で破断するリスクがあります。
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PHC杭の施工方法の概要:プレボーリング・中掘り・打撃工法とは
PHC杭(Pretensioned Spun High Strength Concrete Piles)は、設計基準強度80N/㎟以上の高強度コンクリートを遠心締固めにより製造したコンクリート杭です。有効プレストレス量によってA種(4N/㎟)・B種(8N/㎟)・C種(10N/㎟)の3種類に分けられ、外径は300mmから1200mmまで対応します。
PHC杭の施工方法は、大きく「打込み工法」と「埋込み工法」の2系統に分類されます。現在の国内工事では、騒音・振動の問題から埋込み工法が主流となっています。埋込み工法の中でも特に多く採用されているのが、プレボーリング工法と中掘り工法です。
– 打撃工法(打込み工法):油圧ハンマーで杭を支持層まで直接打ち込む最もシンプルな工法。支持力の確認がリバウンド量で行えるが、騒音・振動が大きく市街地では採用しにくい。
– プレボーリング工法(埋込み工法):あらかじめアースオーガで掘削し、根固め液・杭周固定液を注入した孔に杭を沈設する工法。騒音・振動を大幅に抑えられる。
– 中掘り工法(埋込み工法):杭の中空部にスパイラルオーガを挿入し、杭と一緒に掘り進みながら沈設する。掘削と沈設を同時に行うため工期を短縮しやすい。
– プレボーリング併用打撃工法:支持層手前までプレボーリングを行い、その後に油圧ハンマーで打撃する。打撃工法と埋込み工法のメリットを組み合わせた工法。
これが基本の整理です。実際の工事では、地盤状況・現場環境・設計条件を総合的に判断して工法を選定します。
参考:PHC杭の種類と特長についての基本情報(一般社団法人コンクリートパイル・ポール協会 COPITA)
https://www.c-pile.or.jp/phc
PHC杭のプレボーリング工法:施工手順と根固め液の管理方法
プレボーリング工法は、現在のPHC杭施工において最も広く採用されている方法です。掘削ビット(オーガ)とロッドで地盤を先行掘削し、支持層付近で根固め液を注入・攪拌したのち、杭を建込んで沈設します。施工の流れを具体的に確認しましょう。
施工手順(標準的な流れ)
| ステップ | 内容 |
|—|—|
| ① 杭芯セット | 杭打機を所定の杭心位置に据え付け、鉛直度を確認 |
| ② 掘削 | 掘削液を吐出しながらオーガで所定深度まで掘削 |
| ③ 根固め液注入 | 支持層付近でオーガを正転しながら根固め液を注入・攪拌 |
| ④ 杭周固定液注入 | オーガを引き上げながら杭周固定液を注入 |
| ⑤ 杭の建込み | 工場製作のPHC杭をクレーンで建込む |
| ⑥ 沈設・定着 | 自沈または回転圧入により所定深度まで沈設して完了 |
掘削時の注意点として見落とされやすいのが「孔内水位」の問題です。孔壁が崩壊しない状況でも、孔内水位を低下させると杭先端地盤や杭周辺地盤を緩める原因になります。これが原因で後から支持力不足が発生するケースがあります。孔内水位の低下は絶対に避けることが原則です。
根固め液は支持力発現の要となります。根固め液に使うセメントミルクの水セメント比はW/C=60%程度とし、材齢28日における圧縮強度はσ₂₈≧20N/㎜²を確保する必要があります。この数値を下回ると、設計で想定している先端支持力が得られません。
杭周固定液(ソイルセメント)の強度はσ₂₈≧1.5N/㎜²が目安です。注入量・注入速度に注意しながら、杭周面に確実にソイルセメント柱が形成されるよう管理することが重要です。
参考:プレボーリング工法の施工留意点を詳しく解説(土木施工管理技士ブログ「ちゃんさとブログ」)
