防火区画の貫通処理を建築基準法で正しく理解する方法
鋼管なら貫通処理なしでOKだと思っていたなら、それは是正命令につながる誤解です。
<% index %>
防火区画の貫通処理とは何か・建築基準法上の位置づけ
防火区画の貫通処理とは、給水管・配電管・排水管・換気ダクトなどの設備配管が、火災の延焼を防ぐための防火区画(耐火構造または準耐火構造の床・壁)を貫通する際に、その貫通部分から火炎や高温ガスが広がらないよう施す措置のことです。
建築基準法施行令第112条および第129条の2の4に根拠があり、対象建物の設備工事では絶対に省略できない義務施工です。これが条件です。
防火区画そのものは、建物内の延焼を一定の範囲に封じ込めるために設けられる床・壁であり、耐火構造や準耐火構造が要求されます。しかし現実の建物では、各フロアに給水・排水・電気・空調の配管が張り巡らされており、それらは物理的に防火区画を貫通せざるを得ません。その「穴を開けてしまった部分」の防火性能を元に戻す行為が、貫通処理の本質といえます。
防火区画は大きく4種類に分類されます。
| 種類 | 概要 | 区画面積の目安 |
|——|——|————–|
| 面積区画 | 一定以上の床面積を持つ建物に設けられる | 500〜1,500㎡以内ごと |
| 高層区画 | 11階以上の階に設けられる | 100〜500㎡以内ごと |
| 竪穴区画 | 吹き抜け・階段・昇降路などに設けられる | 用途・規模による |
| 異種用途区画 | 特殊建築物部分とその他用途が混在する場合 | 用途の境界で区画 |
どの種類の防火区画であっても、設備配管が貫通する場合には貫通処理が義務となります。意外ですね。「面積区画だから厳しい」「竪穴区画だから少し緩い」という種類による処理内容の違いはなく、全種類で同じ法的義務が課されています。
なお、スプリンクラーなどの自動消火設備を設置した建物では、面積区画の床面積算定上、スプリンクラー設置部分の床面積を1/2に折り算できるという緩和があります(施行令第112条1項かっこ書き)。これは貫通処理の義務を免除するものではなく、あくまで「区画を設ける間隔」が広がる緩和です。
参考:建築基準法における防火区画と貫通処理の法令根拠について(積水化学工業)
https://www.sekisui.co.jp/fp/encycl/
防火区画の貫通処理で求められる建築基準法上の3つの方法
建築基準法施行令第129条の2の4第1項第7号では、防火区画を貫通する管の構造として「イ・ロ・ハ」のいずれかに適合することを義務づけています。この3つが条件です。
🔷 イ:貫通部両側1メートルを不燃材料で造る
貫通する部分と、その部分から両側それぞれ1メートル以内の範囲を不燃材料で構成し、かつ壁・床との隙間をモルタルやロックウールなどの不燃材料で埋める方法です。鋼管など不燃材料の配管を使う場合、もっともシンプルに適用できます。ただし、隙間を埋める処理まで含めて初めてイの要件を満たします。「鋼管だから大丈夫」という判断で隙間処理を省いてしまうと、建築基準法第112条違反になる点に注意が必要です。
🔷 ロ:告示1422号に定める外径基準を満たす管を使用する
平成12年建設省告示第1422号が定める管の用途・材質・肉厚・外径の組み合わせ基準を満たす場合、「貫通部から1m不燃」という条件を満たさなくても貫通が認められます。硬質塩化ビニル管(塩ビ管)の場合、VP管(厚肉)であれば適用できる場合がありますが、VU管(薄肉)は肉厚が基準に満たないため不可です。これは使えそうです。
代表的な外径基準の目安を以下に示します。
| 配管の用途 | 耐火区画の種類 | 許容外径(目安) |
|———–|————–|————–|
| 給水管(VP・肉厚5.5mm以上) | 1時間耐火構造 | 外径90mm(呼び径75A)以下 |
