特定既存耐震不適格建築物一覧と用途・規模要件の全解説

特定既存耐震不適格建築物の一覧と用途・規模・診断義務を徹底解説

指示に従わずに放置すると、建物名が行政に公表されて社会的信用を失います。

📋 この記事の3つのポイント
🏛️

対象は昭和56年5月31日以前の着工建物

旧耐震基準で建てられた多数の者が利用する建物が対象。用途と規模の両方を満たした場合にのみ「特定既存耐震不適格建築物」に該当します。

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違反した場合は100万円以下の罰金+公表

耐震診断の義務付け対象で報告命令に従わない場合、最大100万円の罰金と建物名・所有者の公表というダブルペナルティが発生します。

💰

補助金制度を使えば診断費用の2/3が軽減可能

国・都道府県・市区町村の補助制度を活用することで、耐震診断費用の大部分をまかなえるケースがあります。まずは自治体の窓口に確認するのが最初の一歩です。


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特定既存耐震不適格建築物とは何か:旧耐震基準と耐震改修促進法の関係

 

「特定既存耐震不適格建築物」という言葉は、建築の専門家でなければ耳慣れない響きかもしれませんが、建物を所有・管理する方にとっては無視できない法律上の概念です。
この建物区分は、「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」第14条によって定められています。耐震改修促進法は1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災を契機に制定されたもので、昭和56年5月31日以前に着工した建物のうち、多数の者が利用する一定規模以上の建築物を対象として耐震診断と改修を促す法律です。つまりが基本です。
ここで重要なのが「旧耐震基準」という概念です。昭和56年6月1日に建築基準法施行令が改正されて「新耐震基準」が誕生しました。それ以前の基準は「旧耐震基準」と呼ばれ、震度5強程度に耐えることを想定した設計で建てられています。一方、新耐震基準は震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しないことを原則としています。旧耐震と新耐震では想定する地震の強さが根本的に異なります。
重要なポイントは、「旧耐震基準の建物=違法建築」ではないという点です。建築当時は適法に建てられており、その後の法改正によって現行基準に合わなくなった「既存不適格建築物」にすぎません。違法ではありませんが、現行基準に満たない耐震性能の可能性があるため、法律上の対応が求められる場合があります。これが原則です。
| 区分 | 意味 | 法的扱い |
|—|—|—|
| 違法建築物 | 建築時から法令違反の建物 | 即時是正・命令・罰則の対象 |
| 既存不適格建築物(耐震) | 建築後の法改正で基準外になった建物 | 違法ではない。ただし耐震改修促進法で対応が求められる場合あり |
| 特定既存耐震不適格建築物 | 上記のうち、特定の用途・規模に該当するもの | 耐震診断・改修の努力義務。指示・公表のリスクあり |
特定既存耐震不適格建築物は「違法ではないが、耐震安全性の向上が強く求められている建物」と理解するとわかりやすいですね。
建築物の耐震改修の促進に関する法律(e-Gov法令検索):法律の条文全文、第14条・第15条の指示・公表規定、罰則規定(第43条・第44条)を直接確認できる公式情報源

