天空率計算をjwwで行う方法と手順・注意点まとめ
jwwで斜線制限をクリアしようとしても、実は外構の高さをうっかり含め忘れると申請が差し戻しになります。
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天空率とは何か・jwwで計算できる理由
天空率は、建築基準法第56条第7項として2003年1月1日に施行された制度です。従来の道路斜線制限・隣地斜線制限・適用除外となります。
jwwとはJw_cad(ジェイダブリュキャド)の略称で、日本人エンジニアが開発した完全無料の2D CADソフトです。天空率の計算・作図機能が標準で搭載されており、正射影投影法による天空図の自動作成、面積計算、天空率の比較判定まで一連の処理を行えます。有料ソフトを一切使わず建築確認申請図書を仕上げられるのがjwwの最大の強みです。
つまり基本は無料です。ただし「jwwを開けば自動で計算してくれる」わけではありません。天空率の概念を理解した上で、測定ポイントや適合建物の設定を自分で行う必要があります。上級者向けの機能と理解しておくのが重要です。
【天空率とは?】わかりやすく解説・フリーソフトで計算できる?(建築基準法をわかりやすく解説するブログ)
jwwで天空率計算を始める前の準備・設定
jwwで天空率計算を進める前に、配置図と建物データを整えておく必要があります。この準備を正確に行うかどうかが、後の作業ミスを左右します。
まず日影図を作成済みの場合、そのデータをそのまま流用できるのがjwwの便利な点です。建物の最高高さや軒先高さなど必要な数値を事前に入力しておきます。真北の設定も日影図コマンドで設定したものが天空率コマンドでも引き継がれるため、削除してしまっていなければ再設定は不要です。これは使えますね。
レイヤ管理が非常に重要です。計画建物と適合建物は必ず別レイヤに分けて作成してください。後の作業で片方のレイヤをオフにしながら進める必要があるからです。レイヤを分けていないと、計算時に両方の建物が混在してしまい正しい数値が得られません。
測定ポイントの設定は道路斜線制限の場合、前面道路の反対側の境界線上(道路境界の対面側)に置きます。測定ポイントの間隔は道路幅員の1/2以下とするのが原則です。たとえば道路幅員が5mであれば、測定ポイント間隔は2.5m以下となります。また、道路後退(セットバック)を考慮した位置は測定ポイントとして使えないという点も見落とさないようにしましょう。
2方向道路に接する敷地では、道路ごとにそれぞれ天空率計算を行う必要があります。一方向だけ確認して済ませようとするとアウトです。ここが実務でよくある見落としポイントなので注意が必要です。
| 斜線制限の種類 | 測定ポイントの位置 |
|—|—|
| 道路斜線 | 前面道路の反対側の境界線上 |
| 隣地斜線 | 隣地境界から16m or 12.4m外側 |
| 北側斜線 | 隣地境界から真北方向に4m or 8m外側 |
jwwでの天空率計算・射影図作成の手順
準備が整ったら、いよいよjwwの天空図コマンドを使って計算・作図に入ります。手順を間違えると数値がずれるため、順番を守ることが大切です。
①適合建物の天空率を作成する
最初に適合建物のレイヤをオンにし、計画建物のレイヤはオフにします。天空率コマンドを起動し、測定ポイントに番号(1から開始)を付けます。測定ポイントを左クリックすると、画面に天空図(正射影図)が自動で作成されます。続けて表の補助線の中心点をクリックすると、射影図と面積・天空率の数値が表中に自動転記されます。これを測定ポイントの数だけ繰り返してください。
②計画建物の天空率を作成する
適合建物のレイヤをオフ、計画建物のレイヤをオンに切り替えます。測定ポイントの番号を1に戻してから同様の手順で進めます。この「番号を1に戻す」という操作を忘れると、表への転記がずれてしまうので要注意です。
③比較判定を行う
jwwには「天空率比較計算コマンド」があります。適合建物と計画建物の天空率を順番にクリックし、判定結果の表示位置をクリックするだけで「○(適合)」または「×(不適合)」の判定記号と数値が自動で書き込まれます。手動で書き込む手間が省けるのは便利ですね。
全ての測定ポイントで計画建物の天空率が適合建物を上回れば計算クリアです。1点でも下回ればアウトになります。結論はすべての点で上回ることが条件です。
JWCADで天空率図面作成(手順・レイヤ設定・射影図の詳細解説)(CAD FRENZ)
jww天空率計算の三斜計算と根拠の提出
jwwで天空率を自動計算できても、審査機関から「計算の根拠を示せ」と指摘されるケースがあります。これに備えて三斜計算図面も準備しておくと安心です。