| 排水管(覆いなし・4.1mm以上) | 1・2時間耐火構造 | 外径61mm(呼び径50A)以下 |
| 配電管(VE管・5.5mm以上) | 1時間耐火構造 | 外径90mm(呼び径82)以下 |
🔷 ハ:国土交通大臣認定工法を使用する
大臣認定を受けた工法・材料を使用することで、加熱開始後20分間(区画の種類によっては45分・1時間)にわたり、加熱側と反対側への火炎貫通を防ぐことが認められます。代表的なものは次のとおりです。
– フィブロック(積水化学工業):膨張黒鉛を利用した熱膨張テープを管に巻き付ける工法。火災時に熱で膨張し、溶けた塩ビ管の跡にできた空洞を物理的に塞ぎます。
– 耐火二層管:繊維混入セメントモルタル被覆の合成樹脂管を使用し、隙間をモルタルで充填する工法です。
– 熱膨張シート巻き工法:配管に熱膨張シートを巻き付けてモルタルで固定する方法です。
大臣認定番号には規則があり、壁用は「FP060WL-〇〇〇〇」、床用は「FP060FL-〇〇〇〇」の形式で付番されています。「060」は60分耐火を意味します。認定シールを施工部近傍に貼り付けることも施工条件のひとつです。
参考:防火区画貫通処理の方法(イ・ロ・ハ)の詳細解説
https://kakunin-shinsei.com/penetration-processing/
防火区画の貫通処理で見落とされやすい建築基準法と消防法の違い
防火区画貫通処理を正しく理解するうえで、多くの現場担当者が見落としがちな重要な落とし穴があります。それが「建築基準法の防火区画」と「消防法の令8区画・共住区画」の扱いの違いです。
建築基準法の防火区画(施行令第112条)は、適切なイ・ロ・ハの処理を行えば、設備配管を貫通させることが認められています。これが「防火区画貫通処理」の前提です。
一方、消防法施行令第8条に基づく「令8区画」は、「開口部のない耐火構造の床または壁」として定義されており、配管の貫通は原則として認められません。つまり令8区画は貫通NGが基本です。
ただし、令8区画においても「必要不可欠な配管(給排水管等)」で、かつ区画の耐火性能と同等と見なせる処理が施されている場合のみ、例外的に貫通が認められます。この場合、建築基準法の貫通処理と比較して要求性能が高く、遮炎性に加えて「遮熱性(裏面温度200℃以下)」と「遮煙性(令8区画では煙発生量ゼロ相当)」の両方が求められます。
| 区画の種類 | 根拠法令 | 貫通の可否 | 要求性能 |
|———–|———|———-|———|
| 建築基準法の防火区画 | 施行令第112条 | 適切処理で可 | 遮炎性(最大1時間) |
| 消防法の令8区画 | 消防法施行令第8条 | 原則不可(例外あり) | 遮炎性+遮熱性+遮煙性(2時間) |
| 消防法の共住区画 | 消防法施行令第29条の4 | 原則不可(例外あり) | 遮炎性+遮熱性+遮煙性(1時間) |
共同住宅(マンション等)では「共住区画」という区画が消防法上定められており、住戸間の床・壁がこれにあたります。令8区画と同様、原則貫通不可で、例外的に認められる場合の耐火性能要件も、建築基準法の防火区画より厳しい水準が求められます。
現場では「建築基準法でOKのフィブロック工法を使えば消防法でも問題ない」と思い込んでしまうケースが見受けられますが、共住区画・令8区画の貫通には消防庁の性能評定((一財)日本消防設備安全センター)を取得した製品・工法が別途必要です。厳しいところですね。
参考:令8区画・共住区画の貫通処理に関する消防庁通知(平成7年消防予第53号)
https://www.sekisui.co.jp/fp/encycl/
防火区画の貫通処理の不備が引き起こす建築基準法上のリスク
防火区画の貫通処理が不適切な状態で放置された場合、どのようなリスクが現実に発生するのでしょうか?