特定既存耐震不適格建築物の一覧:用途別・規模別の対象建築物まとめ

特定既存耐震不適格建築物に該当するかどうかは、「用途」と「規模(階数・延床面積)」の両方の条件を満たすかどうかで判定されます。どちらか片方だけでは該当しません。これが条件です。
以下は、耐震改修促進法第14条に基づく一覧です。
🏫 学校系施設
| 用途 | 規模要件 |
|—|—|
| 小学校・中学校・義務教育学校・特別支援学校など | 階数2以上かつ1,000㎡以上(屋内運動場の面積を含む) |
| 上記以外の学校(高校・大学など) | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
🏥 医療・福祉系施設
| 用途 | 規模要件 |
|—|—|
| 病院・診療所 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 老人ホーム・老人短期入所施設・福祉ホームなど | 階数2以上かつ1,000㎡以上 |
| 老人福祉センター・児童厚生施設・障害者福祉センターなど | 階数2以上かつ1,000㎡以上 |
| 幼稚園・保育所 | 階数2以上かつ500㎡以上 ⭐ |
🏟️ 集客・商業系施設
| 用途 | 規模要件 |
|—|—|
| 体育館(一般公共用) | 階数1以上かつ1,000㎡以上 ⭐ |
| ボーリング場・スケート場・水泳場その他の運動施設 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 劇場・観覧場・映画館・演芸場 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 集会場・公会堂 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 展示場 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 百貨店・マーケットその他の物品販売店舗 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 遊技場 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 飲食店・キャバレー・ナイトクラブ・ダンスホールなど | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 公衆浴場 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
🏨 宿泊・居住系施設
| 用途 | 規模要件 |
|—|—|
| ホテル・旅館 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 賃貸住宅(共同住宅に限る)・寄宿舎・下宿 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
🏢 その他施設
| 用途 | 規模要件 |
|—|—|
| 事務所 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 卸売市場 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 博物館・美術館・図書館 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 理髪店・質屋・貸衣装屋・銀行その他のサービス業店舗 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 工場(危険物の貯蔵・処理場を除く) | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
| 車両停車場・船舶/航空機の発着場(旅客用建物) | 階数3以上かつ1,000㎡以上 |
⭐の付いた用途は、規模要件や階数要件が他と異なる点に注意が必要です。たとえば幼稚園・保育所は500㎡以上という低い面積ハードルが設定されており、比較的小規模な施設でも対象になりえます。また、公共体育館は1階建てでも1,000㎡以上であれば対象になります。
注目すべきは、「分譲マンション区分所有の共同住宅)」はこの一覧に含まれておらず、対象外であるという点です。一覧に含まれる「賃貸住宅(共同住宅に限る)」は賃貸に供する共同住宅のみで、分譲マンションは該当しません。これは意外な例外の一つです。
町田市公式ページ(特定建築物の耐震化):特定既存耐震不適格建築物・要緊急安全確認大規模建築物の一覧表を用途・規模要件ごとに整理した行政の参考情報として確認できる

特定既存耐震不適格建築物の耐震診断義務・指示・罰則の仕組み

「特定既存耐震不適格建築物」に該当すると確認されると、所有者にはどのような義務と責任が生じるのでしょうか?
まず押さえておきたいのが、「耐震診断と耐震改修は努力義務」という基本原則です。耐震改修促進法第14条では、特定既存耐震不適格建築物の所有者は耐震診断を行い、必要と認められれば耐震改修を行うよう「努めなければならない」と規定されています。つまり努力義務が基本です。
ただし、同法第15条では、一定規模以上の建物については行政が「指示」を行うことができる制度が設けられています。この「指示対象となる特定既存耐震不適格建築物」は、第14条の要件よりさらに規模が大きい建物が対象で、以下のような段階的な対応が法律上想定されています。

  • 📋 指導・助言(法第15条第1項):まず行政が所有者に対して耐震診断・改修の必要性について指導と助言を行います。
  • ⚠️ 指示(法第15条第2項):必要な診断・改修が行われていないと確認した場合、所管行政庁が正式に「指示」を出せます。
  • 📢 氏名等の公表(法第15条第3項):正当な理由なく指示に従わない場合、その旨(建物名・所有者名)を行政が公表できます。

