フラット35S基準が厳しいと感じるのは損する考え方
フラット35Sの技術基準をクリアしないと、最大120万円以上の総返済削減を取り逃がします。
<% index %>
フラット35Sとフラット35の基準の違いを正しく理解する
「フラット35S」という名前を聞いて、難しそう・基準が厳しすぎると感じる方は少なくありません。しかし、両者の関係を正しく整理すると、その印象は大きく変わります。
フラット35は、住宅金融支援機構と全国300以上の民間金融機関が提携して提供する、最長35年・全期間固定金利の住宅ローンです。申込者の条件(申込時年齢が満70歳未満、年収400万円未満なら返済比率30%以下、400万円以上なら35%以下など)に加えて、住宅の技術基準も審査されます。一戸建てであれば床面積70㎡以上、マンションなら30㎡以上といった最低基準を満たすことが前提です。
フラット35Sはそこからワンステップ上の制度です。つまり「フラット35の利用条件をクリアしたうえで、省エネ性・耐震性・バリアフリー性・耐久性という4分野のいずれか1つ以上の高い技術基準も満たした住宅を取得する場合に、借入金利を一定期間引き下げてもらえる制度」です。基準が二重になっているわけではなく、上位互換の概念で捉えると理解しやすいです。
2025年4月には新築住宅への省エネ適合基準が義務化されました。これにより、従来「標準的な省エネ住宅」と呼ばれていたレベルが最低ラインに引き下げられています。つまり現在のフラット35Sの技術基準は、近い将来の「当たり前の基準」に近づいているということです。基準が厳しいのではなく、住宅の水準自体が底上げされているという認識が重要です。
参考:フラット35公式・技術基準のご案内(住宅金融支援機構)
フラット35 技術基準のご案内(PDF)|住宅金融支援機構
フラット35Sの金利引き下げ基準と3つのプランの内容
フラット35Sの金利引き下げには3つのメニューがあり、それぞれ求められる住宅の基準が異なります。大切なのは、どのプランも「いずれか1つの基準を満たせばよい」という点です。全項目をクリアしなければ使えないと誤解している方が多いですが、実際は選択式です。
まずZEHプランは、当初5年間で年▲0.75%の引き下げが受けられます。断熱性能(外皮平均熱貫流率)・一次エネルギー消費量20%以上削減・再生可能エネルギーによる100%以上の消費補填、という3つが条件です。さらにZEH+長期優良住宅の認定を組み合わせた場合は当初5年間で年▲1.0%まで引き下げが拡大します。3000万円を35年・元利均等・ボーナス払いなしで借りた場合、ZEHプランでは通常フラット35に比べて毎月1万円以上の返済削減、総返済額で約120万円の削減になります。
次に金利Aプランは、当初5年間で年▲0.5%の引き下げです。耐震等級3・免震建築物・高齢者等配慮対策等級4以上・長期優良住宅、のいずれか1つが条件です。長期優良住宅として認定を受けた住宅はこちらに該当します。
最もハードルが低い金利Bプランは、当初5年間で年▲0.25%の引き下げです。耐震等級2以上、高齢者等配慮対策等級3以上、【フラット35】Sと通常【フラット35】を徹底比較|アエラホーム
フラット35Sの技術基準は長期優良住宅やZEHで自然にクリアできる
「技術基準をわざわざクリアするのは大変そう」という声がありますが、実はそうとも言い切れません。これが意外な事実です。
2030年には新築住宅全体にZEH水準の省エネ基準が義務化される見込みです(国土交通省の方針)。すでに2025年4月時点で新築住宅の省エネ基準が従来より引き上げられており、大手ハウスメーカーや工務店が建てる新築住宅の多くは、意識せずともフラット35Sの金利Bプランや金利Aプランの基準を満たすケースが増えています。