実際の遵法性調査事例では、階数8階・延べ床面積15,000㎡の事務所ビルで、各階のパイプスペース(PS)とダクトスペース(DS)に設けられた防火区画壁(面積区画)を貫通する配管について、次の2点の違反が発見されています。
– 貫通配管の両側1メートル以内が不燃材料になっていない
– 大臣認定工法でも施工されていない(いわゆる「素通し」状態)
– 貫通部の隙間処理が一切行われていない
これはいずれも建築基準法施行令第112条・第129条の2の4違反に該当します。問題ありません、では済まないわけです。
法的リスクは以下のように連鎖します。
① 定期報告での指摘(建築基準法第12条)
特定建築物は定期的に専門家(一級建築士等)が調査・報告する義務があります。貫通処理の不備はこの定期報告で「要是正」または「既存不適格」として指摘され、特定行政庁への報告義務が生じます。
② 特定行政庁からの是正指導・是正命令
建築基準法第9条に基づき、特定行政庁は違反建築物に対して工事停止命令や使用禁止命令、除却命令などを発することができます。東京都の建築安全マネジメント計画にも「防火区画の貫通処理の不備」が違反事例として明示されています。
③ 刑事罰の可能性
悪質な違反と認定された場合、建築基準法第98条・第99条に基づき、100万円以下の罰金または1年以下の懲役が科される可能性があります。是正命令に従わなかった場合はさらに重い罰則の適用もあり得ます。
④ 火災発生時の責任問題
貫通処理の不備が原因で火災が延焼拡大した場合、建物オーナーや施工業者は民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。建物の資産価値下落・保険の不払いリスクも現実的です。
中古物件の購入・テナント入居・リノベーション工事の前後には、専門家(一級建築士・防火設備検査員)による遵法性調査を依頼することで、こうしたリスクをあらかじめ把握できます。
参考:防火区画貫通処理の不備事例(ビューローベリタスジャパン遵法性調査)
https://kansa.bvjc.com/column/2019/000469.html
防火区画の貫通処理を現場で確認する独自の実践チェックポイント
法令の知識があっても、現場でどこを・何を確認すればよいかわからなければ意味がありません。設計者・施工管理者・建物オーナーが実際に現場確認できる具体的なチェックポイントを整理します。これは使えそうです。
✅ チェック①:隙間処理の確認(最重要・全配管共通)
材質を問わず、配管と壁・床の開口部のすき間がモルタルやロックウールなど不燃材料でしっかりと充填されているかを目視確認します。指一本程度の隙間でも施行令第112条第20項違反になります。天井裏・PS内など見えにくい箇所も見落とさないことが大切です。
✅ チェック②:認定シールの有無(大臣認定工法使用時)
フィブロックなど大臣認定工法を使用した場合、施工部の近傍に「国土交通大臣認定番号」が記載された認定シールが貼られているかを確認します。シールがない状態は、認定工法が正しく採用されたことを証明できないため、検査で指摘される原因になります。
✅ チェック③:貫通部から両側1mの管材確認(イ号要件適用時)
貫通部から両端それぞれ1メートルの範囲が鋼管等の不燃材料で構成されているかを確認します。1メートルは、はがきの横幅(約14.8cm)が約6.7枚分の長さです。現場でメジャーで計測してみると「1mより短い」と気づくケースが少なくありません。
✅ チェック④:ダクトの防火ダンパー設置確認(換気設備)
換気・空調ダクトが防火区画を貫通する場合、区画の貫通部またはその近接部に防火ダンパー(FD)または防煙防火ダンパー(SFD)が設置されているかを確認します。竪穴区画や異種用途区画を貫通するダクトにはSFDが必要です。FDとSFDは似て非なるものですから、区画の種別と照合が必要です。
✅ チェック⑤:VP管とVU管の区別(ロ号告示要件適用時)
塩ビ管で告示1422号を適用する場合、VP管(厚肉・JIS K 6741)とVU管(薄肉)を必ず区別します。管のラベルや刻印で「VP」と確認できればOKです。一見同じに見える塩ビ管でも、VU管を誤って使用すると告示要件不適合となります。
以下のフローで施工前に使用できる確認ルーティンとして活用してみてください。
“`
【現場確認フロー】
① 配管の材質確認 → 鋼管(不燃)か樹脂管かを分類
↓
② 鋼管の場合 → 隙間処理(モルタル等)を確認
樹脂管の場合 → イ・ロ・ハのどれを適用するか確認
↓
③ ロ(告示1422号)適用の場合 → VP/VU管の区別・外径を計測
ハ(大臣認定工法)適用の場合 → 認定シールの添付を確認
↓
④ ダクト貫通がある場合 → 区画種別に応じたFD/SFDを確認
↓
⑤ 令8区画・共住区画がある場合 → 消防設備安全センター評定品を確認
“`
定期的なセルフチェックの習慣化が、是正命令や火災時のリスクを未然に防ぐ最も確実な方法です。専門家に依頼する遵法性調査に合わせて、定期報告の12条点検でこれらの項目がきちんと確認されているか確かめることも有効です。
参考:防火区画貫通処理の法令解説(古河テクノマテリアル)
https://www.furukawa-ftm.com/bousai/commentary/

障害者用駐車場ステンシル – 障害者用標識の視認性の高いテンプレート、シリコン製の再利用可能なステンシル |コンクリート舗装防火帯のアクセシブルな商業不動産の区画マーキング用の正確なペイントツール