さらに、「要緊急安全確認大規模建築物」(特定既存耐震不適格建築物のうちより大規模なもの)については、耐震診断の実施と結果の報告が義務付けられています。この報告義務を怠ったり虚偽の報告をした場合は50万円以下の罰金の対象になります。さらに、命令に従わない場合は100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
「指示に従わなければ建物名が公表される」という点は、企業や施設の運営者にとって見逃せないリスクです。社会的信用の低下につながりかねないため、単に罰金を避けるためだけでなく、信用管理の観点からも早期対応が求められます。これは重大なリスクですね。
一方で、通常の「特定既存耐震不適格建築物(第14条対象)」の所有者には即時罰則はなく、まずは診断と改修に向けて自主的な行動が促される仕組みになっています。ただし、行政からの指示を受けた後に正当な理由なく無視し続けると、公表という重大なリスクを背負うことになります。
柏市公式ページ(大規模建築物等に係る耐震診断の義務付け):罰金額(50万円・100万円)の根拠と報告義務の詳細を確認できる行政情報

特定既存耐震不適格建築物の耐震診断にかかる費用と補助金制度

「耐震診断が必要とわかっていても、費用が心配で動けない」という方は少なくありません。しかし実際には、国・都道府県・市区町村が一体となった補助金制度が整備されており、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。これは使えそうです。
まず耐震診断の費用感を把握しておきましょう。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造の建物では、概ね2,000円〜3,500円/㎡程度が耐震診断の費用相場とされています。延床面積が1,000㎡の建物であれば、200万〜350万円程度の費用がかかる計算になります。これはビジネスホテル一棟分の床面積(ロビーや宿泊室を含めてほぼA4用紙1万枚分の面積)に相当するイメージです。
次に補助制度の概要を確認してみましょう。

  • 🏛️ 国の補助(建築物耐震対策緊急促進事業):要緊急安全確認大規模建築物などを対象に、補強設計・耐震改修工事に要する費用の一部を国が補助する制度があります。
  • 🏢 都道府県の補助:大阪府の例では、特定既存耐震不適格建築物の耐震診断補助基本額として200万円/棟(上限)が設定されています(市町村経由での申請)。
  • 🏙️ 市区町村の補助:自治体によって内容が大きく異なります。例えば神戸市では66.6%の補助率(限度額200万円)という水準が設定されています。足立区では耐震改修工事費用の2分の1以内・上限2,000万円という補助制度があります。

重要な注意点があります。補助の申請は必ず耐震改修工事の契約・着手「前」に行う必要があります。工事を先に始めてしまうと補助金を受け取れません。先に自治体の窓口に相談するが条件です。
補助金制度の内容は自治体によって大きく異なります。補助率・補助上限額・申請期限など、建物が所在する市区町村の担当窓口に事前確認するのが最初のステップです。東京都の場合は「東京都防災・建築まちづくりセンター」(電話:03-5989-1470)が耐震化総合相談窓口として機能しており、無料のアドバイザー派遣制度も利用できます。
大阪府「特定既存耐震不適格建築物 耐震診断補助制度の概要」(PDF):補助基本額200万円/棟の制度概要と申請の仕組みを確認できる公式資料

特定既存耐震不適格建築物の見落としやすい注意点:要緊急安全確認大規模建築物との違い

「特定既存耐震不適格建築物」と混同されやすいのが「要緊急安全確認大規模建築物」です。どちらも旧耐震基準の建物に関わる概念ですが、法的な位置付けと義務の重さが異なります。
「要緊急安全確認大規模建築物」は、耐震改修促進法附則第3条に基づくもので、地震に対する安全性を「緊急に」確かめる必要がある大規模な建物です。特定既存耐震不適格建築物(第14条対象)よりも規模要件が大きく、例えば小学校・中学校では「3,000㎡以上」、体育館(公共用)では「5,000㎡以上」、病院・ホテル・百貨店などでは「5,000㎡以上」と設定されています。
特定既存耐震不適格建築物と要緊急安全確認大規模建築物の最大の違いは、耐震診断の「義務」の強さです。

  • 特定既存耐震不適格建築物(第14条):耐震診断・改修は努力義務。行政の指導・指示はあるが即時罰則はない。
  • 🚨 要緊急安全確認大規模建築物(附則第3条):耐震診断の実施と行政への報告が法的に義務付けられており、未報告・虚偽報告には50万円以下の罰金、命令違反には100万円以下の罰金が科される。