https://chansato.com/doboku/preboring-method/
PHC杭の中掘り工法と打撃工法:施工方法の選び方と特徴比較
プレボーリング工法とよく比較される中掘り工法は、杭の中空部にスパイラルオーガを挿入したまま掘り進む点が最大の違いです。先端開放型の杭を使い、掘削と沈設を同時に進行させます。
中掘り工法の先端処理方法は大きく2つあります。一つは「中掘り最終打撃工法」で、所定深度まで杭を沈設した後に油圧ハンマーで最終打撃を行って支持力を発揮させます。もう一つは「中掘り拡大根固め工法」で、拡大ビットを使って支持層付近を拡大掘削し、根固め球根を築造します。
工法ごとの特徴を整理します。
| 工法 | 騒音・振動 | 支持力確認 | 工期 | 適用地盤 |
|—|—|—|—|—|
| 打撃工法 | 大きい | リバウンドで確認 | 短い | 幅広い地盤 |
| プレボーリング工法 | 小さい | 積分電流値・注入量 | やや長い | 軟弱地盤〜砂礫層 |
| 中掘り工法 | 中程度 | 積分電流値・打止め管理 | 比較的短い | 砂質〜礫質地盤 |
打撃工法は支持力確認がリバウンド量(K値)と貫入量(S値)で明確にできるという強みがあります。一方で市街地では騒音・振動が問題になりやすいため、使用頻度は年々減少しています。
工法選定で重要なポイントは3つあります。第一に周辺環境(騒音・振動規制)、第二に地盤条件(N値・土質・支持層深度)、第三に設計で要求される支持力の大きさです。特に支持層が深い場合(例:GL-25m以深)や、砂礫層が不均一な場合は、工法によって施工リスクが大きく変わります。地盤調査結果を入念に分析してから選定することが条件です。
PHC杭の施工管理における根固め・支持層確認と品質チェックのポイント
施工管理の中で最も重大なミスにつながりやすいのが、支持層の確認不足と根固め部の品質不良です。国土交通省が策定した「既製コンクリート杭施工管理指針」でも、支持層到達の確認と根固め液管理を施工管理の中核として位置づけています。
支持層の確認方法として埋込み工法では主に「積分電流値管理」が使われます。オーガモータの駆動電流値を積算し、掘削抵抗の変化をグラフで追うことで支持層到達を判断します。ただし、支持層と直上の土層の土質変化が小さい地盤では見誤るリスクがあります。複数の管理手法を組み合わせることが望ましいです。
根固め部の品質確認で見落とされやすいポイントを整理します。
– 💡 根固め液の圧縮強度管理:注入した根固め液はプラントからサンプリングして材齢28日の圧縮強度試験を実施する。σ₂₈≧20N/㎜²を下回った場合は再施工の検討が必要。
– 💡 根固め部の寸法確認:所定の根固め径・長さが確保されているか、施工記録(注入量・掘削径)で管理する。
– 💡 杭先端の支持層根入れ長:支持層への根入れ長が不足すると先端支持力が激減する。設計値(通常1D以上、Dは杭径)を必ず確保すること。
さらに見落としやすい品質リスクとして、「根固め前の杭沈設」があります。根固め部が硬化する前に杭を沈設してしまうと、球根部が乱されて支持力が低下します。根固め液注入後は、適切な養生時間を確保した上で杭を沈設する工程管理が必要です。
参考:施工現場での失敗事例を詳しく解説(建設情報共有サービス「ConCom」)
https://concom.jp/contents/countermeasure/vol015/
PHC杭の継手・杭頭処理と施工時のトラブル防止策
PHC杭は1本の長さが標準で4m〜15m(1m単位)のため、深い支持層に届かせるには複数の杭を継ぎ足す「継手」の作業が必要です。継手の不具合は杭全体の耐力を著しく低下させるため、施工管理上の重要ポイントです。
