特別避難階段の設置基準と緩和を正しく押さえる
15階建ての共同住宅でも、100㎡区画さえすれば特別避難階段が不要になる場合があります。
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特別避難階段の設置基準:15階・地下3階が判断の分岐点
特別避難階段とは、建築基準法が定める3種類の避難階段のうち、最も安全性の高い直通階段です。通常の屋内避難階段・屋外避難階段よりもはるかに厳格な仕様が求められます。設置基準の根拠条文は建築基準法施行令第122条であり、この条文を正確に読み解くことが設計の第一歩です。
設置義務が発生する建築物は、大きく分けると以下のように整理できます。
| 対象建築物 | 必要な階段の種類 |
|---|---|
| 5階〜14階建て / 地下2階の建築物 | 屋内・屋外避難階段または特別避難階段のいずれか |
| 15階建て以上 / 地下3階以下の建築物 | 特別避難階段のみ(他の避難階段では不可) |
| 5階以上の階を物品販売店舗とする建築物(1500㎡超) | 直通階段のうち1以上を特別避難階段に |
| 15階以上の売り場を持つ物品販売店舗 | すべての直通階段を特別避難階段に |
つまり15階という数字が分岐点です。14階以下であれば屋内避難階段でも条件を満たせますが、15階に達した瞬間に特別避難階段しか認められなくなります。これは高さが増すにつれて、消防隊による救出が難しくなるための安全上の配慮です。東京タワーがおよそ333m・地上100階相当の高さであると想像すると、15階(約45m)以上の建物がいかに高さのリスクを持つかがイメージしやすいでしょう。
なお、特別避難階段は直通階段の一種であるため、建築基準法施行令120条・令125条による歩行距離の規定も同時に満たす必要があります。設置義務の有無だけでなく、階段の「位置」にも注意が必要です。
参考:建築基準法施行令(e-Gov 法令データベース)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
特別避難階段の設置基準における緩和条件:令122条ただし書きの2つのルート
「15階建て以上なら必ず特別避難階段が必要」と思っている設計者は多いですが、実は例外があります。建築基準法施行令122条にはただし書きが設けられており、一定の条件を満たした場合は避難階段・特別避難階段の設置が免除されます。これが実務上の「緩和」に当たります。
緩和(設置免除)には2つのルートがあります。
【緩和ルート①】主要構造部が準耐火構造または不燃材料の場合
主要構造部が準耐火構造もしくは不燃材料で造られている建築物で、5階以上または地下2階以下の床面積の合計が100㎡以下である場合、避難階段の設置が不要となります。これは規模の非常に小さい建築物を対象としたルートです。
【緩和ルート②】耐火構造 × 100㎡区画(共同住宅は200㎡)
こちらが実務で多用される緩和です。主要構造部が耐火構造である建築物で、床面積100㎡以内ごとに耐火構造の床・壁または特定防火設備で区画されている場合、設置が免除されます。共同住宅の住戸にあっては200㎡以内ごとの区画でOKと、さらに緩和された数字が設定されています。コンビニ1店舗の売場面積がおよそ100〜200㎡ですから、「1住戸あたりコンビニ1店舗分以下の床面積で区画する」というイメージが掴みやすいでしょう。
区画の計算から除外できる部分も明確に定められています。
階段室・昇降機の昇降路(乗降ロビーを含む)・廊下などの避難施設部分は、区画対象の面積から除いて考えることができます。ただし、これらの部分は耐火構造の床・壁・特定防火設備で区画されていることが前提条件です。
100㎡という数字はコンパクトに見えますが、高層マンションでは1住戸が通常60〜100㎡程度に収まるケースも多く、実際に活用できる場面は少なくありません。緩和の有無は設計コストに直接影響するため、初期段階でこのただし書きの適用可否を必ず確認することが重要です。
参考:令122条但し書きによる設置免除の詳細解説
https://superreee.com/planning/regulations_special-evacuation-stairs-exemption
特別避難階段の構造と付室(附室)の役割:3タイプを正確に区別する
設置免除が使えない場合は、特別避難階段を実際に設計することになります。建築基準法施行令123条3項に基づく特別避難階段の構造は、大きく3つのタイプに分けられます。どのタイプを採用するかによって、設計コストや施工の難易度が変わります。
- 🔵 バルコニー型:屋外のバルコニーを経由して階段室に入る方式。煙が外気に拡散するため安全性が高い。バルコニーが延焼のおそれのある部分に掛からないよう、配置計画を慎重に行う必要があります。
- 🟢 自然排煙方式の付室型:付室(附室)に外気に向けて開くことができる排煙窓を設ける方式。建物の外壁側に設計しやすく、比較的よく採用されます。