また、要緊急安全確認大規模建築物については、所管行政庁(都道府県・政令市など)が耐震診断の結果を一覧表として一般に公表する義務を負っています。つまり、自分のビルの耐震診断結果が「危険性が高い(Ⅰ)」「危険性がある(Ⅱ)」と公表されると、入居者・利用者・取引先に知られてしまう可能性があります。結果の公表が条件として義務化されているわけです。
大阪府の公表情報を例に取ると、耐震診断の評価はⅠ・Ⅱ・Ⅲの三段階で示されており、「Ⅲ(倒壊・崩壊する危険性が低い)」以外の結果が公表されると、社会的な影響は避けられません。一方で、診断結果がⅠやⅡであったとしても、それをもって「違反建築物」として扱われるわけではない点は押さえておきましょう。
建物を複数所有するオーナーや施設管理者は、所有建物が「特定既存耐震不適格建築物(第14条)」と「要緊急安全確認大規模建築物(附則第3条)」のどちらに該当するかを正確に確認することが不可欠です。これが前提です。
大阪府「特定既存耐震不適格建築物について・大規模建築物の耐震診断結果の公表」:両区分の対象一覧・診断結果の三段階評価・公表一覧表を確認できる都道府県公式情報

特定既存耐震不適格建築物への対応ステップ:所有者が今すぐできること

特定既存耐震不適格建築物に関する法的な仕組みを理解したうえで、実際に所有者として何をすべきか、具体的なアクションを整理しておきましょう。
まず確認すべきは「自分の建物が昭和56年5月31日以前に着工されたかどうか」という点です。着工日の確認方法は、建築確認済証確認申請図書(副本)などの書類を確認するか、市区町村の建築担当窓口で照会する方法があります。新築・増築の確認申請書類が見つからない場合は、法務局で登記情報(建物の登記事項証明書)を取得すれば新築年月日を確認できます。
次に、用途と規模要件(階数・延床面積)を一覧と照合します。前述の一覧表で該当する用途に該当し、かつ規模要件を満たしている場合、特定既存耐震不適格建築物として位置付けられます。
該当すると判断した場合の対応フローは次のとおりです。

  • 📍 ステップ1:所管行政庁に相談 建物が所在する市区町村(または都道府県)の建築担当窓口に相談し、対象に該当するかの確認と補助制度について情報収集します。
  • 🔬 ステップ2:耐震診断の実施 一級建築士事務所や耐震診断の登録機関に依頼し、建物の耐震性を数値で把握します。RC造・鉄骨造の場合、Is値(構造耐震指標)が0.6以上であれば安全と判定されます。
  • 🔧 ステップ3:必要に応じて耐震改修設計・工事 診断の結果、Is値が0.6未満であった場合は補強設計と工事を行います。このタイミングで国・自治体の補助金を活用できます。
  • 📝 ステップ4:行政への報告 耐震改修を完了した場合は、所管行政庁に対して「地震に対する安全性等に関する報告書」を提出します。

自力での耐震診断には限界があるため、専門家への相談は必須です。「どこに相談すればいいか分からない」という方は、国土交通省が整備する「建築物耐震改修支援センター」や各都道府県・市区町村の窓口を起点にするとスムーズに進められます。東京都内であれば「東京都防災・建築まちづくりセンター」(03-5989-1470)が無料で対応しています。まずは1本電話するだけでOKです。
特定既存耐震不適格建築物への対応を後回しにすると、行政からの指導・指示を受けたり、社会的な評判リスクを抱えることになります。なにより、建物利用者の命と安全を守る責任を所有者として果たすためにも、できるだけ早い段階での行動が重要です。早期対応が原則です。
国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」:耐震診断・耐震改修の全体的な支援制度と法的枠組みを確認できる公式総合情報ページ

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