継手の種類は主に2種類あります。溶接継手は従来からの標準工法で、上下杭の端板を現場で溶接接合します。継手部のさび除去・乾燥・軸線合わせを確認してから溶接を行うことが基本です。近年は無溶接継手(機械式継手)の採用も増えています。「ペアリングジョイント」に代表される無溶接継手は、内リングと外リングによる嵌合方式で接合するため、現場溶接作業が不要になり工期短縮と品質の均一化が図れます。
杭頭処理は、建物との接合部(フーチング)に杭を正しく接続するための重要な工程です。杭頭レベルの確認後、余分な杭頭部をはつり取り、鉄筋と接合します。杭頭部のコンクリートには施工時に不純物が混入しやすく、強度が低い場合があります。はつり深さが不足すると強度不足の部分が残るリスクがあるため、確実なはつり管理が必要です。
施工上のトラブルで特に注意が必要なのが「杭の高止まり・低止まり」と「杭体の破断」です。高止まりとは杭が所定深度まで達しない状態、低止まりとは所定深度を超えて沈み込む状態です。両方とも支持力不足の原因になります。
実際の事故事例では、φ400mm・L=24mのPHC杭施工において、回転沈設時にオーガ駆動装置の電流値が最大400アンペア(トルク換算で6.5t・m)に達し、許容トルク(3.21t・m)の約2倍のトルクが作用して杭がねじり破壊した事例が報告されています。これは機械の出力(55kW)が杭仕様に対して過大だったことが主な原因でした。
このようなトラブルを防ぐために、回転沈設工での施工管理トルクは杭体の許容トルクの70〜80%以内に設定することが推奨されています。オーガ駆動装置の電流値とトルクの関係を事前に図表化し、現場オペレーターと管理値を共有しておくことが重要です。
参考:杭基礎施工上のトラブル事例と対処法(建設情報共有サービス「ConCom」)
https://concom.jp/contents/countermeasure/vol037/
PHC杭のA種・B種・C種の選定基準と現場で活かす独自視点
PHC杭のA種・B種・C種の違いは、有効プレストレス量の差にあります。A種が4N/㎟、B種が8N/㎟、C種が10N/㎟で、プレストレスが高いほど引張応力に対する抵抗力が増します。これが基本です。
しかし設計者や施工管理者の中には「C種が一番強いから全部C種にすれば良い」と思いがちです。実はそうとも限らない場面があります。
プレストレスが高いC種は、施工時の曲げ・引張に強い反面、靭性(じんせい)が低くなる傾向があります。地震時の水平力に対しては、B種やPRC杭(PC鋼線と普通鉄筋を併用した杭)のほうが有利な場合もあります。設計条件(軸力・水平力・曲げモーメント)と地盤条件を組み合わせて選定することが重要です。
また「JIS強化杭」と呼ばれるせん断補強杭も存在します。道路橋示方書の規定によるらせん筋量を多くした杭で、せん断耐力と変形性能を強化したものです。液状化の恐れがある地盤や橋梁基礎など、強い水平力が想定される場合に選定を検討することが推奨されます。
杭種選定をより実践的にするために押さえておきたいポイントは次の通りです。
– 🔑 軸力主体の建物(一般建築・倉庫など):A種で対応できるケースが多い
– 🔑 軸力と曲げが作用する橋梁・港湾構造物:B種・C種またはJIS強化杭を検討
– 🔑 液状化地盤・免震建物・重要構造物:PRC杭やJIS強化杭を積極的に検討
– 🔑 支持層が深く杭が長くなる現場(例:L=30m超):継手数が増えるため継手工法の選定も同時に検討
杭種の選定ミスは工事全体のコストや安全性に直結します。設計図書の杭種指定を現場任せにせず、地盤調査データと照らし合わせて施工計画書に落とし込む習慣が大切です。
参考:既製コンクリート杭の種類と設計・施工に関する解説(沖縄パイルホールディングス)
https://www.oki-phk.com/pdf/pile.pdf