長期優良住宅として認定を受ける場合には手続きが必要ですが、その手続き費用は数万円程度です。一方で長期優良住宅の認定を取得した場合、フラット35Sの金利Aプランが使えるだけでなく、固定資産税の減額措置(5年間)や住宅ローン控除の優遇(最大控除額が拡大)など、複数の恩恵を同時に受けられます。金利引き下げの節約分だけ見ても、3000万円借入で約80万円相当の削減です。
ZEH住宅についても同様で、ZEH基準をクリアすると国の「ZEH補助金」が申請できます。補助金の最低ラインは55万円で、自治体独自の補助と合わせると総額がさらに大きくなるケースも珍しくありません。金利引き下げによる120万円削減と補助金55万円を合わせると、175万円以上の経済的メリットが得られる計算です。ZEH住宅の建築コストは多少割高になりますが、これらの恩恵を差し引くと実質的なコスト上昇は小さくなります。
エネルギー消費量の計算や断熱性能の数値は、施工を依頼するハウスメーカーや工務店が専門知識を持って確認してくれます。購入者側が計算を理解する必要はなく、「フラット35Sを使いたい」と伝えるだけで、対応した物件や設計を提案してもらえます。
参考:ZEH補助金と省エネ基準義務化のスケジュール
脱炭素社会の実現に向けた住宅・建築物の省エネ対策|国土交通省
フラット35Sの審査で見落としがちな適合証明書の落とし穴
フラット35Sを利用するには、住宅が技術基準に適合していることを証明する「適合証明書」を金融機関に提出する必要があります。ここを知らないと、直前になって慌てることになります。
適合証明書の取得には物件検査が必要で、検査費用として一般的に2〜5万円程度がかかります(検査機関により異なります)。そして検査から証明書発行まで2週間程度の時間がかかるのが標準的です。住宅ローンの本審査や資金実行のタイミングまでに間に合わなくなるリスクがあるため、購入の意思決定と並行して早めに動くことが重要です。
新築住宅の場合は、施工を担当するデベロッパーや工務店が設計段階から検査機関に依頼しているケースがほとんどです。購入者側が直接動く必要はなく、「フラット35Sを使いたいので適合証明書を取得してほしい」と伝えるだけで手続きを代行してもらえます。
中古住宅の場合は注意が必要です。適合証明書の取得は購入者側の負担になることが多く、設計段階からの検査ができないため、書類審査と現地調査の組み合わせで判定されます。物件によってはフラット35Sの基準を満たさないと判明することもあり、その場合でも検査費用は返金されません。中古住宅でフラット35Sを使いたい場合は、物件選びの段階で適合の可能性を不動産会社に確認しておくことが先決です。
また、適合証明書には有効期間があります。一戸建ての場合は現地調査日から1年間、マンションの場合は検査確認日から1年間が有効期限です。有効期限切れになってしまうと再度検査が必要になるため、タイムラインを意識して計画を立てましょう。
さらに見落とされがちな点として、フラット35Sには年間の予算枠が設定されています。予算枠に達すると、年度内でも申し込み受付が終了します。受付終了の告知は終了の約3週間前のみ。年度末にかけて申し込みが集中する時期は特に注意が必要です。受付終了になった場合、その年度内はフラット35Sの金利引き下げを受けられなくなります。
フラット35Sを他の金利引き下げ制度と組み合わせてさらに得をする方法
フラット35Sの活用で押さえておきたいもう一つのポイントは、他の金利引き下げ制度との「合わせ技」です。これは一般的にあまり知られていない点です。
住宅金融支援機構が提供する「子育てプラス」は、子どもの人数に応じて当初5年間の金利を引き下げる制度です。子どもが1人で1ポイント(年▲0.25%)、2人で2ポイント(年▲0.5%)、3人で3ポイント(年▲0.75%)、4人以上で4ポイント(年▲1.0%)の引き下げが受けられます。フラット35Sと子育てプラスは併用が可能で、ポイントが合算されます。ただし当初5年間の最大引き下げ幅は合計4ポイント(年▲1.0%)が上限です。