- 🔴 機械排煙方式の付室型:付室に機械排煙設備を設ける方式。外壁に面せず階段を建物中央に設ける必要がある場合などに選択されます。ランニングコストや設備維持管理の観点から、最もハードルが高いタイプです。
3タイプに共通する構造要件の要点は以下のとおりです。
- 屋内と階段室は、バルコニーまたは付室を通じて連絡すること(直接繋がってはいけない)
- 階段室・バルコニー・付室は耐火構造の壁で囲むこと
- 天井・壁の仕上げおよび下地は不燃材料で造ること
- 開口部は延焼のおそれのある部分を避け、90cm以上の離隔を確保すること
- 屋内から付室・バルコニーへの出入口には特定防火設備、付室・バルコニーから階段室への出入口には防火設備を設置すること
- 階段は耐火構造とし、避難階まで直通させること
特に見落とされやすいのが「付室の面積」の規定です。15階以上または地下3階以下の各階では、階段室と付室(バルコニー)の床面積の合計が、その階の居室面積の合計に対して3/100以上(劇場・百貨店等は8/100以上)必要となります。居室面積が1000㎡ある階ならば、付室と階段室の合計は最低30㎡以上を確保しなければなりません。畳でいえば約18枚分。設計段階で意外と面積を食われる要素です。
また、バルコニー型においてhttps://kakunin-shinsei.com/special-evacuation-stairs/
特別避難階段の設置基準と緩和を混同しやすい「2直緩和」との関係
実務でよく混乱が起きるのが、2以上の直通階段(2直)の緩和と特別避難階段の設置免除の関係です。この2つを同時に使おうとする設計者がいますが、それは認められていません。
令121条に基づく「2直緩和」は、次の条件を満たすことで直通階段を1系統に減らすことができます。
- 居室の床面積の合計が100㎡以下であること
- 避難に有効なバルコニーや屋外通路が設けられていること
- 屋外避難階段または特別避難階段が設置されていること
この3つ目の条件が重要です。2直緩和を使うためには、屋外避難階段か特別避難階段の設置が必須条件として定められています。つまり、「令122条ただし書きで特別避難階段を免除しつつ、令121条で2直緩和も受ける」という組み合わせは法令上不可能です。2つの緩和の「いいとこ取り」はできない、というわけです。
これは確認申請の現場でも実際に誤った計画が提出されるケースのある部分です。設計の早い段階で「2直緩和を使う計画なのか、特別避難階段を設置免除する計画なのか」を整理し、どちらか一方に絞ることが必要です。計画が固まった後でこの部分を修正すると、階段位置・動線・https://kijunhou.com/with-the-refuge-stairs/
特別避難階段の設置基準に関する独自視点:「防火避難規定の解説」を持っていないと設計が止まる理由
建築基準法の条文だけを読んでいても、特別避難階段の設計を完結させることはできません。これは設計実務に携わっている人であれば体感的にわかることですが、その理由を正確に理解している人は意外と少ないです。
建築基準法・施行令に書かれている特別避難階段の要件は、あくまで「骨格」にすぎません。具体的な取り扱い、数値の解釈、細かな例外規定は「建築物の防火避難規定の解説」(日本建築行政会議編・ぎょうせい発行)に記載されています。確認検査機関もこの解説書を審査の判断基準として参照しているため、設計者がこれを持っていない場合、審査機関との協議が噛み合わないまま補正を繰り返すことになります。
2025年版では約5,000円前後で販売されており、高額ではありますが、設計業務での時間コストを考えると必須の投資です。1件の補正指摘で費やす時間(事前協議・図面修正・再申請で数日〜数週間)を考えれば、コストパフォーマンスは非常に高いといえます。
また、避難安全検証法(ルートB・C)を活用することで、特別避難階段の付室に設ける排煙設備を適用除外にできるケースもあります。これは高層建築物の設計で有効な手段ですが、検証計算に相当の手間が伴うため、ルート選択は慎重に判断する必要があります。設計コストと規定適用除外によるメリットを比較したうえで採用を判断することが原則です。
さらに、特別避難階段の設置基準は東京都建築安全条例など特定行政庁の条例・取り扱い要領によっても追加条件が発生することがあります。特に東京都内での設計においては、令122条・123条だけでなく、東京都建築安全条例第11条も参照することが欠かせません。「建基法は満たしているのに条例でアウト」というケースも実際に起きています。
設計対象地域の特定行政庁が公開している取り扱い要領や質疑応答集を事前に入手・確認することが、確認申請のスムーズな進行につながります。
参考:建築物の防火避難規定の解説2025 改訂概要(日本建築行政会議)
http://www.jcba-net.jp/books/boukahinankitei2025kaiteigaiyou20250531.pdf
参考:東京都建築安全条例(東京都)
https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00001306.html

ユニット 短冊型標識 避難はしご(横型)