三斜計算とは、射影図(天空図に投影された建物の形状)の面積を三角形に分割して積算する方法です。正射影による自動計算と三斜計算では、数値が若干異なる場合があります。jwwの公式掲示板でも「同じ測定点で三斜計算の結果が正射影より0.18%低い」という事例が報告されており、これは三斜計算の特性上、適合建物は外接する三角形、計画建物は内接する三角形で処理する安全側の計算によるものです。
この差は一般的に審査でも許容されていますが、差が大きい場合は事前に審査機関に確認する姿勢が実務上は重要です。三斜計算にチェックを入れ「最大分割角度」を設定して射影図を作図すると、三斜による天空率計算も同時に出力できます。別レイヤで作成しておくと管理がしやすいでしょう。
jwwのバージョン3.10以降では三斜機能が正式に追加されており、三斜計算を射影面積の根拠資料として提出できます。提出を求められてから慌てないよう、最初から三斜計算図面もセットで作成しておくことをおすすめします。これは必須とまではいえませんが、保険として持っておく価値があります。
申請時の天空率の確認(三斜求積)/適合建物と計画建物の安全側処理の解説(比嘉ブログ)
jww天空率計算で失敗しないための5つの注意点
jwwを使って天空率計算を進めていく中で、実務上よく起きるミスや見落としを5点まとめます。事前に把握しておくだけで大幅にリスクを減らせます。
🔴 注意①:高度地区の斜線制限には天空率が使えない
天空率が緩和できるのは建築基準法第56条に基づく道路・隣地・北側の3斜線のみです。都市計画で定められた高度地区の高さ制限(高度斜線)には天空率による緩和は適用されません。たとえば名古屋市は高度地区が指定されているため、天空率が使えるのは道路斜線と隣地斜線のみとなります。お住まいの自治体の都市計画図を必ず事前に確認してください。
🔴 注意②:日影規制は天空率で緩和できない
天空率を使えば日影規制も解決できると思い込んでいる設計者が一定数います。これは誤りです。日影規制は天空率の適用外で、別途対応が必要です。
🔴 注意③:北側が道路境界の場合は北側斜線の天空率が使えない
真北側が道路境界線となっている敷地では、北側斜線に対する天空率は利用できません。法律上、北側斜線の天空率は「隣地境界線からの北側斜線」に対してのみ適用可能です。この見落としは非常に多いため、敷地の向きを早期に確認することが大切です。
🔴 注意④:外構(塀・擁壁など)も天空率の計算対象になる
建物本体だけを計画建物として入力し、敷地内の塀や擁壁を計算に含めなかったために申請後の指摘を受けるケースがあります。外構工事の計画高も天空率の計算対象になりますので、設計段階で外構の高さを確認しておきましょう。jwwfrenzのサイトでも「外構工事なども対象になりますのでご注意ください」と明記されています。
🔴 注意⑤:測定ポイントの設定ミスで全体がやり直しになる
測定ポイントの間隔が道路幅員の1/2を超えていたり、位置が誤っていると全測定点の計算をやり直すことになります。最初の準備段階で測定ポイントを正確に設定することが、後工程の手戻りをゼロにする近道です。測定ポイントが正しければ大丈夫です。
天空率で斜線制限を緩和する際の注意点・実務での確認ポイント(上岡建築設計事務所)
jwwだけでは難しいケースと専用ソフトの活用
jwwは完全無料で天空率計算ができる点で優れていますが、すべての案件にフィットするわけではありません。複雑な形状の建物や2方向道路・多数の測定ポイントが必要な案件では、作業量が膨大になり人的ミスのリスクも高まります。
そういった場面で検討できる選択肢が、専用の天空率計算ソフトです。代表的なものに「ADS-win」(生活産業研究所株式会社)があり、適合建物・計画建物・測定ポイントの自動設定機能を持ちます。確認申請対応の図面も出力でき、指定確認検査機関でも多く目にされる実績のあるソフトです。有料ですが、天空率の件数が少ない事務所なら「天空率計算の代行サービス」を利用するという選択肢もあります。
また「天空率空間」というアプリはjw_cadやAutoCADへの計算結果のエクスポートに対応しており、BIMソフト(Revit・Archicadなど)へのアドオンも存在します。jwwで進めていた作業の一部を専用ツールに切り替えることで効率化が図れます。
jwwは「天空率を理解している人が使うとフル活用できる」ツールです。逆にいえば、理論を理解していない状態でjwwを操作しても正しい結果は得られません。まず天空率の概念を建築基準法の条文レベルで理解してから、jwwの計算機能を使うという順番が正しいアプローチです。
| ソフト | 費用 | 特徴 |
|—|—|—|
| jww (Jw_cad) | 無料 | 天空率機能搭載・三斜計算対応・上級者向け |
| ADS-win | 有料 | 自動設定・申請図対応・業界シェアが高い |
| 天空率空間 | 有料(月額あり) | アプリ操作・CAD/BIMエクスポート対応 |
天空率計算システムADS-LA(Jw-cadデータ読み込み対応・自動生成機能解説)(生活産業研究所株式会社)