「地域連携型」は、住宅金融支援機構と連携している地方公共団体が定めた条件(子育て世帯への支援・地方移住など)を満たす場合に金利引き下げが受けられる制度で、これもフラット35Sと組み合わせ可能です。居住を予定している自治体が連携しているかどうか、住宅金融支援機構の公式サイトで確認できます。
さらに2025年4月からは「中古プラス」も加わりました。優良な中古住宅を取得する際に当初5年間で年▲0.25%の引き下げが受けられる制度で、フラット35Sとの組み合わせにより中古住宅購入でも金利メリットを得やすくなっています。
これらの組み合わせを整理すると、以下のような試算になります。
- 🏡 ZEH+長期優良住宅:当初5年間 年▲1.0%(フラット35S ZEH分)
- 👶 子育てプラス(子3人):当初5年間 年▲0.75%(ただし合算上限は▲1.0%)
- 🗾 地域連携型:自治体ごとの条件により加算
- 🏚️ 中古プラス(2025年4月以降):当初5年間 年▲0.25%
たとえば子どもが2人いる世帯がZEH住宅を取得した場合、フラット35S(ZEH)で2ポイント+子育てプラスで2ポイント、合計4ポイント(年▲1.0%)の最大引き下げが受けられます。3000万円を35年で借りると、当初5年間の月々返済額は通常フラット35より約1万円安くなり、総返済額の削減幅はプランや金利水準によって100万円超になります。
制度の詳細や自治体連携状況は住宅金融支援機構の公式サイトで確認するのが確実です。
【フラット35】子育てプラス 公式ページ|住宅金融支援機構
フラット35Sの基準クリアを独自視点で考える「住宅性能等級の読み方」
フラット35Sの基準を調べると、「耐震等級3」「高齢者等配慮対策等級4」「劣化対策等級3」などの専門用語が並び、それだけで拒否感を覚える方がいます。しかし、これらの等級の意味を一度理解してしまえば、基準の達成難易度が体感的にわかるようになります。
耐震等級は1〜3の3段階で、等級3は熊本地震(震度7が2回連続)でも倒壊ゼロだった耐震性能を指します。これは多くの中〜大手ハウスメーカーが標準または選択肢として用意している仕様と同等です。等級2はその1.25倍の強度、等級3は1.5倍の強度が建築基準法の最低基準(等級1)に対して求められます。
高齢者等配慮対策等級は1〜5の5段階で、等級3はトイレや浴室に手すりが設置可能な設計、等級4はさらに廊下幅が車椅子対応となるレベルです。これも設計段階で対応すれば、大きなコスト増なく達成できるケースが多くあります。
劣化対策等級3と維持管理等級2の組み合わせは「長期優良住宅の前段階」とも呼べる水準で、床下の点検スペース確保・防腐・防蟻処理・配管の点検口設置などが条件に含まれます。これらは「住んでから困る」問題を事前に防ぐ設計であり、長い目で見て補修コストを下げる効果があります。
住宅性能評価書(設計住宅性能評価書・建設住宅性能評価書)を取得した物件では、これらの等級が明示されているため、自分の検討物件がフラット35Sのどのプランに該当するかを一目で確認できます。住宅性能評価書の取得自体は任意ですが、フラット35Sの適合証明書取得とセットで申請できる場合もあります。
等級の数字が記載されていても「どこで確認できるのか」と迷う方は多いです。新築物件ならパンフレットや重要事項説明書、中古物件なら既存住宅状況調査(インスペクション)報告書に記載があります。購入を検討している不動産会社に「フラット35Sに対応しているか確認したい」と伝えると、具体的な書類を提示してもらえます。
住宅を長期的な資産として活用する視点で見れば、これらの性能等級を確認する習慣は、住宅購入後のランニングコストや売却しやすさにも直結します。フラット35Sの基準を「クリアすべきハードル」としてではなく、「住宅品質を選ぶ基準」として捉えると、家選びの目線自体が変わってきます。
参考:住宅性能表示制度の概要
住宅性能表示制度について|国土交通省